クレイジー・クレーマーとの出会い

 悪質なクレーマーたちとの遭遇が私を大きく成長させてくれたと思う。
 無理な要求や理不尽な要望に酷く悩まされたが、その辛く苦しい経験が私の糧になったような気がするのだ。
 あの体験が無ければ、私は世間知らずの屑人間のままだったろう。
 何一つ仕事が出来ない無能のくせに自信過剰で、それでいて甘ったれ……我ながら、どうしようもないド外道だった(苦笑い)。
 そんな私を鍛えたのが、あのクレーマーどもだったのだ。
 しかし当時の私にとって、クレーマーは性悪の問題児でしかなかった。
 その認識を改めたのは最近のこと。そのクレームが単なるイチャモンではなく、それなりの理由のある抗議であり、彼らの提出した課題の解決が効率アップをもたらし仕事を捗らせると気付いたからだ。
 その訴えを効率よく消化していくうちに、私の問題処理能力が向上していった。クレーマーにおかげで、私は図らずもレベルアップに成功したのだ。
 病的なほどに繰り返される粘着質のクレームは人を、企業を、そして社会をより良い方向へ進めていくと、現在の私は確信している。
 この理屈はダーウィンの唱えた進化論に合致していると私は考える。強烈なストレスこそが進化をもたらすのだ。恐怖を与える存在が無い限り、怠惰で愚かな我々は前に進もうとしないのだ。
 時代を前進させるという肯定的な役割がクレーマーにあるとしたら、私はクレーマーになりたい。ストレッサーとしての役目を存分に果たすことで、文明の発展に貢献したいのだ。
 お前のような低能が何を抜かす! 自分の尻を自分で拭けるようになってからにしろ! と言われたら返す言葉が無い……では、駄目なのだ。ここで歯を食いしばって反撃しなければ、立派なクレーマーにはなれない。戦え、戦うのだ、真のクレーマーになれ。人や企業、そして社会の前に立ち塞ざる巨大な絶壁となるのだ、それが我が宿命なのだ!
 映画『2001年宇宙の旅』に登場するモノリスをスケールアップしたような暗黒の大絶壁。あるいはベルリンの壁。それがクレーマーとしての私の理想形だ。臆することなく壁を乗り越えようとするクライマーたちに、心からの賛辞と惨事そして登攀成功後は祝福を与えたい。

#ビジネスの出会い

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?