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モモチップスの感想文

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モモチップスが鑑賞した作品の感想文です。
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2022年3月の記事一覧

『物語 ウクライナの歴史』感想

日本の駐ウクライナ大使を務めた著者・黒川祐次の手によるウクライナの歴史の概説書です。選書理由に関しては言うに及ばず、現在起きていることに対する己の認識を深めるためというか、いわば解像度を上げたいと思って読みました。 ロシアを舞台にした小説やエッセイなどを読んだことはこれまでもないわけではなかったのですが、ウクライナという国に対して自分がこれほど何も知らないとは、愕然とした気分になりました。 というのも、本書で述べられているとおりウクライナはその歴史のほとんどを他の国に統治

『日本人のための第一次世界大戦史』感想

板谷敏彦著『日本人のための第一次世界大戦史』を読みました。 日本におけるWW1は、WW2の凄惨さの影に隠れて、ほとんどWW2への助走のような理解をされている印象があるのですが、ヨーロッパにおいてはそうではないということをまざまざと感じられる本。戦闘や政治についてのみならず、包括的にWW1について学べる良書でした。 カナダが舞台となるモンゴメリの『赤毛のアン』シリーズでも、終盤になるとアンの息子たちが第一次大戦に駆り出されて行ったことが個人的には印象に残っていて、「ああ、当

『転生! 太宰治』感想

佐藤友哉著『転生! 太宰治』を「転生して、すみません」からFINALの「コロナで、グッド・バイ」まで読みました。 入水したはずの太宰治が現代に転生し、行きずりの女と心中しかけたり地下アイドルに芥川賞を取らせようとしたりする話。 知らない人のAmazonレビューにもこう書いてあったのですけど、「何もかもがよかった」。 転生した太宰の一人称小説という設定になっているので、終始太宰の文体を意識したちょっとまわりくどいような文章になっているのが特徴。その一方で太宰が『文豪ストレ