バーニング

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ユ・アイン主演
バーニングを観た時の感想です

村上春樹の「納屋を焼く」を映画化した作品

小説家志望でフリーターの主人公ジョンスはある日偶然、幼馴染の女性ヘミと再会を果たす
儚く美しい彼女に惹かれ、また彼女も主人公に想いを寄せる
そんな中ヘミは夢だったというアフリカへ旅行に行ってしまう
そこで彼女は「金持ち」で「ハンサム」で「料理好き」そして「博識」という文句のつけようがない男、ベンと出会う
主人公に想いを寄せながらも同様にベンとも親しくなっていくが、ある日を境にヘミは忽然と姿を消す…というあらすじです

簡潔に言うとこれ、村上春樹作品へのアンチテーゼのような出来上がりでした(村上春樹は2作品しか読んだことないししかも納屋を焼くは読んでないけど…) 最後の、あのシーン
村上春樹らしさを全て車に詰め込んで燃やしたように思えて…

それなのに何故村上春樹がこの映画にGOサインを出したかっていうと
韓国のエグい程リアルで暗い現実がきちんと落とし込まれてたからかなぁと思います
広がる格差社会、居場所のない若者達、己では制御しきれない怒り、そして嫉妬

一見持つ者と持たざる者の話に見えるけど決してそうではなく
実は登場人物全て持たざる者なのです

どう考えてもベンがヘミの失踪に関与していて、黒にしか思えないのだけど確たる証拠はどこにも無くて
それを知ってか、嘲笑うかのようなベンの言動は正直ゾッとする物がありました

「ヘミは煙のように消えました」というセリフがあったけど
2ヶ月に一度ビニールハウスを燃やす趣味がある、という彼の発言からして
間違いなくそういう事なんだろうけれど、それも憶測の域を超えない

そもそも「燃やす」という行為に執着していたのは寧ろ、幼い頃のトラウマを未だに夢に見るジョンスの方で
ヘミやベンは本当に存在していたのか?
全てジョンスの空想なのではないか?などとも思えてくる

作中に散りばめられたメタファーについて考えれば考える程謎は深まり、ラストは私達観る者に委ねられる形となった

面白い、面白くない
そんなレベルの映画ではないです
とにかく凄い、これは観てみないとわからないかと思います

久しぶりにアレコレ考察して脳みそが疲れ果てました
韓国映画にはいつも脱帽させられます
こんな映画よく作れるよなぁ…と

そして
笑っちゃうくらい怪しい金持ちのハンサム男ベンを演じたスティーヴン・ユァンは私が数年前から推してる俳優です

彼はアメリカ育ちの為、韓国語のイントネーションがネイティブのそれとは少し違うのです
けれど、それが余計この役に良い味を持たせてたと思います
得体の知れなさに拍車をかけてくれていたというか
故に、この役は絶対に彼しか演じられなかったと思います

主演のユ・アインも化物でした
かっこよくて魅力的でとても人気のある俳優なんですが、そんな男が絶対に近付きたくないタイプの男になれるもんなんだな、と
一体どういうアプローチをすれば、あんな激ムズな役を見事に演じきれるのか…
あの表情、あの出で立ち、全てが完璧でした
ユ・アイン、恐ろしい俳優です

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