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朗読劇「少年探偵団‐化人幻戯‐」9月3日公演分レポ

※前半はこれから見る人向けにネタバレなし、後半はネタバレあり

全9公演に渡って上演される朗読劇「少年探偵団-化人幻戯-」の初回公演に行ってきました
本来は別日の2公演だけ行く予定だったのですがたまたま時間があったのでこの公演も見たのですが

……

いやとんでもない朗読劇だなオイ!!!!!!!!

主宰の片方であるMAパブリッシングが携わる朗読劇では5月の「若きウェルテルの悩み」も観に行きましたが今作も負けず劣らず、というか別ベクトルからダメージ与えてくる作品でした

あとの2公演を「この演技はあの人でも見たい!」という気持ちと
この内容をあの人で見るんか……??」という気持ちが両立する、
そんな感情のぶつけ先としてこのnoteに感想を書いていきます

台本+パンフセット売り切れてて買えなかったので内容若干うろ覚えです

☆ネタバレなし☆

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

・アクセスが良い新宿駅タカシマヤタイムズスクエア南館7階にあるシアター
・とは言いつつ南館はエスカレーターが6階までしかないエレベーターも2基しかないので正直本館で5階から連絡通路で渡った方が数倍早そう
・1996年開業だけどキレイめ、全然設備は気にならない
・全部で21列なので後方でも遠さはあまり感じない(主観)
・椅子が劇場とかシアターって感じの柔らかくて座りやすいタイプ(ホールイス?)、たすかる
・傾斜は緩やかなので座高と位置と相性次第ではステージの一部が見えづらかったりするかも
・ぴあとかの発券に必要なファミマとセブンは徒歩5分圏内くらいにあるので現地発券も出来なくはない

江戸川乱歩

・正直あんまり作品に触れたこと無い、明智小五郎作品は全く見たこと無いかもしれない
人間椅子くらい
・そんな自分でも今作の理解には特に苦労しなかったので予習しなくても
「明智小五郎&少年探偵団と怪人二十面相がライバル関係」
って認識くらいがあれば大丈夫そう?
・ただ同主催の2月3月に行われた朗読劇「怪人二十面相-暗黒星-」を見ていた人には繋がりが分かる箇所があったっぽい?見る手段もう無いけどネ😉

・原作が成人向け作品なので「少年探偵団」という爽やかそうな響きに反して内容はおどろおどろしい
・というか乱歩作品は基本おどろおどろしいらしいので明智シリーズは見なくても他の短編とか読んで雰囲気掴むのもありかも
・先に上げた人間椅子とか30分くらいで読めるそしておどろおどろしいのでおすすめかも
・既にパブリックドメインなので青空文庫でも読める作品が多い

・個人的には今作自体(化人幻戯)は展開が観客に与える衝撃の重要度が高いように思えたので未読の人はそのまま原作を読んでいかない方がのめり込めるかと思われる、好み次第だけど

予習するといいかも?

・必須ではないがさらっと用語として出てくるので知っていると物語の理解の助けになるかもしれない
・「オレンジの種五つ

・「国鉄三大ミステリー事件

演出

・作風が違うためウェルテルの時よりも照明や音声の演出が派手
・棒状の照明がいくつか吊り下げられているがこれが物が落下するシーンで上から下に点灯したり
・登場人物にサーチライトが当たるシーンでは演者さんに四方から照明当てたりとイメージが湧きやすく臨場感がある
・あとあんまり今まで見たこと無いんだけど壇上に演出さんがいてリアルタイムで機材や楽器を用いて音響調整している様子が見える
・ああいうのって録音した音を順番に流しているのかと思ったらその場で調整したりするんだな~ってなった
・作中一箇所この「壇上に演出さんがいる」ことで出来る描写?があり……

演技

・公演見る人はこれ目的が多いと思うんだけど、今回は今まで自分が見た朗読劇の中でも兼役が特に多かったので多彩な演技が見られる
・書簡体小説なので基本主人公目線で物語が進行する「ウェルテル」や一人一役+αくらいが基本の他作品と比べると同役者が演じる役が二人その場に居合わせるシーンが多い
・少年→青年、大人の女性→少女・少年など全然違う役柄に一瞬で変わる演技は必見
・演出面でも照明の色が変わる立ち位置が変わる等で「あっ違う人物なんだな」って分かりやすいように工夫されている
・こちらも兼役を逆手に取った?ってシーンがある
・あと最初と最後に地の文は交代で読まれる
・4人が交代で読んでいくだが声の仕事をしている人の朗読だけあってこの時点で既にお釣り返ってくる

脚本・演出・演技の全てで圧倒されるような内容の朗読劇でした
まだ2回見に行けるのが嬉しいやら苦しいやら……

☆ネタバレあり☆




















小林芳雄/庄司武彦(演:重松千晴さん)

・原作ではかつての小林少年という設定や戦争帰りという設定は無いみたい?なので本作オリジナルの設定かも
・戦争帰りの人間の不安定さ・どこか虚ろな演技がすげえ~ってなったし、その分防空壕での演技・告解する場面での様変わりした演技も凄かった
・終盤のシーンでは明智・由美子・大河原の3人の会話に半ば置いてけぼりにされるのだが、その抜け殻のように呆然とした声色が逆に際立ってた
・終始主体性が薄く周囲の人間に振り回されることが多かったが、その根底にあるのが死に場所探し・自責の念
・それ故に由美子との関係胎内回帰願望に繋がったり、明智先生からも未だに庇護の対象とされる
・「かつて子供だった、すべての大人たちへ」という序盤の語りが今作のテーマだとすると「正しく大人になる機会を戦争によって失ってしまった子供」といったところだろうか
※9/8追記:これが初回だから気づかなかったけど、本当にダメージ負ってそうなくらい真に迫った防空壕での拷問シーンのダメージボイスや首絞め後の息切れは他の回には無さそうなので重松さんのアドリブかアレンジっぽい、マジかよ……

大河原義明(演:逢坂良太さん)

・探偵作品によく出てくる謎の富豪、そして推理マニア
・その正体がまさかの怪人二十面相、これも今作オリジナル設定っぽい
・どちらも胡散臭く仰々しい喋り方なのだが逢坂さんの演技がよく似合う
・所謂ミスリード要員なのだがそのミスリード要員にもう一つ仕掛けを残しているとは思わなかった
・江戸川乱歩(キャラ)含めて兼役だから同じ役者でも違和感を持たない、朗読劇という形式を活かした引っ掛け
・世間を賑わせた大怪盗が日本の復興の手助けを担い、得た奥さんが自身を上回る凶悪犯になるという様変わりは戦争による価値観の一変を一番体現しているキャラかもしれない

大河原由美子(演:土屋李央さん)

戦争も生まれた境遇も何も関係なく生来の異常者というある種探偵ものとしては掟破りの犯人
・なんとなく犯人であることは想像がつくまあ登場人物の半分以上が死ぬからネ!動機を正確に当てられた人はあまりいないのでは
愛も殺人もどちらも手段であり目的でもあることが推理を難しくさせる一因かと思われる
・原作でも愛情故に殺すという点は変わらず、
あの時代にこのキャラ造形を、
それも女性で描いた江戸川乱歩の目がすごい

・「旦那の強大さに脅かされる女性を演出すること」を初めとした男性の庇護欲を誘う方法で数々の男を手中に収めるその手腕が恐ろしい
・防空壕での抑揚のついた拷問の演技→明智との問答→第四の殺人の告白→最後のトランプの台詞までずっと圧倒されっぱなしだった
・"第四の殺人"もオリジナルの展開な様子、まさかの逆転勝利
・そのためか唯一第四の殺人のみ愛情に起因する殺人ではない、おそらく
・感動とか演技の凄さ由来の鳥肌ではなくおぞましさでゾワッとさせられたのは朗読劇では初めてかもしれない

姫田吾郎(演:高橋広樹さん)・村越均(演:逢坂良太さん)

・二人ともそれまでの役と打って変わってほんとに20代の青年みたいな声にノータイムで変わっててすごかった
・姫田と明智に関しては被害者と探偵という具合に真逆の役割だが同じ人間が演じていることを微塵も感じさせなかった
・村越の殺人シーンでは銃声をSEではなく演出さんがおもむろに立ち上がりスターターピストル?を鳴らすのだが、これが突然予期せぬところから異変が侵入してきた隣人夫婦とシンクロできる演出だな〜って思った
・あと周り全然平気そうなのに一人だけビックリしてた

明智小五郎(演:高橋広樹さん)

・頼もしさと安心感のある探偵としての説得力を備えた演技は流石
・ただその中にも50歳を越えて最盛期を過ぎた雰囲気
醸し出していてこのニュアンスの出し方も凄い
・高橋さん最近は何かと目のギラついた悪役か狂人が多い
ジェイク・ギレンホールの吹替で見かけることが
多かったので真っ当にかっこいい演技を改めて
見られたのは感動した
・自分が小学生の頃のガッシュに出てたフォルゴレの印象が
強いんだけどまだまだ声が若々しい、でも渋みもあってすげ〜〜〜かっこいい
・電報を受け取るシーンでの嫌な予感がこちらにまで
伝わってくる演技
も非常に嫌で良かった(破綻)
・こちらも時代の流れに翻弄されてかつてより勢いを
失った戦前→戦後の転換期の象徴……みたいな感じなのかな

少年探偵団(演:土屋李央さん)

まさか一人少年探偵団やるとは思わんでしょ
・元々土屋さんは演じるキャラは声が低めだが
地声が高くて音域の高低差が広いイメージがあったが
今回はその多彩さをより深く見られた
・少年2人に少女1人だが少年2人の演じ分けも
きっちり分けられている

・由美子と少年や少女が同じシーンに出てくることが何度かあるが
なんでこんな瞬時にスイッチできるのか不思議なくらい自然ですごい

色々な意味で普段では見られない演技を見せつけられる朗読劇でした
ストーリー自体は陰鬱で退廃的な内容なものの、
演出の秀逸さや演者さんの演技の凄さで見られる
(重たくないとは言ってない)水準に昇華されてました

ウェルテルが共感できる部分もあり考えさせられる内容だったのに対して
こちらは常人の理解の及ばない化人が題材と色々と対照的だったため
なんだか朗読劇経験値が上がったような気がしました

内容の重たさは数日間かけてゆっくり消化していきたいです……

こころなしかネタバレ回避で皆ポストの文量少なくておもろい

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