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鉄道事故等報告規則

条文はこちらから。


◆鉄道事故等報告規則とは

鉄道・索道の事故発生時に、鉄道事業者が事故を国土交通省にどうやって報告するかを規定したものです。
鉄道事業法の
19条 事故等の報告
66条 国土交通省令への委任
の規定に基づいています。

◆鉄道事故等の定義

報告規則第3条では鉄道事故の定義が示されています。鉄道事故は

鉄道運転事故
索道運転事故
電気事故
災害

に大別されます。以下で詳細に見ていきます。各分類には有名な事故事例を付記しておきます。微妙に知ってそうで知らないものをチョイスしておきます。

【鉄道運転事故】

【索道運転事故】

索道運転事故については国内事例があまり見つけられませんでした。

【電気事故】

  • 感電死傷事故
    感電によって人の死傷が生じた事故です。
    例:鉄橋で作業中感電死 鹿児島のおれんじ鉄道 - 産経ニュース (sankei.com)

  • 電気火災事故
    電気的要因で火災が生じた事故です。
    例:京王線、4時間運転見合わせ 変電所火災で - 日本経済新聞 (nikkei.com)

  • 感電外死傷事故
    電気施設の欠陥・損傷・破壊・操作によって人の死傷が生じた事故です。どういうシチュエーションか分かりません。変電所のキュービクルにぶつかってケガしたとかでしょうか。知ってる人いたら教えてください。

  • 供給支障事故
    受電電圧3000V以上の電気施設の故障・損傷・破壊などによって電気事業者に供給支障を発生させた事故です。この条文はちょっとどういう意味なんでしょうかね。鉄道側の電気施設が壊れて電気事業者から供給できなくなる事故なのか、鉄道側の電気施設故障の影響が電気事業者側の系統にも及んで供給支障を起こさせてしまった事故なのか分かりません。知っている人いたら教えてください。※「電気事業者」とは電気事業法で定められる用語で、電力会社がイメージしやすいかと思います。JR東の蕨変電所の事故とかは該当するんでしょうか。
    例:蕨交流変電所における火災に係る原因及び今後の対策について (jreast.co.jp)

【災害】

異常な自然現象、大規模な火事・爆発、その他の大規模な事故によって鉄道施設・車両に生じた被害のことです。台風で橋が流されたりするやつです。例はありすぎるので記載しません。

◆インシデントの定義

報告規則第4条では鉄道/索道運転事故が発生する恐れがあると認められる事態=インシデントについて規定されています。だいぶ意訳します。

【鉄道のインシデント】

  • 閉そくの取扱いが完了していない区間を列車が走行した、走行しそうになった場合

  • 進路支障があるのに進行現示になった、または進行現示中に進路支障された場合

  • 列車が停止信号を冒進し、本線の他の列車等の進路を支障した場合

  • 列車等が停車場間の本線を逸走した場合

  • 列車の運転を停止して行うべき工事・保守作業中に、作業区間を列車が走行した場合

  • 車両が脱線したもののうち、下記3パターン
    ①本線で脱線した場合
    ②側線で脱線して本線を支障した場合
    ③側線で脱線して、その原因が側線特有のものではない場合

  • 列車の運転の安全に支障を及ぼすような設備故障が起こった場合

  • 列車等から危険品・火薬類がダダ漏れになった場合

  • 上記と同レベルで危険である場合

【索道のインシデント】

  • 索条に重大な損傷が発生した場合

  • 索条の張力がおかしい(極端に増大・低下した)場合

  • 索条が受索装置・滑車等から外れた場合

  • 握索・放索が不完全になった場合

  • 搬器の運転の安全に支障を及ぼすような設備故障が起こった場合

  • 搬器が逆走した場合

  • 上記同レベルで危険である場合

◆事故等の報告

報告書・届出書の様式は、国土交通大臣が告示で定めています。
鉄道運転事故等報告書等の様式を定める告示 (mlit.go.jp)

【鉄道運転事故等の報告】

報告対象となるのは下記の鉄道事故・輸送障害・インシデントです。

  • 乗客、乗務員等に死傷者を生じたもの

  • 5人以上の死傷を生じたもの

  • 遮断機のない踏切で死亡者が生じたもの

  • 係員の誤取扱、鉄道施設・車両の故障に原因があるおそれがあるもの

  • 3時間以上本線の運転を支障すると思われるもの

  • 特に異例と認められるもの

  • 鉄道インシデント

報告対象事項発生時には速やかに下記内容を地方運輸局長に電話or口頭で速報しなければなりません。

  • 事故発生の日時、場所

  • 事故の概要、原因

  • 応急処置、復旧対策

  • 復旧予定日時 など

さらに2週間以内に下記の内容を記載した鉄道運転事故等報告書を提出しなければなりません。

  • 事故発生の日時、場所

  • 事故の概要、原因

  • 被害の状況

  • 発生後の対応

報告書には、調査上必要となりそうな図面・書類を添付する必要があります。
※「3時間以上本線の運転を支障すると思われるもの」については5条第1項ではなぜか除外され、第2項で「輸送障害」として言及されています。

さらに上記の報告対象に加えて「輸送障害(列車の運転を休止したもの、旅客列車で30分以上・旅客列車以外で1時間以上遅延をしたものに限る)」については、発生翌月の20日までに下記の内容を記載した鉄道運転事故等届出書を地方運輸局長に提出する必要があります。

  • 事故発生の日時、場所

  • 事故の概要、原因

  • 被害の状況

  • 発生後の対応

【索道運転事故等の報告】

報告対象となるのは下記の索道事故・輸送障害・インシデントです。

  • 乗客、乗務員等に死傷者を生じたもの

  • 5人以上の死傷を生じたもの

  • 係員の誤取扱、索道施設の故障に原因があるおそれがあるもの

  • 特に異例と認められるもの

  • 索道インシデント

報告対象事項発生時には鉄道事故と同様に、

  • 地方運輸局長に速報

  • 発生から2週間以内に索道運転事故報告書を提出

  • 発生の翌月20日までに索道運転事故等届出書を提出

する必要があります。

【電気事故の報告】

電気事故発生時には、鉄道事故等と同様に

  • 地方運輸局長に速報

  • 発生から30日以内に電気事故報告書を提出

する必要があります。

【災害の報告】

災害発生時には地方運輸局長に速報する必要があります。
また被害額が1千万円以上である場合には、応急処置完了した後10日以内に、鉄道事故等の規定の例と同様の災害報告書を提出する必要があります。

◆重大インシデントの定義

ここまで見てきた通り、インシデント=鉄道事故等が発生するおそれのある事態です。では重大インシデントとは一体何でしょうか。

設置法第2条3項では、「鉄道事故」とは「鉄道事業法第19条・・・であって、国土交通省令で定める重大な事故をいう。」とあります。

これに対して「運輸安全委員会設置法施行規則」第3条でその詳細が下記のとおり記載されています。

  • 列車衝突・脱線・火災事故(作業中の除雪車に関係するものは除く)

  • 踏切障害・道路障害・鉄道人身障害のうち
    -死亡者が生じたもの
    -5人以上死傷したもの
    -遮断器の無い踏切道で死亡者が生じたもの
    -係員の誤取扱、鉄道施設・車両の故障等に原因があるおそれがあるもの

  • 特に異例と認められるもの

  • 専用軌道で発生した特に異例と認められるもの

  • 軌道で発生したもので委員会が告示で定めるもの

また設置法第2条4項では「鉄道事故等」とは

  • 鉄道事故

  • 鉄道事故の兆候(鉄道事故が発生するおそれがあると認められる国土交通省令で定める事態をいう。)

とされています。
さらに鉄道事故の兆候について「運輸安全委員会設置法施行規則」第4条でその詳細が下記のとおり記載されています。

  • 閉そく取扱いが完了していない区間に列車/車両が存在した場合

  • 進路支障のある区間に列車が進入した場合

  • 停止信号を冒進した列車がいる区間に他の列車/車両が侵入した場合

  • 鉄道施設・車両の故障のうち、衝突・脱線・火災発生の危険性が特に高いもの

  • 軌道において発生したもので委員会が告示で定めるもの

これが重大インシデントです。要はインシデントの中でも特に事故寸前だったものが重大インシデントです。
国土交通省ではなく総務省の資料に良い図がありました。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000754570.pdf  より抜粋
https://www.soumu.go.jp/main_content/000754570.pdf  より抜粋

◆運輸安全委員会

JTSB:Japan Transport Safety Board
運輸安全委員会設置法(以下設置法)によって設立されたもので、航空・鉄道・船舶の事故防止・被害軽減を目的とした国土交通省系の組織です。

鉄道事故報告規則に基づいて鉄道事業者から鉄道事故等の報告を受けた国土交通大臣は、運輸安全委員会にその旨を通報しなければなりません(設置法20条)。また委員会の調査に必要な援助・措置を行う必要があります(設置法22条)。

委員会は調査終了後、下記の事項を記載した報告書を国土交通大臣に提出・公表しなければなりません。

  • 事故等調査の経過

  • 認定した事実

  • 事実を認定した理由

  • 原因

委員会は調査の結果に基づき、事故防止・被害軽減のための施策実施を国土交通大臣・原因となった関係者へ勧告することができます。報告書については運輸安全委員会のHPで公開されています。

以上です。

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