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やったことないけど文庫本サイズの小説同人誌を作ってみたい

腐向け・成人向けの小説同人誌を作ってみたいなあと思い立ち、2020/9上旬からちまちま製作を始めた初心者です。同人誌を通販で買ったことはありますが、本製作の経験もイベントに参加した経験もありません。

自分用の備忘録兼、他に同じように思い立った誰かの役に立つことを祈って、親切な先達の皆様方が教えてくださったことや、自分が参考にしたものを書いていきます。

1. 何から始めたらいいのか分からない

教えて頂いた下記の3つのwebページがとても参考になりました。流れが詳しく載っています。

2. 文章作法と書式設定を知りたい


手元にはwordの初期設定のまま書いた横書きの小説があります。支部にアップロードする際、スマホで見やすくなるように、普段は段落が変わるごとに空行を入れています。会話文の前後も一行分空けています。
縦書きにしたらスカスカになりました。何かが見慣れた文庫本と違います。

2-1. 文章作法

下記のサイトに文章を書く時のルールがまとめられていました。

要約すると、

・三点リーダー(…)とダッシュ(—)は偶数個で使う(……や――で使う)
・!や?の後は一字分空ける
・段落を変えたら文頭は一字下げる
・かっこ(「」)やダッシュ(—)の前では一字下げる必要はない
・閉じかっこ(」)の前に句点を置かない
・空行は場面転換の際に一行入れることはあっても、会話文の前後や段落間には基本的に必要ない

というルールがあるそうです。これらのルールに従って直すと、多少見栄えが良くなりました。少し本に近付きました。

2-2. 文書サイズ・余白・フォントサイズ

初心者に優しい、しまや出版さんの文庫A6テンプレートをダウンロードしました。

印刷後に切り落とされる『塗り足し』を左右上下各3 mmを含めた幅111 mm、高さ154 mmにサイズが設定されています。字組はあらかじめ15行33字、余白は上下左右15 mm(製本時に12 mmになる)に整えられているようです。フォントサイズは9 pt

※余白と字数はレイアウト>余白>ユーザー設定の余白or文字数の数字を変更することで変更できます。また、字組は本文全体を選択した上で右クリック>段落>インデントと行間隔>行間固定値を変更することで設定できます。

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せっかく作るのなら体裁にもこだわりたいです。
一行に何文字詰まっているの? とじしろってどれくらい?
本体字組に関しては、参考になるまとめがありました。

ついでに手持ちの文庫をいくつか定規で測ってみたところ、

・新潮文庫:『有川浩 キケン』本文356ページ(厚さ11 mm)
 16行38字、ヘッダー:上から10 mm
 余白:上14 mm 下12 mm めくる側10 mm 綴じる側11 mm

・角川文庫:『伊坂幸太郎 マリアビートル』本文591ページ(厚さ21 mm)
 18行39字、ヘッダー:上から10 mm
 余白:上15 mm 下10 mm めくる側10 mm 綴じる側11 mm

・文春文庫:『貴志祐介 悪の教典(上)』本文467ページ(厚さ17 mm)
 17行39字、ヘッダー:上から8 mm
 余白:上16 mm 下12 mm めくる側10 mm 綴じる側11 mm

という結果でした。
個人的に好きな『悪の教典』の体裁を真似して、字組は17行39字、余白は塗り足し分を足した上19 mm下15 mm左右13 mmに設定しました。

2.3. 綴じしろ

続いて、綴じしろを設定します。

同人誌は市販の本より紙が厚いようです。比べてみました。
本の厚さ÷(ページ数÷2)で一枚当たりの紙の厚さを概算すると、先程定規で測った三冊の本に使われている紙の厚さは、上から順に0.062、0.071、0.073 mmとなります。

同人誌文庫用の紙は、薄めでも70K(約0.1 mm)のようなので、見慣れた文庫本より厚めで硬めの仕上がりになることが予想されます。読みやすさを考えると、綴じしろはやや多めに取るべきかもしれません。

100ページを超える場合には断ち切り線から本文まで15~20 mm開けることが推奨されていますので、綴じしろは7 mmにしました。

【追記①(2022/2/6)】
紙の種類や厚さはいろいろあるようです。
写真上から
*ライト書籍用紙クリーム 55kg(298ページ)
*上質70kg(222ページ)
*上質70kg(364ページ)
*淡クリームキンマリ 70K(380ページ)
です。個人的にはライト書籍用紙が一番黄色っぽくて柔らかく、読みやすいと感じました。上質用紙はコピー紙のように真っ白で固めなので、分厚い本だと少し目が疲れるかもしれません。

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【追記②(2022/2/6)】
文庫本四冊を作りました。余白は変えていませんが、ページ数に応じてとじしろを若干変えて調整しています。
*とじしろ8.0 mm、37字17行(固定値12.5 pt):380ページ
*とじしろ6.0 mm、37字17行(固定値13.0 pt):222ページ
*とじしろ7.6 mm、37字17行(固定値12.5 pt):364ページ
*とじしろ7.0 mm、37字17行(固定値13.4 pt):298ページ
見た目はこんな感じになります↓

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2.4.フォント

フリーで手に入る明朝体のまとめ記事が参考になりました。

文庫メーカーの源暎こぶり明朝が好きなので、ダウンロードして使います。

2.5. ルビ

こちらの記事が分かりやすいです。

同じ漢字に一括でルビをふる方法も載っていました。ルビをふり終わってから本文のフォントサイズを変えると、見た目が崩れるそうなので、本文作業が終わってから最後にふる方が良さそうです。

ルビをふると、ルビの分行間が広がって見た目が崩れます。それを直すために、行間を固定値に設定する必要があります。こちらのページが分かりやすいです。

また、ルビのフォントサイズや、本文との距離はフィールドコードを使えば一括で変更できました。Wordのルビの設定から行くよりも、フィールドコードで変える方が自由度が高く、早いです。

フィールドコードの表示方法はこちらのページに載っています。

フィールドコードを表示出来たら、Wordの『置換』機能で一気に設定を変えます。下記の二つのサイトが参考になります。

up xx (xxは半角数値)がオフセット(本文とルビの距離、数値が小さいほど近い)
hpsxx(xxは半角数値)がルビのフォントサイズ

です。編集ページや印刷プレビューではルビが切れているように見えても、実際に印刷するか、pdf化すれば印刷されています。印刷するかpdf化して、ルビと本文が被っていないかチェックします。

【追記(2022/2/6)】
フォントサイズ9 ptのときはhps 9、up 6を使うことにしました。ルビの大きさはこれくらいになります。

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2.6.文章チェック

推敲の一環として、下のふたつのサイトにお世話になっています。

漢字の割合が多すぎないか(30%程度を目安に)、地の文と会話文の割合は適当か(地の文:会話文=9:1~7:3を目安に)、2.1.で挙げたルールにひっかかっていないかチェックします。

体言止めを多用する癖があるので、多すぎないかチェックします。指示語や接続詞、連用中止形の頻度もチェックしてくれるので便利です。


3. 印刷所を選びたい

こちらのサイトに1部や10部などの少部数から文庫印刷を受け付けてくれる印刷会社さんが10社並べられています。各社の特徴も詳しく載っているので参考になります。

カバー付きの文庫をできるだけ安価で作りたいのと、日程を自由に決められる点が魅力的で、Starbooksさんにお願いしました。

4. 表紙・目次・奥付を作りたい

本文以外に最低限作らないといけないものはこの3つだと思います。

4.1. 表紙

表紙のセミオーダーを受け付けているところもあるようです。
・しまや出版

・てんぱるさんのBOOTH

自作するのも楽しそうなので、自分でやってみることにしました。こちらの記事がとても参考になりました。

こちらで紹介されている、フリーソフト界のPhotoshopにあたる『Canva』でもいいですし、同じくフリーソフトでIllustrator的に使える『Inkscape』でも似たようなことができます。『メディバンペイント』でも作成できます。

表紙素材は、てんぱるさんが同人誌の印刷に使ってよい表紙やフレーム、アイコンを100~500円という安価で販売してくださっています。

また、個人利用・商用利用問わず利用できるフリーの高解像度写真素材を、こちらのUnsplashからダウンロードすることもできます。

タイトルフォントは、こちらのページにフリーの日本語フォントがまとめられています。

【追記(2022/2/6)】
紙やインクの色、PP加工など、印刷会社さんによって違うことができて楽しいです。備忘録として作った本の写真を張っておきます。写真左が表紙、右がカバーです。

*一冊目
表紙:OK特アートポスト+_180K(フルカラー印刷)
カバー:ミラーコート・プラチナ_135K
Starbooksさん

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*二冊目
表紙:い織り170kg黒(メタル銀一色刷り)
カバー:コート110kg(クリアPP加工)
Printwalkさん

カバーにクリアPP加工を付けてもらったので、市販の文庫本のようにつるつるになりました。

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*三冊目
表紙:アートポスト180K(こげ茶一色刷り)
カバー:コート135kg (マットPP加工)
サンライズパブリケーションさん

マットPP加工をすると紙がしっとりすべすべになってかわいいです。

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*四冊目
表紙:ペルーラ 135kg スノーホワイト (モノクロ印刷)
カバー:マシュマロ 110kg(トワイライトPP加工)
コミックモールさん

トワイライトPP加工をしたら光に当てると虹色になって派手でよかったです。表紙に特殊紙を初めて使いました。雪原のように控えめなきらきらがかわいかったです。

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4.2. 目次

サイズは違いますが、こちらのページに見本が多く載っていて参考になりました。

4.3. 奥付

こちらが参考になりました。

4.4. PDFへのフォント埋め込み

入稿するときにはpdf化する必要がありました。自分のパソコンで見ているフォントが他のパソコンで見たときも同じに見えるように、pdf化するときにはフォントを埋め込みます。

こちらのサイトが参考になりました。

チェックの仕方も載っています。

5. 委託通販したい

『とらのあな』と『BOOTH』、『フロマージュ』が同人誌の委託通販を受け付けています。

とらのあなさんは最少1部の少部数から受付実績があるそうです。
・専売だと6ヶ月、併売だと3ヶ月保管
・保管期間後は返本、廃棄、10円買取のいずれかを選べる
・条件付きで予約販売可能↓ 

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まったくの初心者ですべてお任せしたかったので、とらのあなに委託を申し込みました。印刷会社への入稿前に申し込みだけ済ませ、送付状のアドレスをとらのあなから受け取った後、印刷会社に伝える必要があります。

予約開始や販売開始の日付や時間帯を自分である程度コントロールしたければ、はじめはパスワードとアドレスを知っている人だけが買えるシークレット販売にしておいて、後から一般販売に変えるという方法もあるようです。

BOOTHは30冊から倉庫保管・発送代行を受け付けているようです。組み合わせて30冊になればいいので、複数の本を少部数出す場合も使えます。
・最終出荷日の月末締めから6ヶ月保管のち自宅に返送
・受注生産が可能

フロマージュもとらのあなと似たサービスで、1冊から販売委託でき、本を送ればあとはすべてやってくれます。

この記事が文庫同人誌を作ってみたいと思った方の何かの役に立ちますように。ここまでお読みいただきありがとうございました。




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