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嘘でしょ、発熱?

コロナウィルス、Covid-19。遠い世界の出来事だと、たくさんの冷笑をしてた。最初の頃は。
インフルエンザより軽い、いやちょっと重い。
若者は感染しても大丈夫、そんな風に思わていた。
身近に迫ってきても、正直、自分は逃れられると思っていた。なぜなら、医療職ではないけれど、感染症に関するベーシックな知識があり、手洗いも正しく、マスクの着脱のコツも、何が危険かもわかっていた。ミニサイズの消毒ジェルは、こうなる前から私の冬のお守りだ。可愛いキラキラのラメが入って香りがよいので、オフィスではハンドクリームと交互に塗り重ねていた。
清潔好きの親に育てられたので、食事の前にうがい手洗いをしないと落ち着かない。メニューを開く前にレストランのトイレでうがいをするのがルーティンだ。
正しく行動をすれば防げるのだ、と思っていた。家に帰るとバッグとコートは玄関先に。そのままうがい手洗い、着た服を脱いで部屋着に着替えて再びうがい手洗い。スプーンにひとさじ、マヌカハニーを舐めたら、ようやくリラックスできる。(余談だけど、普通の風邪予防にマヌカハニーはとてもよい。軽い喉の痛みが出るレベルの風邪ならそのまま治ったりもする)。唯一の不安は同じマスクを何日か使い続けていることだ。
感染が拡大して、いよいよ知り合いの知り合いレベルまで迫っていたとき、コンビニで振り込みをしようとしたことがあった。マスク越しに番号を言うと、店員さんは聞き取れず、もう一度今度は繰り返してもわからなかったようで、私が手にしていた携帯に触れてのぞきこもうとした。
「すみません、さわらないでください」。
自分でもびっくりするほど、素早く、強い口調で言って反射的に身を引いてしまった。知らない人に、あんなに尖った声を出してしまうなんて。
私はとにかく距離感に敏感になっていた。
コンビニの店員さんはムッとしていたけれど、大勢のひとの指先に触れた手で、常に私の片手を支配しているスマホに触って欲しくなかったのだ。
テレワークが始まり、なるべく会社に行かずに済んだときは心底ほっとした。感染予防の知識は、私を助けてくれると同時に追い詰めていた。
それなのに。外出前に検温をしたときに、いつもの平熱ではなく、38.3度という数値が出ていた。間違いかと思って測りなおしても変わらない。
なんで?昨日は、36.7度だったのに?
ちなみに私の平熱は、さらに低い。確かにこの2、3日平熱だけどちょっと高くなっていたので、不思議には思っていた。生理周期がずれたかな、と。
なのにまさかの38度越え。
しかも、まったく、体はだるくもないのだ。
嘘でしょ?普通そんなに高熱だと、自覚症状があるでしょ?
単に体調管理のために始めた検温だが、思いがけず、私の体の変化、その始まりを告げていた。
それは、本当にびっくりするほどめまぐるしく、最高と最低が交互に訪れる日々だった。忘れたくないけれどすぐに忘れてしまうかもしれない。コロナウィルスがある日常。ただ眠っているだけなのに、あまりにも多くの場所を旅した時間。コロナにかかったかも、というときに不安で探していた記事の中で、自分が読んでみたかったことを書こうと思う。


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