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『1月の声に喜びを刻め』のディスカッションを終えて

先日、2023年12月7日(木)に青山学院大学 相模原キャンパスにて、三島有紀子監督作 映画『一月の声に歓びを刻め』の鑑賞会と三島監督×エリックゼミ生によるディスカッションが行われた。



エリックゼミでは、青山学院大学 地球社会共生学部 学部長 松永エリック・匡史教授のもと学生それぞれが興味を抱く分野の社会課題解決に向け、事業構想策定を目指して活動している。我々は学生だけでなく、ゼミアドバイザーである数々の社会人の方々と共に様々なアクションを起こす。この度は様々な方々のご協力のもと、三島有紀子監督にお越し頂いた。

18歳からインディーズ映画を撮り始め、大学卒業後には人間ドキュメンタリーの数多くを企画・監督した三島監督。フリーの助監督として活動された後には、オリジナル脚本・監督として数々の代表作を発表した。最新作『一月の声に歓びを刻め』は、三島監督の強い気持ちで自主映画から製作がスタートしたオリジナル企画で、自身が47年間向き合い続ける「性暴力と心の傷」をテーマに、製作されたヒューマンドラマ映画である。

「簡単に理解できない内容」
作品の内容は、色々な意味で「簡単にはできない」内容であった。それは作品で取り上げられていたものと各個人の境遇のギャップによるものである。全3章それぞれ全く違う土地、ジェンダー、バックグラウンドを持った主人公が描かれていた。彼女・彼らの抱える問題は、その演技や描写から少し予測することはできた。しかし、ディスカッションに移ると、グループのメンバーの間でも解釈が分かれた。こう思ったのではないかという主人公の感情的なものなどだけでなく、このような過去があったのではないかなどの事実関係でさえも人によって読み取り方が異なった。異なる境遇に置かれていた者同士では理解し合うのに限界があると感じた。ここから、それ程自分の理解できない境遇に置かれて苦しんでいる人がいるということを認識させられるきっかけとなった。自分がいくら理解しようとしても「理解できない」ことで悩んでいる人がいることを認知する大きな機会となった。

「一個の問題が独立して存在しているわけではない」
主人公が抱える一つの問題が周りに認知されているとした時、その一つだけが彼ら彼女らの問題ではないことを考えさせられた。ディスカッションを進めていくと、この問題は、複数の問題によって引き起こされたものであるという意見が多く出た。普段、「彼は○があって悩んでいる」と認識しているものも「彼は○や○があって悩んでいる」と捉えられるのではないかという視点が加わった。様々な問題が複雑に関係していることが当事者本人にとっては苦痛になるのではないかと考えた。広い視点で周辺の問題についても目を向ける必要があると思った。

「普段このような作品を鑑賞しない私がこの作品を鑑賞する意義」
この作品を鑑賞する前に他のゼミ生と映画について聞いた話をもとに普段このような作品を鑑賞しない私にとって、まずこのような作品を観ること自体が当事者意識や社会問題を知る機会になるであろうと思った。その上で、この作品を鑑賞した。実際に作品を鑑賞すると、作品で取り上げられていた内容のようなことを自分自身が経験したことはないし、どこまで行っても理解し切ることは不可能であると考えた。ただ、このような境遇にいる人がいることを知る、少しでも理解しようと考えてみるというアクションを起こすことは皆に必要であるのではないか。こうした機会を設けるというアクションにより、自らが全く悪気なく誰かを傷つけてしまうことが防げるかもしれないし、少しでも誰かに寄り添うことができるようになるかもしれない。これが普段このような映画を視聴しない私にとっての作品を鑑賞する意義であると思う。

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