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耳鼻科医が自分の扁桃を取ってもらう話②

扁桃摘出術については自分が患者さんに説明をしょっちゅうやってきた。術後経過についても治癒までの流れは何回も見てきた。
しかし、摘出される側のリアルな感覚や気持ちは、取られないと分からない!
これも耳鼻科医として良い経験かもしれん、ということでここに記載します。
まずは手術の流れ↓

⭐︎口蓋扁桃摘出術の流れ

1.麻酔科医によって全身麻酔をかけられ眠り、気管挿管される(呼吸が止まるので気管にチューブを入れて呼吸を担保)
2.耳鼻科にバトンタッチ、開口器という金属製の道具で口を大きく開けて固定
3.口蓋扁桃をよく観察、扁桃の周りに生理食塩水や麻酔薬を注射
4.メスで扁桃の周りの粘膜を切開
5.上方から扁桃を粘膜から剥がしていき、摘出
6.剥がされた粘膜からの出血を止める
7.反対も同様に行う
8.出血がないことを確認して開口器を外して終了
9.麻酔科にバトンタッチ、麻酔を覚ましていく

施設によって細かいところは異なるが大体このような流れになります

そして、重要なのが合併症↓

よく挙げられるのは
1.出血(頻度として多いのは手術当日、そして術後7〜10日目)
→止まらない時は全身麻酔をかけて止血術
2.痛み(喋る、食べる、飲み込む時に痛む)
3.感染症
4.舌の違和感、味覚低下
5.顎関節症
6.声質の変化
など

痛いのは当然で、いかに鎮痛薬で誤魔化して回復させるかが重要だ。
そして特に出血には耳鼻科医もかなり敏感になっている。
なにせ、夜出血してしまえば夜中に止血術をすることになるのだ。


患者の立場からしたら夜中痛い上に血が流れてきて止まらなくて、「ごめんなさいね、もう一回麻酔かけて手術します」って言われたら絶望だ、、

お互い避けたい術後出血。ただし施設によって報告が様々だけど、だいたい1%くらいの確率で起きてしまうのである。

<<出血しませんように>>
と願うばかりである

ここからは具体的な自分の入院の流れを書きます。

●入院1日目
午後入院で14時に病院へ。
病院につくと、入院係に案内され、コロナPCRを鼻から採取され、病棟へ。
その後主治医(私の同期)や先輩が来て、ノドの診察や雑談をした。
前日から少し咽頭痛があったが、やはり赤くなっていたようで、うがいを沢山しなさいと言われたので、アズノールうがい液でうがいした。
(患者さんによく処方するうがい液、やっと自分でも使えてなんか嬉しい。。)
その後麻酔科の先生が来て、同意書を取った。

その日はシャワーを浴びて夕食をたべ、翌日の手術に備えて就寝。21時以降は絶食。すんなりと眠った。

●手術日(入院2日目)
9:10の手術室搬入予定であった
7時頃に目が覚めてソワソワしたため持参した漫画を読んだ。
7:30頃に、直々に術者をお願いしていた、私や若い医師が師と仰ぐ耳鼻科医が来られて、診察され、
「噂に違わず扁桃大きいなぁ」という言葉を残していった。
8時頃に検温があり、8:40にまた看護師さんがきて術衣へ着替えた。

一生に何回着るか分からない術衣!興奮して写真を撮ってしまう。
それから看護師と手術室へ向かう。途中の家族待機場所に来てくれた母と軽く挨拶して手術室へ。
麻酔科、耳鼻科医、手術室看護師さんと共に中へ入る。人生初の全身麻酔!緊張するが楽しみだ。

メガネを回収されて手術台に横たわり、心電図モニター、酸素モニター、血圧計を巻かれる。
口には酸素マスクを当てられ、左手から麻酔の先生が点滴をとる。点滴から薬剤が注入され、身体が重い感じがあり、暗くなっていき、そこから意識はない。
はやい!はやすぎるヨ、と思いながら麻酔にかけられるのでした。

何か夢を見ていたけれど今は思い出せない

その後、目が覚めた時には口の違和感もなく、あれ、すでに抜管(気管挿管チューブを抜くこと)されているのか?という状態だった。
そのままスタッフで横につけたストレッチャーに移され、病室に運ばれた。
途中、師匠が母に向かって、「炎症がかなり強かったですねー」と説明する声が聞こえた。

その後部屋に入り、ベッドに移された。
部屋に戻ると、ノドの違和感が出てきて、口から唾が出るわ、咳が出るわ、鼻水もでるわ、で箱ティッシュのティッシュをどんどん使った。
血痰は飲み込むと吐き気が出るので吐き出すように指導される。
酸素マスクから流れる酸素は変な匂いがした。
術後2時間くらいはそんな時間が続き、昼には箱ティッシュ一箱を使い切った。
喉はかなり痛いため坐薬の鎮痛剤を使った。

色の濃い血痰は次第に落ち着き、部屋に帰り2時間経つと酸素は終了し、かなりスッキリした。
3時間経つと看護師見守りの下、飲水とトイレ移動もOK、なんとか飲めたし歩けた。
これは全身麻酔後の誤嚥や転倒防止の意味がある。

その後はスポーツドリンクがおいしかった。
取れた扁桃腺を眺めたり、写真を撮ったり、はしゃいだ。以下グロ注意
#扁桃腺のある暮らし
をテーマに複数写真を撮る元気も出てきた。

ただその後は眠気があり、寝たり起きたりする1日であった。
シャワーは手術当日、翌日はダメなのでホットタオルを与えられ、清拭をした。
夜は栄養ジュースと野菜ジュースが配られて飲んだ。美味しかった。
その後はだらだらして就寝。
明日からお粥スタート!

つづく

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