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モウフカブールは組版ソフトを複数使ってる話

モウフカブールでは、様々な同人誌を出していますが、実は本によって組版ソフトも色々です。今回は、組版ソフトについてのお話です。

組版ソフトのラインナップ

どんな感じの組版ソフトを使っているかというと、以下のラインナップです。

  • 明後日シリーズ/世界のロー(略→Re:VIEW Starter

  • 10分AWS/機械学習/Dockerと和解せよ→Vivliostyle

  • 空飛ぶ/写真集→Adobe InDesign

  • 秘密基地vol2→Word

  • ぼくのCAZ→MS Publisher

  • モウフ通信→Adobe Illustrator

Re:VIEW Starter

皆さんご存じ、Re:VIEW! モウフでは、Re:VIEWを使っています。
これは、Markdown形式の原稿を組版できるツールで、TeXベースです。最終的にPDF化して印刷所に入れるデータまで作れます。
TeXのテンプレートが付いているのですが、このカスタマイズは、なかなか難しいです。そこで、オリジナルに、いくつかのスタイルが追加されたRe:VIEW Starterを使っています。Re:VIEW Starterには、オリジナルにはないスタイルも使えて良いのですが、それをさらに細かくカスタマイズするとなると、もちろんTeXの知識が必要です。組版自体は楽だけど、カスタマイズしようとするとちょっとつらいなという感覚です。

明後日シリーズや、「作っては捨てる時代の過ごし方」「オンプレ技術者のためのAWS忍び込み指南」などは、これで組んでいます。
技書博9の新刊「世界のロー(略」もこれです。

Vivliostyle

最近では、Vivliostyleも使うようになりました。

HTML+CSSで組版します。CSSなので、調整がしやすいのがいちばんのメリットです。

最初に使ったのは、「10分AWS」です。これは、全サービスを紹介する性質上、手作業で組版すると、とてもたいへんなので、Excelの表形式で原稿を書いて、それを流し込んで作るという策をとりました。
Pythonでちょっとしたコードを書いて、Excelの表をHTMLのテンプレート(tableタグで構成されたもの)に差し込みます。それに対してCSSを適用することで、自動でページングしてレイアウトされていくってわけです!

それから、暫くはあまり出番がなかったのですが、技術書典14・技書博8で出した「明後日から使える機械学習」をカラーでだすことになったので、再登板です。
なぜならRe:VIEWだと文字のカラーがよくわからなかったのと、図が多いと、細かい図の大きさの調整とかレイアウトをしたいこともあって、柔軟なレイアウト調整がしたかったからです。
Vivliostyle自体は、HTMLで組版するソフトですが、VivliostyleのCreate Book(https://docs.vivliostyle.org/ja/create-book.html)を使うと、MarkdownからHTMLに変換して、それを組版できます。なので、使い勝手としては、Re:VIEWと似た感じです。

Vivliostyleのデメリットは、印刷用のPDFにするときに、フォントの関係でアウトラインをとらないといけないとか、黒が黒くならないとかの問題がある点です。「明後日から使える機械学習」は、この点、考慮してなくて、文字が黒じゃなくて、少し色が入った黒になってしまっています。
(これ改善の手はありそうな気がするので、次回、どこかでリベンジしたい)。

なお、技術書典15の新刊である「Dockerと和解せよ」もVivliostyleです。こちらは納期の都合で、「入校に失敗したら落ちる」というタイミングであったため、安全のため、Vivliostyleから出力したPDFを、Adobe Indesignに貼って出力しています。
この話は、リブロワークス著「Web技術で「本」が作れるCSS組版Vivliostyle入門」(https://www.amazon.co.jp/dp/4863544189)に詳しいです。
この本、Vivliostyleのノウハウが詰まってるので、Vivliostyleを使う人は、読むことをお勧めします。

Adobe InDesign

組版ソフトと言えば、Adobe InDesignを思い浮かべる人も多いでしょう。モウフでももちろん使っています。
写真集の組版は、すべてInDesignですし、技術書でも「空飛ぶエンジニア用語辞典」は、辞典形式なので、InDesignで組版しています。

InDesignの良いところは、自由な場所に自由なものをレイアウトできることです。当たり前ですが……。
図が多かったり、この位置にこれを置きたいみたいなときは、やっぱりInDesignですね。逆に、手作業でやらなければいけないってことなので、テキストが主体で文字数が多い場合は、RE:ViewやVivliostyleのほうが手早く作業できますね。

Microsoft Publisher

意外に思われるかもしれませんが、モウフでは、MSのPublisherも使っています。知らない人も多いかもしれませんが、Officeに入っていたり、入っていなかったりするソフトです。
「Publisherとか使わなくても、パワポでいいでしょ」と思われるかもしれませんが、Publisherは組版ソフトなので、やはり便利です。マスターが使えるのは同じですが、流し込みが容易です。
あと、軽い。安い。印刷所は、PDFにすれば、元がどんなものであっても印刷できるので、簡単なのは正義です。
「ぼくのgdgd」「ぼくのCtrl+alt+z」など、無料配布の冊子はこれで組版をしています。

Microsoft Word

更に意外に思われるかもしれませんが、Wordで組んだこともあります。
「モウフ技術の秘密基地 vol.2 大澤文孝がChatGPTと戦った話」です。

これは、中を見て貰うとわかりやすいのですが、かなり文字の色を変えています。ChatGPTが間違えたところをマークアップしているためです。
そして、これを一番やりやすかったのがWordです。
正直なところ、スタイルを当てるのは、Publisherでも上手にやってくれよと思うのですが、Wordの方が自由自在だったw
なので、Wordで組版をしてPDF化して印刷しています。
なおちょっとこれ、ズルしていて、実は上と下の帯の部分が黒いのですが、ここはWORDで作ると、余白の白が出てしまうのです。なので、Illustratorで黒いところだけ別に作って、Acrobat(ReaderではなくてPDF作れる有償版のほう)で、それを背景にして、帯だけ作ってます。

Adobe Illustrator

イラレも使っています。これは冊子というよりも、フリーペーパーですね。
モウフカブールでは「モウフカブール通信」というFPを時々出しているのですが、これを作る時には、イラレです。
一枚物はやはりイラレが便利。流し込みもできます。

僕の推しの組版ソフト

最近の推しは、Vivliostyleです。HTML+CSSなので、自由な組版ができるのが魅力。フォントや文字サイズ、余白の変更も、CSSでどうにでもなりますしね。2段組とかもCSSのColumnsで実現できる!
ただ印刷するときに、アウトラインの問題とか文字が黒くならないとか、そういうちょっとしたところが改善されるといいなぁと思います。

結局、印刷所にはPDFで入れればなんとかなるので、むしろPDF環境を整えるの大事。そういう意味で、AdobeのAcrobat(無料じゃなくて有償のほう)は、あると便利です。
ページをモノクロにしたり、表紙を別に分けたり、本文はVivliostyleで作るけど、奥付はIllustratorで作って最後にはめ込むとか、そういうことができるので……。

印刷って難しそうという印象をもつ人も多いかと思いますが、基本は「PDF」です。
「トンボ」という「切る場所」を示したマークがあるPDFが理想ですが、印刷所によっては、トンボなしでも対応してくれるところもありますから、「ひとまずPDFを作って、印刷所に相談」でなんとかなると思います。
はじめての人は、是非、印刷所に相談しながら、まずは1冊作ってみてください!


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