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【考察】デッキ融合は失敗だったのか

 皆さん初めましての方は初めまして、そうでない方は前回までの記事を読んでいただきありがとうございます。その辺の決闘者の衣玖(いく)と申します。

 今回は前回の記事(【考察】シンクロ召喚は失敗だったのか)を書く際にすっかり忘れてたデッキ融合に関して、その歴史を振り返りながら是非を考えていく記事になります。

 ごちゃごちゃしたことは後から書くので、早速本文へと参りましょう。

デッキ融合の歴史

1.最初からアクセル全開のデッキ融合

 実はデッキ融合の原点はかなり古く、2006年5月18日発売の「POWER OF THE DUELIST」にまで遡ります。
 そこで登場した《未来融合-フューチャー・フュージョン》がデッキ融合の始祖となります。

 アニメ『遊戯王GX』で丸藤亮が使用したカードですが、アニメにおける初出時はさらにテキストが違っており、タイムラグ無しで融合召喚できるがそのターンの攻撃も生贄もできずこのカードが破壊されると融合モンスターも破壊される、というものでした。

 それがとりあえず融合素材を墓地へ送り2ターン後に融合召喚するという効果に変更されました。
 以降のアニメでもこの効果で登場し、「遊城十代vsミスターT」戦では《龍の鏡》との併用により2体の《F・G・D》を並べる光景が見られました。

 この頃から《未来融合-フューチャー・フュージョン》の効果で2ターン後に融合召喚されることはほとんど無く、同じパックで登場した《キメラテック・オーバー・ドラゴン》を《オーバーロード・フュージョン》で融合召喚し1ターンキルを狙う【未来オーバー】のコンボパーツとして使われていました。

 つまり、デッキの任意のモンスターを能動的に墓地へ落とすことができるという点に着目して利用されていたのです。

 当然のように登場してから次の制限改訂で制限カードに指定され、最終的に禁止カードへとなりました。

 あとは直接融合召喚するわけではなく融合召喚の補助を行う《チェーン・マテリアル》が登場したくらいで8期の終了までデッキ融合は鳴りを潜めていました。

2.再び暴れ始めたデッキ融合

 9期になると突然《影依融合》が登場します。
 《未来融合-フューチャー・フュージョン》のように無条件というわけではありませんが、即座に融合召喚を行うデッキ融合カードです。

 しかし相手フィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在する場合という非常に緩い条件でデッキ融合できるため、無条件と言っても差し支えないレベルの適用条件でしょう。

 登場の「シャドール」融合モンスターは《エルシャドール・ミドラーシュ》と《エルシャドール・ネフィリム》だけでしたが、どちらも11期現在の環境でも活躍する強力なカードであり、メインデッキの「シャドール」モンスターや直近でOCG化された《超電磁タートル》との相性の良さから瞬く間に【シャドール】は環境トップとなりました。
 雑に《エルシャドール・ネフィリム》を連打していれば勝てる、などと揶揄されるほどで、なぜか融合すると手札が増えるという従来の融合の概念を超越した存在として君臨しました。

 なお規制がかかったのは《影依融合》ではなく《エルシャドール・ネフィリム》の方でした。
 まあ連打してるだけで勝てるとか言われるレベルだし処理もめんどくさいしで仕方ない面もあったとは思います。その後の「シャドール」の商品展開の上でも融合するためのカードを潰すわけにはいかなかったのでしょう。

3.増え続けるデッキ融合

 《影依融合》の登場から約1年間はまた鳴りを潜めていたデッキ融合ですが、「クラッシュ・オブ・リベリオン」の発売と同時に3種類のデッキ融合カードが登場しました。

 条件付きで事実上《インフェルノイド・ティエラ》専用の融合カードである《煉獄の虚無》、発動する場合それ以外の展開ができなくなる《真紅眼融合》、タイムラグ無くステータスを0で「ジェムナイト」を融合召喚する《ブリリアント・フュージョン》の3枚です。

 特に《ブリリアント・フュージョン》は召喚権を増やす《ジェムナイト・セラフィ》を融合召喚でき様々な展開の補助ができ、これ単体でもレベル7のシンクロ召喚ができた他、【帝王】では《帝王の開岩》のトリガーとなる初動札になるなど幅広く活躍しました。

 しかしその後に登場したデッキ融合カードは、出てくるモンスターがあまり強くない、その後の展開に誓約がかかる、デッキ融合をすること自体に厳しい条件があるといった問題を抱えたものが大半でした。
 結果として《影依融合》と《ブリリアント・フュージョン》がそれぞれちらほらと活躍する程度でした。

4.最強のサポーターと強すぎる融合モンスター

 時代は10期に移り、《フュージョン・デステニー》や《ネオス・フュージョン》(厳密には融合召喚するカードではない)などのデッキ融合カードがぽつぽつと登場していましたが、2019年11月23日に融合召喚を救うリンクモンスターとして《捕食植物ヴェルテ・アナコンダ》が登場しました。

 フィールドのモンスターをターン終了時まで闇属性へ変更する《スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン》の補助を想定された効果と、ライフポイント2000を支払うことでデッキの「融合」「フュージョン」魔法カードを墓地へ送りその効果のみを適用させる効果を持ちます。

 前者の効果はほとんど使われることはなく、後者の効果によって大暴れしました。

 問題だったのはこのカードによって効果のみを適用した場合、誓約効果を全て無視できた点です。
 それだけなら《D-HERO ダイヤモンドガイ》もやっていることなのですが、このカードはその場で適用するため適当な効果モンスター2体が並ぶだけでその効果を使えた点が非常に強力でした。

 その結果として現れたのは、強固な耐性と強力なモンスター除去&バーン、そして万能カウンターに自己強化を備えた強力無比のモンスターです。

 あの《真竜剣皇マスターP》が可愛く見えるレベルのカードであり、先にこのカードを出した方がだいたい勝てるこの世の終わりみたいな環境でした。

 適当なデッキに《真紅眼融合》《ブラック・マジシャン》《真紅眼の黒竜》を採用するだけで簡単に場に出てきましたが、どうせならこのカードを主軸に据えようと【ドラグーンビート】なるデッキまで登場しました。

 《真紅眼融合》の重い誓約をガン無視して先に展開した後にこのカードを出すという動きをし続けた結果、一時的に《真紅眼融合》が(冤罪で)制限カードになりましたが環境は何も変わらず《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》が禁止カードになることで終息しました。

 その後現れたのはフリーチェーンでお互いのフィールドのカードを破壊し、破壊されると次のターンに復活するゴキブリもびっくりの生命力を誇る自称不死鳥モンスターでした。

 このカードを出す《フュージョン・デステニー》は《真紅眼融合》とは異なりそのまま発動した場合でも展開の誓約は発動後のみであり、素引きしてもあまり問題無く使える点が強みでした。
 さらに融合素材もあちらと異なり優秀な効果を持ったモンスターが揃っており、瞬く間に環境へ蔓延することになりました。

 お互いにこのモンスターを並べるととりあえずお互いに爆散させてから動き始めるという不毛な戦いが繰り広げられる地獄みたいな環境でした。

 その結果《フュージョン・デステニー》が(冤罪で)禁止カードとなりました。

 さらに新たなデッキ融合カードである《烙印融合》が登場しました。

 このカードからさらなる融合召喚へ繋げるデザインのため、発動後の展開の全てが封じられる《捕食植物ヴェルテ・アナコンダ》との相性は良くなかったのですが、それでも併用できなくはない範囲でした。

 最終的に《フュージョン・デステニー》の釈放と引き換えに《捕食植物ヴェルテ・アナコンダ》が禁止カードとなり、とりあえず事態は終息しました。

デッキ融合の反省と課題

1.任意のモンスターを墓地へ落とせる

 単に融合するだけであれば恐らく批判を受けることは多くなかったでしょう。
 問題は任意のモンスターを墓地へ落とせる点にあります。

 デッキのカード5枚を選び4枚を墓地へ送り1枚を手札に加える《苦渋の選択》が禁止カードであるのは当然ですが、モンスター1枚だけを墓地へ送る《おろかな埋葬》でさえも制限カードとなっているのが現代遊戯王です。

 それに引き換え《未来融合-フューチャー・フュージョン》や《影依融合》は1枚で2枚以上のモンスターを墓地へ送ることができ、それらのカードによってさらなるアドバンテージを稼ぐことができます。

 《オスティナート》のように墓地へ送ってもさほど強力ではない融合素材により制圧力に乏しい融合モンスターを融合召喚するデッキ融合であれば、恐らく何の批判も無いでしょう。

 かつての《真紅眼融合》や《フュージョン・デステニー》も莫大なアドバンテージを得られるカードではなく制圧力もほとんど無かったため、後発のカードによって批判が集中したのです。

2.融合の救世主か破壊者か

 本来の融合は手札もしくはフィールドに融合素材を2体以上揃え、《融合》によって融合召喚されるものでした。

 デッキ融合はその根本を無視して手札1枚から融合召喚を行えるようにする、画期的な存在であることに違いはないのです。

 しかしながら手札1枚から大型モンスターを繰り出しそれだけでゲームを終えるようなカードデザインでは、このゲームが衰退してしまいます。
 現に《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》が蔓延っていた環境では、似たような制圧効果を持つ《FNo.0 未来龍皇ホープ》へのヘイトが一切向かずに《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》および《捕食植物ヴェルテ・アナコンダ》へ非難が集中していました。

 《捕食植物ヴェルテ・アナコンダ》の禁止へ踏み切ったのも、今後のカードデザインの障害となるためと思われます。

 その点《月光融合》や《絵札融合》は条件をつけた上で1体までデッキのモンスターを利用できるようなデザインで作られており、融合召喚のディスアドバンテージを軽減しつつ、切り札となるモンスターを呼び出せるようなカードになっています。

 このようなデザインがデッキ融合のスタンダードとなれば、環境で大暴れすることも少なくなるのではないでしょうか。

総括

 とりあえず結論から述べると、デッキ融合は間違いなく失敗だった、と筆者は考えます。

 《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》や《D-HERO デストロイフェニックスガイ》を生み出してしまった以上、既にデッキ融合が存在するテーマは今以上の強力なカードを生み出しにくく、また墓地へ送られることをメリットとするカードも生まれにくい状態になっています。

 「融合」「フュージョン」の名を冠するカードであれば《捕食植物ダーリング・コブラ》などによりサーチすることもでき、新たに生まれる強力な制圧モンスターと併用することで環境を席巻することも容易くできてしまうでしょう。

 もし今後もデッキ融合を生み出していくのであれば《オスティナート》のような「融合」「フュージョン」の名を冠さないカードや《月光融合》のような1体のみをデッキから落として融合するようなカードをデフォルトにしていくべきと考えています。

 これから生み出す融合モンスターの選択肢を狭めないためにも極力デッキ融合は実装せずにカードデザインを行っていくことが、融合召喚にヘイトを向けさせずに長くコンテンツを存続させるコツではないかと思います。

 そしてそれらが悪用されないようなデザインを心がけることでデザイナーズデッキの強化に繋げられるようにしていければ理想的ではないでしょうか。

 拙い文章でしたが、以上で簡単な考察もとい感想文を締め括りたいと思います。
 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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