会心の一撃

 あれはなんだったっけな。……そう、ライブを見て涙したのだ。高校の文化祭だった気がする、僕はバンドなどロクに知らなかったし、ボーカルは画用紙に歌詞を書いて、めくりながら歌っていて、ズタボロだったのに、僕はそれで涙したのだ。ひとりだけ本当に一生懸命に弾いている人がいて、その人に心を打たれたのだと、思う。そう、あれはRADWIMPSの「会心の一撃」だった。

 大学で、貪欲に音楽を聴き漁り、勝手に心を熱くしたり、ライブをやって楽しんだり、とにかくあの子になりたくて、僕なりの格好良さというものを見つめる日々だったと思う。


 音楽でまた、やるせない気持ちになり、人を信じることが出来なくなり、いよいよやめようとした時、手元にあったiPadで音楽をつくった 楽しくて、またやろうと思えた。どんなフレーズだったかは覚えていない。

 コロナで大学の卒業ライブが出来なくなり、多分僕はまだ卒業出来ていないのだ。作曲を始める、バンドを始める、バンドのための曲をつくる、そして、バンドを辞める。その最後のライブくらいは、あのときの感動を、あのときの楽しさを、ベッドの上で聴いて、胸が熱くなったあの曲との出会いや、あのときの悔しさすべてを含めて会心の一撃を食らわせてやらなければならないといけないのだ。そうでなければ僕の人生は報われなんてしないのだ。ここまでの会心率が、収束するのはここなのだ。

 本当はやるつもりではなかったのに、また楽器を手に取った18歳の僕へ。きっと多分、あの子のとなりくらいは並べているんじゃないか。そう思えるくらいのクリーンヒットを、全人類に刻む勢いで、あの子に食らわせてやるつもりで、会心の一撃をぶち込む予定である。


牛丼を食べたいです。