弟へ 3通目

今日は、じっちゃんの誕生会をしたよ。
87歳の。
来年は米寿だよ。

でも来年はじっちゃんいるかわからない。

ちょっと前に大腸のポリープが悪性だってわかったんだけど、取りづらいとこにできていて手術しても全て取れるかわからないんだって。

抗がん剤は、体力的にやめた方がいいらしい。

じっちゃんは色々考えた結果、手術をせずそのままにすると決めたんだ。

それからのじっちゃんは最期に向けての準備を始めているよう。

今日もおこづかいといって孫たちにいつものお年玉よりはるかに多いお金をくれたんだ。
たぶんそういうことなんだと思う。

お正月のようにみんなで集まったんだよ。
じっちゃんは君のことは口にしないけど、きっと気にかけていると思うんだ。
君の名付け親だしね。

じっちゃんが君と最後に会ったのは、君の義理の父親が君たちの結婚式のことでじっちゃんの家に乗り込んできた時かな?
あの義理の父親も今となっては君の口車に乗せられていたのかもしれないと思えるけど、当時はじっちゃんちまで行くなんてなんてモラルのない人なんだと思ったよ。
今も君の病気に気付いていないのだろうか。

あの場で「縁を切る」と言ったじっちゃんはどんな気持ちだっただろう。

じっちゃん、もう散歩も行けないくらい足が弱ってしまったよ。
完全におじいちゃん。

「病は気から」というけどほんとだね。
病んでいるのもほんとだけど、気持ちも落ちていてみるからに元気がないのがわかったよ。

お祝いの席なのになんだか寂しくて、悲しくて眠れないよ。

プレゼントに息子の写真をいっぱい入れてデジタルフォトフレームをあげたけど、うまく使えるかな?
次に行った時に確認しよう。

人はいつか死ぬ。
でもその日が来るのがこわい。

もっと会いに行こうと強く思ったよ。
息子を見るとじっちゃん笑顔になるから。

またね。

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