大濠ヒストリー【ラストイヤー②】

いよいよこのシリーズも最後になりました。
楽しんでください!!

1、二度としたくない思い

インターハイではベスト8という結果でしたが、僕たちが目指していたのはあくまで「日本一」です。次のウィンターカップこそは、優勝を掴み取るために練習に励んでいたわけですが、僕たちは足踏みをしていました。どこか抜け出せない、そんな時期を過ごしていました。

そんな時に、あるバスケ関係者からこんな言葉を言われます。

「『もう二度としたくない思い』を何度もしないと勝てない!」

この言葉は僕にとって、とても大きな言葉でした。私の中で明確な心理変化がありました。

「チームの嫌われ者になろう」

当時から厳しい口調や姿勢でチームにコミットしていましたが、それをもう一段も二段も上げました。全ては勝つために。僕が気になること、納得のいかないこと、チームルールに反すること、事細かに目を見張り、指摘し、追求しました。(当時の僕は相当怖かっただろうし、嫌なヤツだったと思っています・・。)

チームメイトと“ど突き合い”の口論になったこともあります。

「そんなに衝突してチームに亀裂が入らない?」「この先、険悪にならない?」「気まずくない?」などというコメントが聞こえてきそうですが、

ここで生きてくるのが「同志であること」だと僕は思っています。

僕たちはどれだけ練習中に衝突しようが、お互いを激しく叱責しようが、信頼関係が崩れることはありませんでした。一歩コートを出ればいつもの日常です。むしろ、その関係性はさらに強固になっていきました。志を共にする仲間だからです。

こういった組織(チーム)を形成できるかがリーダーの手腕だと思っています。

リーダーは目立たなく良いんです。チームが正しい方向に進んでいれば黙って任せていれば良いと思ってます。何かの判断が必要な時、上手くいかない時、変化しなければいけない時に、全リスクを承知で矢面に立ち、軌道修正することがリーダーの役割であり、必要な素質だと思っています。

2、ウィンターカップを4位で終える

そうして望んだウィンターカップは、全国4位という結果を残すことができました。結果的に「日本一」にはあと2つ届きなかったので、その点では悔いが残りますね。

試合の詳細については、JBA公式サイトにお任せします。
1回戦:vs福島商業 82-71
2回戦:vs八王子 82-75
準々決勝:vs宇都宮工業戦 82-70
準決勝:vs延岡学園戦 53-102
3決:vs沼津中央 56-90
最終結果 全国4位
(「準決と3決どうした!?」と叫びたい)

3、引退

こうして僕は大濠での3年間のバスケットボールに終止符を打ちました。(正確には中学3年生途中からなので3.5年ですね)

全ての重圧から解放されて、どっと肩の力が抜けたのを覚えています。一言で言うなら、「安心感」です。重圧から解放された安心感。

バスケットボールを始めた頃から大濠高校に憧れていて、一度は田中國明"という豪快でどこまでも人間臭い頑固親父に拾ってもらいスタートした大濠人生ですが、あまりにも厳しい世界を目の当たりにし生き抜くだけで精一杯だった1年目がありました。奮起を誓った2年目でこれまでの伝統が途絶えさせてしまいました。そして、個人としても組織としても再起を誓った3年目は、大怪我に見舞われるアクシデントから始まりました。

走れど走れど目の前には壁が立ちはだかり、壁を乗り越えたと思ったら、そこは深い深い谷底で、谷底から必死に這い上がって、キャプテンとして進むべき目標へ旗揚げをしたら、そこには落とし穴があって旗が折れました。

なんだか、僕の大濠人生はあの頃思い描いていた”大濠トロージャンズ”では無かったのかもしれないです。

でも、「どっちの大濠人生が良かった?」と聞かれたら

僕は間違いなく「自分が歩んだ大濠人生」を選びます。

なぜならば、

このチーム、このメンバーでしかできない経験をできたからです。

伝統校だから感じることができた1試合1試合のとてつもないプレッシャー、
色々な苦労をしたからこそわかる1勝することの難しさと嬉しさ、
どんなことも乗り越えることができる精神的な強さと柔軟性、
心の底から尊敬でき、人生を変えてくれたヘッドコーチが2人もいて、
基本怖いけどプレーではいつも尻拭いをして、鼓舞してくれた先輩、
基本生意気だけどプレーではいつもハッスルして、勢いをくれた後輩、
いつも気にしてくれ、時には厳しくも温かい言葉で叱咤激励してくれたOB、
何よりも、苦楽を共にして一生同じ話題でもゲラゲラ笑い合える同志、

こんなに貴重な経験ができ、同志に出会うことができたわけです。

伝統を継承していた”だけ”では、この経験はできなかったと思います。

4、伝統は自分(たち)が”創る”もの

「エリートキャリアだね!」「伝統校だね、すごい!」

僕のキャリアを聞いた人は、よくそう言ってくれます。光栄なことです。

でも、いつも思ってたんです。

「"伝統"ってなんだろう」って。

”伝統”という概念には「”有形”と”無形”」という解釈がありますが、大濠で言う有形は”校舎”と”体育館”、あと"学生寮"くらいですかね。

確かに有形な伝統”大濠”は私立の進学校という側面を持っているので、総合的に見ると一般的には優秀なカテゴリーに分類されるでしょう。

しかし、代々脈々と受け継がれる”大濠バスケットボール”に関して言うと、無形ですよね。つまり定形がないわけです。

じゃあ、その大濠における”無形の伝統”のルーツってどこにあるのだろうか。

私が思うのは、

それぞれの生徒が、その時々のあらゆる状況や事情を考慮して、自分なりに考え抜き、時にお互いを助け合いながら、最善策(らしきもの)を出します。そうして出した答えを全力で信じて、実行してみて、失敗して、成功して、また考えて、と何度も何度も遮二無二になって取り組むんです。

そうやって先輩方も、各代にしか出せない功績が残ってきている。大濠が持つ代々に渡る強さのルーツは、この「思考し続ける文化」にあると考えています。なにも「伝統校に入ればOK」「入っているからすごい」では無いのです。なぜならその高校に入ることは手段だからです。

何度も心が折れながら、何度でも立ち上がる、歩みを止めず進み続ける、そのうちその執念が目に見える戦果として出現します。それこそが”伝統”を創るということに気が付きました。

例えば、これって個人に置き換えても同じことが言えると思うんです。今ある環境に満足して、ただ平然と毎日を過ごすのではなく、置かれた環境を「もっとよくするためにはどうしたらいいか」「何かもっとできないか」「もっと成長できないか」そういった姿勢こそが皆さん一人一人のオリジナルの伝統となり、人としての厚みと輝きを創ってくれます。

僕は大濠高校での日々を通して、こうした人生観を学ぶことができました。そしてそれは、今の私の行動指針でもあり、モットーになっています。

もし、読者の皆さんが、この文章から少しでも感じるものがあったとすれば、まさにいま、今日その瞬間から自分と向き合い、自分を超え続けるために、行動してみてください。そして、自分の一挙手一投足に期待してみてください。

きっと、貴方にしか歩めないオリジナルの道がひらけると思います。

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