本を書く神様
本を書く神様がいる
私はその神様の元へ送られた
神様はいつもペンを持っている
箸を持つか寝ている時以外ほとんどペンでなにかを書いている
数日に一冊、本として紙がまとめられる
決して読んではいけないよと言われてる
読んだら倒れてしまうからと言われてる
私は神様の家の家事をしてる
神様が散歩に出掛ける時はついていく
神様なのに私を食べない
神様なのに贄を食べない
「私だけは特別なんだ」って神様は言う
本当は贄もいらないから君がここへ来る必要もなかったんだって神様は言う
でも私は楽しい
贄になるからって一つの部屋で生まれ育ってきた私にとってキッチンも庭も楽しい遊び場
贄は四年に一度くる
神様は必ず戻るかとどまるか聞く
私と二つ前の贄はとどまると答えたからここにいる
それ以外の贄は別の人間の世界へ送られた
らしい
そういえば、どうやって送っているんだろう
二つ前の贄は病気の状態でこっちに来たから、体が弱い
健康体でこっちに来ればよっぽどのことがない限り体調を崩すことがない
私は家事以外はその子の世話をしてる
生まれてからの年月でいえば八つ上だけど、見た目のせいもあって私より年下のように思える
この子は口が聞けない
元からそうだったらしい
でも八年も一緒にいれば大概のことは分かるようになってきた
下の兄弟には会うことができなかったけど、こんな感じだったのかな
珍しい
こんなとこに本を忘れるなんて
書庫に戻しておいた方がいいかな
直接渡した方が……
なに?いまの
「本を見たの?」
「み、てない」
「じゃあ他の派生の誰かが見たんだね」
「……」
『動かないで』
「はっ、ぁっ」
「息はしていいよ。
記憶を抜き取るだけだから」
「ひゅ、ふぅ」
頭に、神様のペンが入り込んでくる
記憶を書き換えられているのが感覚として分かる
「はっ、は、は」
「どうしたの?
記憶が、入り込んできたかな?」
「なに、これ」
「私たちは本を書く。
その物語が一つの世界として成立する」
「なに」
「私たちには何もできない。
だから何もできないと教えてあげよう。
本当の世界は誰も知らない。
ただ一人の神を除いて。
その神が無数の世界を産み続け、その世界に一人ずつ分身として書かれた私たちがまた、無数に派生を生み出し続ける」
「だから私たちも本当の世界は知らない。
知っているのは“私”は本物の神ではないこと、神の望む通り本として世界を産み続けなければならないこと」
「そんな、もの、書かなければ」
「書き出さなければ脳が破裂する。
だから数日のうちに脳内の情報を掻き出してしまわないといけない」
補足
全ての世界に神の世とそれ以外の生き物の世がある
一つの世界を除いて全ての世界に本を書く神(偽物)がいる
神の世には本を書く神以外にもいろんな神様がいる(全員作り物)
神は別に贄はいらないし、贈られたところで何も変わらない(好きに使う神もいる)
贄は全ての世界で風習として書かされている
本を書く神様たちは自分のいる世界のことが書かれた本を持っている。名前を自分の本に書いたものは意のままに操れる
ペンが頭に入り込むって痛々しい感じじゃなくて透過みたいな感じです。痛くはないです。血も出ません
描写がイマイチかなとも思いましたがこれ以上捻り出せそうにないのでこれであげます