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神田川の秘密二十四の3 赤い欄干

二十四の3 赤い欄干

遊歩道が再開された

 富士見橋から4本目、柳橋からは赤い煉瓦を敷いた遊歩道が再開された。
その直ぐ脇に、
「神田川整備工事(その153) 延長84、5m 東京都」と石版が嵌め込まれていた。都市型河川に手を加え、川を無機質な物体に変え、都市の川の姿とはこういうものだと主張、説明しているのか、年寄りの頭は訳もなくぐるぐる回りする。

行政というものは自分の足跡を示したい性格がる
橋の建設年月日、工事の概要などを石に彫り込む

 氷川橋も道幅は広く、二車線の道路を通していた。
この橋の真ん中から下流を眺めて、思わず「おっと!」と声が出た。

柳橋から下流を見た写真

「何なんだ、あの橋は?高知市のはりまや橋みたいじゃないか」
 井の頭池から神田川に沿って歩いて来て、初めて目にしたもの、それは欄干が鮮やかな朱色に塗られた橋だった。それが中野新橋シンハシであることを地図を見て知ったが、地図には欄干の色までは出ていない。
 なぜ朱色なんだ。それに親柱には擬宝珠ギボシまでついているではないか。元々の擬宝珠は青銅でできていて、昭和36年(1961年)地下鉄丸の内線の開業から平成23年(2011年)までは親柱の頭に着いていた。今はステンレス製に交代している。青銅の擬宝珠は橋の脇にある「なかしん広場」の入り口にひとつだけ残されていた。青銅は放っておくとすぐに緑青がわくし、手がかかるからね。ステンレスは錆が来ない。こういうの、近代化というんだろうね。

橋の袂の小公園に展示されている青銅のギボシ
能書きも書かれている

 それにしてもなぜ欄干が朱色なんだ、という問いに答えがない。
「新橋」を「神橋」に引っ掛けたんだろうか。宮下橋や大宮橋、神田橋、弁天橋、神泉橋と今までに神にまつわる橋が数々有ったが、どれ一つとして朱色に塗られていなかったじゃないか。

 近所に氷川神社があるからか。いまいち納得がいかない。この一帯が終戦後まで花街として栄えていたから橋を華やかな色で塗り上げたと解説するネット情報もあるが俄かに信じがたい。神田川を中野新橋で横切る広い通りは交通量が多く、少し北上すると青梅街道に突き当たる。
 橋の中央に立って、下流を写真に収めた。
 これが実に絵になっていた。

 朱色の欄干の下に続く神田川はコンクリート3面張りの護岸と、それに並行する5階建てビル群の間をまっすぐ下流へと伸び、ひとつ先の桜橋の下で右へ緩く湾曲しながらビルに消えている。消えた先に新宿のタワービルが何本も聳え立つ。

新宿が目と鼻の先に見える

 真正面に見える新しいビルは日本最高層タワーマンションを自称する『ザ・パークハウス西新宿・タワー60』ではないか。2017年から売り出されたタワマンで、白い壁面が空に突き出ている。最上階は60階。最高値は5億円。その奥のビルは新宿アイランドタワーだろうか。その先、高層ビルがさらに6本、大地へ太く長い枡形の杭を打ち込んだように林立している。新しいビルが多くて何が何やら見分けがつかない。神田川はコンクリートの護岸と川を両脇から挟みつけるように迫るマンション群で構成されていて、行き着く先には何本ものタワービルの山があり、川はビルの谷を目指している。これが都会の川の形なのか。これで良いのか?心はそれを否定したがっている。


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