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#008 最終サブミッションで味わった青春

こんにちは、やまです。ファイナルプロジェクトのポートフォリオとエッセイの提出も終わり、卒展も終わり、ついに卒業を迎えることができました!涙。あっという間の9か月でしたが、本当に充実した日々でした。

最後のサブミッション前夜にまるで漫画のような青春を体験し、本当に大切なことを学ばせてもらったなと思ったので、少し長いのですが備忘録としてここに書いておきたいと思います。


美大生のサブミッションとは?

サブミッションの回数は各コースによって異なるのですが、私の場合は前期と後期の2回あり、自分のプロジェクトのresearch、development, proposed design を70ページほどのポートフォリオに纏める(枚数は制限なし)+自分のプロジェクトに関するエッセイ1,500字をポートフォリオとセットにして提出します。後期のサブミッションは、最後にアワアワしないよう2か月前からちゃんと準備をしていたのですが、やはり最後の二週間は毎日食事とお風呂以外の時間はずっとパソコンの前で作業or模型作る日々でした。私は徹夜が出来ない人間なので最後の一日だけ4時間睡眠でしたが、友人は1週間寝ていない人もザラで、サブミッション直前はみんな顔が疲れていたり、全く運動していないのに私も友人もサブミッション前は何故か体重が減ります(笑)

サブミッション前日に味わった悔しさ

サブミッション前日は学校に行ってコースリーダーとポートフォリオの構成について最終確認、ワークショップのスタジオで3Dプリンターで作ったモデルをピックアップしに行きました。コースリーダーは時々言っていることが変わるのですが(笑)、散々話し合ってきたデザインについて、前日に「何でここに屋根付けてないの?」と突然言われ、「ここに屋根付けたくない理由について議論して屋根無しで行こうとならなかったっけ?もうモデルも作っちゃったし、これからデザイン変えるのは無理だよ、、、」と話したのですが、いや絶対屋根は必要とのことで、間に合わないかもしれないという恐怖と、私がもっと英語で深く議論できていればこんな齟齬が生まれなかったのではないか、と悔しくて(恐らくストレスもあって)恥ずかしながら涙が溢れました。コースリーダーはびっくりして、泣く必要なんてない、既にSuperだよ!と励ましてくれたのですが、最後のチュートリアルはもっとハッピーに終わりたかったのに、こんな終わり方になるなんて悔しくて仕方なかったです。

私のコースメートはサブミッション期限のエクステンション(1週間期限を延長出来る代わりに、評価が一つ下がる制度。例えばA-の人はB+になる )を使っている友人が3人もいて且つエクステンションする理由も体調不良等ではなく、単純に間に合わないという理由だったので、世の中結構エクステンションするもんなんだなーと思っていました。正直私もエクステンションしたい気持ちもある一方、ちゃんと期限内でやり切りたい気持ちがあり、あと18時間で出来る限りのことをやろうと決意し、24時間空いているUALのラーニングスペースに向かいました。

BA interiorのfinal year学生達と一夜共にして

ラーニングスペースは普段は殆ど使う人がおらず、図書館より快適に作業できるので私はよく利用していたのですが、最終夜は他コースのサブミッションもあり多くの人で賑わっていました。22時くらいに10人くらいの集団が入ってきて、グループワークなのか皆で楽しく作業でもするのかな?と思っていたのですが、特に騒がしいわけでもなく、各々黙々と作業をしていました。いつも使っているモニターの席(2席しかない)が空いたので席を移ったところ、私の隣のモニター席にその集団の一人の女性、近くに他の人たちが纏まって座っていました。モニターをちらっと見ると建築関係のデザインだったので、BAのインテリアか建築の子たちなんだろうな、とすぐに気が付きました。

深夜になり彼らは時々おしゃべりしながら作業していたのですが、私の隣の女性は一切会話に入ることなく一人黙々と作業をしており、その姿が格好いいな、と思っていました。深夜2時頃になり、明らかに集中力も落ち眠くなってきたので、4時間ほど仮眠しに家に帰ったのですが、朝6時に戻った際も周りの子たちは寝ている中彼女は姿勢を崩さずずっと作業をしていた様子でした。すると彼女が「どこ専攻なの?インテリアだよね?ポートフォリオちょっと見えたんだけど、格好いいね」と話してきてくれて、彼女たちはBA interior and spatial designのfinalの学生達で翌日の正午がサブミッションで、皆で貫徹するために集まったこと、彼女は一週間殆ど寝ていないこと、お勧めのソフトウェアなど教えてくれたり、ポートフォリオも少し見せてくれました。正直BAで3年やっている人たちには到底敵わないと思うほど完成度が高く、アウトプットの幅も広く尊敬するポイントが沢山ありました。私の期限は当日午後1時だったので、お互い頑張ろうね!と話し、お互い作業を始めました。

AM7:00、彼らの数人がもう無理かも。ここで出してもB評価は貰えるし、もうあきらめて寝たい、と言い出した際、ムードメーカーのような男の子が「皆大丈夫。深呼吸して。あと5時間頑張ろう、僕たちならできる」と周囲を鼓舞し、一晩近くで作業をした私も勝手に彼らの仲間に入ったように、彼の言葉に励まされました。

AM11:00、彼らのサブミッション1時間前になった際、少しずつ提出をし始めるが人が出てきたのですが、彼女は最後まで調整を続けていました。私もあと2時間しかないと、あと2時間で何ができるか、と頭をフル回転して作業をしていました。11時半になり、傍にいる私も感じるくらい皆がピリピリとし始めた際、彼女がindesignからPDFにエクスポートしようとしたのですが、データが重すぎてエクスポートできずパニックになりました。私も助けたかったのですが、そんなに知識もない&私も時間に追われている状況で助けることが出来ず。周りの友人は静かにしてくれ!とイライラして彼女に言ったり、提出が終わった友人が助けに入ったりと、ソワソワした状況で私も隣でドキドキしていました。ようやくPDFに変換出来たころには11:50。あと10分しかなく、データを専用リンクにアップロードしなくてはいけなかったのですが、彼女のデータが重すぎて、何度アップロードしてもエラーになってしまい。周囲の友人たちはアップロードが完了して、お互い祝福し始める中、彼女は結局12:00までにアップロードが出来なかったのです。
(期限直前はネットがパンクするのであるあるらしいです。)

彼女から何を学んだか

彼女は泣き崩れ、悔しさで怒っていました。「私が一週間徹夜した意味は全くもって無駄だった!最悪だわ!パス(卒業)さえできなかったらどうしよう。」と。周囲の友人は皆サブミッションが無事完了しているので、彼らが彼女にどんな言葉をかけようと、彼女はイライラした様子で、部屋を出て行ってしまいました。私は一晩彼女の傍で作業をし、彼女がどれくらい本気でこの最終ポートフォリオ制作に取り組んでいるかを感じていたからこそ、本当に涙が出そうになりました。

彼女を励ましたかったですが、私には何の言葉をかけることもできず、何を言えば良いかも分かりませんでした。同時に、私も提出できなかったらどうしようと、手が冷たくなってきて、鼓動の音が聞こえるくらいの緊張感であと1時間後の期限に向けて最終調整を行っていました。
12:40、期限20分前になり既に出せる状態にはなったのですが、あと少し粘りたいと、既にパーツを切っており糊で張り付けるだけだった模型を作り始め(笑)、撮影し、なんとかデータに入れました。提出が完了したのは 12:57。3分前に無事提出をすることが出来ました。。

彼女は部屋に戻ってきていて、その頃には落ち着いた様子でご飯を食べていたのですが、「さっきは取り乱しちゃってごめんね」と笑顔で声をかけてくれました。私は何といえばいいか分からず、彼女の気持ちを考えるだけで涙が出てしまいました。彼女は何であなたが泣くの?有難う。私は大丈夫よ、と笑いながら話してくれて、そこから連絡先を交換し、卒展見に行くねと約束しました。

サブミッションのエクステンションを当たり前にする友人達が周囲にいる中、私は彼女と一夜共にし、最後まで全力を尽くすことの大切さを学びました。決してエクステンションを非難しているわけではなく、それは一つの選択であり、権利であり、これも自分の作品に妥協したくないという意志の一つであると思います。ただ、エクステンションの選択を取ることは、とても簡単に出来るものです。一週間期限が伸びたら、どれ程のことが出来るかわかりません。
しかし、現状のプレッシャーから逃げずに、期限内に自分のできる最大限のことをやろうとした結果が、その努力が、アップロードが出来ない程の彼女の莫大なデータであったわけで、世の中にはこんなに努力している人もいるのだ、と気が付かされました。彼女は結果期限内に提出できなかったので、もしかするとグレードが一つ下がってしまうかもしれないですが(メールで提出できない理由をコースリーダーに連絡していたので恐らく大丈夫だとは思うのですが)、結果だけを見るのではなく、その過程で何をしてきたか、どれ程の努力したかは消えることのない事実で、それは誰にも見えないかもしれないけれど、絶対に彼女の中の財産になると思いました。

最後に

日本の大学生をしていた時、こんなに追い詰められるほど、真剣に勉強に取り組んだことは私は正直なかったと思います。でも世界には同じ大学生、20代前半の子たちが、涙を流す程真剣に取り組んでいる人たちが多くいることを知りました。そして、結果がどうであれ、その時は気が付けなくても、毎度自分のベストを尽くすことで今後何かの成長に絶対に繋がっていくことを実感しました。彼女との出会いは、私に心から勇気を与えてくれるもので、これからも不器用ながら、自分にできるベストを尽くして頑張っていこうと思わせてくれるものでした。

#美大留学#社会人留学#イギリス留学


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