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労働組合法(労組法)上の労働者

セブンイレブンジャパン事件(東京地判令和4年6月6日令和元年(行ウ)第460号)

(事案の内容)
セブンイレブンのフランチャイズ・チェーンであるセブンイレブンジャパンとの間で加盟店契約を締結して店舗を経営する加盟者らは、労組法上の労働者に該当しないと判断した事案

(経緯)
 セブンイレブンのフランチャイズ・チェーンを運営する株式会社セブンイレブンジャパン(以下「Y社」という。)との間で、加盟店基本契約(以下「フランチャイズ契約」という。)を締結して店舗を経営する加盟者らは、コンビニ加盟店ユニオン(以下「X」という。)に加入している。
 Xは、Y社が団体交渉の申入れに応じなかったことが不当労働行為に当たるとして、岡山県労働委員会に救済を申し立てたところ、救済命令を発した。
 これに対し、Y社が再審査を中央労働委員会に申し立てたところ、救済命令を取り消し、救済申立てを棄却する命令を発した。
 本判決は、Xが救済申立て棄却命令の取消しを求めた事案。

(争点)
フランチャイズ加盟者が労働組合法上の労働者に該当するか否か
 
【裁判所の判断】
1 労働者性の判断基準
 労組法3条は、労働者について、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他の契約によって生活する者」と定義し、労働契約法や労働基準法における労働者とは異なり、使用者に「使用される」ことを要件としていない。
 労組法の適用を受ける労働者は、労働契約によって労務を供給する者に加え、その他の契約によって労務を供給して収入を得る者で、使用者との交渉上の対等性を確保するために労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められる者をも含むと解するのが相当である。
 そして、加盟者が労働法(労組法の誤記?)上の労働者に該当するか否かを判断するに当たっては、
[1]加盟者が相手方の事業遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織に組み入れられているか、
[2]契約締結の態様から、加盟者の労働条件や労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか、
[3]加盟者の報酬が労務供給に対する対価又はそれに類するものとしての性格を有するか、
[4]加盟者が、相手方からの個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係があるか、
[5]加盟者が、一定の時間的、場所的拘束を受け、Y社の指揮命令の下において労務を提供していたか、
[6]加盟者が独立した事業者としての実態を備えているか
といった事情を総合的に考慮して、使用者との交渉上の対等性を確保するために労組法上の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められるかという観点から判断するのが相当である。
 
2 各要素の検討
(1) 事業組織への組入れ・業務依頼に応ずべき関係
 フランチャイズ契約において、加盟者は、Y社の許諾の下に加盟店の経営を行い、これについてY社に一定の対価を支払うことを約束した旨のほか、Y社と加盟者はフランチャイズ関係においては、ともに独立した事業者であり、加盟者の経営は、加盟者の独自の責任と手腕により行われ、その判断で必要な従業員を雇用する等、使用主として全ての権利を有し、義務を負う旨などが規定されているから、フランチャイズ契約上、加盟者は独立した事業者として位置づけられており、Y社の事業の遂行に不可欠な労働力としてY社の事業組織に組み入れられていないことは明らかである。
 実態としても、加盟者は、Y社と独立した立場で、従業員の採否・労働条件等を決定し、他人労働力を使用するとともに、商品の販売・サービスの提供について独立の事業者と評価するに相応しい裁量を有し、店舗の立地・契約種別・共同フランチャイジー・複数出店の選択についても自ら判断・決定している。さらに、加盟者は、自身が担当する店舗運営業務の内容や程度についても、加盟者自身の判断により決定している
(2) 報酬の労務対価性
 加盟者は、オープンアカウントを通じてY社から月次引出金当の支払を受けるところ、これは加盟者が加盟店における商品の販売やサービスの提供の対価として顧客から得た収益を獲得しているものであって、加盟者がフランチャイズ契約上の何らかの業務の履行をしたことに対する報酬であると評価することはできない。
(3) 契約内容の一方的・定型的決定
 加盟者が、加盟店の経営を、自己の労働力と他人の労働力のそれぞれを、どのような割合で、どのような態様で供給することによって行うかや、加盟者自身の具体的な労務提供の内容については、加盟者の判断に委ねられている
(4) 時間的場所的拘束、指揮命令関係
ア 時間的拘束
 加盟者が、自身が担当する店舗運営業務の内容や程度について、自身の判断により決定している以上、加盟店の営業日・営業時間に制約があるからといって、加盟者の労務提供が時間的に拘束されているとはいえない。
イ 場所的拘束
 加盟者は、加盟店の立地を自ら選択しているから、場所的拘束を受けていると評価することはできない。
ウ 指揮命令関係
 加盟者は、自身が担当する店舗運営業務の内容や程度について、加盟者自身の判断により決定しているのであって、Y社の指揮命令を受けて労務提供をしているものではない。
(5) 以上のとおり、加盟者は、Y社から個別具体的な労務の提供の依頼に事実上応じなければならない関係になく、Y社の事業の遂行に不可欠な労働力として組織に組み入れられているともいえない。また、加盟者は、Y社から労務提供の対価として金員の支払を受けているといえず、労務提供の在り方が一方的に定型的に定められているものでもなく、時間的場所的拘束の下、Y社の指揮命令を受けて労務を提供しているとも言えない。
 そうすると、加盟者は、労組法上の労働者に該当しない。

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