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連射適性について分かっていること・いないこと

先日、あるMF2ユーザーの方より、「MF2バトルマニア」の技表に記載している「連射適性」についての質問をいただきました。
「連射適性」について説明する前に、まずは「クールタイム」について説明しなければならないでしょう。

クールタイムとは

本来「クールタイム」とは、RPGの必殺技などでゲームバランス調整などの目的で設けられている、特定の技を使用すると一定時間(もしくは一定ターン)使用できなくなる時間という意味で用いられます。しかし今回は「技発動後、どちらのプレイヤーが決定ボタンを押しても技を出すことができない時間」、言い換えれば「技発動後、次の技の入力受付が再開されるまでの待機時間」という意味であることとします。この「クールタイム」は非常に短く、数フレーム(1フレームは1/60秒)程度だと思われますが、どうやらこの時間は次に出そうとしている技によって差異があるらしく、この時間が短い技ほど連射適性が高い、つまり両プレイヤーが決定ボタンを連打したりビタ押しを試みたりしている場合に技を出しやすい、言うなればハメやすい・割り込みやすい・一方的に続けて技を出すのに適している技ということになります。格闘ゲームにおける、技を出した後に発生する数フレームの「硬直時間」に近いと考えていただければ良いかと思います。「MF2バトルマニア」ではすべての技に「並」「強」「超」という適性評価を付け、表記しています。

では「この評価は正確か?」と質問をされたとしたら、正直に申し上げると、「全く正確でない」と言わざるをえません(先日お問い合わせをいただいた方の質問は別の内容ですが、突き詰めればここに行き着くことになると思われます)。ただし、全くのデタラメを記しているわけでもありません。そこで今回は「連射適性」について分かっていること・いないことを解説したいと思います。

「連射適性」の初出は?

初めて「連射適性」を表記したのは、10年以上前に私が作っていたホームページ「もちぷらざ」(現在はサーバーのサービス終了により閉鎖)に公開した「最後の技表」です。私と協力者の方(たぶん問題ないとは思いながらも念のため名前を伏せさせていただきますが、「MF2バトルマニア」執筆の協力もいただいた方です)で、PS2実機にて、全種族のほとんどすべての技を、実際の対戦(連打合戦)形式で使用して調査しました。1つの技につき最低でも10回以上は使用し、協力者と「これは強でしょうか?」「これは並ですかね」と相談して1つ1つ決めていき、判断が難しい技は何十回でもやり直して、その作業は数日に及びました。そうして「連射適性」は「最後の技表」に記載され、その後も何人もの古参勢の指摘を受けたらその都度検証し直し、誤っていたら修正という作業を繰り返し、現在の形となりました。このようなシロモノであるため、今でも「この技の適性違うんじゃない?」とご指摘を受けることがあります。直近では最古参級のユーザーから、ドラゴンのクローアタックは「並」ではないとのご指摘があり、複数人で検証を行ったところ、確かに技の発生が速いことが認められ、「強」に修正しました。これは令和3年12月に修正しております。このように試行錯誤を重ねながら徐々に精度を上げてきた表記は、「ある程度正しいもの」として認識されていたように考えております。なお、wikiにも何種族かの連射適性が表記されていますが、wiki管理人様より転載の許可をご依頼された際に、このような調査の経緯である旨をご承知いただいたうえで表記していただいておりますので、情報源としては同じものになります。

以上のとおり「連射適性」は、極めてアナログな方法で調査されたものです。内部データを解析したわけではなく、連射パッドすら使用していないのです。ある程度の試行回数を経ているので一定の信憑性はあるものと自負はしておりますが、到底「正確」なものとはいえません。調査方法がアナログである以上、はっきりと目に見えない「連射適性」について、確かなことは何も言えません。「超」が「強」よりも優れている保証もありません。たまたま私や協力者の方の連打の調子が良かっただけかもしれません。「並」の技で「超」の技に割り込むことも可能です。しかしそれも、偶然技入力が再開された瞬間の1フレームに「並」の技が滑り込んだだけかもしれません。「クールタイム」そのものについても、私含む多くのユーザーの無数の対戦経験から存在はほぼ確実とみられるも、はっきり「存在する」と断言できる根拠もありません。

残念ながら、私は内部データを解析する知識も技術も持っておりません。また、時間もありません。もし、解析することで技ごとに正確なクールタイムを割り出すことができるなら、私もそれを知りたいです。

もしデータ解析が不可能な場合はアナログ検証しかありません。その場合最も現実的なのは連射パッドを用いた検証ですが、これは非常にハードルが高いです。

「連射適性」アナログ検証の問題点

第一に、ハードおよびソフトに対応した連射パッドが2つと、協力者が必要です。もっともこれは人的・物的問題なので、どうにかなる可能性は高いでしょう。

次の問題は技の数です。技は38種族で計637個も存在します。レンジ別に分けるとレンジ1技が148、レンジ2技が170、レンジ3技が162、レンジ4技が157です。このすべての技の入力優先順位=連射適性を調べるためには、それぞれのレンジの技数の階乗を合計した通りの組み合わせを調べなければなりません。技と技の間に相性が存在する可能性もあるため、この作業は避けられません。とてつもない数です。とても数日では終わりません。さらに前述のとおり「クールタイム」は存在は確実視されているものの、明確な根拠はありません。しかもこの「クールタイム」、存在するとしても、ある程度幅を持った乱数である可能性が高いのです。もし乱数でないなら、ある2つの技のみで互いに連打した場合、9割以上クールタイムが短い技ばかりが連続で出る結果にならなければ辻褄が合いません。しかし現実には「並」の技であっても「超」の技に割り込めることもありますし、プレイヤーごとの連打の基本的な速さや調子も毎回同じではないため、「技固有のクールタイムは存在し、かつそれはある程度の変域を持つ」可能性が高いと思われます。

連射パッドを使用して検証を行った場合

1Pと2Pでそれぞれ連射パッドを使用し、1PがAの技、2PがBの技をそれぞれ連打した場合、その結果によって、次のような仮説を立てることができます。

①1Pの技だけが出る
→この場合、技固有のクールタイムは存在せず、入力タイミングが同時の場合、1Pが入力した技が無条件に優先される。2Pの技ばかりが出る場合はその逆と考えられる。

②1Pと2Pの技が交互に出る
→この場合、技固有のクールタイムは存在せず、先の技を出した側が1フレームだけクールタイムを設定されるとすると、同じ連打速度ならほぼ技が交互に発動する。

③A(もしくはB)の技だけが出る
→1Pと2Pを入れ替えてもAの技ばかりが出る場合、技固有のクールタイムが存在し、しかもその値は乱数でなく固定値であり、技Bよりも技Aの方がクールタイムが短いと考えられる。Bの技ばかりが出る場合はその逆。

④A・Bどちらも出る・確率半々
→②のように必ずしも交互ではないがA・Bどちらの技も発動し、しかし試行回数を重ねれば最終的にどちらの発動率も50%に近づいていく場合は、入力タイミングが同時の場合はランダムで決定されている。

⑤A・Bどちらも出るが確率が偏る
→この場合は技固有のクールタイムが存在し、その値はある程度変域を持った乱数だと考えられる。技Aが出る確率が高い場合はクールタイムの基本値が短く(連射適性が高い)、技Bに偏る場合はその逆。

現在の見解では⑤の可能性が高いと考えておりますが、連射パッドを使用した検証を行うと、別の検証結果が得られる可能性はあると思われます。

ただ、もうひとつ調査を難しくしているのが、バトルフィールド位置とカメラワーク修正です。バトルフィールドの端の方で技を出したり、両者の間合いが極端に変わる技を出したりすると、技の後でカメラワークの修正が入る場合があり、この時間は両者ともに技を出せない、つまり「クールタイム」となります。このカメラワークの修正が発生する具体的な条件は明らかになっておらず、またバトルするモンスターの身体のサイズによっても変わってくるため、さらに問題が複雑化しています。しかし、カメラワークの修正中に出せる技があることも事実としてあり、そのような技は現状「連射適性が高い技」として表記させていただいております。

さらに、ディレイ(動作遅延)によるクールタイムが発生する場合があります。最近、有志の方の尽力によって、移植版のMF2でも、オンラインマニュアル戦が楽しめるようになりました。しかし、PS版の実機と違って、移植版のオンラインマニュアル戦はネット回線を使用しているため、回線の状況によってはディレイが発生する場合があり、結果的にそれがクールタイムとなってしまう場合があります。これはゲーム本来の仕様とは違いますが、移植版でアナログ検証を行う場合、このディレイが障壁になる可能性があります。なお、ディレイはオフライン(つまり1台のニンテンドースイッチにコントローラー2つで行う通常のマニュアル対戦)でも発生します。よってこの検証を行う場合、PS版実機で行う方が確実性が高いかもしれません。

まとめ

このように、目に見えないうえに、さまざまな要素が複雑に絡み合っているため、正確な情報を提示するのが極めて困難なものだということを、ご理解いただければと思います。なのでこれは私からのお願いでもあるのですが、もしこの先を検証、もしくはデータ解析ができる方がいらっしゃるなら、ぜひお願いしたいと存じます。少なくとも連射パッドを使えば、カメラワークの修正によるクールタイムが何フレーム程度かは計測できる可能性が高いと思われます(もっとも、これも毎回時間が異なっていそうで恐ろしいのではありますが……)

もちろん、実際の対戦で連射パッドを使うことはありませんし、これを知ったところでこれまでとそこまで大きな違いはないかと思われますが、知っているのと知らないのでは戦術に変化が生じることになります。MF2の技表に技移動、技時間、連射適性を表記したのは「最後の技表」が最初で、これを作って以降、MF2マニュアルバトル全体のレベルの向上に大きく寄与することができたと感じています。「MF2バトルマニア」では期待値と評価値を追加し、さらに「いぬらぼ」ではリード率の採用と、どんどんマニュアルバトルで勝率を高くするための情報をアップデートし続けています。なので、できれば知りたいんですよね。私の知識や技術では悔しいですがここが限界なので、この限界を突破して下さる方、お待ちしております。

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