夜が少し低くなる

1日に一体どのくらいの喜びや悲しみ、怒り、苦しみ、嫉妬、といった感情が自分の中で電光石火のように発生しているのだろうと最近考えるようになった。

このところ私は感情を隠さなくなった。感情を隠さなくなったというより体の表面や顔の皮膚まで感情が出なくなった。

おかしいことでも笑わないし、悲しいことでも泣かなくなった。

ただエイリアンかロボットか冷蔵庫か、人間以外のものに間違えられないように時折顔の皮膚をそれっぽく動かすだけだった。

とはいえ感情自体は絶滅したわけではなかった。自分の体のあちこちで対処しきれないウィルスのように感情は発生した。

些細なことで傷つき、些細なことで怒り、刹那的に死のうと思い、刹那的に生きようと思い、アメーバみたいに心がねばねばとした。

自分の感情がわからない。自分がわからない。だから他人がわからない。

コーヒーの入ったマグカップを持ち上げたときの重みが