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マドンナとの同居生活は大変です 最終話

机に置かれた賀喜からの手紙。



○○:…なんでだよ!



○○は急いで賀喜に電話をかける。



○○:くそっ…なんで出ないんだよ…出てくれよ…!



中々繋がらない電話。



そして6コール目。



賀喜:…もしもし。



ようやく聞こえてくる賀喜の声。



○○:賀喜!今どこにいる!



賀喜:どこでもいいでしょ。
机に置いてた手紙見てないの?



○○:見た上でお前に電話してんだよ!



賀喜:もう○○君とは会えないから。
私が2人の足枷になりたくないの。



○○:いいから早く…



しかし




"プーップーッ"




電話が切れる。



○○:くそっ…!さっき帰ってきたばっかりなら
まだ近くにいるはずだろ…!



○○は急いで家を飛び出し賀喜を探し回る。



けれどいくら走れど探せど賀喜の姿は見つからない。



○○:はぁはぁ…なんでこうなる…!



"やっほ〜!"




初めて賀喜が家に訪れた時。



"今から○○君って呼んでいい?"




初めて賀喜から名前を呼ばれた時。



"今の○○君はいつもの○○君だからね。"




賀喜のさり気ない優しさに救われた時。



ようやく見つかった答え。

ようやく分かった自分の思い。



しかしその思いも途絶える直前まで来てしまう。



その頃



賀喜:…いいの。こうでもしなきゃ2人の邪魔しちゃうだけだから。



少しずつ陽も落ち始めた夕方。



賀喜:私は2人が笑顔で居てくれるならそれが幸せなの…



そう呟く賀喜。



それでも脳内を過ぎる○○との楽しかった日々の記憶。



賀喜:…なんで私泣いてるんだろ…
きっと夕日が眩しいからだよね…



自分に言い訳をし、いつもの学校からの帰り道。



その時



男:痛ぇな。



賀喜:すみませんでした…



前から歩いてくる男と肩がぶつかってしまう。



男:謝って済むと思ってんの?



賀喜:今度からは気をつけますから…



男:ん?って君よく見たら可愛い顔してんじゃん。
ぶつかったの許すからこの後俺と来てよ?



賀喜:嫌です…!



男:は?ぶつかってきたの君じゃん?なのに何の責任も取らないの?もし怪我してたらどうする?



賀喜:怪我なんて…そんな…



男:はぁ。いいから来いよ!



男の手が近づいた瞬間。



○○:俺の"彼女"に触んじゃねぇよ。



賀喜:○○君…



男:ちっ…彼氏いんのかよ…



男は○○の登場にバツが悪そうに去っていく。



○○:ようやく見つけたぞ。



賀喜:…なんで来たの。



○○:お前に大事な話がある。
なのに電話切りやがるし全く見つかんねぇしで大変だったんだぞ。



賀喜:…別にいいじゃん。もう○○君と関わることなんて…



○○:無いと思ってんのか?



賀喜:…



○○:勝手に人の心に居座って、全部変えやがったくせに。



賀喜:○○君に私はもう必要無いでしょ。
ちゃんと好きになって…これからも…



○○:史緒里さんとは別れてきた。



賀喜:えっ…?



○○:さっき史緒里さんと直接話してちゃんと。



賀喜:どうして…?



○○:俺が本当に好きなのはお前…賀喜なんだよ。



賀喜:…



○○:最初は確かに面倒臭いし、作る飯も美味くないし、何かとマウント取ってきやがるし、勝手に同じバイト先に来るし、わがままでこんな奴のどこがいいんだよって思ってたよ。
けど…史緒里さんと付き合って、お前と距離が出来て初めて分かった。
お前と一緒に過ごした時間がどれだけ楽しくて幸せだったのか。



賀喜:やめて…やめてよ…



○○:史緒里さんと居るはずなのにお前との会話が出てきて、不快だった日常に寂しさを感じて、気づけばお前に会いたいって思ったんだよ。



賀喜:もういいからそれ以上は…



○○:最初はこの気持ちの正体は分かんなかった。
でも色んな人に教えられてやっと分かった。
俺はお前が好きなんだって…好きになっちまったんだって。



賀喜:違う…○○君は史緒里ちゃんと居た方が…



○○:俺はお前に何を言われても絶対に逃げない。
好きな人を失う辛さは俺が誰よりも知ってる。だからお前にはそんな思いしてほしくないし、させない。
あの手紙にも書いてたろ。俺が好きだって。



賀喜:…私だって○○君の事は好きだよ。大好きだよ。
それでも本当に私でいいのかなって…史緒里ちゃんみたいに可愛らしく出来ないし…ご飯だってまともに作れないし…○○君のやりたい事もしてあげられないかもしれないんだよ…?
それじゃただ○○君の負担になるだけだから…



○○:お前は分かってないよ。



賀喜:…



○○:ご飯が作れなくてもいい。
女子らしくなくてもいい。
やりたい事なんて2人で見つければいい。
全部…お前の…賀喜のそのままでいいんだよ。
俺は何も飾らないありのままの賀喜を好きになったんだ。



賀喜:○○君…でもわがまま言っちゃうし…出来ないことも沢山あるんだよ…?



○○:わがままならいくらでも言えばいい。
その都度俺が受け入れるから。
だから…俺と付き合って欲しい。



○○は一切賀喜から目を逸らさず力強く見つめる。



そこに今までの○○の姿は無く、

やっと素直になれた

賀喜もまだ知らない新しい○○。



賀喜:…本当に私でいいの…?



○○:あぁ。賀喜じゃなきゃダメなんだ。



賀喜:うぅ…



賀喜は泣きじゃくりながら○○へ飛びつく。



賀喜:本当は辛かったの…史緒里ちゃんと付き合ったって知った時は世界が止まったみたいに見えて…これからどうすればいいんだろうって…
美月さんに慰められても全然前を向けなくて…
それでも暗いとこは○○君に見せたくなかった…だから学校でも無理していつも通りを演じてたの…



○○:ごめん。もっと早く言うべきだったな。



賀喜:ほんとだよ…けど…



○○:けど?



賀喜:これからは今までの分沢山幸せにして…そばに居てくれないと許さないから。




○○:あぁ。約束する。



○○も優しく抱きしめ返す。



2人だけの世界に落ちるように夕日が沈む中で。



【マドンナとの同居生活は大変です】



fin…