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「征竜」は禁止カードであるべきか

 皆さん初めましての方は初めまして、そうでない方は前回までの記事を読んでいただきありがとうございます。その辺の決闘者の衣玖(いく)と申します。

 今回は度々Twitter(現:X)で話題となる「征竜」は禁止カードであるべきか否かという内容に個人的な見解で触れていきたいと思います。

「征竜」って何?

 それぞれ「LORD OF THE TACHYON GALAXY」にて登場した、レベル7・ドラゴン族のカード群です。
 公式としては四属性(地・水・炎・風)のサポートとして登場させたつもりであり、基本的には各属性へのサポートとして機能するカードでした。

 ところが、各征竜を1つのデッキに纏めた【征竜】がはちゃめちゃに強いことから話題となり、さらにプロモーションカードとして各種「征竜」をリクルートできる通称:「子征竜」を獲得したことから世界大会を制するまでに至りました。

 効果はごちゃごちゃ書かれていますが、中身を見ると大したことは書いていません。

このカード名の①〜④の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
①手札からこのカードと○属性(自身と同属性)モンスター1体を墓地へ捨て、〜〜(固有効果)を発動できる
②ドラゴン族か○属性モンスターを自分の手札・墓地から2体除外して発動できる。このカードを手札・墓地から特殊召喚する
③このカードが特殊召喚されている場合、相手エンドフェイズに発動する。このカードを手札に戻す
④このカードが除外された場合に発動できる。デッキからドラゴン族・○属性モンスター1体を手札に加える

 要するに、自身を特殊召喚する効果、自身をバウンスする効果、デッキのモンスターをサーチする効果、そして固有効果のいずれか1つのみを発動できるということになります。

 固有効果は以下のようになっています。

《巌征竜-レドックス》
 墓地のモンスター1体を選択して特殊召喚する。
《瀑征竜-タイダル》
 デッキのモンスター1体を選んで墓地へ送る。
《焔征竜-ブラスター》
 フィールドのカード1枚を選択して破壊する。
《嵐征竜-テンペスト》
 デッキのドラゴン族モンスター1枚を手札に加える。

 ぱっと見ではいずれの効果も強力そうに見えますが、1:2交換となるためアドバンテージの面ではマイナスになります。
 特に《瀑征竜-タイダル》は「海皇」モンスターをコストにするなどの工夫をしなければ、ハンドアドバンテージやボードアドバンテージの面で見ると0:2交換のためディスアドバンテージが激しくなります。

 ②の自身を特殊召喚する効果は、墓地が肥えていれば無償での蘇生に等しく、除外をトリガーとするカードをコストに充てればさらにアドバンテージを稼ぐこともできます。
 【征竜】では他の「征竜」をコストにすることで④のサーチ効果に繋げていました。
 また役割を終えた《幻獣機ドラゴサック》や《増殖するG》などもコストに充てていました。

 ③の自身をバウンスする効果は最も影が薄いですが次のターンに①の効果へ繋げることができます。
 しかし残念ながらステータスが高いだけのモンスターが1ターンを生き延びることは難しく、除去されることは日常茶飯事です。
 なおこの効果のみ強制効果のため、相手ターン中に④の効果を発動できていなければ必ず手札に戻ることになります。

 そして④のサーチ効果は自身の除外をトリガーとして、自身と同属性のドラゴン族をサーチする効果です。
 除外される方法は何でもいいので、他の「征竜」のコストだけでなく《封印の黄金櫃》などでデッキから直接除外しても発動できます。
 また同名カードもサーチできるため、子征竜を含めた「征竜」のみでデッキを構築しても腐らない効果です。

 総じて何をしてもアドバンテージに繋がるカード群であり、豊富なドラゴン族サポートを駆使した結果、天下を獲るに至ったカード群であることはこの頃をプレイしていなかった人でも感覚的に理解できるかと思います。

 各種パーツが規制されようとも暴れ回り、4種類の「征竜」全てが禁止カードになることでようやく息の根を止めたため史上最凶のデッキと言われることもままあります。

 今回の主題は、今この「征竜」を解禁しても特に問題無いのでは?という主張と「征竜」は解禁すべきではないという主張がぶつかり合っていることから、筆者の意見を述べることにあります。

「征竜」を解禁しても問題ない。

 筆者の意見はこちらです。
 今更「征竜」を返しても特に問題無いと考えています。

 そもそも「征竜」カードを除き、現在は以下のカードが規制されています。

 《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》はエラッタされて1ターンに1度しか効果が使えなくなっており、《封印の黄金櫃》は制限カードのため安定しない存在となっています。
 他のカードは全て禁止カードのため、大量展開や1ターンキル、制圧に必要なカードが軒並み使えなくなっています。

 さらに後々登場したカードで相性の良さそうなカードも規制されたものがあります。

 墓地肥やしを助長するカード群やレベル7を容易に出せるカード群ですね。
 だいたい「ティアラメンツ」と「クシャトリラ」ですが、同じドラゴン族の《混沌魔龍 カオス・ルーラー》が最も痛手かもしれません。

 現在でも《幻獣機ドラゴサック》や《No.42 スターシップ・ギャラクシー・トマホーク》から《幻獣機アウローラドン》に繋げて展開することはできますが、わざわざ「征竜」を使ってまでやることでしょうか?

現在のリミットレギュレーションのままの場合

 やれることの筆頭候補は《幻獣機アウローラドン》を利用した展開です。
 《幻獣機ドラゴサック》や《No.42 スターシップ・ギャラクシー・トマホーク》を用いて展開することになりますが、用意できる妨害数は2〜3つほどであり大した脅威にはなりません。

 他には《真紅眼の鋼炎竜》や《黒熔龍騎ヴォルニゲシュ》などによる圧力がかけられる程度であり、先攻ではさほど強力な動きができません。

 後攻では《No.11 ビッグ・アイ》によるコントロール奪取や《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン-オーバーロード》による1ターンキルなどが狙えますが、相手の妨害を掻い潜りながらできるほどの地力は「征竜」にはありません。

 そもそも当時のリソース回復を賄っていたのは《超再生能力》であり、ここに《灰流うらら》を当てられると次のターン用のリソースを回復できずに終わります。
 その場合は《幻獣機アウローラドン》のリクルート効果が通っていることになりますが、たかだか2妨害程度を用意したところで大きな脅威にはならないでしょう。

 属性別でも見てみましょう。

 地属性では「春化精」という強力なサポートカード群が追加されたことでようやく【地属性】と呼べるデッキが組めるようになりました。
 《巌征竜-レドックス》も「春化精」に似たコストを要し展開に寄与しますが、1:2交換で展開するという弱点は補えておらず徐々に手札がすり減ることになります。
 《ブロックドラゴン》の制限カード化もあり【アダマシア】でも上振れ展開カード以上の採用は見込めないと思われます。
 【VS】では《VS 龍帝ヴァリウス》のサーチができ、中盤以降の《VS パンテラ》をコストに蘇生効果まで発動できますが、わざわざ《巌征竜-レドックス》に頼る必要性はほとんどありません。

 水属性では当時より「海皇」モンスターを《瀑征竜-タイダル》のコストに充てることで墓地肥やししながらサーチを繰り返す動きをしてきました。
 仮に《瀑征竜-タイダル》を止められてもコストにした「海皇」の効果は通り、他属性と比べて最も属性強化として機能していたと言えます。
 現在制限復帰させると最も強いと言われているのも《瀑征竜-タイダル》ですが、コストにして強力な新しいカードは《ガーディアン・スライム》と《深海のセントリー》くらいであり環境クラスで暴れるほどの存在はいないと筆者は考えています。
 みんな大好き《ドラゴンメイド・ラドリー》のサーチも可能ですがこのカードを使うほどではないでしょう。

 炎属性では汎用除去として《焔征竜-ブラスター》を採用できますが、1:2交換という重さがのしかかります。
 近年は炎属性強化が顕著ですが、《焔征竜-ブラスター》が強いという話はとんと聞きません。
 事実上使い切りの除去カードとしての採用が基本と思われますが《墓穴の指名者》が直撃するという単なる除去カードには通常見られない弱点があり、さらに再利用すら見込めなくなる天敵です。
 サーチ先には《バーニング・ドラゴン》や《蛇眼の炎龍》が増えているものの、前者はレベルが噛み合わず、後者はレベル1「スネークアイ」モンスターの効果で容易に場に出せるためこのカードを使う意義は薄いと考えられます。

 風属性の《嵐征竜-テンペスト》は登場当初から固有効果が謎と言われてきた存在で、【ドラグニティ】以外ではもっぱら素材扱いをされてきました。
 制限復帰後の【ドラゴンリンク】でも自己再生効果のみに焦点が当てられており、このカードである必要性が薄かったと言えます。
 現在では【アームド・ドラゴン】や【ガスタ】などでの採用も見込めますが、環境上位に食い込めるほどの力は無いでしょう。
 サーチ先には《颶風龍-ビュフォート・ノウェム》などが追加されていますが、わざわざこのカードでサーチしたいほどのカードではありません。

 改めて各効果について触れてみると、
①…ディスアドバンテージの軽減やアフターフォローが必須
②…素材として見る場合は種族や属性も含めた個性を活かさなければ他のレベル7に見劣りする
③…事実上発動を期待できない
④…サーチ先に目ぼしいものがほとんど無い
 といった難点を抱えていることが見て取れます。

 無論、【ドラゴンリンク】で《嵐征竜-テンペスト》が除外コストと自己再生のみを目当てに採用されていたことから、「征竜」であること自体が利点となる場面は存在します。
 しかし【征竜】としてはやはり「征竜」モンスターを踏み台に大型モンスターを展開することが中心であり、似たような戦法を取れてより強力なデッキは他にもあるというのが課題です。

そもそも【征竜】とは

 まず現役決闘者の皆さんのうち、【征竜】に触れたことのある人はどれくらいいるでしょうか。
 時は2013年、アニメ『遊戯王ZEXALⅡ』の放映時であり、【炎星】や【セイクリッド】といったデッキが比較的回りくどい方法で地道にアドバンテージを稼いでいた時代です。

 そこで登場した【征竜】は、《七星の宝刀》や《封印の黄金櫃》で直接的にアドバンテージを稼ぎ、レベル8のSモンスターやランク7のXモンスターを立てるだけのデッキでした。
 そこに後日「子征竜」が追加されたことで「征竜」モンスターを場に出す手段が増え、「子征竜」の手札コストすらも《超再生能力》で回復させるようになりました。

 しかしながらやれることは増えたものの、その結果出力されるものが増えたわけではなく、レベル8のSモンスターやランク7のXモンスターが立つだけです。

 この当時のモンスター群を見てみましょう。

 中にはほとんど使われなかったカードも混じっていますが、【征竜】が出せたカードはこれくらいです。
 厳密には《ブラック・ローズ・ドラゴン》や《星態龍》なんてカードも散見されましたが、とりあえずここではレベル8のSモンスターとランク7のXモンスターのみを取り上げています。

 環境の中心には、攻撃が通れば次のターンをほぼスキップできる《クリムゾン・ブレーダー》と、先攻でも後攻でも機能する《幻獣機ドラゴサック》が居座っており、これらを中心としたメタゲームが繰り広げられていました。

 なんとなくわかる人はいると思いますが、この環境では戦闘破壊が日常的に行われる範囲であり、メインフェイズ1で盤面を一掃してから総攻撃して後攻1ターンキルするような環境ではありません。
 また耐性持ちのモンスターも少なく、基本的にはノーガードの殴り合いをする環境です。

 仮に《隣の芝刈り》などで大量の墓地肥やしを敢行しても、やれることはモンスターを展開して殴るだけとなります。

 また【征竜】の歴史を見てみると、9期に入り墓地肥やしを多く行う【シャドール】と相性が良かったもののシェアは大きく減り、その半年後にはほぼ姿を見かけなくなりました。
 理由としては度重なる規制により安定性が欠けたことに加え、9期のインフレに飲み込まれつつあったためです。
 その後《No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン》を獲得し環境に蘇ったものの、こちらはランク8を立てた後に後攻1ターンキルを狙うビートダウンデッキでした。

 振り返ってみると【征竜】とはどこまでいってもビートダウンの域を出ず、戦闘ではどうしようもない相手や後続の途切れない相手、強固な耐性を持つ相手には手も足も出ない存在です。
 かつて環境を席巻できたのはそういった相手がいなかったためですね。

今【征竜】として組む場合

 さて、かつてのアーキタイプに現代のカードを加えるとなると、《超再生能力》での大量ドローで手札誘発を引き、前面の《ヴァレルロード・S・ドラゴン》や《竜星の九支》で威圧しながら手札誘発で相手の動きを潰していく形になるでしょう。
 ただしそのためには「征竜」モンスターの全解禁が必須であり、2013年当時よりも遥かに数を増した手札誘発の大波を乗り越えなければなりません。

 あるいは【ドラゴンリンク】のような展開デッキに挿す形ですが、《No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン》と《エクリプス・ワイバーン》が禁止カードとなった後の【ドラゴンリンク】には《嵐征竜-テンペスト》の入る余地はありません。

 今改めて【征竜】を組むのであれば、以下のようなデッキタイプが考えられます。

【芝刈り征竜】
 大量にデッキを削るパワーカード《隣の芝刈り》を用いて無差別に墓地を肥やして数の暴力で圧倒するデッキ。
 かつての【ライロ征竜】や基礎設計が同じとなる【ティアラメンツ】などと複合できる。
 利点として「征竜」を自己再生させるためのコストを捻出しやすいが、欠点として《幻獣機オライオン》のリクルートを要する《幻獣機アウローラドン》を軸とする展開が見込めない。

【星7軸征竜】
 現在のレベル7中心のグッドスタッフに近いデッキ。
 メインデッキの「クシャトリラ」が四属性であり「征竜」のコストで除外したあちらを《クシャトリラ・バース》で帰還させられる上、レベル7である「征竜」のリリースも踏み倒せる。
 およそ何を引いても動ける反面、かつての【征竜】とは動きが大きく異なることに加えて「征竜」が事故要因になり得る危険性を孕んでいる。

【ドラゴン族星7軸征竜】
 レベル7中心のグッドスタッフだが【ドラゴン族】に寄せたデッキ。
 【真紅眼の黒竜】との複合も可能でありサポートカードの多くを共有できる。
 1ターンキル要員として《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン-オーバーロード》を利用できるが、1ターンキルの要求値がやや高い点が課題。

【青眼征竜】
 かつて存在した【青眼征竜】を現代版にリファインしたデッキ。
 豊富な手札交換系のドローソースで墓地にドラゴン族を溜め込むことができ、高打点のモンスターを途切れさせない戦術が可能。
 新たな武器として《ブルーアイズ・ジェット・ドラゴン》や《復活の福音》などを手に入れたが、「征竜」自体が《トレード・イン》のコストにならないという欠点を抱えている。

 他にも多くのデッキタイプを作れる面白いカード群であることは事実です。
 皆さんはどれか組んでみたい構築があったでしょうか?

 現代に【征竜】が復活したとして、《エクリプス・ワイバーン》という相性トップクラスのカードが禁止カードに指定されている点があまりにも痛いです。
 そのため墓地を肥やしても《レッドアイズ・ダークネスメタル・ドラゴン》に結びつかず、「征竜」そのものが主役として活躍できるデッキを組むことは難しいと考えています。

 言い換えれば現代に《巌征竜-レドックス》と《瀑征竜-タイダル》が制限カードとして復帰したとしても、さほど脅威ではないということになります。
 いっそのこと全解禁しても問題無いとまで考えています。

まとめ

 随分と回りくどい書き方をしてしまいましたが、端的に言えば「征竜」は禁止カードでなくても問題無いということが筆者の主張です。
 最初からそういう書き方をしているので伝わらない人はいないと思いますが、改めて記しておきます。

 かつて【魔導書】と環境を二分し遊戯王を暗黒期に落とし込んだ元凶として歴代最強デッキの称号が独り歩きしているように感じます。
 先攻ドローが存在した時代のデッキで、耐性がほぼないモンスターで殴るだけのデッキなのですから、現代基準ではさして脅威にはなりません。
 新たなカードを手に入れた今のカードプールでの強さは少々気になりますが、素引きした「征竜」単体では動けないことを考慮すると「クシャトリラ」の方が圧倒的に強いです。

 ただしかつて環境を席巻した存在として、禁止カードのまま眠っていてほしい思いもあります。
 強さとは関係無く感情的な面でそのような意見もあると伝えたいです。

 以上、老人の戯言でした。
 最後まで読んでいただきありがとうございます。

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