知的障害入所施設の入所方法

 福祉の入所施設といえば老人ホームがイメージしやすいように思える。
健常の人でも身内に老人がいれば老人ホームの面会に付き添い、自分が老人になった姿を想像し過ごし方を考えるかもしれない。
自分の老後は自分の祖父母という先駆者からなんとなくイメージがつくだろう。しかし、知的障害をもった人はどのように生活をしているか、一般の人はあまり考える機会もなく知ることも少ない。
私の勤めている施設ではあるが、入所の流れや出来事を書き綴ろうと思うので、興味のある方は付き合ってほしい。

 入所の流れだが
1、見学 2、体験契約 3、体験(日中) 4、体験(泊り) 5、短期入所契約 6、2~3日の短期入所を続ける 7、空きがあれば入所 
他の事業所の方の話もきくと大まかにこのような流れだ。契約は書類で行う為省いてもいいかもしれないが一応記している。
1つずつ流れや出来事を見ていきたい。

 まずは気になっている施設に見学や説明のアポイントをとることだ。
社会にでれば電話やメールなりでアポをとってから訪問することは常識だが、一定数連絡なく施設に来る方がいる。しかもそういった方は「来たんだから対応するのが当たり前だろう!」と高圧的な方が多い。
こちらも暇では無いので訪問する前には連絡を必ず下さい。

 アポがとれたら見学に向かい施設の説明を聞きます。
その施設の理念やどのような利用者が多いか、あと職員の様子等を見た方がいいと思う。私の経験上、見学の人に挨拶をしない職員が多いところや挨拶を返すほど余裕の無いところはあんまりおすすめしない。大体利用者さんにも同じように対応しているケースが多い。
見学を終えた後に体験の契約書をもらうと思うので、必要事項記載した後、郵送してください。先走っている方はもらってすぐに記載しようとしますが書類がそろった方でも30分はかかります。ゆっくりご自宅で記載をお願いします。

 契約後は日中、泊りの体験を行います。事業所によって契約後すぐに泊りOKもあれば、日中短時間から慣らしで利用して泊りに移行するパターン等様々です。私の勤めている事業所は後者で、うちの環境に慣れることが出来るかを重視して支援を行っています。日中体験はわりとスムーズにいく方が多いイメージですが、泊り体験になると家に帰れる見通しが立たず破壊や大声等の行動がでてしまう方がたまにいます。本人もよくわからず泊り体験をしているパターンが多い為、わかる人には絵や写真で次のスケジュールを提示しています。

 体験利用を5回ほど重ね、泊りの際に7時間ほど寝ていたり、食事の時間になったら自分から食堂に来る等、緊張が解けた様子見え始めたら短期契約に移行しています。保護者さんへの説明に相違があると「体験利用を5回したら短期契約が出来る約束だ!」と訴えてくる方が過去数人いらっしゃいました。
5回は施設利用に慣れる目安の回数です。利用者さんがまだ緊張した状態で泊まると心理的、身体的にも負担が強いので、癲癇などの持病持ちの方は発作が出る可能性が高く危険です。利用者さんペースで進めさせてください。

 2~3日の短期利用を重ね、施設に空きがあった場合に入所へのお声かけをしている。うちの施設ではお声かけは入所希望があった順番にしていると保護者に伝えているが、希望順と下記の2つをみて入所の優先順位をつけている。

1、保護者の気質や言動
現場職員が一番気にしているといっても過言で無いのが保護者だ。利用者に多少の他害や破壊行動があっても、そういった通常の生活が難しい人を支えることが仕事だと割り切れるが、保護者からのクレームは精神が削れる。
もちろんまっとうなクレームは改善しようと受け入れる。
車のドアを閉める力が強かったと電話で一時間話があった時は「支援対象は保護者だったか?」と疑った。
この手の話はたくさんあるが、入所が決定するまで我慢できないのか?と思う。

2,利用者本人がここの施設で安全に生活していけるか
現在この施設で暮らしている利用者との関係性や持病の度合いなんかを中心にみている。軽い癲癇発作を持っている程度であれば受け入れも行いやすいが、発作中に再度発作のおこる重責発作持ちだと多くの施設での受け入れは困難だろう。また利用者同士の相性が合わず、お互いを離して生活することが困難な場合も同様。

長々と書いたがまとめると
・利用者さんの介護度合いはあんまり気にしない。施設の環境に合うかどうか
・保護者さんは一般的な礼儀をもって施設と接して頂ければ問題ありません。へりくだる必要や過度な差し入れも不要です。お気持ちだけ受け取ります。

最後ですが、私が勤めるの施設で80人以上の入所待ちが出ている状況です。他の施設の話を聞いてもほぼ変わりはありません。
知的障害入所の決定まで、今日から行動して10年ほど時間がかかると思ってほしい。



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