花薬

たった一度きりの眠り薬
白い花のカプセルが胃で溶けて
少しずつ少しずつ
ゆっくり時間をかけて
効果を現す
十三時間も経てば薬は血に溶け込み、
その後痛みなく血管を破り出る
そうして骨に絡み筋肉を解し皮膚を破る
鮮やかな出血と、
それに濡れて染まった花々に体は埋もれ、
もう十五時間も経てば咲き誇った花は萎れ、
掴むこともできない塵に変わる
わずか二十八時間の命の時間
茎や根まで花弁の、
花弁しかない未知の花
決まりきった徒花は、
自分を決めきった徒花は、
ただ自分の理想の花になることだけを望む
そのために栄養を優しく吸い取り貪り尽くす
脳を侵した花は問う
人生の答え合わせを
望んだ徒花のみに許される
死逢わせの時間
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“はなぐすり”と読むか“かやく”と読むか悩みますね
かやくの方が加薬と重なっていいかな?
ちょっと紛らわしいかもしれませんが、二十八時間後には花と共に身体全体が塵になります
積もることもなく消えます
花はその身体と持ち主がこの世にいた事実や記憶全ても喰らい尽くします(つまりこの世に存在しなかったこと、生まれてもいなかったことになります)
人生の最期くらい幸せな死逢わせの時間を過ごしたいものですね

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