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【ネスペ】合格には「過去問10年分を2週」が必要なのか考察した

 ネスペ合格は、午後問題が解けるか否かに左右されるのは言うまでもない。つまり、合格に向けた勉強において、午後問題対策にどれだけ学習時間を注げるかがとても重要であると言える。
 では、午後問題対策としてどのような学習メニューが有効なのだろうか。

 私は令和4年度ネスペ試験に合格した。私はいわゆるIT人材ではなく、事務職として働く社会人である。ネットワーク構築やサーバ構築はおろか、スイッチすら触ったことがない。学歴も情報系とは無縁である。
 そんな私でも一発合格できたので、比較的効率よく勉強できたと考えている。その自身の学習経験を踏まえ、次を提案したい。

【命題】
 ネスペ合格のためには、「過去問10年分を2週」の学習が必要である。

<前提>「過去問10年分」の定義

 午後問題は午後Ⅰが3問、午後Ⅱが2問であり、それぞれ2問、1問の選択が求められるため、試験本番では全てを解答する必要はない。
 しかし、何を選択すべきなのか、避けるべきなのかの感覚を養うためにも、学習時には全て解いておくことが望ましいと考える。

 そこで本稿では、「過去問1年分」と表現した時は、その年度の午後問題すべてを指すこととする。
 過去問1年分 = 午後Ⅰ 3問 + 午後Ⅱ 2問

つまり、過去問10年分とは次のとおり。
 午後Ⅰ :3問×10年分=30問
 午後Ⅱ :2問×10年分=20問

<本題>10年分の2週は必要なのか

 早速、「10年分2週」の必要性について議論したい。

※注意

 初めに断りを入れておくが、筆者が「10年分2週」を必要と考える根拠は自身がネスペの試験勉強を通して得た経験値でしかなく、定量的な裏付けはない。よって、論理建てた説明はできず、そういった意味では一つの感想でしかないとの前提に立つことに注意されたい。

反論は?

 先に述べたように、この命題の証明のためには定量的な情報をベースとできない。そこで、背理法的な視点で検討しようと思う。
 「10年分2週は勉強メニューとして適していないと考える派」の意見は何だろう。
 他にどのような勉強戦略があるのか。

 考え付くものとして、この辺りか。

 ①教科書・テキストを読み込みの方が重要
 ②直近5年分の問題文を暗記するくらい何度も解きなおす
 ③過去15年分を1週
 ④何度も受験(不合格)していて過去問は何週もした
 ⑤そもそもそんなに難しい試験じゃない

それぞれ反論していこう。

①「教科書・テキストを読み込む」への反論

【結論】
・アウトプットできなければ点数にならない。

【理由】
 近年、Youtube、Twitter、Instagram等のSNSで自身の勉強状況を発信している方が増えた。ネスペや安全確保支援士等のIPA試験の発信者も少なからずいるように思う。私も刺激を受けたいと、時々覗かせていただいている。その中で、試験1か月前になっても未だにテキストに沿って基礎を勉強しているケースがあった。間に合わないだろうなぁ・・・と思っていると、案の定不合格となってしまった方を複数例見てきた。

 どのような場合も、試験と名の付く以上、その性質は、
 「覚える」≠「点数」
だと私は考える。覚えていても、解答用紙に書けなければ当然点数とはならない。覚える(インプット)だけでは、試験で解答(アウトプット)できるとは限らない。屁理屈のようだが、性質の違うものだと理解してほしい。

 試験はアウトプットの場である。アウトプットする訓練を積まないと、試験で結果はついてこない。テキストの読み込み自体はとても有益であろうが、インプット中心の学習は早めに終え、試験が近づくほどアウトプット中心の学習を行うべきであろう。基礎不足を感じた時だけ、必要単元のテキストに戻ればよい。
 先の「不合格例」へのアドバイスとしては、「過去問10年分2週」ができる時間を確保するために試験日から逆算し、それまでにインプット学習を終えておくようにスケジューリングすることである。

②「過去5年の問題文を暗記するくらい何度も解きなおす」への反論

【結論】
・イレギュラーへの対応経験が足りない。

【理由】
 過去5年分でもそれなりに量があり、①よりは圧倒的に効果が高いだろう。それを「暗記するくらい」なのだから、注ぐ労力は「10年分2週」と同じか、むしろ高いかもしれない。

 でも、試験は何が問われるか分からない。出題者視点に立つと、過去に似ないようにあらゆる工夫を凝らしてくるだろうと想像できる。つまり、意図的にイレギュラーを起こしに来るのである。この性質を考えたとき、手札が多く、経験値が多い方がよりイレギュラーに対処可能なのは想像にたやすい。イレギュラーと表現したが、「表現を変えた問題」(「意味の取りにくい問題」)と変換すると分かり易いだろうか。

 国語力どうこうではなく、一見して意味の取りにくい問題は少なからず存在すると思う。私は過去13年程度の問題を振り返ったので、それなりの問題数を見てきたつもりだ。それでも、初見では「何言ってんの?」や「意味わからん。」的な問題が多々あったし、試験本番でも残念ながらそれは現れた。そんな場合でも、「つまり、これはこういうことを言いたいのだろう。」との変換ができた。多くの問題を解いた経験値がこれを可能にしたのである。

 「何言ってんの?」問題への対処として、「このケースではこんな問題が問われるだろう。」との予想を立てるアプローチも有効だ。例えばルーティング設計の大問ならば、「ループの回避」が定番の答えとなる。多くの過去問に触れた方であれば、いずれかの問題でこれが問われる可能性が高いことに気づくはずだ。「よくわかんないけど、出題者は「ループの回避」と答えさせようとした設問なのだろう。」といった逆算もできるようになってくる。

 このような対応力は過去5年分だけで培うことは難しいし、問題文を暗記したところで養える感覚でもない。確かに5年分も問題文を暗記すれば、その「一般的な技術」に関する基礎は身につくかもしれない。しかし、イレギュラーへの対応力が身につくかは疑問である。様々な問題バリエーションへの対応力を磨くにはより多くの問題に触れ、それを身に着ける訓練が必要であると考える。

③「過去15年分を1週」への反論

【結論】
・仮に1週で問題と解答を深く理解できたのであれば、そもそも既に合格ラインに達しているだろう。

【理由】
 2周目に時間を費やすより、もっと多くの問題に触れる機会を増やそうという意図であろう。確かに、②で述べた論理展開ならば、多くの問題に触れるだけ引き出しの数もより多くなることが期待される。論点は、1週or2週、10年or15年の二つである。

 まず、2週すべきか問題。もし過去10年あるいは15年分の内容を覚え、尚且つそれを自身の言葉で表現できるのならば、確かに1週でよいだろう。ただ、それは十分に理解が進んでいる人でないとできないはずだ。

 1週目で問題のバリエーションに触れ、2週目でアウトプットの訓練をするというのが私の考えるステップアップである。学習途上において、ほとんどの場合は1週目から合格点に達することは難しい。多くの「知らなかったこと」や「問題文の意味が分からずに(あるいは勘違いして)解けなかった問題」、「どう書けば分からなかった問題」と出会うはずである。これと向き合うのが2週目である。

 問題文をしっかり読み、答えに至るプロセスを検討する作業は本番に向けて最もよい訓練だと信じているが、それは2週目でも変わらない。しかも、それを指定文字数以内で自身の言葉でアウトプットできるようになるには、1週(同じ問題を1回だけのアウトプット訓練)で足りるのだろうかと疑問である。
 よく、1週目の見直しで答えを暗記してしまったので2週目は意味がない、という人がいる。これは「答える」ことに重きを置いており、学習方法を間違えていると思う。なぜその答えになるのか、根拠を探す作業に切り替えてほしい

 ちなみに同じ問題を解く場合、少なくとも中2週間を開けておきたい。記憶が鮮明なうちに同じ内容を見ると、脳が思考停止して論理立てる作業を怠ってしまいがちなので、効果は薄くなってしまうと思う。

 一方で、必ずしも全ての問題を2週すべきとは思わない。中には簡単に感じる問題もあるし、特に学習が進めば初見でクリアして一回目で理解してしまえるものも出てくるだろう。そのような問題は2週目のメニューから排除してよい。同じ時間を費やすなら、2回目でも理解が進まなかった問題があるはずなので、3回目を繰り返す方が優先度は高い。

 もう一つ、「15年」の必要性について考えたい。遡るほど現在の傾向と外れる試験もあるが、ネスペ試験に関してはそこまでとは思わない。よって15年前の問題は「不必要」とは言えないし、むしろ良問と思える問題もあった。(平成21年PMⅡのPKIなど、現在も色褪せない技術であり十分問われ得るのでやって損はない。)
 確かに、例えば平成23年の午後Ⅰ問題で「待ち行列モデル」の問題が出題されたが、これを最後に以降は出題されていない。このように最近の傾向と異なる問題があることは確かだが、出題の可能性がないわけではない(少なくとも午前問題では度々目にする)はずである。あくまで優先度が落ちるだけであり、この平成23年に限らず過去問はやればやるほど試験で解答する力は身につくので、時間との相談になる。

④何度も受験(不合格)していて過去問は何週もした

【結論】
・「10年分2週」すれば必ず合格できるわけではない。

【理由】
 突き放すような結論だが、本稿は、合格率を高めるためにより有効な方法と必要量を議論するもので、必勝法を検討するものではない。そもそも、合格率が例年10数パーセントである以上、必ず不合格者が8割はいることになり、必ず合格するメニューという提案は残念ながら難しい。不本意ではあるが、この結論となる。
 もし本当に何週もしたのであれば、取り組み方の意識を見直すべきだろう。受けた年の出題内容との相性といった運要素もあるだろうが、「10年分2週」をしっかりとした意図でこなせたのなら、複数回あれば通るはずであると考える。
 よって、ここでは過去問を何周したにもかかわらず不合格となってしまった方や、これから過去問演習を行う方へのアドバイスに切り替えたい。

過去問演習におけるアドバイス

✔過去問演習の意図を見直す
 試験勉強における過去問演習は、「答えを導く根拠を探すこと」に集中してほしい。上でも触れたが、試験勉強では「正解を解答すること」を目的とすべきでない。なぜなら、本番で求められる作業は「根拠の探索」であり、その先に「正解」がある。根拠のない解答は“カン“でしかない。
 不合格となった人の中で、「過去問はシナプスレベルで正答できるくらい取り組んできた。」との意見を見たことがあった。これはまさに、「正解を解答すること」を目的としてしまった人の典型だと思う。答えを覚えてしまっていたとしても、①正解までのプロセスを考え、②根拠を探し、③自分の言葉で表現する、この3つを大切にしてほしい。(もちろん、「用語を答えよ」といった類の設問はこれに限らない。)

✔部分点を狙った解答文章を書けるようにする
 記述問題の重要度は大きい。公表されていないが、20文字以上を求める問題ではおそらく1問あたり6~8点が配点されているだろう。これが0点となったらダメージは大きい。午後Ⅰの大問1つを50点とすれば、記述問題2問を失ったらそれだけで合格ラインの30点が怪しくなる。このことからも、「用語を答えよ」といった類の設問より、こちらを重点的に磨いておくべきであることは明白だ。
 そこで、「0点にならないこと」を最低限確保したい。当然、空欄は0点にしかならないので厳禁である。あくまで私の印象だが、「完答」の難易度は高いが、部分点は意外と甘め、と見ている。何かを書けば点数になる可能性が高い。
 そして何より、答えの方向性は「過去の答え」と大きく逸脱しない。問題の切り口が変わっただけで、多くの場合で求められている答えはほぼ同じということである。過去問演習の時にこのような経験はないだろうか。

 ある問題に悩みに悩み、結局答えが書けなかった。でも、模範解答を見たら「え?こんな解答でいいの?」と思わせるような内容に拍子抜けした。

 そう、「こんな解答」で良かったりする。過去問の答えをだけを見たときに、午前Ⅱをクリアできるくらいの知識がある人であれば、難しそうな言葉が並ぶような解答は少ないことに気づく。それはつまり、試験本番で突拍子もない記述は求められないことを意味する。試験本番でいつもと違う緊張感から力が入り、難しく考え、「何か違うこと」をやってしまうと落とし穴になる。過去問演習と同じように望めばよい。

⑤そもそもそんなに難しい試験じゃない

【結論】
・それは一部同意する。
・でも、しっかりとした積み上げがないと本番で的確なアウトプットできないレベルの試験だと思う。

【理由】
 私もネスペは難しい試験ではないと思う一人だ。実際のところ、試験ではそこまで深い知識は求められないからである。前述のとおり、私はネットワーク構築やスイッチ設定の経験はない。そんな人間でも合格できてしまう。いずれにせよ、最大4割落としてもネットワークスペシャリストを名乗れるのである。
 では、本試験が合格率2割未満となる要因はなんだろう。やはり演習不足(特に午後問題の訓練不足)が大半だと思う。遠回しのような問いかけと対話できるようになるスキルは、それなりに過去の例と向き合うことでしか得られないだろう。この独特な言い回しは国語力の問題では解決できない。
 問題文を理解した次には、それを指定文字数でまとめ上げる作業が必要である。知識がある人ほど「アレも」「コレも」と詰め込みがちになって文字数オーバーを招き、推敲に時間がかかってしまうだろう。加えて、問題文をよく読むと「書き過ぎたもの」が不要である根拠が書かれていたりする。その場合はむしろ減点となるだろう。
 つまり、必ずしもネットワークの知識や経験だけで対処できない点が本試験の難しさである。充分に知識や経験がある人でも過去問の量に拘ってほしい。(逆に言えば、知識や経験不足は過去問演習で補えるのがネスペ試験である。)

まとめ

 ここまで、ネスペ試験には過去問(午後問題)演習の重要性を解いてきた。
 ・アウトプットの訓練
 ・イレギュラーへの対応力
 ・過去問の(答えの)傾向把握

 大きくはこの3点を過去問演習で身に着けることを目的としたとき、
「10年分の2週」がとても有効であり、合格率を高めるには必要な絶対量であると結論付けたい。



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