Scooter's Love #3
上釜一郎(a.k.a wickerman)
今回の【Scooter's Love】で取り上げるのは、関東在住のスクータリスト上釜一郎さんです。
■STORY
上釜さんと初めてお会いしたのは、福岡から東京までスクーターを積んで初参加した2017年のモッズメーデージャパンでした。
東京の友人のエスコートにも助けられましたが、右も左も分からない状況で集合場所までなんとか辿り着きました。そこで上釜さんから話しかけてもらえた事は忘れられません。
スクーターのデコレーションのセンスはもちろん抜群、そして一際目を引いたのが娘さんとのタンデム。
一緒に並走させてもらった時に、娘さんも楽しそうにされていたのが印象的で羨ましかったです。
■INTERVIEW
module 以下(m):今回は宜しくお願いします。
上釜一郎 以下(u):こちらこそ宜しくお願いします。
(m):上釜さんがスクーターに乗ろうと思ったきっかけを教えて下さい。
(u):高校生のときに友人から回し読みで見せてもらったファッション雑誌【Checkmate】のモッズ特集に載っていた東京モッズとそのスクーターのカラー写真を見たことです。
リチャードバーンズの【Mods!】も同時期に見ましたがそちらは音楽やファッションについての入門書という位置付けでした。
大学生になる頃には、中学からの幼馴染みの1人がベスパ150スポルティック、3人がベスパ160GSを次々と購入しました。後ろに乗せてもらって遊びに行きましたが、実物に直接触れることで自分が欲しいスクーターはベスパではないと気づきました。
ベスパ・スタイルハンドブックを何度も読み返したり、都内のスクーター屋やモッズイベントに通い、良く吟味して最終的にランブレッタの3型が持つシャープラインに魅力を感じ自分が欲しいスクーターがわかりました。
そのタイミングで当時渋谷の東急ハンズにあった個人売買の掲示板にジャ●グルを始める前のゴ●さんがランブレッタTV200を売りに出していたのを友だちから教えてもらいアポを取って購入に至りました。
※初めて購入したランブレッタTV200 series 3
(m):そんな巡り合わせがあったんですね。昔はネットも無いので情報も少なかったでしょうから、素敵な出会いですね!
2020年から、ミッドセンチュリーのアンティーク食器のウェブショップ【 Wickerman Ledge】を始められていますがコンセプトを教えてもらえますか?
(u):
◆店名について
“Wickerman”はモッズの友だちに付けてもらったあだ名みたいなもので言葉自体に深い意味はありません。
“Ledge”は【壁や窓から突き出た棚】を意味します。ヨーロッパの古い集合住宅の窓には窓台(window ledge)があり住人はそこに思い思いの鉢植えの花などを置くことで街並みが飾られ、見る者の心を豊かにします。
私はこのオンラインストアを“Ledge”に見立て、店主が信条とする時代や流行にとらわれない価値のある商品を発信することでお客様の生活の質をより豊かにしたいと思い名付けました。
◆商品について
ミッドセンチュリーの欧米製のテーブルウェア、特にカップ&ソーサーを中心に取り扱っています。
実際にヴィンテージのカップ&ソーサーを手にすると現代にはないモダンなデザインと陶器の質感が味わい深く感性を刺激してくれます。鑑賞用としても飽きませんし、コーヒー(紅茶も)を入れれば特別な時間を演出してくれます。
*商品は鑑賞用として輸入しています。飲食でのご使用については自己責任となります。ご了承願います。
10代から現在まで距離感は都度変わりましたが、モッズに興味を持ち、当時のスクーターやレコード、ファッション、その延長でテーブルウェアやインテリアにも関心を持ち収集していました。
望むものを所有するスケール感は個人の経済や社会的状況によりますが、大掛かりなインテリアではなくテーブルウェア、その中でもカップ&ソーサーはバリエーションが豊富でサイズ的に管理しやすく実用的です。
値段も稀少価値や状態によりさまざまですが、比較的手が届きやすいので取り扱い商品の中心にしました。
シーンのオーガナイザーである黒田マナブさんが、昔何かのインタビューで仰っていた「小さくても完璧な世界を作りたい」という言葉が私は好きです。まさに「小さくても完璧な世界」がカップ&ソーサーにはあります。
もしこの記事を読んで興味を持っていただけた方がいらっしゃいましたらお気軽にご相談下さい。実際に手に取っていただき価値のある時間を過ごしていただければ幸いです。
(m):実際に私もカップ&ソーサーを購入しました。コーヒーを飲む時も特別ですし部屋のインテリアとしても存在感がありますね。
あと上釜さんの知人がイギリスでやっているブランド【63DGE】と【mr.b's soulfulltees】にも興味が有りますね。どんなブランドなんですか?
(u):
◆63DGE
Stuartさんという方がネクタイとポケットチーフのセットを中心にデザインして取り扱っているブランドです。60年代の様式美を保ちつつどこか新しさを感じさせるデザインと品質の良さで私も利用させていただいています。
古着屋でお気に入りのヴィンテージのタイを見つけてもあわせられるチーフまで探すのは「運」に左右されます。特にイベント前で時間の工面が難しいときほど苦心します。
センスが良くセットで豊富なバリエーションを取り扱っているこのブランドがあることはとても心強いです(笑)。
因みにStuartさんの奥様はGillさんという伝説のオリジナルモッド(ガール)です。Gillさん自身も【Mod Togs】というブランドのデザイナーをされています。感性が響き合うパートナーと公私をともに過ごせることは羨ましい限りです。またStuartさんはランブレッタLi150 series 1のオーナーです。
*商品は現在Facebookでのみ販売しています。
◆mr.b's soulfulltees
Billyさんという方がTシャツやスウェットを中心にデザインして取り扱っているブランドです。
主に60s〜80sのモッドアイコンをシルクスクーンでプリントしています。ボディのカラーは種類が豊富で自分で選べます。
私はTシャツ、スウェット共に購入しています。
また、ある程度信頼関係ができればですが、こちらからデザインの参考画像を送ってオリジナルの商品を作っていただいたこともあります。
個人でやられているせいか仕事が早く、1週間ぐらいで商品が届き、本当にイギリスに住んでいるのか疑ってしまうこともありました(笑)。
手前味噌ですがホームページのCustomer Galleryにイギリスのこの界隈の著名人に紛れて私の写真も載せていただいています。恐れ多いことです。
またBillyさんはランブレッタLi150 series 2のオーナーです。
(m):拘りが詰まったブランド【63DGE】と【mr.b's soulfulltees】、興味がある方は是非チェックしてみて下さい。
上釜さんも同じLi150 series 2に乗ってらっしゃいますよね?カスタムを見ていてスクーターへの愛が伝わってきます。
モッズやスクーターへの今の気持ちも教えてもらえますか?
(u):今所有している2型は30代になって乗り直したときの車両です。
20代のときモッズは「上がる」文化だと勝手に思い込み「いつまでも乗ってるものではない」と何かやり切ったわけでもないのに(笑)スクーターもレコードも服も手放し、仕事だけに生きがいを求めた時期がありました。
30代半ばで過労から体調を崩し、そんな状態でしたが気づいたら旧縁のあるスクーター屋で5年ローンを組んでいました(苦笑)。とにかく今すぐ乗りたかったんだと思います 。
結局スクーターやモッズも「上がる」かどうかなど決まりはなく、自分が好きなことは仕事と両立させながらでも続けることが一番だということにようやく気づくことができました。所謂ワークライフバランスです。
40代半ばを過ぎ、今は家庭もあって全てを思うように進めることは難しいのですが「辞める」理由にはならないと解釈しています(好きでなくなったら辞めますが)。
若いときはそのときしか理解や行動できないことがあるので、新しい世代の方から私がどのように見られているのかわかりません。
ただ、私の場合はモッドスクーターが見つけた生きがいなので、これからも我が道を進むだけです。
※ModsMayday Japanのスクーターランより
(m):今後の活躍も期待しています!
忙しい中インタビューに答えて頂きありがとうございました。
■ABOUT SCOOTER
◆今所有しているスクーターの型、年式等を教えて下さい。
Lambretta Li150 series 2(1960年)
◆初めて乗ったスクーターは?
Lambretta TV200 series 3(年式不明)
◆鉄スクーターの魅力って何ですか?
車両そのものの魅力は60年代イタリア製車両の持つ造形美です。
個人的にはその車両をベースに製作されたモッドスクーターに魅力を感じます。
ごく限られた車種ですが、オーナーのセンスでカスタムされ約60年前から現代まで同じ車両が世界に一台もありません。人間が持つ多様性や発想に無限の可能性を感じます。まさに「宇宙」です(笑)。
※ModsMayday Japanのスクーターランより
◆今まで見た中で1番印象に残っているスクーターは?
一番はありませんが、総体として常にシーンの中でスピード感を持ってモッドスクーターの可能性を具現化していた90s The Numbers!のモッドスクーターたち。
スクーターのみでなく乗る人のファッションや姿勢含めトータルで彼らから受けたインパクトは今でも私のモッドスクーターへの情熱の原動力のひとつです。
※川崎クラブチッタ前にて
■ABOUT OWNER
◆プロフィール
名前 → 上釜一郎(a.k.a wickerman)
年齢 → 1973年生まれ
◆好きなファッション
Vintage
◆好きな音楽
Roots music
◆好きな映画
【スタンド・バイ・ミー】
ドラえもんじゃないほうです(笑)。夏になると中学生のときに父親と観た記憶が蘇ります。
当時英語もリズム&ブルースもわからなかった私に父親がベンEキングの歌詞の意味を教えてくれました。
思春期を迎えた私へ父親からのメッセージだったのだと思います。
学生時代は年代を問わずヨーロッパの映画を(カルトものも含め)所謂名画座に通いシネフィルを気取り(笑)色々観ました。
モッズの美学が詰まった映画も観ていますが、今の自分に聞かれて情感とともに思い浮かぶのは意外とこういうものです。
あとは【グーニーズ】(笑)、【汚れた血】。
◆interview & edited by FUKU(module)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?