雑読日記2020.12.18 30 +M 2020年12月18日 22:16 今日は、2020年に読んだ本(出版された本ではない)ベストテイク。絞りに絞ってこれだけ。順位はありません。ソシオメディア株式会社、上野学、藤井幸多著、上野学監修『オブジェクト指向UIデザイン 使いやすいソフトウェアの原理』に着手する。ううむ、いかにも「実用書」といった体裁。本屋に並んでたらデザイナーではないおれが絶対手に取らないであろう「実用書」感。。笑 pic.twitter.com/zkZs7z9lDC— 金曜日の+M (@freakscafe) June 12, 2020 上野学さんにインタビューしました。OOUI?何その専門用語。私には関係ないや、とか思わずにぜひ一読ください。デザイナーの人以外が読んでも面白い話になってます。オブジェクト指向デザインの道具論 – +M解題インタビューシリーズ Vol.1 / 上野 学 | ÉKRITS / エクリ https://t.co/AHFcujgORr— 金曜日の+M (@freakscafe) October 28, 2020 伊藤亜紗『手の倫理』(講談社)私たちは他者と、相手との距離を前提とする視覚的な関係を結ぶ。人間関係とは「距離を測る」ということだ。だが触覚的な関係においては、最初から距離がない。「信頼して相手に身をあずけると、あずけた分だけ相手のことを知ることができる」。 pic.twitter.com/Bnv25ZDcpw— 金曜日の+M (@freakscafe) December 12, 2020 片山洋次郎『生き抜くための整体』(河出文庫)。2014年に「14歳の世渡り術」シリーズの一冊として出版された書籍が文庫化。内外から絶え間ない変化に晒される心身とバランスをつけながら、如何に常にリラックスした状態で生きていくか、その「身構え」の実践。 pic.twitter.com/tJJBY7rvaZ— 金曜日の+M (@freakscafe) January 20, 2020 クリストファー・アレグザンダー『ザ・ネイチャー・オブ・オーダー』(中埜博監訳 鹿島出版界)。とても面白い構成の本で、600点余の図版を使って、生き生きとした、生命が現れてくるパタンを、理論以前にまずその「感じ」として描出するところから始められる。 pic.twitter.com/ttFZbvSfSy— 金曜日の+M (@freakscafe) January 13, 2020 リサ・フェルドマン・バレット『情動はこうしてつくられる』(高橋洋訳 紀伊国屋書店)。喜怒哀楽といった情動は、それに個別に対応する生物学的・神経学的指標があるわけではなく、都度「概念」によって構成される。その機序を説き、さらに我々の健康や法制度に応用する実践的アイデアを提案する。 pic.twitter.com/0CM1Gm8XAx— 金曜日の+M (@freakscafe) February 22, 2020 不吉霊二『あばよ ~ベイビーイッツユー~』(リイド社)。作者のことは何も知らず、何気に本屋で手に取ったら、見開きでこの写真のページ。すぐ「これはやばいブツだ」と直感してレジへ。いや、なんだ、ただの天才じゃねえか。読んでいると、無闇に切ない、楽しい、嬉しい。最高です。 pic.twitter.com/UJNVkNf60t— 金曜日の+M (@freakscafe) February 21, 2020 ジョセフ・ヘンリック『文化がヒトを進化させた』(今西康子訳 白揚社)。人類は文化に依存している種だ。狩の方法、道具のつくり方、言語使用など、ヒトは生得的でもなく自ら発明したわけでもない文化的蓄積に依存して生きている。そのことは、人の心理や行動、神経組織や身体構造にまで影響する。 pic.twitter.com/32H6DIUu2w— 金曜日の+M (@freakscafe) February 13, 2020 鈴木宏昭『類似と思考』(ちくま学芸文庫)。「われわれの認知活動を支えるのは、規則やルールではなく、類似を用いた思考=類推である。」だが、思考を支える「類似」とは、二項の何が“似ている”のか。 pic.twitter.com/V7nS1U2Y5T— 金曜日の+M (@freakscafe) March 23, 2020 フィリップ・デスコラ『自然と文化を越えて』(小林徹訳 水声社)。人が存在するものを同定する様式をアニミズム/トーテミズム/ナチュラリズム/アナロジーの四類型で整理して、さらに個々の存在同士の繋がりの諸形態を説いて、存在の「可能事の目録」を示唆する、ラディカル且つ遠大な射程の一書。 pic.twitter.com/Wo7usd5jCO— 金曜日の+M (@freakscafe) April 11, 2020 小川さやか『チョンキンマンションのボスは知っている』(春秋社)。香港ーアフリカ間の中古車ディーラー、カラマとの付き合いを通して、インフォーマルなビジネスを背景にした独特の人間関係の様態を描き出す。その考え方や身ごなしは、より普遍的なストリートワイズとして、我々日本人にも教訓的だ。 pic.twitter.com/OM8d6GCrqB— 金曜日の+M (@freakscafe) April 12, 2020 横尾忠則『タマ、帰っておいで』(講談社)。泣く。 pic.twitter.com/sWtLXNjuEE— 金曜日の+M (@freakscafe) April 24, 2020 マーク・チャンギージー『ヒトの目、驚異の進化』(石田英敬解説 柴田裕之訳 ハヤカワ文庫)。ヒトの目の進化を、「テレパシー」「透視」「未来予見」「霊読」の四つの「超能力」が実現されているものだとして、その特異性を説く。解説に概略がまとめられているので、まずそこから読んでもいい。 pic.twitter.com/2GUawUfrnB— 金曜日の+M (@freakscafe) April 23, 2020 大藪泰『共同注意の発達』(新曜社)。幼児が母親と玩具で遊んでいる。この<私ー物ー他者>の三項関係が、人と世界との関係の原基となる。乳幼児の身体が自己、物、他者との関係を結ぶ場面から、母親の身体が子の身体を共振的に「巻き込み」つつ、人の生活・文化へと「調律ー訓化」する経緯を追う。 pic.twitter.com/qWsCXgOBc4— 金曜日の+M (@freakscafe) May 4, 2020 坂東洋介『徂徠学派から国学へ』(ぺりかん社)。十八世紀、儒学においてラディカルな転回を達成した荻生徂徠と、その陰画としての継承者賀茂真淵。彼等は共に「われわれの『彼(かしこ)』に確固たる輪郭を備えてある『物』」に倣う人間像を提起した。 pic.twitter.com/VPYjNjgQxL— 金曜日の+M (@freakscafe) May 9, 2020 ピーター・ゴドフリー・スミス『タコの心身問題 頭足類から考える意識の起源』(夏目大訳 みすず書房)。「彼ら」が何より興味深いのは、そばにいると、何かが通じ合ったと感じることだ。私たちのほうをじっと見つめてくるが、一定の距離は保とうとする。(4) pic.twitter.com/8a3vcAV7mu— 金曜日の+M (@freakscafe) May 17, 2020 樋口直美『誤作動する脳』(医学書院)。レビー小体型認知症と診断された著者が、病気を「脳の誤作動」として捉え直し、「目の前の世界を違う形で認識する体験と不思議」を驚異の眼差しで緻密に記述する。 pic.twitter.com/mphMJJe5IZ— 金曜日の+M (@freakscafe) May 21, 2020 今村夏子『木になった亜沙』(文藝春秋)。誰もが、生まれつき、呪われている。その呪いには、何の因果も、理由もない。生まれる、ということは、偏る、ということなのかもしれない。たぶん、この世とは、そんなところなのだ。偏った存在が、何の理由もなく、自分の歪さを生きて、死んでいく。 pic.twitter.com/ifiVvHMtUp— 金曜日の+M (@freakscafe) May 23, 2020 ジョン・A・シヴィック『まとまりがない動物たち 個性と進化の謎を解く』(染田屋茂・鍋倉僚介訳 原書房)。「個性」は動物種に普遍的な現象である。動物は、新しい環境変化の課題に対して、常に個体の独自性を頼りにしつつ、同時に相互の協力によって、それに対処しているのである。 pic.twitter.com/wB8W2iQnli— 金曜日の+M (@freakscafe) June 2, 2020 鷲尾和彦の写真集『Station』(夕書房)を手に入れる。カメラは、欧州の駅で行き交う「難民」の姿を捉える。疲労感と不安感、期待感が入り混じった佇まい。この佇まいに、普遍的な寄る辺なさのおもかげが浮かぶ。故郷喪失者としての私たちにとって、むしろ彼等の佇まいこそが切実に感じられる。 pic.twitter.com/h8bVl30xCC— 金曜日の+M (@freakscafe) July 8, 2020 ダニエル・L・エヴェレット『言語の起源 人類の最も偉大な発明』(白楊社)。快著『ピダハン』の著者による言語起源論。言語が言語として独立したものではなく、言語は人間のコミュニケーションへの体勢のひとつの側面であるとして、その起源ー基底を探る。 pic.twitter.com/ih3rABNxvV— 金曜日の+M (@freakscafe) July 22, 2020 アリソン・ゴプニック『哲学する赤ちゃん』(青木玲訳 亜紀書房)。人間が持つ最大の進化的利点は、進化の制約から逃れる能力だ。文化に依存する能力。前頭前野が未発達で、大人のように抑制が効かない幼児期は、遊ぶこと、即ち想像することに特化された、特別な文化的学習の期間と捉えられる。 pic.twitter.com/iykVfuQiIL— 金曜日の+M (@freakscafe) July 28, 2020 スチュアート・A・カウフマン『WORLD BEYOND PHYSICS 生命はいかにして複雑系になったか』(水谷淳訳 森北出版)。生物圏はその多様性を増大していくように自己=秩序を構築しつづける。熱力学の第二法則によって秩序が消散するよりも速く、この宇宙がその複雑さを使い尽くせないほどの勢いで。 pic.twitter.com/d8G6xkYUL8— 金曜日の+M (@freakscafe) July 23, 2020 リチャード・セネット『クラフツマン 作ることは考えることである』(高橋勇夫訳 筑摩書房)。クラフツマンとは、自らの仕事を通して、具体的実践と思考、つまり手と頭との間でつねに対話をくり返し、人と物と情報とのハイブリッドである文化的共同性の領域に参入する者のことである。 pic.twitter.com/u5q3sANkvt— 金曜日の+M (@freakscafe) July 30, 2020 七菜乃写真作品集 裸体というドレス』(芸術新聞社)。七菜乃のセルフヌード写真集。写真毎にスタイルが違うのに、まごうかたなき彼女の作品になっている。もはや「いい」という以上のことがあまり言いたくないくらい好きだ。 pic.twitter.com/NApVdDWnPC— 金曜日の+M (@freakscafe) August 14, 2020 マーク・W・モフェット『人はなぜ憎しみあうのか 「群れ」の生物学』上・下(小野木明恵訳 早川書房)。「生命の歴史において、人がコーヒーショップにふらりと入っていく場面よりおどろくべきものはほとんどない。」人は、いかにして、匿名の他者との間で「社会」をつくりあげることができるのか。 pic.twitter.com/hKruo8jQ7r— 金曜日の+M (@freakscafe) September 5, 2020 ショーン・タン『内なる街から来た話』(岸本佐知子訳 河出書房新社)。境界が溶解して、動物と人間、都市と自然が混ざっていく。文明が、人間が終わっていくときは、こんなふうに異質なものの気配にのまれてメタモルフォーゼしていくのがいい。とても静かな気持ちになる一冊。 pic.twitter.com/41BjwPW3Kv— 金曜日の+M (@freakscafe) September 11, 2020 頭木弘樹『食べることと出すこと』(医学書院)。潰瘍性大腸炎という難病に罹った著者が、病気による体感と心境の変化を綴る。特に「食べることと出すこと」の不自由をめぐって、そのことがどんな社会的不具合、健常時とは異なる実存感覚をもたらすか。 pic.twitter.com/AbcbCde0Jo— 金曜日の+M (@freakscafe) September 13, 2020 アニル・アナンサワースーミー『私はすでに死んでいる』(藤井留美訳 紀伊国屋書店)。「私が存在する」というこの「感じ」。多様な「自己感」の失調-コタール症候群、アルツハイマー病、身体完全同一性障害、統合失調症、離人症、ドッペルゲンガー、ーの考察を通して、「自己感」の正体を探求する。 pic.twitter.com/Kfs0mflFIb— 金曜日の+M (@freakscafe) September 25, 2020 土井久郎『猫町』(かもがわ出版)。出版される猫本のほとんどに目を通しているが、この写真集は突出している。舞台は著者が幼い頃過ごしたという湊町、あと十数年もすればすっかり失われてしまうだろう風物のなかで、野良猫の存在感が奇妙なまでに際立っている。 pic.twitter.com/uZbPfMSDOc— 金曜日の+M (@freakscafe) October 18, 2020 坂本千明『ぼくはいしころ』(岩崎書店)。『退屈をあげる』もほんとうによかった、何度も読んだが、この絵本もとてもいい。猫の在りよう、猫の棲む宇宙の在りようが考え抜かれている。たぶん、また、何度も読む。 pic.twitter.com/IPhYunzlUo— 金曜日の+M (@freakscafe) October 14, 2020 古田徹也『言葉の魂の哲学』(講談社選書メチエ)。言葉に魂が入ったように表情を宿し始めること。ありふれた馴染みの言葉がふと胸を打つこと。或いは、急に言葉から魂が抜けて死んだように感じること。そうした体験は、私たちの言語的・社会的・生活的実践にとって、どのような重要性があるのか。 pic.twitter.com/Und0zTjePe— 金曜日の+M (@freakscafe) October 13, 2020 窓ハルカ『俗の金字塔』(リイド社)。これはもうかなりやばいやつ。起爆力が半端ない。電車のなかで声出して爆笑してしまった。 pic.twitter.com/i58XGrjyD0— 金曜日の+M (@freakscafe) October 14, 2020 永井一正『つくることば いきることば』『いきることば つむぐいのち』(芸術新聞社)。グラフィック・デザイナー永井一正による銅版画集。どの画にも「いのち」の「大不思議」が響きわたっている。すべての生命がもともと「ひとつのものごと」だった、なつかしい混沌が彷彿としてくる。 pic.twitter.com/J2lQvRN3sn— 金曜日の+M (@freakscafe) October 24, 2020 ジョフリー・ウェスト『スケール』(山形浩生・森本正史訳 早川書房)「動物、植物、生態系、都市、企業のほぼすべての測定可能な特徴は、大きさや規模と共に定量的にスケーリングする」。生物、生態、都市といった内部にネットワーク構造をもつ自己組織系は、一般化した「法則」に従っている。 pic.twitter.com/osPbJeiNAl— 金曜日の+M (@freakscafe) November 9, 2020 神野大『干物のある風景』(東方出版)干物のある風景の写真集。つい買ってしまう。自分でも「魔がさしたか」と思ったが、眺めていると、なんだかいい。いや、いいぞ、これは……となる。 pic.twitter.com/N1j4TGMdDa— 金曜日の+M (@freakscafe) November 18, 2020 わだちず『わらしのはなし』(青林工藝社)はぐれた者、棄てられた者、滅びた者達の寂しさ。孤独には底冷えのするようなところと、温かく満ちるところがあって、紙一重だ。ここには、生き物がこの世界で生きることの、淡々とした晴れやかな気配が漲っている。優しい世界ではないが、ひどく懐かしい。 pic.twitter.com/TyAVtruhGu— 金曜日の+M (@freakscafe) November 13, 2020 バーバラ・トヴェルスキー『Mind in Motion 身体動作と空間が思考を創る』(渡井圭子訳 森北出版)「空間知覚とそこでの行動に根差す空間思考こそが、すべての思考の土台である」ー空間知覚は、身体の動作と表裏のものである。思考とはこの身体の動作のトポロジカルな変形のことなのだ。 pic.twitter.com/AAG9MP9aNn— 金曜日の+M (@freakscafe) November 11, 2020 ダリアン・リーダー『HANDS 手の精神史』(松本卓也 牧瀬英幹訳 左右社)私たちの身体は過剰性を孕む。それは例えば性的な欲動としてトラウマ的に作動したりもする。私たちの身体は、もやもやしたり、破裂寸前になったりする。手は、その欲動と結びつき、つねに傍若無人に振る舞う危険性を帯びている。 pic.twitter.com/dXBVqKqnyl— 金曜日の+M (@freakscafe) November 25, 2020 マット・ウィルキンソン『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか』(神奈川夏子訳 草思社)這い、泳ぎ、歩き、飛ぶため、生物はどう形を変えてきたか。物理法則の支配する世界のなかで、進化の実現性の核となるテーマは「移動運動」である。身体、分子の構造から、意識と遺伝子の関係にまで議論が及ぶ。 pic.twitter.com/rv9X8EHJFL— 金曜日の+M (@freakscafe) November 29, 2020 デイヴィッド・ホックニー&マーティン・ゲイフォード『絵画の歴史 洞窟壁画からiPadまで』(木下哲夫訳 青幻社)。所謂美術史ではなく、三次元を二次元に写す技術としての「画像」の歴史が語られる。ホックニーの、文脈を超えて絵を見る眼の確かさが際立つ。彼が「素描の人」故だろうか。 pic.twitter.com/j01aND1QZo— 金曜日の+M (@freakscafe) November 22, 2020 松本大洋『ルーヴルの猫』(小学館)フランス人カラーリスト、イザベル・メルレが彩色。大判の愛蔵版。とりわけ、下巻の絵のなかの世界は、このサイズ、この印刷のクオリティで読むと、その美しさに蕩然とした心地になる。読み終わってしばらく泣く。 pic.twitter.com/zSmJn4p0kl— 金曜日の+M (@freakscafe) November 23, 2020 ダウンロード copy 30 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート