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鉄道事業法⑨:繰延資産整理

条文はこちらから。

前回は輸送の安全の確保に関する条文を勉強しました。

今回は繰延資産整理(法第20条)について勉強します。
※会計のことでよくわかりませんでした!間違っていたら教えてください。

◆鉄道事業の会計

➢財務諸表

鉄道事業者は、事業年度ごとに会計業務を行う必要があります(法第20条1項)。法では下記の諸表の様式を定めることとされています。

・勘定科目の分類
・貸借対照表
・損益計算書
・その他の財務諸表

詳細は鉄道事業会計規則に記載されています。今回は内容には触れません。

用語を見ていきます。

・勘定科目
企業のお金の動きを整理するために、取引の種類をわかりやすく分類したものです。鉄道事業会計規則の別表第1に定められています。

・貸借対照表(バランスシート・BS)
企業が抱える資産・負債などの金額と内訳を示すものです。

・損益計算書
企業活動に伴う収支の金額と内訳を示すものです。


➢繰延資産整理

法第20条において特筆すべきは2項の内容です。要約すると

災害や廃線によって生じた損失・除却費は、繰延資産とすることができる。

という内容です。意味わかんないですね。用語から見ていきます。

・除却費
使わなくなった固定資産を廃棄するときに生じる損失です。

・繰延資産
支出する費用のうち、その支出効果が1年以上に及ぶもののことです。
前提として、企業会計には「費用収益対応の原則」があり、経済的な因果関係が分かるように会計する必要があります。
「未来の収益に貢献する」ような支出をした場合、実際に支出をしたタイミングだけではなく、ある期間に渡って支出の効果を受けることができます。このような支出を実際に支出した時点のみで計上すると、将来に渡る収益については経済的な因果関係をはっきり記載することができません。
そこで使われるのが「繰延資産」の考え方です。
本来は費用とするべき支出をした際に、「未来の収益に貢献する」という建前でこの支出を「資産」として扱い、少しずつ資産評価額を減らす(償却する)ことで、支出を長期にわたって分担し、費用収益を対応させる考え方です。

条文に戻ります。法第20条2項では、災害や廃線によって生じた損失・除却費を繰延資産とすることができると記載されています。「損失・除却費」は未来の収益に貢献するのか?答えはNOです。ではどういう事情があるのかというと、おそらく災害・廃線時には損失・除却費が膨大で、素直に単年度で費用計上した場合、決算に与える影響が大きいことが考えられます。

例えば赤字になると、銀行から融資を受けづらくなるなどのデメリットがあるようです。JR等の巨大企業であれば、一部の路線がどうなっても大した影響はないと思いますが、地方鉄道などは死活問題でしょう。本条は救済措置なのだと思われます。

以上。

参考

繰延資産 - Wikipedia
費用収益対応の原則|グロービス経営大学院 創造と変革のMBA (globis.ac.jp)

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