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医療法人社団實理会理事長、東京国際大堀病院 院長・医学博士 大堀 理(Makoto O…

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医療法人社団實理会理事長、東京国際大堀病院 院長・医学博士 大堀 理(Makoto Ohori)前立腺がんの診断と治療・手術支援ロボットda Vinci  日本泌尿器科学会認定専門医,指導医,日本がん治療認定医機構専門医, ロボット外科学会国内A級認定,国際A級認定

最近の記事

前立腺がんロボット手術:ED

前立腺がんのロボット手術はとても良い手術と思っていますが、最近では若い方も多く見つかり性機能障害が一つの問題です。以下、患者さんと私の典型的な会話で説明できればと思います。 患者さん:性機能障害が気になります。 私:そうですね、勃起をコントロールする神経(海綿体神経)が前立腺の左右に1本ずつ通っています。両方、片側を温存するか、両方とも温存しない方針に分かれます。 患者さん:どうやって方針を決めるのですか? 私:前立腺がんの場所、大きさ、悪性度などをMRIなどの画像、直腸診

    • 前立腺がんロボット手術:入院期間

      前立腺がんのロボット手術は、従来のお腹を開ける手術とかなり違い、体への負担は少ないです。とは言っても大きな手術ですので、日本では入院期間は一般的に2週間くらいです。米国では入院期間は極端に短く、多くが1泊2日です。中には日帰り手術でやっているところもあります。日本でも可能かどうかと言う、可能です。しかし、患者さんは尿の管をつけたまま退院しなくてはなりません。ほとんどの日本の方はそう言う状態では退院したくないだろうと思います。また、さすがに手術後2−3日は傷の痛みもありますので

      • 前立腺レクチャー10:小線源療法

        放射線治療には大きく体の外から放射線をあてる外照射と前立腺の中からあてる小線源があります。 小線源は比較的新しい治療方法ですが、既に日本でも定着し、この治療を年間多くこなす施設も沢山あります。 私も東京医大時代、放射線科の先生と一緒に立ち上げ、小線源室長でした。小線源は英語でBrachytherapy(ブラキセラピー)と呼びますが、その意味は小線源が挿入された写真が樹木のような形から来ている様です。  長所は3泊4日、あるいは4泊5日の比較的短い入院期間で済むということ、さら

        • 前立腺レクチャー9:前立腺がんの予防

          前立腺がんの予防について一般的に言われていることをまとめ羅列します (ロボット手術と前立腺がん、大堀理、祥伝社新書から)。しかし、気をつけて頂きたいのは、バランスの良い食事に尽きる、ということです。予防に良いものとされるものでも過剰にとると逆効果ということは良くあります。良いものを取り入れながらバランス良くということです。昨今、健康における食事の本が沢山出ていますが共通点はバランスの良い食事ということだと思います。 ・ 1日摂取カロリーを減らす(適度な運動をする) ・ 赤身の

        前立腺がんロボット手術:ED

          前立腺レクチャー8:経過観察

          早期前立腺がんの治療方法の中で昔から経過観察という手法があります。現在ではPSA監視療法と呼ぶことが多いです。要はがんと診断されたのにも拘らず、手術、放射線、内分泌治療などをせずに、定期的にPSA血液検査をしたり、MRI検査をしたり、またできたら1年ごと、2年ごとに前立腺生検を実施したりして前立腺がんの状況を見ながら行こうというやり方です。なぜ、こういうやり方が昔からあったかというと、基本的に前立腺がんの成長はゆっくりである、前立腺がんそのものは極めて頻度の高いがんですが、中

          前立腺レクチャー8:経過観察

          ほっとする

          オリンピック選手の試合後のインタビューで、特に優勝し金メダルを獲得した選手からは、「ほっとしました」という言葉が聞かれます。特に試合直後は、勝てたことの実感、金メダルととったことの実感というよりは、長い間、重圧に耐え忍んできたことからの開放感が先に来るのかなと思います。特に勝って当たり前の様に言われてきた選手は本当にほっとするのだろうと思います。我々、医師、特に重圧のかかる手術を多くしている医師にも共通なほっと感があります。手術直後のほっと感、手術後も何もなく無事退院するとき

          ほっとする

          必要な孤独

          「スマホ脳」はベストセラーが続いているようです。以前、このブログでも紹介しましたが、いかに、多くの人がスマホで便利な生活をしている反面、スマホで占められた生活から抜け出したいかもわかります。スマホ脳に続いて「デジタルミニマリスト。スマホに依存しない生き方」カル・ニューポート著、池田真紀子約(ハヤカワフィクション文庫)を読んでいます。面白い話が沢山載っていますが、1人で過ごす時間を持とう、と言う章にリンカーン大統領のことが書かれています。リンカーン大統領はワシントンDCを見渡せ

          必要な孤独

          医療の現場最前線

          7月3日土曜日の午後2時半から30分間、東京MXテレビの「医療の現場最前線」と言う番組で東京国際大堀病院が取り上げられました。更なる高齢化を迎え、当院が専門にしている泌尿器科・婦人科疾患(排尿障害、前立腺肥大、前立腺がん、臓器脱、子宮疾患)はさらに増えます。そこら辺の情報・紹介はできたのかなーと感じました。しかし、テレビに自分の顔がうつるたびに手術を終えたばかりの疲れた顔で我ながら嫌になりました。しかし、他に出てきた先生たちは説明もうまく、皆、実際そうなように優しくて良い感じ

          医療の現場最前線

          前立腺レクチャー:ロボット手術・リンパ節郭清

          早期前立腺がんのリンパ節郭清は昔から論議のあるところです。手術の際に前立腺をきれいに摘出するのが一番の目的ですが、前立腺の周囲にあるリンパ節(脂肪の中に隠れている)をとることも意義があるのではないか?と言われています。ロボットを使用した手術の方が拡大して見えるので、リンパ節もきれいに取れる感じがしますが、やはりそれなりに時間がかかります。大急ぎでやって40−50分と言ったとことです。前立腺のがん細胞がいく可能性のあるリンパ節は外腸骨リンパ節、内腸骨リンパ節、閉鎖リンパ節が中心

          前立腺レクチャー:ロボット手術・リンパ節郭清

          電気自動車は本当にクリーンなのか?

          Numbers Don’t Lie (バーツラフ・シュミル著、栗木さつき、熊谷千寿訳、N H K出版)を読んでいます。世界に起こっていることを数字で表して解釈していますがとても面白いです。 最近ではさらに電気自動車・自動運転が普通に語られていますが、前から電気自動車って本当に環境に良いのかと言う素朴な疑問がありました。この本の中でも、取り上げていますが、いくつかの国では水力発電が多く、そのクリーンなエネルギーが電気となっている。ところが中国・インドをはじめとした国々は化石燃料

          電気自動車は本当にクリーンなのか?

          HINOTORI

          ロボット手術で用いてるアメリカ製のダヴィンチはとても頑丈で素晴らしい機械です。世界中で3000台を超えるダヴィンチ、日本でも400台が稼働しています。先週だけでも当院で5人のロボット手術をしましたが、私が医者になった35年前には考えもつかなかったことをやっているのだなーと思います。ダヴィンチも基本構造はこの20年間同じで、様々な改良が加えられ、現在は第4世代のダヴィンチを使っています。今後も改善が加えられていくのだと多いますが、当初から言われていたコストの高さだけは、あまり改

          ザリガニの鳴くところ

          手術、外来、病院運営などなど多忙な毎日ですが、読書だけは時間を見つけては継続しています。本屋さんに行くと、色々なランキングで「これが面白い」という広告・宣伝に溢れていて、それに乗せられて買うのにちょっと抵抗を感じますが、そうは言っても結局、ランキングの高めの本をつい買ったりしています。今回は本屋大賞翻訳小説部門1位になっていた「ザリガニの鳴くところ」デイーリア・オーエンズ著、友廣純訳、早川書房、を読みました。アメリカのノース・カロライナの湿地に住み、家族に見捨てられた少女が成

          ザリガニの鳴くところ

          ひとつむぎの手

          「ひとつむぎの手」知念実希人著(新潮文庫)を読みました。まさしく、医療版の半澤直樹と言う感じで、とても面白かったです。白い巨塔の中での若い医師の理想と現実を描いているのだと思います。本の中に出てくる典型的な白い巨塔の構図、野心満々の教授、出世を企んでその教授にヘコヘコする医者などは、強調されている部分はあるにしても実際にあるなーと思う場面がほとんどです。この主人公の様に、寝る間もなく働いている若手・中堅の医師が支えている部分も大きいと感じます。白い巨塔は日本独特かもしれません

          ひとつむぎの手

          健診と検診

          健診と検診、同じ読み方ですが中身は随分違います。健診は血液検査、尿検査、心電図、胸部レントゲンなどの基礎となる検査をします。もちろん、レントゲンをとったら小さい影がとかということもありますし、血液で中性脂肪が高いとか、コレステロールが高いとか、いわゆる生活病的なことはわかりますが。会社で義務としてやるのはこの健診のことが多いと思います。一方で検診はがん検診、大腸検診、胃がん検診などのようにターゲットの病気を早期に見つけようというものです。当然ですが、我々がやるべきは検診です。

          健診と検診

          シシリーでの学会

          1993年の秋に学会でイタリアのシシリー島に行きました。ヒューストンのベイラー医科大学に留学3年目にインストラクター、4年目にアシスタントプロフェッサー(講師レベル)に昇任してもらいました。その頃は臨床のデータをまとめる係で面白いプロジェクトを沢山持っていて、学会でも沢山発表していました。ほとんどがボスのスカルデイーノ先生に見てもらいながらのプロジェクトでしたが、ボスも私のデータやスライドを多く使い世界各地で講演をしていました。そんなことのご褒美だと思うのですが、シシリー島の

          シシリーでの学会

          前立腺レクチャー3:超音波検査

          現在は前立腺の画像で診断ではMRIが全盛期です。確かにMRIは前立腺の中の構造を良く見ることができます。しかし、長年にわたり超音波が最も有効な方法として用いられてきました。もともと1970年頃に東北大の先生たちが超音波の器械を肛門から入れ、開発したところから初まります。画期的な発見・開発だと思います。その後、東北大の先生のお一人が京都の大学に主任教授として移られ、私も米国に留学する前に勉強にいかせてもらいました。前立腺は骨盤の一番深いところにありますが、肛門からは近く、超音波

          前立腺レクチャー3:超音波検査