「 」降る

足りないものは分かってる
でもそう簡単に埋まるものじゃない
なにもかもが壊れてる
心の扉すら、鍵穴が壊れて自分も開けられない

社会が求めているのは有能であって才能ではない
どんな才能があろうと、需要に応えられなければただの無能

棺に潜り込んでしまえば、マーガレットをサルビアを降らせてくれるのだろうか
一人で育てたって摘んだって虚しく枯れていくだけの花を
目いっぱい

死後の余興に過ぎないたった八十年の人生になぜ苦しみを見出さなければならない
死が必然で生が偶然であるからこそ奇跡を優先するのが必然なのか
それともただ積み上げ続けた軌跡を手放したくないだけなのか

同族争いは必然で
それに殺された僕は必要な犠牲で
小さな箱庭で種が繁栄するために
除草も摘葉も未来のために必要な命の選択
いつの時代も過去を活かし未来を生かすために今を殺す
不名誉なレッテルも粘着質な視線のせいで剥がせない

子どもの頃たまに見かけてた黄色いカーネーションは
花壇から這い出そうと見えるほど量を増やした
初めて自分で育ててみようとしたガマズミは枯らしてしまった
そこには代わりに植えた覚えのないアザミが咲いた
学校で育てたアネモネは僕のだけ長く咲いていた
最後に部屋に飾ったのはクレマチスとスノードロップだった
今、墓石のそばには毎年黒百合が揺れている

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