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おせっかいかもしれない

フェルメール展の帰り道。なんだか時代を超えて、オランダに、あの午後の光の中にいたような気持ちになっていたからかもしれないけれど。
人の関わりがぐっと狭く、近く。出会う人の総量も少なくて、そのぶんだけ大事だった頃みたいな雰囲気にいつの間にか浸っていたせいかもしれない。
電車の中に3人組が乗ってきた。そのうち1人は体調悪そう。飲みすぎてもう立てなくて、あきらかにダウン寸前だった。口にビニール袋を当てていて吐くのを我慢していて、人も混んでるから、何があるのはちょっと勘弁という気もゼロではない。
でも、それよりも、一緒にいる友達が終電までまだ何時間もあるのに「あと2駅だから」なんて言っていて、それを聞いた瞬間に私はわけもわからない怒りみたいなものがむらむらと湧いてきた。
我慢する必要ないよ。友達なら、今すぐ一緒に降りて吐かせてあげて。水いっぱい飲んではやく出したほうがいい。もう2度とこんなに飲んじゃダメ。アルコールが命とりになることだってあるんだから。
近寄ってそう言おう、と決めたのに、人ごみをかき分けているうちに気持ちはどんどんしぼんでいった。
なんとか大丈夫だろう。2人もいるし。言うこときかないかもしれない。何よりまったくの他人に指図めいたことをするの、怖い。
駅に着いたら人の流れのまま、降りてしまった。
あの子、大丈夫だったかな。

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