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鉄道事業法⑭:第三者による経営・管理、事業の終わり

条文はこちらから。

前回記事はこちら。

◆名義貸しの禁止(法第24条)

鉄道事業の名義について、下記の事項が禁止されています。

1.鉄道事業者の名義を使って、他の鉄道事業を経営すること
2.鉄道事業者の名義を使っているのに、実際は別の会社が経営すること

事業許可申請が必要な鉄道事業で、どうやったら1のような事態になるのか分かりませんが、許可を得た鉄道事業以外を行わせないための条文と思われます。
また2については、事業許可が事業者の経営体制を含めた審査になっていることが関係していると思われます。審査をされていない不適格な会社が鉄道事業に参入することを防いでいると思われます。

◆運行管理等の受委託(法第25条)

名義貸しは禁止されていますが、国土交通大臣の許可があれば、運行管理等を受委託することは可能です。グループ会社・子会社に委託している場合が多いように思います。
受委託OKな業務は下記のとおりです。(規則第38条)

・列車の運行の管理(例:JR東・JESS)
・鉄道施設の保守の管理(例:東京メトロ・地下鉄メインテナンス)
・車両の保守の管理(例:ゆりかもめ・明希工業)
・列車の運転の管理(例:みなとみらい線・東急)

◆事業の譲渡・譲受・相続(法第26・27条)

・譲渡、譲受

国土交通大臣の許可が必要です。基本的に譲渡譲受によって鉄道事業許可によって得た権利義務なども継承されます。鉄道事業者の種類(第1~3種)の区分については、譲渡譲受後の実態に合わせて再定義されます。
譲渡の事例は過去記事で紹介した北総線の事例があります。

・相続

鉄道事業者が死亡した場合に、相続人が鉄道事業を継続しようとするときは、死後60日以内に国土交通大臣の認可が必要です。法第4条を見ると、鉄道事業許可の対象は法人だけでなく個人も対象になっているようなので、それを考慮した条文だと思われます。現在の鉄道事業許可を個人で受けている人はいるんでしょうか?相続の事例は見当たりませんでした。

◆事業の休止・廃止(法第28条)

・休止

部・一部の休止について、事前に国土交通大臣に届出する必要があります。さらに休止の期間は1年を超えてはならないとされています。あくまで一時的な休止に限るようです。
例:上野懸垂線(上野動物園のモノレール)
老朽化のため2019年から休止しています。1年以上でもいいみたいです。今後再開にむけて東京都が動くようです。

・廃止

廃止の1年前までに国土交通大臣に届出する必要があり、国土交通大臣による関係各所(地方公共団体や利害関係人)の聴取の上、廃止を前倒しできるとされています。
例:西武鉄道安比奈線
1963年から休止していた路線でその後車両基地建設計画などが挙がりましたが、結局実施されることはなく、2017年に廃止されました。

◆法人の解散(法第29条)

鉄道事業者である法人の解散は、国土交通大臣の認可がなければできないとする条文です。それが総社員の決議であっても、国土交通大臣の許可がなければ解散できません。ただし公衆の利便が著しく阻害されない場合は、国土交通大臣は解散を許可する必要があります。
例えばJR東の深澤社長が「もうお金たくさんあるし仕事やーめた!会社の資産全部社員に配ってJR東やめちゃいます」と言って社員全員の同意が得られても、公衆の利便が著しく阻害される(山手線なくなったらヤバいですよね)ため、解散できません。

利用者の利便を阻害しないと認められるパターンは、下記のとおりです。(規則第42条の3)

1.既に休止されていて、将来的に需要もみこめないとき
2.廃止後に別の事業者が継続運営するとき
3.鉄道以外で代替可能であると国土交通大臣が認めたとき

例:釧路開発埠頭
北海道釧路市でかつて貨物輸送を行っていた会社です。トラック輸送への切り替えにより需要減、1999年に解散しました。

◆事業停止・許可取消し(法第30条)

鉄道事業者が下記のどれかに該当する場合は、国土交通大臣が事業停止や許可取り消しをすることができます。

・鉄道事業法に違反したとき。
・正当な理由なく許可、認可された事項を実施しないとき
・法第6条(欠格事由)に該当するとき
・工事施行の申請が却下されたとき
・第3種事業者から鉄道線路をもらうはずだった第1種事業者で、第三種事業者の許可取消しや事業廃止によって線路をもらえなくなったとき
・第2種事業者で、使用する線路を保有する第1・3種事業者の許可取消しや事業廃止があったとき
・第3種事業者で、線路を譲渡・貸与しようとしていた第1・2種事業者の許可取消しや事業廃止があったとき

例:阿佐海岸鉄道
停止や取り消しになってはいませんが、欠格事由に該当する可能性がある珍しい例だと思います。代表取締役専務が横領をしていて、さらに破産手続き中だったという事例です。2022年に発覚し、現在は国土交通省が対処中のようです。

今回の記事で「鉄道事業法 第2章 鉄道事業」まで終わりました。法はこの後も索道事業などの条文が続きますが、ひとまず鉄道事業法シリーズは一段落したいと思います。

参考

https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/08/080622_.html 
明希工業株式会社|鉄道車両の保守・整備・修理のプロフェッショナル (meiki-tech.co.jp)
休止・運休中の路線 (www.ne.jp)
西武安比奈線 - Wikipedia
阿佐海岸鉄道 - Wikipedia
釧路開発埠頭 - Wikipedia

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