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現代語訳:鉄道抵当法① 第1章 総則

明治38年の法律である鉄道抵当法を現代語訳しました。現在も有効な法律です。
意訳している部分・あいまいな部分もあるので、あくまで参考程度にお願いします。

条文はこちらから。

第1章 総則

第1条

本法において会社と称するのは、株式会社である鉄道事業者を言う。

第2条

会社は抵当権を目的として、鉄道の全部または一部について、鉄道財団を設立することができる。
②鉄道財団に属するものは、同時に他の鉄道財団に属することができない。
③鉄道財団はこれを1つのものをみなす。
※鉄道財団とは抵当権設定の目的となった鉄道施設群のことです。財団法人ではありません。

第2条の2

鉄道財団の設定は、国土交通大臣の認可によって効力を生じる。
②鉄道財団は次の場合においては消滅する。
 1.抵当権の登録が全部抹消されたとき 又は 第13条の3第2項の規定によって抵当権が消滅した後、6カ月以内に新たな抵当権設定が登録されなかったとき。
 2.第34条の2の規程による登録を行ったとき。
 3.第70条の競売(第77条の2において準用する第70条の規定の滞納処分による換金を含む)に掛けられ、抵当権が消滅したとき。

第3条

鉄道財団は下記に掲げるものであって、鉄道財団の所有者に属するもので構成される。
 1.鉄道線路・その他の鉄道用地、その上にある工作物・器具機械
 2.工場、倉庫、発電所、変電所、配電所、事務所、社宅、工事又は運輸に必要な建物、その敷地、属する器具機械
 3.用水に関する工作物、その敷地、属する器具機械
 4.鉄道用通信、信号または送電に必要な工作物、その敷地、属する器具機械
 5.前4号に掲げる工作物を所有または使用するために、他人の不動産の上に存在する地上権、登記している貸借権、前4号に掲げる土地のために存在する地役権。
 6.車両や車両に附帯する器具機械
 7.保線その他の修繕に必要な材料、器具機械

※地役権
自分の土地にメリットがある状態で、他人の土地を契約で定めた目的に使用する権利。

第4条

鉄道財団は所有権・抵当権以外の物権または差押・仮差押・仮処分の対象にはならない。ただし滞納処分による差押えの場合はこの限りではない。
②鉄道財団に属するものは、所有権・抵当権以外の物権または差押・仮差押・仮処分の対象にはならない。
③鉄道財団に属するべきものであって所有権以外の物権または差押・仮差押・仮処分の対象であるもの、または鉄道財団に属すべき不動産であって貸借権の対象であるときは、会社は鉄道財団を設置することができない。ただし不動産に関する権利についてその登記がないとき、または自動車の抵当権についてその登録がないときはこの限りではない。
※物権
物を支配する権利。

第5・6条

削除

第7条

鉄道財団設定の認可を申請するためには、下記の事項を記載した申請書および鉄道財団目録を提出すること。
 1.鉄道財団に属する線路の表示
 2.鉄道財団の所有者の名称および住所

第8条

鉄道財団設定の認可の申請があったときは、国土交通大臣はすぐに官報で、鉄道財団に属すべきものに関して第4条第3項の権利を有する者、または差押・仮差押・仮処分の債権者は、一定期間の間に申し出することという内容の公告をすること。ただしその期間は1か月を下回ることはできない。
②前項の公告があったときは、会社はすぐに国土交通省令の定めるところによってその公告があった事項を公告すること。

第9条

鉄道財団設定の認可の申請をしたときは、鉄道財団に属すべきものを譲渡することはできない。

第10条

第8条第1項の公告があった後、鉄道財団設定の認可の申請が却下されていない間、およびその認可の効力を失っていない間は、鉄道財団に属するべき不動産に関する権利について、競落を許可する決定をすることはできない。
②前項の規定は動産に対する競売の場合にも準用する。
※競落
競売物を競り落とすこと。

第10条の2

第8条第1項による公告を行った場合で、公告した期間内に権利の申し出があったときは、国土交通大臣は遅滞なくその旨を会社に通知すること。
②公告期間満了後3週間以内に権利の申し出の取り消しがないとき、またはその申し出の理由がないことの証明がないときは、国土交通大臣は鉄道財団設定の認可申請を却下すること。

第11条

鉄道財団設定の認可があったときは、その鉄道に関するもので第3条に掲げたものは、当然鉄道財団に属する。その鉄道財団設定後に新たに鉄道財団の所有者に属したものについても同じ。
②前項に掲げたものに関して第4条第3項の件rがあるときは、不動産に関するものの登記または自動車の抵当権の登録はその効力を失い、動産に関するもの(自動車の抵当権を除く)は存在しないものとみなし、差押・仮差押・仮処分はその効力を失う。ただし鉄道財団設定の認可が効力を失ったときはこの限りではない。
③前項の場合において、第4条第3項の権利を有する者、または差押・仮差押・仮処分の債権者は、鉄道財団の所有者に対して損害賠償請求ができる。

第12条

鉄道財団の設定が認可されなかったとき、またはその認可の効力が無くなったときは、国土交通大臣はすぐに官報でその旨を公告すること。

第13条

鉄道財団設定の認可があった後6カ月以内に抵当権設定の登録申請がないときは、認可は効力を失う。

第13条の2

会社は鉄道の他の部分について鉄道財団を拡張することができる。

第13条の3

会社は一個の鉄道財団を分割して数個の鉄道財団とすることができる。
②抵当権の対象である甲鉄道財団を分割して、その一部を乙鉄道財団としたときは、乙鉄道財団の抵当権は消滅する。
③前項の場合、鉄道財団の分割は抵当権者が乙鉄道財団についてて抵当権消滅を承諾しなければ、分割はできない。

第13条の4

会社は数個の鉄道財団を合併して1個の鉄道財団とすることができる。ただし下記の場合においてはこの限りではない。
 1.合併しようとする鉄道財団について、競売手続開始もしくは強制管理開始の決定または滞納処分があるとき。
 2.合併しようとする数個の鉄道財団のうち2個以上の鉄道財団が抵当権の対象だった時。
②甲鉄道財団と同一の抵当順位の抵当権を乙鉄道財団が有しないときは、前項第2号の規定にかかわらず甲乙鉄道財団を合併できる。
③鉄道財団を合併したときは、抵当権は合併後の鉄道財団の全部に及ぶ。

第13条の5

鉄道財団の拡張・分割・合併は、国土交通大臣の認可を受けることによってその効力を生じる。

第13条の6

鉄道財団拡張の認可申請をするには、拡張しようとする鉄道の部分に関するものであって第3条に掲げるものの目録を提出すること。
②鉄道財団の拡張に関しては第4条第3項及び第8~12条の規定を準用する。

第13条の7

鉄道財団分割の認可申請をするには、分割後抵当権の消滅する鉄道財団を明確にし、かつ分割後の鉄道財団ごとの目録を提出すること。

第14条

削除

第15条

抵当権の取得・喪失・変更、鉄道財団の所有権の移転は、登録をしていなければ第三者に対して効力がない。

第16条

数個の債権を担保するために同一の鉄道財団に抵当権を設定したときは、その抵当権の順位は登録の順番による。
②民法第374条の規定は抵当権の順位の変更に準用する。

第17条

抵当権者は鉄道財団について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることができる。

第18条

抵当権者は債権の全部の弁済を受けるまでは、鉄道財団の全部についてその権利を行使することができる。

第19条

鉄道財団に属するものの譲渡・貸付・滅失・毀損によって会社に対して発生する金銭その他のものに対しても、抵当権は有効である。ただし抵当権者はその払い渡し・引渡し前に差押えを行う必要がある。

第20条

鉄道財団に属するものを鉄道財団より分離しようとするときは、抵当権者の同意を求めること。
②会社が抵当権者のために競売手続開始・強制管理開始の決定をする前において、正当な自由で前項の同意を求めたときは、抵当権者はその同意を拒否できない。

第21条

削除

第22条

鉄道事業法第3条第1項の許可(鉄道事業の許可)の取り消しの場合においては、抵当権者はその権利を実行することができる。
②前項により抵当権を実行しようとするときは、抵当権者は鉄道事業の許可取消しの日から6か月以内にその手続きを行うこと。
③鉄道事業の許可は前項の期間および抵当権実行の終了に至るまでの間存続するものとみなす。

第23条

債権者が同一の債権の担保として複数の鉄道財団の抵当権を有する場合で、同時にその代価を配当するべき時は、各鉄道財団の価額に準じてその債権の負担を分ける。
②ある鉄道財団の代価のみを配当するべき時は、抵当権者はその代価について債権の全部の弁済を受けることができる。この場合、次の順位にある抵当権者は前項の規定に従って、上記の抵当権者が他の鉄道財団についての弁済を満額受けるまで、代位して抵当権を行使できる。

第24条

前条の規定に従って代位によって抵当権を行使する者は、その抵当権の登録にその代位を付記することができる。

第25条

抵当権者は鉄道財団の代価をもって弁済を受けない債権についてのみ他の財産をもって弁済を受けることができる。
②前項の規定は鉄道財団の代価に先んじて他の財産の代価を配当すべき場合には適用しない。ただし他の債権者は、前項の規定に従って弁済を受ける配当金額を、抵当権者によって供託してもらうように請求することができる。
※供託
金銭・有価証券などを他のものに提出し、管理をゆだねること。

第25条の2

一定の範囲に属する不特定の債権を、極度額の限度で担保するために設定された抵当権(以下根抵当権と称する)については、民法第398条の2第2・3項、第398条の3~22を準用する。

第26条

株式会社でない鉄道事業者の鉄道の抵当に関しては、別に定めるところによる。

第26条の2

軌道法第3条の特許をうけた者が、鉄道事業法第62条第1項の許可を受けて軌道事業を鉄道事業に変更した場合、当該軌道事業を営むものの軌道について、明治42年法律第28号の規定によって行われる処分・手続・登録その他の行為は、鉄道抵当法中で相当する規定によって行われたものとみなす。
②前項の場合における登録に関して必要な事項は、国土交通省令によって定める。
※明治42年法律第28号=軌道ノ抵当ニ関スル法律

続きはこちら。

続き

参考

鉄道財団 - Wikipedia

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