最近のこと③「ハムスター」
明らかにおかしい。時間の流れ方、水あめのようにトロリとして、何も流れないの。
私だけじゃない、友人も、大好きなアーティストさんも、同じこと言ってる。
さあてどうしたものかと思い夜道を歩くと
カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ
小さな音がしてくる。もう一度耳を澄ませて。
カラカラカラカラカラカラカラカラカラカラカラ
聞き覚えのある音。昔、部屋でハムスターを飼ってたから私はすぐ分かった。どこかでハムスターが滑車をカラカラしているのだ!
でもハムスターは一体どこに?
「ここでちゅわ」
ああ、なんとまああざとい喋り方。
あなた絶対ハムスターの知識、ハム太郎のアニメで履修しただろ。
クリクリのおめめのジャンガリアンハムスター、のデカくてホワホワした状態。
昔飼ってたハムスターのおはぎちゃんにそっくり。可愛い。
「おはぎちゃん、あなたの滑車って気まぐれにカラカラしてるよね。だって私知ってるもん。同じ部屋で、ずっとずっと過ごしてきたもん。」
「そうでちゅわ。アタシの滑車は、あーたたちの9月の流れをコントロールするでちゅわ。先日いきなりいらした、ハムハムゴンザレスに任命されたのでちゅわ。」
「おはぎちゃん、最近、時間の流れがやたらとゆったりしたり激速なのは、おはぎちゃんのマイペースってことでいいの?」
「そうでちゅわ。何より私、飢えてるから、もうどうでもいいの。やけくそよヤケクソ。でちゅわ。」
ハムスターのおはぎが亡くなったのは4年前。
そのとき、餌含めハムスター飼育グッズ全部処理しちゃったから、今すぐにご飯食べさせてあげられないなって思って。ごめんね。
「でも、あなたがいるでちゅわ。だって貴方の見た目、どうみてもくるみでちゅわ。」
え
「そもそもワタシがいるこの滑車って、地球みたいなものでちゅわ。そこにいるお友達とでも、鏡で見せ合いっこしなさいよ。でちゅわ。」
たしかに、私と友人どちらも、人間辞めてて、ゴツゴツのくるみになってた。昔飼ってたとき、私はおはぎちゃんにくるみあげてたかな…あげていいのかな…どうしよう。
でもくるみ美味しいから、くるみの美味しさに免じて、正しく秋に向かうように滑車を回してもらおうと思ったの。
「お願いします、おはぎちゃん。私というくるみを、食べて機嫌戻して、秋へ向かってカラカラ走ってください」
「わかったでちゅわ」
明らかに、おはぎちゃんの小さくて綺麗な声ではない。
おはぎちゃんの皮を引き裂いてぬっと現れたのは、博士だった。死んだおはぎちゃんのシャリシャリの血を纏って生臭い、博士。
私は博士に丸呑みにされた。
「しけた味すんな」
博士の悪口を耳にしたのが最後。
これを見た人に秋が訪れてたらおはぎちゃんが回してる地球のような滑車を思い出してね。
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