もし、七日後に処刑されるとしたら。②
前回のあらすじ。
夢の中で中世の煉瓦造りの建物に幽閉され、「七日後に処刑するから」と突然宣告される私。
こんな怖い夢なのに「見てよかった」という私の真意は果たして…?
そして完全に一人語りになっていてこっぱずかしい今回のシリーズの意味とは…!?
(続けていることに意味がある…はず!?)
-五日目-
昨日色々反芻する事で諦めがついたのでしょうか。
捕まってからの数日間の中で一番穏やかなひと時を噛み締めていました。
-今までの人生の終着点が、
ここでもいいかもしれない-
今までの人生を思い返すことで、やっとこれから起こる運命を受け入れ始めたのかもしれません。
運が悪ければもっとひどい終わり方だってあったかもしれない。この事を不幸、と決めつけなくてもいいのでは??
-だって、こんな穏やかな心持ちのまま逝けるなら…それは--。
-六日目-
-なぜだろう。頭の中が澄み切っていて、視界が妙にクリアだ。
牢の中だけど、目の前の景色が愛しくて仕方がなくて。
それに、何故か今までの辛い事が、全部喜びに変わるような気がしていて。
ひょっとしたら、これまでの生きた意味がわかるような予感もしていて。
ぜんぶぜんぶ、名残惜しくて。
何もかも許せそうで。
ひたすら穏やかで、幸せだ。
生まれてこれた事、ここまで生きた事。世界の全てに感謝したい。
私は全部受け入れます。ありがとう。愛してる。
-七日目。処刑の朝-
流石に今日かと思うと、武者震いだろうか。諦めてはいるけれど、これから起こる事に対しての震えが止まらない。
いつなのだろうか??あぁ、緊張が高じて吐きそうだ。心臓が煩くて仕方がない。
本当に、今日死ぬのか。
…あれ?死ぬって、なんだ??
何かを、確かに掴んだ気がしたのに…
バンッ!!
「出ろ。今からお前の刑を執行する」
数人の兵士が私の脇を固める。
その瞬間。
今まで堰き止められていたものが噴出するように感情が溢れ、まるで自分の意思とは関係ないかのように漏れ出る叫び声も止まらなくなり、
どこにこんな力があったのかと自分でもびっくりするほどの力で相手を引き剥がそうとするも、数人がかりで引き立てられ、執行人の元へ。
「許して、許してください!!あんた!殺してやる!!許さない!嫌だ、あああああ!!」
もはや何を叫んでいるのかわからないけれど、心というより本能が強く生きたがっていて、しょうがない。最後くらい穏やかに逝きたかったのに。
一瞬、何かを悟った様な気もしたけど、この抗いがたい衝動の前では何もかもが嘘だ。
生まれたからには、生きたい、どうしようもなく。
ただ、それだけは確かで、それ以外に感じられる手応えなんて今はない。
死にたくない、死にたくない。
1秒でもいい。長く、長く
その為ならなんだって---…………
あっ、
…………
………
「…あれ?
え?わたしは。わたし…?
え?なんで布団に?…これが、ここにいるのが私??
え、泣いてる……。」
いつもと変わらない朝でした。
ボロボロに泣きながら目が覚めて、しばらくしてようやくパニックが収まったけれど、今度は安堵の気持ちで涙が止まらなくなり、ただただ静かに泣いていました。
「生きていてよかった。夢で本当に良かった。……妙にリアルで、一体あれは…本当に夢???」
生々しすぎて、本当はなにが夢でどちらが現実かがわからない。
けど、きっとあれは只の夢。
数日経ち落ち着いてきた頃、あの夢で体験した事が私の考えに影響を与えてくれるようになってきました。
何日間も一人きりで、死と隣り合わせの状態で自分と向き合う事は、私のあまりにも平和な人生では無かったことだから。
「人はとても、脆い。生きたいという本能に逆らう事は多分出来ない。よっぽどの修行をした仙人?ならわからないけれど……。
強い想いや悟りや決意なんてものは、その瞬間は本物たけれど刹那のものであり、簡単に本能に崩される。でも、それが生きているって事だし、そういう生き物でいいんじゃないのかな。」
それまでは、割と出来ない事や、決めた事を守れないことに対して罪悪感を感じていたのに、いい意味では寛容に。悪い意味では甘くなったように思います。
でも、そのおかげで今をとても穏やかに過ごせるようになったし、何かがあって、どんなに心揺さぶられても、「まぁ、人間だしね…??」と思えるスペースをどこかに残せるようになった気がするのです。
だから、あの夢は二度と見たくないけれど、みてよかった。
それに、漠然とあった死への恐怖。
間際のあの恐ろしさを実際に体験して、それが避けようとしても避けられない、と解った事で、逆に軽減されたように思うのです。
それに今いるこの世界も、ひょっとしたら、ある日突然目が覚めて----…
……
なんてね??
-fin-
サポートしていただいたお金は、責任をもって真人間になるためのとさ資金とさせていただきます!!(…たぶん)