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神田川の秘密29の2 下落合近辺も面白いね

二十九の2 下落合駅近辺を歩いてみた

「じつのところ、生態系の大きな混乱は、ホモ・サピエンス自体の存続を脅かしかねない。地球温暖化や海面上昇、広範囲な汚染のせいで、地球が私たちの種にとって住みにくい場所になる恐れもあり、結果として将来、人間の力と、人間が誘発した自然災害との間で果てしない鍔迫り合いが繰り広げられることになるかもしれない」と。(ユヴァル・ノア・ハラリ)

 産業構造全体が都市の過密と地方の過疎を生み、都市から自然が失われ、お仕着せの「公園」がささやかに提供された。その小さな公園も地域の人間関係に新しい問題と亀裂を提供している。川旅老人の友人が毎週1回、公園のゴミ拾いをしているが、毎度・毎度ゴミが出て、減ることはないそうな。
 タバコの吸い殻、空き缶、プラスティック袋、マスク、紙容器。彼は誰に頼まれたわけでもなく、自発的な意思でやっている訳で、ゴミの多いのを嘆いてはいない。しかし、犬の糞は飼い主に始末してほしいと言っている。

下落合駅は神田川と妙正寺川とに
挟まれている
写真は妙正寺川で橋の左手が下落合駅

 西武新宿線・下落合駅は長い東京暮らしだが、降りたことがなかった。家康の江戸開闢以来、拡張と過密を繰り返してきた東京は摩訶不思議な街になってしまった。縦横無尽に敷かれた東京の鉄道の全てに乗るのは大変だし、降りたことのない駅は数え切れないほどある。

矢印の橋の下を流れるのは神田川
下落合駅ホームからちらりと覗いている桜が見える

官庁街有り、オフィスビル街有り、住宅街有り、歓楽街有り、大学があって、タワーマンション群、公営団地が有る。教会、モスク、寺院、神社があって美術館、公園がある。掴みどころがなく、街に特徴がない。その分秘密もたくさんある。
「アレッ、こんなところにこんなものが有る!」のが東京で、神田川はそのど真ん中を流れている。

 下落合駅も一風変わった立地になっている。
神田川と妙正寺川に挟まれたデルタのような場所に駅舎とプラットフォームがある。二つの川は駅から10mほどしか離れていない。ホームで背伸びをすれば、神田川の遊歩道にある桜並木を、住宅と道路の狭隘な部分から覗き見ることができるし、プラットホームを高田馬場寄りの端まで行けば妙正寺川に架かる千代久保橋が目の前に見える。改札口は落合橋の直ぐ手前だ。なかなか面白い駅じゃないか。

 分水流が妙正寺川に合流するのは妙正寺川に架かる辰巳橋の先だが、ここは工事中の塀に囲い込まれていた。神田川の分水流は西武新宿線の地下を通って辰巳橋で妙正寺川に流れ込む。神田川にはいつ果てるともしれない連続した工事があり、ここかしこで川が掘り返され塀の中に囲われていた。川旅老人は外界から遮断された工事現場をいくつも見ながら神田川を下って来た。どうやら妙正寺川も同じらしい。川と工事とは一体で、川があるから工事があり、工事があるため川がある。

歩道橋の上から撮影
なんの工事やら分からなかった
中央の取水口は神田川の水を妙正寺川に取り込んで
白山通りの地下へと誘導する

 下落合駅付近を流れる妙正寺川は完璧な3面コンクリートの護岸だったし、住宅は川淵ギリギリまで迫っていて、遊歩道はなかった。文句のつけどころのない大型排水溝だった。しかし、工事は続いている。行政のお金は途切れることなく川工事に注がれている。延々と続く外科手術のように、体力を奪いながら死に至るまで終わることがない。
「そこで1枚写真を撮らせてくれませんか?」
制服を着て厳しい顔をしているガードマンに声をかけた。
「ダメダメ!工事中だから」
ほんの2mほどの防御柵までのこと。しかし、ガードマンは頑なだった。
1ミリも入れさせない構えで睨む。
「分かりました。神田川の分水流が出てくるところを写真に撮りたかったのですが、・・・」
あっさり引き下がった。
「歩道橋の上で撮れば!」とアドバイスをくれた。
言われた通り上がってみたが、歩道橋には背の高い目隠しがあって、思う写真は撮れなかった。

神田川をふたつに割って左手は妙正寺川へ
これも川の仲間なのだろうか


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