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【短編集】『白狐』

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#青春小説

【連載短編】『白狐』1

 自転車で通学しているせいで、いつも風向きを気にして走る癖がついてしまった。自転車を漕ぐ…

【連載短編】『白狐』2

「先輩は、大学行くつもりなんですか?」  清水は自転車を押して歩く俺の隣を歩きながら聞い…

【連載短編】『白狐』3

 白狐の噂を持ち込んだのは、桐田だった。 「ビャッコの話。聞いたことないん?」  最初俺は…

【連載短編】『白狐』4

 放課後のホームルームで、教師がもうすぐ始まる冬休みについての話をしている。  年末年始…

【連載短編】『白狐』5

 終業式の日は、12月をさらに冷やす雨だった。  午前中で下校になった俺は、昇降口で清水…

【連載短編】『白狐』6

 親のたてる物音は、どうしてこんなにも煩わしく感じられるのだろう。  反抗期は既に終わっ…

【連載短編】『白狐』7

 街灯に白い息。  俺は自転車を漕ぎながら、彼女は本当に来るだろうかと思った。彼女の真面目さはどちらにはたらいても不思議ではなかった。「約束はちゃんと守らなきゃダメです」といって、律儀に待ち合わせに時間通り来る可能性が半分。「すみません。やっぱり夜遅くに外出は危ないので、やめませんか? 私から言っておいて、本当にすみません」こんなメールが来る可能性が半分。どちらも同じ理由でありえることだった。  学校の横を通りすぎる。分厚いダウンジャケットや首に巻いたマフラーが挙動を妨げる感

【連載短編】『白狐』8

 鳥居の前で二人して立ち止まった。  本殿に続く石の階段は長く続いていて、その上を高く伸…