日記 22.03.30 水

彼女と抱き合って、完全に満たされている時間のことを想う。何度も恋をして、恋が終わることは知っている。だが、抱き合っているあいだ、この恋が終わることを信じてはいない。死ぬのは知っているけど、死ぬことにリアリティを感じてはいない。つまり、死ぬことを信じていない。ちょうどそんな感じだ。

満たされているあいだ、時間は止まっている。時間とは、変化の量のことである。満たされるとは、そこで変化がとまるということだ。だから、満たされているあいだ、時間は流れていない。時間の外にいる。

たぶん、死んだら、終わりだ。何もかもが、消える。すべてのことは、生きているあいだに起こる。
死んだら死にきり、すべてのことが、生きているあいだに起こる。考えてみれば、すごいことだ。
私たちは、普段、いろんな経験を先延ばしにして生きている。先延ばしにしているうちに、そのうち死んでしまう。

生きるというのは、先延ばしとしての時間の外に出ていく、そのことのうちにあるのではないか。あるいは、「時間の外に出ようとする物語」を生きることにあるのではないか。

その人が今ここにいないのが寂しい。そう感じるのは、とてもいい。会って抱き合えば、また「永遠」に帰ることができる。

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