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【考察】リンク召喚は失敗だったのか

 皆さん初めましての方は初めまして、そうでない方は前回までの記事を読んでいただきありがとうございます。その辺の決闘者の衣玖(いく)と申します。

 今回はリンク召喚について、歴史を振り返ると共にそのシステムの是非について考察していく記事となります。

 ごちゃごちゃした前置きはせずに、早速本題へ参りましょう。

リンク召喚の歴史

1.出でよ、デコード・トーカー!

 リンク召喚自体は「STARTER DECK(2017)」が発売された2017年3月25日から施行された新マスタールールと共に導入され、《デコード・トーカー》《リンク・スパイダー》《ハニーボット》の3体が史上初のリンクモンスターとしてこの世に生まれました。

 新マスタールール自体はそれよりも前、2017年の2月頃から情報が公開されており、既存の召喚方法による展開が制限されるという点が注目されることとなりました。
 特に登場したばかりの《コズミック・ブレイザー・ドラゴン》はシンクロ召喚が困難になるということで強力な効果に反して評価を落とすこととなります。
 そしてそれを筆頭にエクストラデッキのカードはシングル価格が下落、数多のカードショップはカードの買取を中止し、場合によっては閉店する店舗もよく見られました。
 天下のYahoo!ニュース様でも取り上げられるほどその影響力は凄まじく、リンクショックなどと呼ばれ過去最大級の事件となりました。

 恐らくこれと肩を並べるほどの遊戯王関連報道は1999年の東京ドームで販売された「PREMIUM PACK 1」の販売中止と、『遊☆戯☆王』の原作者である高橋和希氏の訃報でしょう。

 さて、このように鮮烈なデビューを果たしたリンクモンスターは全くと言っていいほど環境に姿を見せませんでした
 これには大きく2つの理由があり、1つはリンクモンスターの総数が少ないこと、もう1つはエクストラデッキを使わない/使っても1体しか出さないデッキが環境を席巻していたためです。

 前者に関して、筆者はペンデュラム召喚の時と同じことを考えていました。
 つまり総数さえ増えればいずれは環境を席巻するということです。
 またその総数が増えることも新マスタールールを施行している以上は約束されているようなものなので、待っていれば暴れ始めるのは目に見えていました。

 後者に関しては当時の環境を振り返る必要があります。

 「STARTER DECK(2017)」で登場した3体のリンクモンスターだけでは満足にリンク召喚することもできず、リンク先を伸ばすには《デコード・トーカー》をエクストラモンスターゾーンに出すことが必須でした。
 さらに9期の最終盤で登場した《真竜剣皇マスターP》を擁する【真竜】や「ストラクチャーデッキR-恐獣の鼓動-」で登場した新規カードを軸とした【恐竜族】はエクストラデッキにあまり依存しておらず、エクストラモンスターゾーンがあってもなくてもあまり関係ないデッキでした。

 直前の環境を支配していた【十二獣】は4月1日より《十二獣ドランシア》と《十二獣の会局》が禁止カードに、《十二獣モルモラット》が制限カードになったことで純構築を見ることは無くなりましたが《ドラゴニックD》と《十二獣ラム》のシナジーが強力であるため【十二獣真竜】が依然環境に残ることになりました。

 いずれもリンクモンスターに頼ることなくメインデッキの大型モンスターで戦えるデッキであるためルール改訂をものともせず、環境外のデッキも駆逐されたため9期末のような地獄絵図が繰り広げられました。

 その後2017年4月15日に「CODE OF THE DUELIST」が発売し、史上初となるリンク召喚主体のテーマである「星杯」が登場しました。
 しかし連続リンク召喚および状況に合わせた柔軟な展開をするためには未だカードプールが狭く、結果はあまり出せずにいました。

2.Into the VRAINS!

 これまでのアニメ遊戯王シリーズは4月に放送が開始され、それと連動した通常弾が発売されていました。

 しかしアニメ『遊戯王VRAINS』は放送開始が5月と遅れ、通常弾が先行して発売されている状態でした。
 加えて1戦で1度しか使用できないスキル「Storm Access」によって主人公であるPlaymakerが所有するリンクモンスターの数が増えることから、Playmakerのエースモンスターであり「CODE OF THE DUELIST」の表紙にも描かれている《ファイアウォール・ドラゴン》は、なんと次弾の表紙である《ヴァレルロード・ドラゴン》と同じデュエルでお互いに初登場するという珍事になりました。

 他にもGo鬼塚やブルーエンジェルなどのキャラクターがリンクモンスターを駆使したデュエルを繰り広げていましたが、OCGの環境では未だに【真竜】が中心となるリンクモンスターにあまり頼らないデッキが跋扈していました。

3.リンク召喚の台頭

 新マスタールールの施行から約半年、ついに環境にリンクモンスターが顔を出します。顔どころかどこを見てもリンクモンスターというレベルでリンクモンスターまみれになります。

 2017年9月9日、「EXTRA PACK 2017」が発売されると【SPYRAL】がちらほらと活躍をし始めます。

 元々【SPYRAL】は海外で登場したテーマであり《SPYRAL-ダンディ》を中心とした、それなりの展開力以外にこれといった特徴の無いテーマでしたが、このパックにおいて和製オリジナル「SPYRAL」である《SPYRAL-ザ・ダブルヘリックス》が同時収録されていたことで潜めていた牙を剥き出しにします。

 【SPYRAL】はそれなりの展開こそできたもののチューナーを擁しておらず、レベルもバラバラであるためエクシーズ召喚も難しいという欠点を抱えていました。

 しかしモンスターの頭数を揃えるだけでいいというリンク召喚の特性がここで活きるのです。

 半端に強かった展開力を全てリンクモンスターへと変換し、先攻での4妨害、場合によってはエクストラリンクを完成させるという凶悪なデッキへと変貌しました。

 2017年10月施行のリミットレギュレーションで【真竜】などの対抗馬が規制を受けたことがさらなる追い風となり、【SPYRAL】は一躍トップメタへと上り詰めました。

 しかしこれはリンクモンスターの栄華のほんの序章にしかすぎませんでした。

4.歴戦のデッキは新たな境地へ‼︎

 2017年11月25日に発売した「LINK VRAINS PACK」では、その後規制されたり長きに渡って活躍したりする汎用性の高いリンクモンスターが多数登場しました。

 後に【ドラゴン族】で活躍する《天球の聖刻印》、レベル3モンスターのサポートとなる《彼岸の黒天使 ケルビーニ》、戦士族のサポートとなる《聖騎士の追想 イゾルデ》、現在のペンデュラムを支える《ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム》、そして禁止カードに指定された《水晶機巧-ハリファイバー》は全てこのパックの出身です。
 さらに【植物族】で活躍する《アロマセラフィ-ジャスミン》も収録されており、あらゆるデッキがリンク召喚を組み込み大量展開をできるようになりました。

 その結果【植物リンク】なる先攻1ターンキルデッキが誕生しました。

 当時はまだ「トロイメア」モンスターが存在しないため《幽鬼うさぎ》に怯えながらコンボを完走する必要がありましたが、言い換えると手札誘発が無ければ対処できないデッキでした。

 《ヘビーメタルフォーゼ・エレクトラム》と《水晶機巧-ハリファイバー》の存在により【ペンデュラム召喚】や【シンクロ召喚】も息を吹き返し始め、トップメタ以外はそれなりに群雄割拠の時代が到来しました。

5.リンクモンスターの溢れる環境へ

 2018年1月1日施行のリミットレギュレーションで【SPYRAL】が規制を受けたことと、1月中旬に《サモン・ソーサレス》および「FLAMES OF DESTRUCTION」に収録された各種「トロイメア」リンクモンスターが登場したことで、【植物リンク】は手札誘発への耐性が高まり1ターンキルがさらに狙いやすくなりました。

 さらにフィールドの余ったモンスターを利用しさらなる展開へ繋げられる【剛鬼】や【ABC】も環境に顔を出し、《オルターガイスト・マルチフェイカー》を獲得した【オルターガイスト】や【SPYRAL】の同期でありながら活躍の機会に恵まれなかった【サブテラー】なども活躍し始めるなどリンクモンスターが中心となりながらも様々なデッキが覇を競う環境になりました。

 さらに2月末に【閃刀姫】が登場したことで環境は低速〜中速のゆっくりしたデッキに染まりました。

 ここから先は先攻で多くの妨害を並べて相手を封殺するデッキよりも、数ターンかけて準備を整えてリソース差をつけて粘り勝つデッキの方が主流となっていきます。
 【サラマングレイト】や【オルフェゴール】はリンク召喚以外の召喚方法を取り入れながらも展開に無理がなく、多様性を見せるリンクモンスターを中心とした環境のメインキャストとして活躍しました。
 少なくともしばらくはこのままこのような環境が続くのではないかと予想されましたが、現実はそのよようにはなりませんでした

6.歴史は繰り返す

 《嵐征竜-テンペスト》が制限カードに緩和されたことで、【ダークマター征竜】で使われていたギミックを応用し、《破滅竜ガンドラX》による先攻ワンキルがちらほら行われるようになりました。

 その背景には「守護竜」の名を冠する3体のリンクモンスターの存在がありました。
 単体では機能しないモンスター群ですが、他のリンクモンスターと組み合わせてリンクマーカーが2つ以上指し示す場所へあらゆる場所からドラゴン族モンスターを特殊召喚することができるという効果を持ちます。

 元は《トポロジック・ガンブラー・ドラゴン》を絡めた先攻6ハンデス2妨害とかいう実質先攻ワンキルみたいなものをしていましたが、これが禁止カードになった後は《破滅竜ガンドラX》を利用した先攻ワンキルを行い、現在2種類の「守護竜」が禁止となっていながらも「ヴァレット」モンスターを中心とした先攻制圧デッキとして今でもその姿をなんとかとどめています。

7.訪れるは群雄割拠の時代

 【ドラゴンリンク】が大幅な規制により姿を消したことで、その活躍に埋もれていた【オルターガイスト】や【魔術師】、「ストラクチャーデッキR-ロード・オブ・マジシャン-」の新規カードを利用した【エンディミオン】などのデッキが顔を出し始めました。
 【ドラゴンリンク】がおかしかっただけで、他のデッキのパワーが下がったわけではありません。

 既に環境はリンク一色ではなくなっていました。
 リンクモンスターが中心にいたことに違いはありませんが、それ以外の召喚方法も活躍するような群雄割拠の時代だったことに違いはないでしょう。

 しかしそれも長くは続きません。

8.歴戦のデッキは未知なる境地へ‼︎

 2019年11月23日に発売した「LINK VRAINS PACK3」によって、新たなリンクモンスター達が世に解き放たれました。

 強力な鳥獣族をリクルートできる《王神鳥シムルグ》、あらゆるデッキでリンク4への繋ぎとなる《神聖魔皇后セレーネ》、先攻展開で猛威を振るう《幻獣機アウローラドン》、先攻制圧の締めに使われる《アーティファクト・デスサイズ》、そして終身名誉禁止カードの《捕食植物ヴェルテ・アナコンダ》や《ユニオン・キャリアー》といった強力なリンクモンスターを輩出した最後の「LINK VRAINS PACK」です。

 中でも《捕食植物ヴェルテ・アナコンダ》は年末に登場した《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》を支えるキーカードとして高騰し、その重いライフコストとその後の展開の制限を加味してもなお採用されました。

 中でも【オルフェゴール】は《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》を難無く何度も突破でき、新規カードである《宵星の騎士ギルス》の登場もあり再び環境へと返り咲きました。

 そして融合モンスターである《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》にあらゆるデッキが呑まれる形でリンクモンスターの登場した10期は終焉を迎えます。

9.そして時代は11期へ

 遊戯王OCGの11期へと移行したことで、ルールも新マスタールールからマスタールール(11期)へと移行することになりました。
 これによりエクストラデッキからの融合・シンクロ・エクシーズモンスターの展開にリンクモンスターは不要となり、ペンデュラム・リンクモンスターの展開にのみリンクモンスターは要求されることになりました。

 リンクモンスターを利用したデッキとしては【鉄獣戦線】が環境で成績を残した他、《幻影騎士団ティアースケイル》を得た【幻影騎士団】や《プランキッズ・ミュー》を得た【プランキッズ】などがちらほらと活躍を見せました。

 そして《超魔導竜騎士-ドラグーン・オブ・レッドアイズ》が禁止カードになったことで、これを中心としたビートダウンデッキや出張させていたデッキは構築の見直しが必要となりました。

 その後はリンク召喚に依存するデッキはほとんど現れず、【@イグニスター】や【マリンセス】がリンク召喚を主体とする他、【アダマシア】などの展開力に長けたデッキが《召命の神弓-アポロウーサ》を出すくらいにとどまっています。
 また《水晶機巧-ハリファイバー》から《幻獣機アウローラドン》に繋げてシンクロ召喚を繰り返す、いわゆる「ハリラドン展開」が【天威勇者】を中心とした先攻制圧デッキで行われていました。

 実際のところ、《相剣トークン》が存在する限りシンクロモンスターしかエクストラデッキから特殊召喚できない【相剣】や、《烙印融合》の発動後は融合モンスターしかエクストラデッキから特殊召喚できない【烙印デスピア】といった、リンクモンスターを使えない/使わせないようなカードデザインが流行していることが、リンクモンスターが環境で見かけにくくなっている原因を担っています。
 これによりリンクモンスターを一切採用しないデッキが増え、ある意味では環境が多様化したと言えるでしょう。

リンク召喚の反省と課題

1.あらゆる召喚方法の踏み台

 まずリンク召喚(というか新マスタールール)における最大の過ちは、エクストラデッキからの展開において事実上リンクモンスターを搭載することが必須となっていた点です。

 加速しすぎた遊戯王のデュエルスピードを是正しようと試みた結果、リンクモンスターを使わなければ展開に支障が出るようにしたのでしょうが、これが新マスタールールにおける最大の過ちだと筆者は考えています。

 さらにリンクモンスターはエクシーズモンスターの時のようにカードパワーを抑えたいという懸念があったのか、縛りのある召喚条件を持つモンスターが多かったことが問題点でした。

 これが何を意味するかというと、《シューティング・クェーサー・ドラゴン》や《No.93 希望皇ホープ・カイザー》といったモンスターを使いたいにも関わらず、展開方法は従来のものではいけない。
 かといってリンクモンスターを展開してから出そうにも使いやすいリンクモンスターが存在しない。
 これがあらゆるデッキで発生した問題です。

 人によってはアニメキャラクターの再現デッキや、テーマのみで統一されたデッキを組むことを楽しみとしていたでしょう。
 しかしこれまでのアニメキャラクターはリンクモンスターなど使用していませんし、「LINK VRAINS PACK」の発売以前に登場したリンクモンスターで既存のテーマに属するモンスターは《ベクター・スケア・デーモン》のみ(ただし「デーモン」との直接的な関わりは皆無)という状態でした。

 これによって主にカジュアル層は勝手にマスタールール3のまま身内でデュエルをしたり、それでもと信念を貫いたり、あるいは引退したりといった道を辿ることになります。

 これはカードショップにも言えることで、これまで一定の価値を保っていた大型シンクロモンスターやエクシーズモンスターはその価値が下がりました。
 またユーザーが引退することによって経営難に陥り、閉店を余儀なくされた店舗も少なからずあります。筆者の身の回りだけでも5箇所は無くなりました。

 この問題は11期におけるマスタールール(11期)の導入でほぼ解消され、アニメキャラクターの再現デッキやテーマ統一デッキなども概ね再び組めるようになりました。
 ユーザーからしてみればおよそ3年の時を経て元のルールに戻ったように感じることでしょうが、ペンデュラムモンスターの展開に関してはなぜか許されませんでした。いや許しちゃいけないんですけどね。それはまた後述します。

2.頭数を揃えるだけの召喚方法

 冒頭で筆者が書いた、ペンデュラム召喚の時と同じことを考えていた、という点は現実のものになりました。
 総数さえ増えればいずれは環境を席巻するという話ですね。

 ペンデュラムモンスターは総数が少ない「ネクスト・チャレンジャーズ」発売時点でも、【クリフォート】はデッキとしての完成度が非常に高く、スケールを揃えなければならないという問題点も《クリフォート・ツール》を擁していたことでクリアしていました。
 また当時は《幽鬼うさぎ》や《灰流うらら》といった手札誘発が存在しなかったことも環境で流行した大きな理由と言えるでしょう。

 一方でリンクモンスターはそういった手札誘発の群れや、《真竜剣皇マスターP》や《真竜皇V.F.D.》といったパワーカードを避けながら展開を通すのは難しい環境でした。
 《真竜剣皇マスターP》と《ドラゴニックD》が禁止カードとなった2017年10月以降に「LINK VRAINS PACK」が発売され、このパックの登場によって現存するリンクモンスターのうち約2割が出揃います。
 またそれらのリンクモンスターは既存のリンクモンスターと比較するとやや緩やかな素材指定であるものが多かったことで、無事(?)にリンクモンスターが環境を席巻することになりました。

 この頃のリンクモンスターにはそれなりの特徴がありました。
 それは、他のモンスターを特殊召喚する効果を搭載したカードが多いことです。
 効果を持たないモンスターもいるので全てがそうというわけではありませんが、1体を出すと後続へ繋がり、そこからさらに展開を広げ、といった動きが顕著でした。

 禁止カードを経験しているリンクモンスターも(エラッタされ無制限カードとなっている《ファイアウォール・ドラゴン》を含めて)《トロイメア・ゴブリン》《ユニオン・キャリアー》《トポロジック・ガンブラー・ドラゴン》以外は全て他のモンスターを特殊召喚する効果を持ちます。
 《トロイメア・ゴブリン》は特殊召喚ではありませんが召喚権を増やす効果を持っており、《ユニオン・キャリアー》は装備したモンスターによる制圧の他、装備したモンスターを破壊することで展開へ繋げるデッキも存在したことから実質的な展開補助を担っていたと言えるでしょう。

 時代が進み素材が緩く出しやすいリンクモンスターが増えたり、素材に縛りがあってもその素材が出しやすくなったりしたことで、展開を得意とするデッキのみならず、とりあえずエクストラデッキに採用するだけで使える場面が発生し得る存在になりました。
 現在でも枠が空いていれば「トロイメア」リンクモンスターは適当に採用していいカードの筆頭候補でしょう。

 かつては《死者蘇生》などで相手のチューナーモンスターを奪えばシンクロ召喚できるということでシンクロモンスターを適当に採用することが主流でしたが、チューナーモンスターという特殊なモンスターを採用せずとも使えるリンクモンスターの登場は革新的でした。
 それと同時に素材によってはレベルすら無視できエクシーズモンスターも利用できることからシンクロモンスターの立場を奪った存在とも言えるでしょう。

 最新の召喚方法であるために《次元障壁》の効果範囲からも外れており、最も扱いやすく最も簡単な召喚方法と言えます。
 ある意味では多様性を破壊する史上最悪の召喚方法とも言えるでしょう。
 これを脱するために「相剣」や「烙印」が生まれたと考えると、公式にとってもこの部分は最大の懸念点だったのでしょう。

3.ペンデュラムの弱体化

 ルールがマスタールール(11期)へ移行しても、エクストラデッキからペンデュラムモンスターを特殊召喚する場合はエクストラモンスターゾーンかリンク先への特殊召喚に限定されたままとなりました。

 これはリンク召喚がもたらした成功の部分と言えるでしょう。

 既存のペンデュラム召喚はスケールが揃っていれば手札およびエクストラデッキから任意の数だけ特殊召喚できるルールでした。
 これを現在のルールに反映させた場合、スケールが揃っているだけで《ヴァレルエンド・ドラゴン》や《ジ・アライバル・サイバース@イグニスター》などの大型リンクモンスターがペンデュラム召喚1回だけで出せるようになってしまいます。
 これが毎ターンできると考えたら流石にぶっ壊れとかそういう次元じゃなくなってきます。

 ペンデュラム召喚というシステムそのものが実質的に召喚権を1回増やす欠陥システムだったこともそうですが、その特殊召喚できるモンスターの数に制限をかける手段が存在しなかったのも欠陥のひとつでしょう。
 何もしなければエクストラデッキからは1体のみ、複数の展開がしたければ先にリンクマーカーを用意してください、という新マスタールールにおけるエクストラデッキからの特殊召喚におけるルールは間違っておらず、マスタールール(11期)に移行した際にペンデュラム召喚のみこれが無くならなかったのは英断でした。

 なお筆者はかつて記事にした【オッドアイズ】を使っている他、【セフィラ】をメインのデッキとしているためペンデュラム召喚自体は好きです。
 ただそのルール自体に9期の頃から疑問を持っており、それが是正され、かつ他の召喚方法への制限が解除されたマスタールール(11期)はとても楽しくデュエルできる環境だと感じています。

4.総評

 さて、今回の記事のタイトルである「リンク召喚は失敗だったのか」についてですが、一旦ここで筆者の答えとして、リンク召喚の登場に伴って施行された新マスタールールが失敗だった、という答えを出したいと思います。

 まず遊戯王の歴史においてはモンスター同士を合体させる融合、モンスターを生け贄に捧げて進化させる儀式が既に存在していました。
 儀式についてはレベルを参照することからシンクロの先祖という見方もできますが、既存の儀式の大半はレベルを超過しても良い反面、儀式魔法と儀式モンスターを手札に揃えなければならないという無視できない問題を抱えていました。
 これを解消しつつチューナーという存在を利用することでエクストラデッキからの展開を行うレベル同士の足し算によるシンクロが生まれます。
 そして同じレベルのモンスター同士を重ねるエクシーズが誕生し、レベルが合わずとも同時に特殊召喚できるペンデュラムも登場しました。

 さて、これらを踏まえた上でこのカードゲームにおける新たな召喚方法はどのようなものになるでしょうか。

 シンプルに考えればアニメ『遊戯王5D's』で行われたダークシンクロのようなレベルの引き算、あるいはレベルのかけ算か、そもそもレベルを無視した頭数を揃えるだけの召喚方法になるでしょう。
 むしろペンデュラムの方が先に登場したことが不思議でならないくらいです。

 ダークシンクロについては当時の対象年齢12歳以上、つまり小学6年生の子どもでは正負の概念を学校で教わっておらず、ルールにも取り入れにくかったことが原因で製品化は頓挫しています。
 ダークシンクロで登場したモンスター達は全て普通のシンクロモンスターとして発売されたことからそれは伺えます。

 後に対象年齢は9歳以上と改められましたが、小学3年生の算数では分数の計算が関の山です。
 レベル同士の掛け算も最大値が12にならなければならない都合上、割り算の要素も備えており扱いには困るものだったでしょう。

 となれば頭数を揃えるのが一番手っ取り早いですね。
 当初はリンクモンスターをリンク素材にするルールについて頭を悩ませるユーザーもいましたが、現在ではそれなりに浸透していると思われます。
 やってることは1体で数体分の素材になるってだけですからね。

 しかし遊戯王の積み重ねてきた歴史の上にリンク召喚を用意し、リンク召喚をしなければ不自由を与えるというルールは流石にやりすぎだったと考えます。

 「CYBERNETIC HORIZON」から20thシークレットレアが登場し、遊戯王OCGの発売から20周年を記念した商品展開を行っていたこともあり、最古参ユーザーを呼び込みにくい環境だったことは非常に残念でした。

 そして時を経てマスタールール(11期)が施行され、ペンデュラム召喚以外は元のルールに戻りました。
 つまり今の状況ですね。

 ここで現在のルールにおけるリンク召喚は失敗だったという結論を出したいと思います。
 というのも、だいたい「トロイメア」リンクモンスターと《アクセスコード・トーカー》のせいです。

 デッキに多様性を持たせるという点においてはマスタールール(11期)の施行は正しいものであり、ペンデュラム召喚の抑制にもなっています。

 ところがリンク召喚を主体とする、あるいはエクストラデッキをほとんど利用しないデッキにおいてはエクストラデッキに「トロイメア」リンクモンスターと《アクセスコード・トーカー》を適当に入れるのがデフォルトと化しています。
 特に《アクセスコード・トーカー》が曲者で、適当なリンク3モンスターを経由してリンク召喚することでフィールドを荒らしながら攻撃力5300でフィニッシャーになれるというトンデモ性能をしています。

 別にこれ自体は禁止カードにするほどのカードではありませんし、リンク召喚を主体とするデッキの切り札に相応しい能力を持っています。
 しかしながらそれがあらゆるデッキから飛んでくるというのが問題であり、リンク召喚の行き着く先として定着していることが悪いのです。

 仮に《アクセスコード・トーカー》のリンク素材が「サイバース族モンスター2体以上」であれば何も問題は無かったでしょう。
 アニメ『遊戯王VRAINS』で相対したAiの切り札である《ジ・アライバル・サイバース@イグニスター》のリンク素材が「異なる属性のモンスター3体以上」であることから、似たような再現性を持たせてほしかったところです。

 シンクロ召喚の行き着く先としてはデルタアクセルシンクロやトリプルチューニングなどがありますが、【相剣】においては《相剣大公-承影》や《フルール・ド・バロネス》といった単純な大型シンクロモンスターが出るなど一口にシンクロ主体といってもその終着点は多種多様です。

 エクシーズ召喚に至ってはランクによって最終的に出るモンスターが異なり、あらゆるデッキから現れる《天霆號アーゼウス》くらいしか共通して見かけるカードはありません。

 しかしリンク召喚はエクストラデッキに《トロイメア・ユニコーン》と《アクセスコード・トーカー》を採用するところから始まります。
 これはエクストラデッキの多様性を損なうものです。

 その素材の緩さに加えて圧倒的なフィニッシャー性能を誇ることから、現在のリンク召喚は失敗である、と結論付けたいと思います。

 今後登場するリンクモンスターには、強力であるほど縛りを要求した上で、組むデッキに多様性を持たせられるような新規カードを望んでいます。
 その点では最新弾の「CYBERSTORM ACCESS」で登場した《ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ》は素材こそ汎用的ですが【サイバース族】における切り札として輝くカードであり、そのデザインも相まって理想的なリンクモンスターと言えるでしょう。

 拙い文章でしたが、以上で簡単な考察もとい感想文を締め括りたいと思います。
 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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