業界情報 自動車🚙

業界情報 自動車

⚫️2021.10.22日本経済新聞🗞

【サマリー】
自動車業界 減産継続
コロナ→東南アジアの半導体製造に影響
が背景

【思ったこと】
自動車業界は、下請けとしてとてつもない数の企業が関わっている
経済への影響必須

【記事全文】

国内自動車大手の減産が続いている。日産自動車が10~11月の世界生産を直近の計画に比べて3割減らすことが21日分かった。ホンダも11月上旬の国内生産を計画比1割減らすと明らかにした。車各社は半導体不足で夏まで減産を続けてきたが、当初は2021年下期からの増産を見込んでいた。新型コロナウイルス禍で東南アジアから半導体調達が滞った影響が長引いている。
日産が取引先の車部品メーカーなどに生産計画を通知した。世界生産は10月に26万3千台、11月に32万台とし、いずれも従来計画に比べて3割減る見込みだ。
日産は8月、マレーシアで半導体の生産が滞った影響で米国工場を2週間止めた。当初の生産計画を他社より手堅く低めに見積もっていたこともあり、9月までは計画より上回るペースで生産。半導体のマイナス影響も一定程度抑えていた。10月からは、計画ベースで前年より増産する計画を組んでいたが、他社の生産量も増えたことで半導体の確保が難しくなったことが、計画比で減産に踏み切った理由だ。



ホンダも21日、国内に3つある自動車工場全てで、11月上旬に1割ずつ生産量を減らす見通しを明らかにした。10月の生産見通しは鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)は4割減、狭山工場(埼玉県狭山市)は2割減で国内平均で3割減としている。一方、寄居工場(埼玉県寄居町)では10月は減産しない予定だったが、特定の車両専用の半導体の不足で1割減産に転じた。
生産状況が回復したとはいえ、軽自動車「N-BOX」などのNシリーズや多目的スポーツ車(SUV)「ヴェゼル」などの生産には引き続き影響が出る。ヴェゼルは一部のタイプや色で納車まで1年ほどかかる場合がある。
もっとも車各社の減産幅は改善傾向にある。トヨタ自動車は10月、世界生産を当初計画比で4割減産すると発表したが、一部は挽回生産し、11月は15%減まで縮む。ホンダの国内生産も10月の3割減産から11月上旬は1割減に縮む。SUBARU(スバル)も11月の国内生産を当初計画から2割程度減産するものの10月よりは縮小する。
前年の生産実績と修正した生産計画と比べても、日産は10月が前年同月比で32%減、11月が21%減の見通しで減少幅が縮む。トヨタは11月に当初計画比15%減だが、11月として過去最高だった20年11月の82万台の水準にまで回復する見通しを示す。車メーカー首脳は「半導体不足の影響は確実に改善はしてきている」と話す。
各社とも部品不足が緩んでくるとみており、トヨタなどをはじめ、12月以降の増産に向けて準備を進める。日産は22年3月期の部品不足による減産台数を50万台としており、現時点で見通しは変えていない。内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は「下期には減産分の半分を戻せる算段がついた」としているが、予断は許さない。
東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは「各社とも半導体を人気車種や高い需要が見込める市場向けの商品に優先して割り当てている。今後、挽回生産に向けて限られた資源の配分の巧拙が問われる」と指摘する。

⚫️2021.10.20日本経済新聞📰

中古車の高値が続いている。中古車競売大手ユー・エス・エス(USS)がまとめた中古車の9月の平均落札価格は、前年同月に比べ16%高い92万2000円だった。16カ月連続で前年同月を上回り、7月につけた直近10年間の最高値に並んだ。自動車の需要が堅調な一方、新車の出回り不足で品薄感が続く。
中古車競売価格は、買い取り会社などが出品した車を中古車販売店などがオークションで落札する価格だ。9月の出品台数は前年同月比5%増の約23万2000台だった。
新型コロナウイルスの流行はピーク時に比べ落ち着いている。ただ、感染リスクを高める「3密」を回避するためマイカー通勤などへの需要は依然として根強い。
半導体不足による生産調整などを背景に新車の納車が遅れ、すぐに購入できる中古車への引き合いは強い。
低額車両の取引が多い日本中古自動車販売協会連合会(JU中販連、東京・渋谷)の9月の平均落札価格は前年同月比16%高の33万円だった。

⚫️2021.10.19日本経済新聞🗞

【サマリー】
トヨタ アメリカに電池生産工場
バイデン政権が電動車への移行を求めていることが背景

【思ったこと】
車はどんどん変わる
エンジン→電動
保有→シェア→自動運転
車の変化は産業構造の変化
下町工場の行方も気になる

【記事全文】

トヨタ自動車は18日、米国に自動車用の電池を生産する工場を新設すると発表した。豊田通商と共同出資で米国に新会社を設立し、2025年からの稼働を目指す。新工場への投資を含め、米国で30年までに車載電池の生産に約3800億円を投じる。環境保護を重視するバイデン政権は電動車シフトを求めており、欧州ステランティスも巨額投資を表明するなど、競争力の核になる電池の生産を米国で手掛ける動きが広がってきた。(関連記事ビジネス面に)
トヨタが車載用の電池工場を米国に設置するのは初めて。新会社の出資比率はトヨタの北米子会社が90%、豊通が10%となる。当初はハイブリッド車(HV)用のリチウムイオン電池を生産し、電気自動車(EV)向けの製造も視野に入れる。 新工場は1750人を新規採用する計画。場所や生産能力は改めて公表するとしている。31年までに約1430億円を投じ、このうち土地や建屋を除き、製造設備などへの投資が3800億円に含まれる。
トヨタは9月、30年までに世界で車載電池に1兆5千億円を投資すると発表していた。30年にHVを含めた電動車を800万台販売する計画で、そのうちEVと燃料電池車(FCV)は合計200万台としている。
トヨタはパナソニックと1996年にHV向け電池の生産会社、プライムアースEVエナジー(静岡県湖西市)を設立。20年にもパナソニックと車載電池の生産や開発を担うプライムプラネットエナジー&ソリューションズを立ち上げた。豊通との共同出資会社は電池関連で3社目となる。
車載電池では安全性など品質保証の観点からも外部からの調達ではなくグループを含めた内製を重視する姿勢が鮮明だ。新工場について「トヨタが主体的に運営できるかたちとした」(トヨタ)としており、グループ内の豊田通商と組み、トヨタ主導で稼働させる。

⚫️2021.10.12日本経済新聞📰

中国の自動車メーカーが商用の電気自動車(EV、総合2面きょうのことば)で日本に攻勢をかける。東風汽車集団系などが物流大手のSBSホールディングス(HD)に1万台の小型トラックの供給を始め、比亜迪(BYD)は大型EVバスで4割値下げを目指す。世界的な脱炭素の動きを受け、物流大手はEVシフトに動くが、日本車メーカーの取り組みが遅れており、価格の安い中国車を選んでいる。出遅れた日本車メーカーは早期に巻き返さないと国内市場を奪われかねない。

中国自動車大手、東風汽車集団のグループ会社である東風小康汽車は、SBSHDに1トン積載のEVトラックの供給を始めた。EVスタートアップのフォロフライ(京都市)が設計し、東風小康が生産。SBSHDは2030年までに別の中国メーカーに発注する1.5トン車と合わせて、計1万台のEVの供給を受ける計画だ。
1トン車の価格は補助金なしで380万円ほどで同じようなディーゼル車とほぼ同価格。22年1月から本格的に輸入する。国の補助金も見込めるため「現行トラックに比べコストは安くなる」と判断した。今後5年で配送の協力会社に使用を促す分も含め国産ディーゼルトラックから順次切り替える。航続距離は300キロメートルで宅配などに使う。
東証1部上場のSBSHDは配送時の温暖化ガス排出を減らそうとEV導入を模索したが、現状では国産の1トン積載型が市場になく、日本車メーカーに生産依頼をした場合は1000万円ほどかかるとみている。
小型トラックは7月にトヨタ自動車やいすゞ自動車などが設立した商用EV企画会社にスズキやダイハツ工業なども参画すると発表したものの日本勢の出遅れが鮮明だ。20年の小型バンの国内市場は23万台。ネット通販の伸びに伴い宅配需要が増え、中国EVが広がる可能性がある。商用車は決められたルートで事業者が使う。乗用車に比べ充電インフラの確保や保守メンテナンスが容易で参入しやすい面がある。
SGホールディングス(HD)傘下の佐川急便も中国・広西汽車集団からEV軽自動車、7200台の供給を受けることで今春合意。広西は22年から輸出を始める。SGHDは軽車両のすべてをEVにすることで二酸化炭素(CO2)を19年度比で1割削減できるとみている。
BYDは日本で販売する80人乗りの大型EVバス「K8」の価格を4000万円から26年をめどに4割値下げを目指す。ディーゼルバスと同程度となり国の補助金も活用できる。BYDは日本で小型を含むEVバスを50台以上販売済み。大型を30年までに累計約2000台販売するとしている。
習近平(シー・ジンピン)指導部は市場規模世界一の「自動車大国」から独自ブランドが世界に浸透する「自動車強国」への転換を目指す。エンジン車では性能、ブランド力ともに日米欧勢にかなわなかった。部品点数が少ないEVへの転換が始まり、中国第一汽車集団はノルウェーにEVの多目的スポーツ車(SUV)の輸出を始めている。

⚫️2021.9.21NewsPicks📱

ホンダは来月にも日本の自動車メーカーでは国内初となる新車のオンライン販売に乗り出すことになりました。
コロナ禍で対面を避けたいというニーズに応えるねらいで、店頭での商談が一般的な車の販売の現場が大きく変わりそうです。
関係者によりますと、ホンダは見積もりから契約、ローンの審査など、車の購入手続きをインターネットで完結できる専用サイトを来月にも開設し、新車のオンライン販売に乗り出します。

専用サイトで扱うのは販売台数が多い主力車種とする方針で、都市部から始めて徐々に対象エリアを広げていくことを検討しています。

納車はこれまでどおり販売店で行うということです。

車の販売は取引額が大きいため店頭での商談が一般的でしたが、新型コロナウイルスをきっかけになるべく人との接触を避けて購入したいというニーズが高まっています。

こうした中、ホンダはオンライン販売を通じてコロナ禍での需要を掘り起こすとともに、車離れが指摘されている若い世代など、新たな顧客の獲得にもつなげるねらいがあります。

国内ではアメリカのテスラやドイツのBMWがすでに始めていますが、日本の自動車メーカーは初めてだということで、車の販売の現場が大きく変わりそうです。
海外では多くのメーカーがオンライン販売
新車のオンライン販売は海外ではすでに多くのメーカーが取り入れています。

アメリカではEV専業メーカーのテスラが創業当初から行っているほか、日本のトヨタ自動車や日産自動車も現地ではオンラインの販売サイトを立ち上げています。

ヨーロッパではフォルクスワーゲンが去年、ドイツ国内でEV=電気自動車を対象に始めたほか、BMWなど多くのメーカーが力を入れています。

さらに、EV専業メーカーを目指すスウェーデンのボルボ・カーは店頭での販売をやめ、オンラインだけにする方針を明らかにしています。

一方、国内では車の定額利用サービス=サブスクリプションや、中古車の販売でオンラインを活用する動きがありましたが、日本のメーカーによる新車のオンライン販売はありませんでした。

一部の海外メーカーからは、日本ははんこ文化が根付いているため、書類が多い車の販売ではオンライン化が広がらなかったのではないかという指摘があります。

ただ、今回のホンダに続いてこの冬には日産自動車も一部の新車でオンライン販売を始める予定で、新型コロナをきっかけに広がる可能性もあります。

⚫️2021.9.16日本経済新聞🗞

【サマリー】
自動車業界
在庫もたない主義→在庫抱える主義に転換
半導体不足が背景

【思ったこと】
トヨタさんのジャストインタイム等、在庫もたず、必要な時に必要なものを必要ななだけ
といったスタイルは在庫リスク、資金滞留を解消する上である意味理想だったはず

経営方針のトレンドも刻一刻と変化している🕐

【記事全文】


自動車メーカーの間で、できるだけ部品の在庫を持たない効率重視の調達戦略を見直す動きが広がってきた。トヨタ自動車や日産自動車、スズキは半導体の在庫を積み増す。レアメタル(希少金属)権益を自ら確保するメーカーもある。電動車シフトという構造変化を受けて半導体などは重要性が高まっており、国際情勢も勘案しながら安定調達する必要が出てきた。「持たざる経営」は転機を迎えた。
トヨタはこのほど、半導体の在庫水準を従来の3カ月分から5カ月分まで増やすよう、一部の取引先に伝えた。
もともとは必要な時に必要な分だけを納入してもらう「ジャストインタイム」(総合2面きょうのことば)方式を導入して効率化を追求していた。2011年の東日本大震災で部品調達が滞り、完成車の生産に支障が出たことを機に修正。調達網全体で段階的に部品の在庫を増やした。今回、半導体不足の長期化で大幅減産を強いられており、さらに在庫を増やす。

日産は従来は1カ月分だった半導体の在庫を、自社と部品メーカーで合わせて3カ月以上にすることを検討中だ。スズキは数カ月分を持つよう部品メーカーに通達した。
自動車1台に使う半導体の量はデジタル制御の拡大により増え続けている。英IHSマークイットなどによると20年前に比べ金額ベースで3倍になった。電気自動車(EV)が増える30年にはさらに3割増えるという。半導体は電機製品や医療機器の進化も支えており業種を超えた奪い合いは激しくなる見通しだ。
自動車のハイテク化が進み、特定の企業しか供給できない部品も増えたことから、調達網は世界中に広がった。災害などの影響で調達網が寸断されるリスクもそれだけ増えた。半導体は中国の華為技術(ファーウェイ)への供給を米国が一部制限しており、国際政治の影響も受けやすくなっている。
足元では新型コロナウイルスの影響による半導体工場の停止もあり、大半の自動車メーカーが減産を余儀なくされた。戦略上、重要な部品や素材については安定生産の重視に移行する。
安定調達の仕組み作りは半導体以外にも広がる可能性がある。環境対応や電動化に使う素材や部品が焦点だ。
中でも、車載電池に使うレアメタルは今後、需給が逼迫する見通しだ。政情が不安定な国に産出が集中していたり、児童労働を使った採掘が指摘されたりする鉱物もある。鉱山開発には時間がかかり、実際に不足してからでは間に合わないため、独フォルクスワーゲンや米テスラがリチウムなどの権益確保を進めている。
在庫積み増しや上流資源の確保は生産を安定させる一方、財務面ではマイナスに働く。効率性を示す指標「在庫回転日数」はトヨタの場合、20年度末で36.36日と10年で4割弱悪化した。東海東京調査センターの杉浦誠司氏は「(完成品ではなく)半導体や原材料などの在庫が要因だ」と指摘する。

⚫️2021.9.13日本経済新聞🗞

【サマリー】
日本の自動車業界
減産予想つづく
コロナ禍、半導体不足により

【思ったこと】
自動車業界引き続き逆風
中小企業も煽りくる😢

トヨタ自動車など日本車6社の2021年度の当初計画からの減産規模が、現時点で100万台を超えることが分かった。新型コロナウイルスの感染拡大で大規模な減産を強いられた20年度に並ぶ規模と見られる。足元では東南アジアでのコロナ感染が再拡大している。同地域は車載半導体のアジアの供給基地で、影響は欧米の自動車メーカーにも広がっている。
トヨタは2022年3月期の世界生産を900万台と期初計画比3%下方修正した。日産自動車はすでに通期で25万台の減産計画を公表している。ホンダは減産に伴う販売へのマイナスを通期で15万台と見込む。


影響が大きいのがスズキだ。20年度の生産台数の約1割分にあたる35万台を減らす。半導体の安定調達に苦戦しており、日本とタイ、ハンガリーなどで稼働停止する。大黒柱のインドも9月は通常の4割程度の稼働にとどまる見通しだ。
各社の見通しを合計すると集計可能な6社だけで期初の計画と比べた減産台数は105万台にのぼる。新型コロナの影響が本格的にあらわれた20年度に次ぐ減産規模となりそうだ。
「(スイス)STマイクロエレクトロニクスのマレーシア工場の稼働停止が響いた」。トヨタ関係者は同社が大規模減産に追い込まれた理由のひとつに「STマイクロ」をあげる。同社はトヨタ系のサプライヤーに車載用のマイコンを供給しているが感染拡大で従業員が出勤できなくなった。ブレーキ部品などがつくれなくなり、結果的に完成車の生産ができなくなった。
東南アジアには部品メーカーが事業所を多く構えるが、近年は車載半導体の生産拠点としても知られる。欧州勢では独ボッシュが電装部品などの工場を7つ構える。独コンチネンタルも複数の拠点で半導体をつかった部品を生産している。自動車業界がこれら電子系の部品を取り合う中にコロナ禍が重なり供給ショックが起きた。
車載半導体大手の独インフィニオンテクノロジーズはマレーシア南部のマラッカ工場で6月から5週間にわたり合計20日、生産休止した。ステアリングやブレーキなどに使う半導体を生産し自動車部品メーカーに供給している。STマイクロは注文が18カ月先まで埋まっているものの思うように工場が稼働せずさばききれていないという。
米コンサルティング大手、アリックスパートナーズの鈴木智之氏は「労働単価の安い東南アジアに半導体メーカーの組み立てと検査工場が集まった。工程に人手がかかるためだが、コロナでこれが裏目に出た」と指摘する。
影響は日本車メーカーにとどまらない。米ゼネラル・モーターズ(GM)は、北米の完成車工場の半分の8工場で6日から1~4週間の休止を決めた。仏ルノーも8月末からスペインの工場で最大60日間、一部操業を止めている。8月下旬には独フォルクスワーゲン(VW)が主力のウォルフスブルク工場で追加減産に踏み切った。いずれも東南アジアからの半導体調達で苦戦していることが原因のひとつだという。
米調査会社が9月上旬にまとめた試算によると、21年の世界の自動車生産台数は期初想定から約6%減の約8000万台まで落ち込み、売上高の機会損失は1300億ドル(約14兆円)を超える。9月と10月で累計76万台に達するトヨタ級の大規模減産が続けば影響は一段と深刻になる。

⚫️2021.9.6NewsPicks📱

【サマリー】
ダイハツ、スバル
国内工場の停止延期
コロナにより部品調達に遅れのため

【思ったこと】
半導体不足
コロナ
脱炭素対応
電動化、自動化、シェアの加速等

自動車業界 目先は少し逆風か?


【記事全文】
 ダイハツ工業とSUBARU(スバル)は6日、国内工場の稼働停止期間を延長すると発表した。両社とも新型コロナウイルスの感染拡大で東南アジアからの部品調達が滞り、再開が難しいため。
 ダイハツは、生産を見合わせている本社工場(大阪府池田市)に関し、一部を除いて13~17日も休止。子会社ダイハツ九州の大分第2工場(大分県中津市)は13、14日の稼働を取りやめる。当初はともに10日までの稼働停止を予定していた。新たな減産規模は約5000台という。
 ダイハツは既に、8月下旬から9月末にかけ、2工場を含む国内の計4工場で最大17日間の操業停止を公表している。影響台数は今回の減産分を含めると約4万台となる見込み。
 一方、スバルは群馬製作所(群馬県太田市)の本工場など3工場について、13~17日の稼働を取りやめる。9月の停止日数は従来の4日間から9日間に拡大する。影響台数は明らかにしていない。 【時事通信社】

⚫️2021.9.2日本経済新聞📰
「サマリー」
日本の自動車メーカー
電気自動車に係る技術では優位だけど、販売には結びついていない

「思ったこと」
自動車は、保有、シェア、自動運転と、革新が続くと予想されている
しかも近い未来 10年くらい
それを踏まえると今EV販売に注力より、技術投資の方が有効なのではないかと思ってしまう🚘

「記事全文」
電気自動車(EV)の技術(総合2面きょうのことば)で日本の車業界が優位に立っていることが、米国における特許の分析から分かった。特許の重要度をスコア化し出願企業を順位付けしたところ、首位はトヨタ自動車だった。日本企業が上位50社の4割を占めた。ただ、EV販売では米テスラなどに出遅れている。技術力を販売につなげ開発投資の原資を確保する好循環を生み出せなければ、いずれ技術面でも逆転されかねない。(関連記事ビジネス2面に)
日本経済新聞が特許調査会社パテント・リザルト(東京・文京)と共同で、7月初旬の米国でのEV関連特許を調べた。競合他社によって類似特許として引用された回数や、他社から審判を申し立てられた回数などをスコア化した。回数が多いほど競争力のある重要な特許と評価できる。

EV関連特許にはモーターや電池など車の構成部品に関するものや、充電設備などインフラの技術も含む。首位はトヨタで3位にホンダが入った。上位50社中21社を日本の車メーカーとデンソーなど部品大手が占めた。
米国企業は2位になったフォード・モーターなど13社が入り、ドイツと韓国がそれぞれ5社だった。中国企業は32位のEV大手、比亜迪(BYD)など2社にとどまった。欧州連合(EU)での特許分析でも、米国と同様に日本企業の技術優位が浮かび上がった。
競争力の源泉はハイブリッド車(HV)で培った技術だ。モーターや電池などHVとEVは共通する部品が多い。トヨタは充放電など電池の制御技術などに強い。1997年に商品化した世界初の量産型HV「プリウス」以来の技術の蓄積が生きている。
自動車関連の特許はかつて米国勢が多く保有し、日本車メーカーは販売を伸ばす中でも多額の支払いを余儀なくされた。その後、技術面でも日本企業は世界の先頭集団に加わり、EV関連ではリードする立場になった。
知的財産権を確保する意味は権利の使用料を得ることにとどまらない。
内田・鮫島法律事務所の永島太郎弁護士は「生産の差し止めや損害賠償などの請求を通じて他社製品を排除することができ、企業としての競争力も保てる」と指摘する。
だが、販売面で優位に立てなければいずれ、かつての米国勢と同様に技術面でも後退する恐れがある。
米調査サイト「EV Sales」などによると、EVとプラグインハイブリッド車(PHV)の2020年の世界販売トップはテスラだった。中国勢はBYDなど7社が上位20社に入り、全体の2割を占めた。日本勢は日産の14位が最高でトヨタは17位だった。
中国勢は、中国本土での特許出願件数は7月時点で3万6800件と全体の67%を占める。引用回数などの競争力は公開データが不足しているため算定できないが、今後、国際的にも台頭する可能性がある。
日本の製造業はテレビやパソコンといった電機製品で世界市場を席巻した時期があるが、ほどほどの品質と低価格を両立させた韓国や中国の企業に逆転された。
伊藤忠総研の深尾三四郎上席主任研究員は「日本車メーカーは早急に技術をビジネスにつなげなければEVで電機業界と同じ轍(てつ)を踏むことになりかねない」と指摘する。

⚫️2021.8.31日本経済新聞🗞

「サマリー」
自動車減産 七月 🚘🚙
半導体不足を背景に🗺

「思ったこと」
半導体影響力大きい🧐
今鉄鋼堅調らしいけど
自動車落ち込むと、鉄鋼も落ち込む😔


「記事全文」

トヨタ自動車など国内乗用車メーカー8社が30日まとめた7月の世界生産は、前年同月比2%減の195万4千台だった。前年同月を下回るのは6カ月ぶり。世界的な半導体不足により国内外で減産が相次いだ。東南アジアの新型コロナウイルス感染拡大で部品調達に影響が広がり、トヨタが9月に大幅な減産を明らかにするなど、下期の不透明感が高まっている。

7月はマツダが半導体不足により、国内工場の一部生産ラインの稼働を10日間止めた。日産自動車やスズキ、SUBARU(スバル)も国内で工場を一時停止した。海外ではホンダや日産が中国や米国で半導体部品の不足により生産調整した。
東南アの新型コロナの影響も出始めた。トヨタやホンダ、ダイハツ工業が都市封鎖により、マレーシアの工場を稼働できなかった。トヨタはベトナムからの部品調達が滞り、トヨタ車体の富士松工場(愛知県刈谷市)の一部生産ラインを7月に2日間停止した。
世界生産をメーカー別にみると、ホンダが24%減の32万4千台、日産が17%減の26万台だった。マツダとスバルも前年割れだった。トヨタやスズキ、三菱自動車、ダイハツの4社は前年実績を上回った。トヨタは7月は「半導体不足の影響は限定的だった」(広報)としている。
8社の国内生産は2%増の68万8千台、海外生産は3%減の126万6千台だった。
8月以降は東南アのコロナ感染拡大で各社の供給網の混乱が強まりそうだ。トヨタはベトナムやマレーシアからの部品調達が滞る影響で、9月に世界生産を4割減らす。ダイハツは8~9月にかけて、国内の主力4工場を最大17日間停止し、3万~4万台を減産する。マレーシアの半導体関連工場やベトナムなどのワイヤハーネス(組み電線)の工場が稼働率を落としており、減産の動きが広がる可能性がある。
スズキも9月に3日間、半導体不足の影響で相良工場(静岡県牧之原市)の稼働を休止する。
自動車各社は従来、半導体不足で4~9月に減産した分を、10月以降の増産で挽回することを見込んでいた。
日産は2022年3月期に50万台を減産し、下期にうち25万台を取り戻す計画で、内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は7月の会見で「半導体影響は7~9月に最も出るが、下期に挽回できる」と述べたが、達成できるかは不透明だ。

⚫️2021.8.30日本経済新聞📰

「サマリー」
自動運転、法整備進まず🚘
開発に遅れの可能性🕐

「思ったこと」
日本は法治国家🇯🇵
システム等は、法に沿うように作られる💻
もても便利、人の有益な時間を創出できる自動運転。イノベーションも進んでると聞くので📗是非方向性が早く決まるといい。


「記事全文」

自動運転車を巡り、日本で事故の刑事責任に関するルール整備が遅れている。今後の実用化を見込む高度な自動運転では、ドライバーや運転プログラムの開発者、メーカーの誰が責任を負うのかの指針や法令が定まらない。専門家は「責任が不明確なままでは運転プログラムが設計しづらい。開発も滞る」と懸念する。

「もし技術者に刑事責任が課されるようになれば、誰も開発しなくなるのではないか」。トヨタ自動車など大手企業が参加し、自動運転システムの普及に取り組むNPO法人ITSJapan(東京・港)の佐藤昌之氏は話す。自動運転車の事故の際、走行を制御する運転プログラムが問題視され、開発者が罰せられる事態を懸念する。
交通事故で加害者の刑事責任が問われる場合に適用される主な法律は、(1)酒酔い運転などを禁じる道路交通法、(2)危険運転致死傷罪などを定める自動車運転処罰法、(3)業務上過失致死傷罪などを含む刑法の3つだ。自動運転車の事故でも、誰の行為にどの法を当てはめるかが焦点になる。
自動運転車は「レベル1」から、完全に車に運転を任せる「レベル5」の5段階に区分される。実用化しているのは、一定条件では自動運転で緊急時などは人間が運転するレベル3まで。ホンダは3月、世界初のレベル3の新型車「レジェンド」を発売した。
検討進まず
日本法の対応も、レベル3までだ。2020年に施行した改正道交法に、事故時の責任やドライバーの安全義務などの規定を盛り込んだ。レベル4以上については、明確な指針や法令がなく、政府の中での検討も本格化していない状態だ。
岩月泰頼弁護士は「レベル4以上に対応する法的責任の議論が進まないと、企業側も開発方針を固めにくい」と指摘する。人間が関与しない高度な自動運転車では、運転プログラムの設計が事故原因に結びつけられる可能性があるからだ。
想定される問題は、突然目の前に出た車との衝突を回避するために、プログラムが作動して車が歩道に乗り上げ、歩行者をはねた場合などだ。どのような回避行動が許容されるかによって、プログラムの設計は大きく変わりかねない。

ホンダは世界で初めてレベル3の高級セダン「レジェンド」を発売した
こうした議論で先行するのが欧州だ。ドイツは7月末、自動運転の規制などを盛り込んだ改正法を施行した。自動運転車の定義として「ドライバーなしでも所定の運行領域を独立して運転することができる」と定義し、レベル4以上の実用化に対応させた。
事故の回避行動にも具体的に言及。「人命に対し避けられない危険が生じた場合、個人的な特徴に基づいてさらなる重みづけをしない」「道交法に違反することでのみ走行継続が可能となる場合は、自動車を自ら危険を最小限に抑えた状態にする」などと定めた。
事故を避けるためやむなく歩道に侵入するのは認められるが、歩行者の人種や年齢などによって衝突方向を変えるような設計は禁止されることになる。
ドイツでは法律や哲学、自動運転などの専門家が中心となって17年に自動運転に関する倫理規則を策定しており、「今回の法改正に強く影響しているのは明らかだ」(多摩大学の樋笠尭士専任講師)という。欧州連合(EU)でも欧州委員会が20年9月、「自動運転車の倫理」を公表。加盟国の法整備が進みそうだ。
米国ではレベル3以上の運転時の責任はドライバーではなくメーカー側にあるとみなされており、大きな問題にはなっていない。
法人罰の議論も
日本で高度な自動運転を巡る法的責任の議論が進んだ場合、法人としてのメーカーに事故の刑事責任を問うことが検討課題になる可能性もある。現行法は一部を除き刑事罰の対象は個人のみとなっている。だが自動運転ではプログラムの設計や車に搭載したAI(人工知能)のアルゴリズムなどが事故原因につながることも想定され、企業の責任にも注目が集まるからだ。
法整備には、縦割り行政の弊害を乗り越える必要がある。現状は刑法は法務省、道路交通法は警察庁、道路運送車両法は国土交通省と、異なる省庁が所管しており、議論が深まりにくい状態だ。
内閣府の規制改革推進会議は5月、デジタル時代の刑法のあり方について提言した。だが自動運転については「法務省において(略)デジタル分野に詳しい有識者等の意見を踏まえつつ(略)不断の検討を行うことを求めたい」と言及するにとどまり、具体的な指摘には至らなかった。
自動運転など開発競争が激しい分野では、イノベーションを先取りした法令整備が重要になる。ルールの曖昧さが企業の技術開発の足かせになりかねないためだ。安全性を確保するだけでなく、倫理的な観点も含めた議論が求められる。


210820日経

トヨタ自動車は19日、9月の世界生産を4割減らすと発表した。90万台弱としていた計画を50万台強に引き下げた。世界的な半導体不足の中でも大きな影響は受けてこなかったが、自動車部品メーカーも多い東南アジアでの新型コロナウイルスの感染拡大が響く。部品調達が停滞し始め、国内外の工場が休止を迫られた。(関連記事ビジネス2面に)
ただ、2021年度の930万台という生産計画や業績予想は修正しない。21年4~6月期の連結純利益は市場予想を大きく上回り、前年同期実績の約6倍にあたる8978億円となったが、通期予想は据え置いていた。今回の減産を織り込んでいたという。

8月下旬以降、主力拠点である高岡工場(愛知県豊田市)や堤工場(同)など国内にある14工場で生産ラインの一部を停止する。
7月下旬に策定した最新の計画に比べ、9月の国内生産は14万台下振れする。海外では北米と中国がそれぞれ8万台、欧州が約4万台など、合計22万台減らす。
50万台強という9月の生産規模は、欧米でコロナの影響が大きかった20年5月以来の低水準だ。
減産は「半導体不足もあるが、ベトナム、マレーシアでのコロナの影響が大きい」(広報)。10月以降の生産計画もベトナムなどのコロナの状況次第だという。
東南アジアでは新型コロナの感染拡大が続き、各国政府は移動制限などの措置をとっている。自動車部品工場なども従業員が通常通り出勤できず、稼働率が下がっているケースがあるようだ。
影響は他の車メーカーにも及ぶ。ホンダは8月、中国・広東省広州市の工場で、7月末の生産計画の2割に当たる2万台を減産した。国内でも一時、鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)の稼働を止めた。半導体不足に加え、インドネシアやタイからの部品調達が滞った。
三菱自動車はコロナ拡大で現地当局の指示を受け、フィリピンの工場を6日に停止した。マツダは8月、タイとメキシコの工場を止める。日産自動車は16日から2週間、米テネシー州の工場の稼働を停止している。
独フォルクスワーゲン(VW)や米ゼネラル・モーターズ(GM)など海外大手自動車メーカーも昨年末以降、主に半導体不足の影響で減産を余儀なくされている。

210818日経

バイデン米大統領が自動車の環境規制に関する大統領令に署名した。2030年に新車販売に占める「電動車」の比率を50%にするという内容だ。
主要国は温暖化ガスの排出量を実質ゼロにするための取り組みを加速している。自動車の電動化も避けて通れない重要な課題のひとつである。
ゼロカーボンへの取り組みは、将来の自動車産業の競争力に直結する。日本の自動車メーカーも世界的な電動化の流れに柔軟に対応する必要がある。得意としてきた環境技術を生かし、世界をリードして成長につなげてほしい。
最終的な目標に至る過程で、各国の環境規制に多少の違いが出るのはやむを得ない。自然エネルギーの活用が進む欧州連合(EU)は、35年にエンジンを完全に除外する方針を示している。
これに対して米国はEUの脱エンジンと一線を画し、エンジンを併用するプラグインハイブリッド車(PHV)も電動車に含めた。中国の規制も、内燃機関を残す米国に近い。
各国とも政治や経済の情勢次第では、環境規制の内容が修正される可能性もある。国内メーカーへの配慮を示したはずの米国でも、反発の声が漏れている。
それでも排ガスを出さない車が求められる流れは変わらないはずだ。今後数十年、どの地域でどのような電動化技術が求められるかについては流動的な面もあろうが、日本車メーカーも各国・地域の情勢を注視しながら柔軟に備えてほしい。
国内で大きな成長を期待できない日本の自動車産業は、海外に活路を求める必要がある。日本は国内規格である軽自動車とHVに大きく依存しており、世界的に見れば非常に特殊な市場構造を持つ。国内のニーズは無視できないだけに難しいかじ取りになるだろう。
自動車は関連産業の裾野も広い。排ガスゼロまでの長期的な工程表を巡る動きを見誤ることのないようにしてほしい。


210715日経

【ブリュッセル=竹内康雄、フランクフルト=深尾幸生】欧州連合(EU)の欧州委員会は14日、温暖化ガスの大幅削減に向けた包括案を公表した。ハイブリッド車を含むガソリン車など内燃機関車の新車販売について2035年に事実上禁止する方針を打ち出した。環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける国境炭素調整措置(CBAM)を23年にも暫定導入する計画だ。(関連記事総合2面に)

欧州委案が成立するには、原則として加盟国との調整や欧州議会の審議を経る必要がある。企業や域外国の反発も避けられそうにない。
欧州委の政策パッケージは、30年までに域内の温暖化ガスの排出量を1990年比55%減らす目標を実現するための対策だ。2030年目標は50年に排出実質ゼロにする目標の中間点となる。
欧州委はガソリンやディーゼルといった内燃機関車について、35年に事実上禁止する方針を初めて提案した。自動車のCO2排出規制を同年までに100%減らすよう定める。フォンデアライエン欧州委員長は14日の記者会見で「化石燃料に依存する経済は限界に達した」と述べ、速やかに脱炭素社会を実現すると表明した。
対応を迫られる自動車業界は反発を強める。ドイツ自動車工業会のヒルデガルト・ミュラー会長は7日、「35年にCO2をゼロとすることはハイブリッド車を含むエンジン車の事実上の禁止だ。技術革新の可能性を閉ざし、消費者の選ぶ自由を制限する。多くの雇用にも響く」と訴えた。トヨタ自動車幹部は「戦略練り直しは避けられない」と話す。
欧州委は燃料面からも運輸部門の排出減を促す。自動車とビルの暖房用の燃料を対象にした新しい排出量取引制度を設け、CO2排出にかかる炭素価格を上乗せする。
EUには産業や電力など大規模施設を対象にした排出量取引制度がある。だが炭素価格の上昇による燃料費の高騰が低所得層の家計を圧迫しかねないとの批判もあり、当面は別建ての制度とする。従来の排出量取引制度では海運を新たに対象とする。
欧州委が導入を目指すCBAMは国境炭素税とも呼ばれる。当初は鉄鋼、アルミニウム、セメント、電力、肥料の5製品を対象とする方針。23年からの3年間を移行期間として暫定的に始め、事業者に報告義務などを課す。26年から本格導入され、支払いが発生する見通しだ。欧州委は30年時点でCBAMに関連する収入を年91億ユーロ(約1.2兆円)と見込む。
制度案では、EU域外の事業者が環境規制が十分でない手法でつくった対象製品をEUに輸出する場合、EUの排出量取引制度に基づく炭素価格を支払う必要がある。製品の製造過程における排出量に応じた金額を算出し、事業者に負担させる。EU域内外の負担が等しくなるという考え方だ。

210707日経

日産自動車が電気自動車(EV)を共同開発する際に、部品メーカーに費用の一定額を補償する制度を年内に始める。受注を逃したり開発が延期されたときに費用負担する。海外自動車メーカーの共同開発では補償制度が採用されているが、国内では異例だ。新興勢がEVで攻勢をかける中、既存の自動車メーカーが部品会社との協業を深め品質や性能を磨く。
日産は「アライアンスストラテジックパートナー(ASP)」と名付けた枠組みを作る。開発の初期段階から部品会社と緊密に連携して、新規部品の仕様を作り上げる。
共同開発した製品が採用されない場合、1案件当たり人件費で数百万円から数千万円を負担する。試作品を作れば数億円単位になる見通し。
EV軽量化に直結する車体の骨格や駆動部分などの中核部品が対象。ASPに参加するのはユニプレスやヨロズといった日産と親密な企業が中心になる。補償制度があることで、部品メーカーが開発資源やノウハウを投入しやすくなる。
欧州自動車メーカーと独ボッシュなどとの共同開発では契約で部品を必ず採用することが条件であるケースが多く、採用できなければ違約金として費用を支払う。


180912
中国汽車工業協会は11日、8月の中国の新車販売台数が前年同月比3.8%減の210万3400台だったと発表した。前年同月を下回るのは2カ月連続。米中貿易戦争などが景気の先行きに対する消費者の懸念をもたらし、新車購入意欲に影響しているとみられる。乗用車メーカーの業界団体は2018年の販売見通しを下方修正した。
乗用車販売は4.6%減の178万9900台。中国市場をけん引してきた多目的スポーツ車(SUV)が勢いを失った。米中貿易戦争が物価上昇を招くなどの懸念をもたらしているほか、株価下落や内陸部の不動産価格上昇が新車購入に悪影響を与えているとみられる。
米国ブランド車の不買運動は広がっていないものの、中国販売は低迷している。米ゼネラル・モーターズ(GM)の主力合弁、上汽GM汽車の販売台数は4%減となり、3カ月連続のマイナスとなった。米フォード・モーターは36%減で不振が続く。
ガソリン価格の上昇は燃費が良いとされる日本ブランド車には追い風になるとの見方は多い。米国以外から輸入した自動車の関税を7月に引き下げたため、輸入の多い高級車の販売は好調で「レクサス」ブランドを含むトヨタ自動車は2割の大幅増となった。
乗用車メーカーの情報交換のための業界団体は11日までに、18年の乗用車販売の通年予想を引き下げた。従来は前年比4%増と予測してきたが、出荷ベースで前年並み、小売りべースで1%減とした。米中貿易戦争が一部の消費者の購入意欲を押し下げると判断した。


20180913日経
米グーグルが自動車の自動運転に関する特許競争力でトヨタ自動車などを逆転し、首位となったことが分かった。決め手になったのが自動運転車の「頭脳」を担う人工知能(AI)だ。自動車はデータを解析しながら走る製品へと変貌し、メーカー各社の競争の焦点も燃費向上や生産効率からデータの活用技術へと移る。大量の情報を競争力に変える「データエコノミー」の到来はハード重視で来た日本車各社を追い詰め始めた。

日本経済新聞が特許分析会社のパテント・リザルト(東京・文京)に依頼し、7月末時点の米国における自動運転の特許競争力をランキングした。首位はグーグル系の米ウェイモで、総合スコアは2815ポイント。比較可能な2年前の調査では、トヨタ、米ゼネラル・モーターズ(GM)、日産自動車、独ボッシュに次ぐ5位。ウェイモはスコアを3倍近く伸ばし、急浮上した。
日本勢伸び悩み

ランキング上位10位をみると、日本企業ではトヨタ、日産、ホンダ、デンソーの4社が入った。ただ4社とも2年前から順位を下げており、特許競争力は伸び悩んでいる。
今回の調査は、米国でこれまで出願された関連特許ごとに「権利化への意欲」「競合他社の注目度」「審査官の認知度」の3項目を数値化。企業別に総合スコアを算出した。その特許を国際出願していれば権利化に対する意欲が強く、競合他社から無効審判の申し立てなどが多ければ注目度が高いと判定される。
スコアに大きく影響するのが、国際機関がまとめる先端特許報告書「国際サーチリポート」での引用回数だ。ウェイモは累計769回と、トヨタの1.6倍、GMの2.3倍に及ぶ。各国審査官が認可の指針とし、引用が多ければ多いほど他社は類似特許を取りづらくなる。ウェイモの有効特許件数は318件とトヨタの半分以下だが、その多くは審査官に広く知られ、先端技術として認められている。
ウェイモ躍進の原動力になったのがAI技術だ。地図や位置情報を使い、車や人の動き、交通状況を人に代わって識別・判断し、ハンドルやブレーキを自動制御する。こうした自動運転の中核技術で総合スコアの5割に当たる1385ポイントを獲得。同技術で204ポイントにとどまった2位のトヨタを大きく引き離した。
ウェイモは16年にグーグルの自動運転車の開発部門が分社化して設立。最近もライドシェア(相乗り)車両が利用客の乗車を判断したり、自転車の挙動を予測して安全に並走したりする新たな特許を次々取得している。17年には米カリフォルニア州の公道で56万キロメートルと地球14周分に及ぶ走行試験を繰り返し、同8千キロだった日産などの日本勢を圧倒。AI精度を高めるためのデータ収集でもリードする。
日本勢が特許競争力で伸び悩むのは「ハード中心主義」が背景にある。
瞬時に情報解析

2年前に首位だったトヨタは有効特許件数で断然の首位を保つ。だが多くは自動ブレーキや前後の車間距離を保つといった基本的な運転支援技術にとどまる。車両制御が簡単なプログラムでも対応できたので、むしろセンサーやカメラ、制御機器の性能向上や組み合わせ技術に力点を置いていたためだ。
日本の特許庁が5月に公表した調査では、世界で出願した自動運転関連の特許数は日本勢が45%と最も多い。だが内訳は5段階で示す自動運転の技術基準のうち最も下の「レベル1」が大半で、全体の6割が部分的な自動運転にとどまる「レベル2」以下。一方、米国勢は出願の過半がより高度な「レベル3」以上に集中し、業界標準となる中核技術を先んじて押さえようとする動きが鮮明だ。
米ボストン・コンサルティング・グループによると、35年には世界の新車販売の4分の1が運転者が原則不要な「レベル4」以上の自動運転車となる。膨大な地図情報から渋滞、実際の走行状況までを瞬時に解析する「データマシン」へと車が変わりつつあるが、それに日本車各社は対応できないでいる。
新たな脅威も台頭する。中国ネット検索最大手の百度(バイドゥ)は今年7月、AIで急接近する後続車を検知し相手に知らせる特許情報を日本で公開した。中国では当局とも連携し走行データ収集に動く。今回の調査では114位にとどまったが、米国でも日本勢を上回る大量出願に乗り出している。
日本勢は巻き返しを急ぐ。デンソーなどトヨタ系部品4社は19年に自動運転技術を開発する新会社を設ける。だが当面は部品開発が主体となる計画。AIを巡っては「日本車各社は重要性に気付いたのが遅い分、開発が遅れている」(自動運転特許に詳しい河野英仁弁理士)のが現状だ。
(データエコノミー取材班 大越優樹、寺井浩介)

181001日経

100年に1度といわれる技術革新に加えて、米国のトランプ大統領が自動車業界の波乱要因となっている。現状と今後の見通しをアイシン精機の伊勢清貴社長に聞いた。


――足元の販売状況はどうですか。
「全体としては前年比横ばいといった印象だ。米国は数年にわたり新車販売台数が年間1700万台規模で推移し、このあたりが上限だ。今年は金利やガソリン価格の上昇が響いて減少するとの予想だったが、景気要因により下げ幅が小さくなっている。一方、中国は小幅だが増加基調が続いている。主要顧客のトヨタ自動車が得意とするタイなど東南アジアが盛り返してきたのも大きい」
――今後も堅調な販売が続きますか。
「変動要因が非常に多く、先行きは不透明だ。中国は自動車の販売が伸びており、通常であれば部品メーカーも設備投資を増やす局面にある。ただ、米中の貿易摩擦の影響が見通せず困っている。新興国の通貨安も気がかりだ。米国の金利上昇が続き、新興国には厳しい状況が続く。現在は表面的には好調だが、様々な可能性を想定し、状況が変化したときに素早く動く必要がある」
――トランプ大統領は米国生産の拡大を求める言動が目に付きます。
「主力製品のひとつであるAT(自動変速機)を担当している子会社はすべて円建てで取引しており、為替変動の影響を受けないのが強みだった。今後はマイナス要因になりかねず、自動車メーカーと相談しながら現地化を一段と進める。ただ、現地化は一朝一夕にできない。既に米国では35社の子会社を通じて1万5千人を雇用している。既存拠点の能力増強や生産性の向上を優先する」
投資を抑え増産

――中期的な課題は何ですか。
「電動化への対応が重要だ。ハイブリッド車(HV)などが普及すると、ATの需要が減る。ATからHVや電気自動車(EV)など電動車の部品に投資や人材をシフトしていく計画を立てていたが、足元では新興国でMT(手動変速機)からATへの移行が想定以上に進んでいる。まずMTの生産設備を使って、投資を抑えた形で増産する」
「米国の燃費規制の緩和は電動化にマイナスだ。原油価格もシェールオイルの効果で1バレル70ドルあたりが上限となり、大型車を好む米国では燃費に関心が向きにくい。ただ、中国は官民ともに環境への意識が高まり、電動化は待ったなしだ。欧州とともにけん引する。2030年に世界販売台数の半分が電動車になるという予想に基づき準備する」
――トヨタ系の他の部品会社と電動化や自動運転に対応する新会社を設立します。
「大きなポイントはソフト開発人材の集約だ。中国の現地メーカーなどに部品を売り込む際、ソフトも一緒に納める必要がでてくる。各社のソフトの開発力に限界があり、このままでは独ボッシュなどのメガサプライヤーに完膚なきまでに打ちのめされる可能性があった。自分たちのエゴを通すのではなく、勝てる体制をつくりたい」
(聞き手は編集委員 

181102日経
トヨタ自動車が国内で販売モデルを大きく転換する。約5千店ある既存の販売店改革を進める一方、定額制やシェアサービスなど新しい売り方を模索する。背中を押すのは若者のクルマ離れなど消費者の意識の変化と、シェアや自動運転など技術革新による産業構造の変革だ。つくって売るという従来のメーカーの枠を超え、継続的にデータも収集しながら新しい付加価値を生み出せるかがカギを握る。(1面参照)
日本自動車工業会によると独身者で車の購入意向がある人は12%と、若者の車への関心は薄れている。家計調査では自動車関連の出費は2017年に約20万円と10年間で6千円ほど減った一方、携帯電話の通信費は35%増え約10万円になった。
一般家庭では、車は1日の95%が駐車場に止まったままとの調査もある。IT(情報技術)や電子決済の普及で、必要な時に必要なだけ車を使うカーシェアやライドシェアが可能になり、急速に消費者の支持を集めている。1990年に780万台だった国内新車市場が520万台に縮む中、トヨタは新たな収益源としてサービス事業の導入を急ぐ。
まず19年から、従来のように数百万円を払って1台の車を所有するのではなく、毎月一定額を支払い車を乗り換えられるサービスを始める。売り切るのではなく定額料金で一定期間利用できる手法は「サブスクリプション(定額制)」と呼ばれ、欧米メーカーも高級車を中心に強化している。
一定の月額料金で好みの車種に乗り換えられるようにし、若者や転勤者らの需要を掘り起こす。来年1月にも東京で始め、全国展開も視野に入れる。対象の車種や価格は今後詰める。
カーシェアでは19年中に販売店向けにカーシェアリングの決済、予約システムを提供する。カーシェア国内最大手のパーク24の車両台数(約2万3000台)を上回る最大4万台の試乗車を活用。販売店にある駐車場と整備の人材を生かし、カーシェアでの接点を販売につなげる狙いもある。トヨタとパーク24は提携しており、走行データから新しい移動サービスの開発も検討する。
カーシェアなど新サービスの利用が増えると「買い替え需要が減るのでは」(トヨタ系販売会社)との懸念もある。それでも「既存事業だけの延長に未来はない。シェアで稼働率が上がれば、新車需要も増える」(トヨタ幹部)として新サービスの展開に踏み切る。
視線は海外にも向く。英調査会社IHSマークイットによると、カーシェアなどの普及で23年以降、年間1億台程度の世界販売台数の約2%に相当する200万台規模の新車需要が消える見通しだ。同分野では世界で約7500万人が利用する米ウーバーテクノロジーズが先行。アジアなど各国で同様のサービスが広がる。
「下請け」リスク

さらに人工知能(AI)を含めた加速度的な技術革新で、自動運転車を使ったシェアサービスも実現が近い。米グーグル系の自動運転開発会社、ウェイモは年内にも米国で自動運転車による一般ユーザー向けの試験シェアサービスを開始する方針を打ち出している。
車が「所有する物」から「利用する物」にシフトすれば、新車販売に依存してきた自動車メーカーの事業モデルは崩れる。先端技術で先行するグーグル系やウーバーなどに製品を供給するだけの「下請け」になるリスクすらある。
そうした危機感が後押しする形で、世界の自動車大手の間では合従連衡が相次ぐ。ホンダは米ゼネラル・モーターズ(GM)傘下の自動運転子会社と資本提携。10月31日には、米フォード・モーターと独フォルクスワーゲン(VW)が電気自動車や自動運転車の共同開発で交渉していることが明らかになった。
トヨタはAIや自動運転など先端分野の開発力を強化する一方、ソフトバンクグループと共同出資会社を設立するなど異業種との連携を進める。ウーバーや東南アジアで高いシェアを持つグラブなどにも出資した。
トヨタは「売り切り」が主体だった従来の販売モデルを転換することで、ネット分野などの新興勢が力を増す次世代の競争に備える。

181109日経
自動車メーカーを取り巻く環境が厳しくなってきた。大手7社の2018年4~9月期連結決算は4社が営業増益となったが、19年3月期は5社が減益の見通し。資材高や新興国通貨安が収益を圧迫し始めている。7日にはトランプ米大統領が自動車を念頭に日米貿易の不公正を主張した。保護主義政策が進めば、完成車生産や部品調達網も修正を迫られる。
日産自動車が8日発表した18年4~9月期連結決算は、営業利益が前年同期比25%減の2103億円だった。「米鉄鋼・アルミ関税引き上げの影響も一部でた」(軽部氏)という原材料高が539億円の減益要因になった。

4~9月期は、東南アジア諸国連合(ASEAN)や日本で販売を伸ばしたトヨタ自動車、ホンダ、三菱自動車、スズキの4社が営業増益となった。ただ、世界の2大市場である米国と中国では貿易戦争が影を落とす。
米国の新車市場は金利上昇もあり減速している。そこに貿易戦争によるコスト増が加わって収益を圧迫する。日産は在庫や販売費の削減を優先して、販売台数が9%減った。「経済の不確実性が増すなか、販売改革に時間と手間がかかった」(軽部氏)
日産にとって米国はシェア10%を目標に量的な拡大を進めてきた市場。17年度で世界販売台数の約28%を占める。10月には現地で根強い人気があるセダンの量販車「アルティマ」を6年ぶりに刷新し立て直しを急ぐ。
トヨタの北米の営業利益は23%減った。北米トヨタ代表のジム・レンツ専務役員は「米国は消費者心理は良いが逆風も吹き、複雑性が増す」と、貿易問題や金利上昇、日用品の価格上昇などを懸念材料に挙げる。
世界最大の市場となった中国も伸びが鈍化している。日産は9月の販売台数が前年同月比で20カ月ぶりにマイナスとなった。ホンダは「米国の制裁で多少、需要が鈍化した」(倉石誠司副社長)ことで、4~9月期の中国の販売台数が9%減の66万台となった。「クリスマス商戦と春節に新型車を投入」して挽回を狙う。
4~9月期の中国販売が11%減の13万台となったマツダ。青山裕大常務執行役員は「現地の代理店によると他社も含め販売現場では、在庫が積み上がり早期に回復しない」と危機感を募らせ、台数を無理に追わず販売費用を減らす方針だ。
今後の業績も貿易戦争の影響が避けられない。通期の営業利益は日産やホンダなど5社で減る。横ばいを見込むトヨタは鉄・アルミの米関税引き上げの影響が通期で100億円の減益要因となる。増益の三菱自も「グローバル経済は不透明さを増している」(益子修・最高経営責任者=CEO)と懸念を示す。
米国、メキシコ、カナダが9月末に結んだ北米自由貿易協定(NAFTA)の新ルールは域内での部品調達率引き上げや賃金条件が導入される。部品調達網の見直しも各社の負担となりそうだ。
トヨタとマツダは21年までに米アラバマ州に新工場を建設する。投資額は16億ドル(1800億円)を見込むが、マツダの古賀亮取締役は新協定を受け「米国の部品調達は増やさざるを得ない」と、投資額が計画より増えそうだ。トヨタは通商リスクも踏まえ、米中で部品を含めた電動車を現地生産する検討を進める。
米国は中間選挙が終わり、トランプ大統領が日本の対米貿易黒字を改めて問題視しており、通商交渉で再び圧力を強める可能性もある。日産の軽部氏は「与えられた環境でベストを尽くすが、日産は自由貿易を支持しており、なるべく自由に活動したい」と収束への期待を示した。

マツダの丸本明社長は2020年に中国で同国専用の電気自動車(EV)を投入すると明らかにした。現地大手と共同開発し、マツダはデザインなど車体部分を担当するもよう。「中国は5年後も10年後も世界一の自動車大国であることには間違いない」と、現地生産する専用車の投入で販売拡大につなげる。
日本経済新聞などのインタビューで明らかにした。開発するのは小型の多目的スポーツ車(SUV)になるとみられ、すでに公表している20年までに日米欧などで発売する独自開発のEVとは異なる。
合弁相手の中国長安汽車集団がモーターや電池などを調達し、マツダはデザインなど含めた車体を担当する見通し。中国政府は乗用車分野の出資規制を緩和すると発表しているが、中国長安と折半出資の比率について丸本社長は「見直しをする考えはない」と協調路線を続ける考えを示した。
マツダは16年に中国市場専用のSUV「CX―4」を発売。18年10月には大型SUV「CX―8」の現地生産を始めており、年内に販売を始める。18年3月期の販売台数は32万台に達したが、4~9月は前年同期比11%減と市場全体が落ち込んだ影響を受けている。

181119産経新聞

平成11年から日産自動車の経営を担ってきたカルロス・ゴーン容疑者の逮捕は、日本の自動車業界を激震させた。日産を再生させ、仏ルノーや三菱自動車と合わせて世界販売台数を1060万台に引き上げ、通年で初の2位に押し上げたゴーン容疑者は、国内産業界の企業経営のあり方にも大きな影響を与えてきたからだ。

 「コミットメント(必達目標)」。11年10月、ルノーから最高執行責任者(COO)として派遣されたゴーン容疑者が中心となって策定した14年度までの3カ年計画「日産リバイバルプラン」の中で、脚光を浴びた単語だ。

 1兆円のコスト削減、本業の稼ぐ力を示す営業利益率(売上高に占める営業利益の割合)4.5%の達成などの数値目標を掲げ、「達成できなければ辞める」と強い覚悟を表明してきたゴーン容疑者。結果的にこれらの目標をクリアしたことで「V字回復」という言葉にも注目が集まった。

 こうしたゴーン流の再生手法は、産業界や自治体にも広く採用された。報道で一報を知った自動車メーカーの関係者は「個人的なしがらみにとらわれず、従業員を巻き込んで目標達成へと突き進むゴーン容疑者の功績は大きい」と“アウトサイダー”としての力量を高く評価する。メーカー各社からは「ゴーン容疑者を信頼していただけにショックが大きい」「かなり驚いている」と戸惑う声も聞かれた。

 ゴーン容疑者は29年4月に日産の社長と最高経営責任者(CEO)から退くことを発表。経営のバトンを西川広人氏(現社長兼CEO)に引き継いだ。代表権を持つ会長として、ルノーや三菱自動車を含むグループ経営全体を管理する役割に軸足を移した。

 日産は28年、燃費不正問題で窮地に陥った三菱自を傘下に収めた。

 三菱自は東南アジアなどでの販売が好調で、30年3月期連結決算で最終損益が2期ぶりに黒字に転換。「筋肉質の経営体質」づくりに向けた基盤を着々と構築してきたが、その出ばなをくじかれた格好だ。

 三菱自のある社員は「ゴーン容疑者はわが社の窮地を救ってくれただけに非常に残念だ。強いリーダーシップを発揮し、必要な仕事とそうでない仕事をあぶり出す手法もプラスに働いていたのに…」と複雑な心境をのぞかせる。

 出荷前の完成車検査をめぐって、昨秋以降に日産やSUBARU(スバル)などで相次ぎ発覚した不正行為。ようやく再発防止に向けて動き出した自動車業界への信頼感が再び揺らぐ可能性もあり、各社は「(日産の)動向を慎重に見守りたい」と口をそろえた。(臼井慎太郎)

101121日経
タイ工業連盟(FTI)は20日、自動車生産の2018年の年間目標を前年実績比6%増の210万台に引き上げた。インラック前政権が12年に導入した新車購入奨励策の「5年縛り」が解け、タイ国内では車の買い替え需要が膨らんでいる。10月の生産台数も前年同月比21%増と好調で、5年ぶりの200万台超えが見えてきた。

8月に上方修正した目標から、さらに2万台積み増した。輸出向けは110万台で据え置いたが、国内向けを100万台に増やした。
タイの自動車生産が過去最高だったのは政府の新車購入奨励策で国内需要が急増し、約245万台を記録した13年。それ以降は200万台割れが続いてきた。18年は1~10月の累計生産台数がすでに180万台に達しており、200万台超えは確実となっている。
10月の自動車生産は、前年同月比21%増の19万7203台だった。

181121日経
日産自動車は会長のカルロス・ゴーン容疑者の逮捕を受けて、新たな指導体制の構築が急務になった。キーマンは西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)と執行領域ごとに権限を与えられた5人の役員だ。自動運転や電動化など自動車ビジネスが根底から変わるような技術革新の大波が押し寄せるなか、集団指導体制でライバルに対峙していけるかが焦点になる。(1面参照)

「購買は最もシナジーに貢献した部分。今でもそうだ」――19日午前に都内で開かれた講演会で、西川社長はこう自負した。共同購買は西川社長が組織の立ち上げから関わり、初代トップとして部品の原価低減や鉄の集中購買で名を上げた。

手腕をゴーン会長に買われ、17年には社長に抜てきされた「ゴーンチルドレン」でもある。19日の会見では「今回の不正は長年にわたるゴーン統治の負の側面」と厳しく断じながらも、「(ゴーン体制は)功罪ともにある。もう一度じっくりと考えたい」と吐露する場面もあった。22日に開く臨時取締役会では、西川氏がゴーン会長の会長及び代表取締役の職を解くことを提案する。
ゴーン会長はCEO職を離れてからも、社内では絶大な影響力を持ってきた。対外的にも日産の「顔」であり続け、ゴーン会長のリーダーシップは不可欠のものだった。
今回は名実ともにゴーン会長のいない経営体制になる。役職の頭文字から社内で「5C」と呼ばれる役員陣による集団指導へ移るようだ。ただ、ゴーン氏の抜けた穴はあまりに大きく、集団指導でその穴を埋められるかは未知数だ。
例えば、フランス政府との関係。ゴーン氏は仏政府でくすぶるルノーとの統合論を、ルノーCEOや仏政財界の有力者の顔を使い分け、巧みにいなしてきた。15年には仏政府から日産の経営の独立性を担保する合意を引き出した。
当時、チーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)として交渉にあたった西川社長は「ゴーン氏が退任しても十分仕事ができる関係を築いた」と話したが、予期せぬ形でその成果が試されることになりそうだ。
CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)など次世代技術の競争でも影響は避けられそうにない。
10年にルノー・日産として独ダイムラーと結んだ戦略的パートナーシップは、ゴーン会長とダイムラーのディーター・ツェッチェ社長の良好な関係が基礎になった。すでに具体化したエンジンの共同開発などに加え、日産の開発陣や経営層が定期的に情報交換を行い「先端技術の動向を探る貴重なベンチマークになっている」(日産幹部)。
ホンダとゼネラル・モーターズ(GM)、トヨタ自動車とソフトバンクグループなど、業界を越えた提携が加速するなかで、日産は動きの鈍さが目立つ。ゴーン会長が去ることで、ライバルとの差が一段と広がることを警戒する声もある。
足元では、日産は業績面での存在感の低下も著しい。日産が3社連合をけん引してこられたのは業績好調が背景だったが、相対的な発言力の低下を招きかねない。
2018年度の日産の純利益は33%減の5000億円と10期ぶりの最終減益を見込む。日産の売上高営業利益率は、15年度(6.5%)を直近のピークに年々低下。18年度はルノーや三菱自動車を下回る見通しだ。
販売台数の3割強を占める北米の低迷で屋台骨が揺らいでいる。18年4~9月期の北米事業の営業利益は854億円と、2年前に比べ4割減った。新型車投入の遅れで値引きに頼る悪循環にはまった。米国での値引きの原資となる奨励金は、9月時点で市場平均より1割多い。販売台数が日産と同程度のホンダに比べれば約2倍だ。
これまで高い成長率を保ってきた中国でも、10月の新車販売台数は5.5%減と2カ月続けて前年を下回った。国内でも完成車検査を巡り、不正が相次ぎ見つかるなど混乱が続いている。
コンサルティング会社、ローランド・ベルガー日本法人の長島聡社長は「今後はそれぞれの地域にあった車をつくる必要がある。ゴーン氏が主導してきたような、中央集権は厳しくなる」と指摘する。
ルノーや三菱自動車との3社連合のパワーバランスが揺らぐ中、日産が今後も強い発言力を維持できるかどうか。「西川新体制」は、厳しい課題に直面する。

181217日経
自動車販売会社の業界団体、日本自動車販売協会連合会(自販連)の小関真一会長(山形日産自動車社長)は2019年の登録車(排気量660cc超)販売について「増税前の駆け込み需要もあり、例年より1割ほど伸びる」との見通しを示した。16日までに日本経済新聞の取材に応じた。台数は年350万~360万台を見込む。350万台を超えるのは13年ぶり。

181218日経
フランクフルト=深尾幸生】厳しい削減目標に自動車業界は反発を強めている。欧州自動車工業会(ACEA)は17日、「技術や社会経済の現状を無視した政治の産物だ。深刻な懸念を抱いている」との声明を発表した。ドイツ自工会(VDA)のベルンハルト・マテス会長は「欧州の自動車産業に重荷を負わせ雇用を危険にさらす」と批判した。
欧州の非政府組織(NGO)「T&E」のディレクター、グレッグ・アーチャー氏は「目標達成には新車の3分の1が電気自動車(EV)か燃料電池車になることを意味する」と予測する。域内で新車を販売する欧州企業はEVシフトの具体化を急ぐ。
独フォルクスワーゲン(VW)は2023年までの5年間で電動化に300億ユーロ(約3兆8500億円)を投資する。19年からEVの新車攻勢をかけ、25年に新車販売の25%をEVにすることを目指す。
ただ、急激なシフトを実行に移すには雇用の面で相当の痛みを伴う。EVはエンジン車と比べて部品点数が少なく現状の人員は必要ないからだ。
VWのヘルベルト・ディース社長は10月、独紙のインタビューで「40%減なら新車の半分以上をEVにしなければならない。そうなれば10年で4分の1の人員を削減しなければならない」と危機感をあらわにした。
日本勢も欧州で販売する以上、条件は同じだ。トヨタ自動車はハイブリッド車(HV)の販売が好調で21年目標の達成は確実とみられているが、30年目標を達成するにはEVの投入が不可欠とみられる。
トヨタは20年にも高級車ブランド「レクサス」のEVを欧州で販売する。11月に発売した小型多目的スポーツ車(SUV)「UX」をベースとし、日本で生産し輸出する。
ホンダは19年初めに投入するSUV「CR―V」のHVを皮切りに、欧州での電動車比率を高める。19年内に量産型のEVも発売。25年には欧州で販売する新車の3分の2を電動車にする方針だ。マツダも欧州の規制を念頭に、30年にはすべての車に電動技術を搭載する方針を掲げる。
ただ、自動運転などIT(情報技術)化で車両の消費電力は急増する。アビームコンサルティングの轟木光シニアマネージャーは「EVには電池コストや充電時間などの課題がある。30年時点で全てEVに置き換わるのは難しい」と指摘する。

181228日経
世界最大の自動車市場である中国で減産の動きが広がっている。販売不振の米フォード・モーターや韓国・現代自動車などに続き、日産自動車とマツダも2割程度減産する。中国の新車販売(総合2面きょうのことば)は消費マインドの冷え込みなどで2018年に28年ぶりに減少に転じ、自動車工場全体の稼働率は6割台に低迷する。自動車産業は中国の国内総生産(GDP)の約1割を占めるとされ、雇用や関連産業への波及で中国景気の減速要因になる恐れがある。

日産は12月から大連工場(遼寧省)や鄭州工場(河南省)など主力3工場で2割程度の減産を始めた。3月まで生産ラインの一時停止などで3万台前後を減産し、在庫の適正化を急ぐ。
マツダも19年1~6月に18年の生産実績から減らす検討に入った。中国企業への委託生産も含め、減産幅は最大で2割になる可能性がある。日本車は不振の米国や韓国メーカーと比べて堅調だったが、市場全体の縮小の影響が及んできた。
フォードは1~11月の販売台数が34%減と落ち込み、一部工場の稼働率は50%を割り込んでいるもよう。米ゼネラル・モーターズ(GM)も小型車工場の生産台数が11月に4割減となった。現代自は17年から減産を続けており、「工場稼働率は6割程度」(現地部品メーカー幹部)。中国第一汽車集団や中国長安汽車集団などの独自ブランド車も減産を拡大しているとされる。
一方、トヨタ自動車やホンダは主力車種が好調で減産計画はないという。独フォルクスワーゲン(VW)も好調な高級車が支え、11月の生産台数も数%減にとどまる。
中国の新車販売台数は11月に5カ月連続でマイナスとなり、18年に1990年以来28年ぶりの減少となる見通しだ。
要因は主に3つある。中国は大都市の交通渋滞緩和や大気汚染の抑制のため、ガソリン車のナンバープレート発給を厳しく制限している。18年は北京や上海の8都市に海南省が加わった。
また不動産価格の下落に伴い高額消費が冷え込み、けん引役だった地方都市圏で新車販売が落ちこんだ。さらに昨年末の小型車減税の駆け込み需要の反動減も、マイナス幅を大きくしている。
英プライスウォーターハウスクーパースの調査によると、中国の自動車工場の稼働率は5年前は7割台だったが、近年は6割台で推移する。中国メディアによると年産能力は今年末の4000万台から、25年に4500万台に達するという。
政府も過剰能力対策に乗り出した。19年から工場が立地する地域の工場稼働率が全国平均を上回らないとガソリン車の新工場建設は認めない。
中国の鉱工業で自動車は最大の産業で、GDPに占める比率は約3%とみられる。全国の販売店や保守サービスを含めるとGDPの1割に達するとの見方もあり、販売・生産動向は中国経済全体に影響する。また世界の新車販売の3割を占める中国での減産拡大は、部品や素材などのサプライチェーンを通じて世界経済にも影響が及ぶ。米国や欧州など世界の自動車販売が踊り場にさしかかるなか、成長のけん引役を失う恐れもある。

190115日経
世界の自動車市場が転機を迎えた。最大市場の中国と2位の米国で新車販売が急減速している。カーシェアリングの台頭などで日米欧市場は今後、縮小に転じる見通し。自動車メーカー各社は電気自動車(EV)や自動運転など次世代車の開発を急ぐが、全てを1社単独でこなすのは難しい。選択と集中で得意分野を伸ばし、他社と相互補完する提携戦略が本格化する。

2018年の中国の新車販売は前年比2.8%減の約2808万台と、28年ぶりの前年割れとなった。米中貿易戦争などによる景気減速に、17年にあった減税打ち切り前の駆け込み需要の反動減が重なった。政府は農村地域での販売刺激策の検討に乗り出し、19年に18年並みの維持を目指す。

米国は18年の新車販売が前年比0.3%増の約1727万台と横ばい。全米自動車ディーラー協会(NADA)などは19年に2.7%減とマイナス成長を予測する。英調査会社のIHSマークイットのクリストファー・ホプソン氏は「金利の上昇や中古車市場との競合が新車需要に圧力をかける」と分析する。
米中で販売5割

世界の新車販売台数のうち中国が3割、米国が2割と両国で約5割を占める。米中で同時に進行する市場減速は、部品供給などサプライチェーンにも大きな影響を及ぼす。コンサルティング大手アリックス・パートナーズのアレクサンドル・マリアン氏は「自動車業界は世界的な景気後退を想定した準備を進めるときだ」と指摘する。
新車販売の低迷は一過性ではない構造的な問題もはらむ。自動車のシェアリング(相乗り)など「所有」から「利用」に移る消費動向の変化だ。
IHSマークイットによるとカーシェアなどの台頭を受け、18~22年の新車市場の年平均成長率は2.1%と、11~17年の3.7%からほぼ半減する。日米欧はマイナス成長に転じ、中国も成長率が鈍化する見通しだ。
デロイトトーマツコンサルティングの調査では、世界の地方中核都市ではマイカー中心の移動が縮小。カーシェアによる移動の比率が15年の約7%から50年には約28%に高まると試算する。
市場の変化に先駆けて中国政府や欧州連合(EU)は産業政策のルールチェンジを打ち出す。厳しい環境規制でガソリン車からEVに一気に転換し、電池などの新産業を育成する狙いだ。
中国は新エネルギー車(NEV)の生産を義務付ける「NEV規制」を19年に開始する。新エネ車は確実に成長する領域で、中国では18年も前年比62%増の約125万台と大きく伸びた。
所有から利用へ

米国は自動運転車など次世代車の開発競争で世界に先行する。米ゼネラル・モーターズ(GM)や米グーグルが走行データの蓄積を競っており、所有から利用への変化を受け、データを武器にした新たな移動サービスへの構造転換が加速する。
EVや自動運転車の開発は1社では難しい。人工知能(AI)など開発費の巨額化に加え、各国の環境規制や交通規則がめまぐるしく変化するなか、各社とも単独ではなく提携関係を生かす動きが活発になる。
18年にはトヨタ自動車がソフトバンクグループと提携したほか、ホンダもGM子会社と提携し自動運転技術の開発を加速する。EV技術開発ではトヨタ、マツダ、デンソーが主導し、SUBARU(スバル)やスズキといった日系メーカー全9社が連合を組む。
成長が続く新興国市場の開拓も生き残りへのカギを握る。しかし地域や国ごとに特徴の違う新興国市場の攻略も、単独では兵たんが続かない。
スズキは中国市場から撤退して得意とするインドに専念し、電動化など次世代技術ではトヨタとの提携を生かす考えだ。トヨタはインドではスズキの販売網を活用し、中国など他の新興国市場に注力する。
日産自動車、仏ルノー、三菱自動車の連合は得意市場をすみ分ける。三菱自はインドネシアなど東南アジア市場を開拓し、EV技術に強い日産は中国市場に力を入れる。

190120時事通信

トヨタ自動車とパナソニックが2020年に共同で、電気自動車(EV)向けなど車載用電池で新会社を設立することが20日、分かった。出資比率はトヨタ51%、パナソニック49%となる見通し。自動車の電動化をめぐっては、中核技術の電池で中国や韓国といった海外メーカーが台頭。新会社設立により、コスト競争力の向上と次世代技術の開発強化を図る。週内にも発表する。

 パナソニックは大口顧客である米EV大手テスラ向け車載電池工場を除き、兵庫県や中国・大連などに構える5カ所の工場を新会社に移管。20年代前半からはハイブリッド車(HV)用の約50倍の容量を持つEV向け電池の量産を本格化する。

 共同生産した電池は、トヨタ子会社のダイハツ工業や提携関係にあるマツダ、SUBARU(スバル)のほか、他メーカーにも供給したい考え。大容量で安全性が高いとされる、全固体電池など次世代電池の開発にも共同で取り組む。 

190125日経
英国が欧州連合(EU)から離脱すると、日本企業も業績への悪影響が避けられない情勢だ。英国とEUの自動車貿易に10%の関税がかかれば、英国に生産拠点を置く日産自動車、トヨタ自動車、ホンダには年間約1500億円程度の負担が生じる。予想営業利益の約4%に相当する規模だ。離脱プロセスの混乱で物流が停滞したり、英景気が冷え込んだりすれば、ダメージはさらに大きくなる恐れがある。

現在、英EU間の自動車貿易には関税がかからない。だが、英国がEU単一市場から離脱すれば、日本や米国からの輸出と同様に10%の関税がかかる見通しだ。この前提で三菱UFJモルガン・スタンレー証券が2020年3月期の影響額を試算した。
日産、トヨタ、ホンダの英EU間の完成車の輸出入の予想台数は合計約53万台。モデルごとの出荷価格から輸出入代金をはじき、10%の関税がかかったと想定すると影響額はトータルで1500億円になるという。
「関税によるコスト増で、欧州への輸出基地としての英国の利点が薄れる。自動車各社は英国外への生産移転を検討せざるを得なくなるだろう」と三菱UFJモルスタの杉本浩一アナリストは指摘する。
関税影響額の内訳は日産が940億円にのぼり、トヨタが530億円、ホンダは90億円と続く。日産は英サンダーランドに年約50万台規模の完成車工場を持つ一方、その他の欧州地域に匹敵するような拠点はない。仏ルノーとの関係見直しのなかで国内外の生産拠点を再編成するとの観測もある。生産の移転先としては福岡県の工場などが候補とみられている。
英国がEUと条件を決められないままで「無秩序離脱」に陥れば、物流の混乱で部品調達などが滞り、自動車各社の業績には一段と負荷がかかる公算が大きい。ホンダは実際に「無秩序離脱」に至った場合は、工場の生産を一時的に休止すると表明している。

190206日経
▽…人による自動車の運転の3要素である目や耳による「認知」、脳での「判断」、ハンドルやアクセル制御などの「操作」を自動化した車両を指す。車につけたカメラやセンサーのほか、ネットワークを通じて取得した位置情報や地図情報などで自動運転システムが環境を認知。車をどう動かすべきかを、人工知能(AI)などIT(情報技術)を生かしたシステムが判断し、ハンドルや加減速の指示を出して車を自動で動かす。

▽…技術レベルはハンドル、アクセル、ブレーキ操作のいずれかを自動制御する「レベル1」から、人間が一切関わらない「レベル5」まで5段階に分かれる。高速道路や過疎地など限られた地域での走行など、条件付きで運転を委ねる「レベル3」以上の機能を搭載した車両の投入が2020年代に活発になると見込まれている。
▽…富士キメラ総研(東京・中央)は「レベル3」以上の自動運転車が40年には世界で4400万台にのぼり、新車販売全体の約3割を占めると予測。そのうち9割は「レベル3」と想定する。20年時点では約18万台とみており、本格的な普及は20年代以降に加速するとみる。

190213日経
自動運転に不可欠な地図データ基盤の構築で日米企業が手を組む。トヨタ自動車やホンダなどの出資先企業が、米ゼネラル・モーターズ(GM)系の企業を買収。トヨタやGMが高精度な地図データ(総合2面きょうのことば)を共有できる体制を築く。先行する米グーグルや政府主導で開発を進める中国勢に対抗するには、付加価値の高い技術・サービス分野に経営資源を集中する必要がある。データ技術を巡る攻防が自動車産業を新たな提携に動かす。

地図データ基盤は道幅や制限速度、立体交差などの高精細な3次元データで構成し、自動運転の要となる。専用の調査車両を走らせてデータを集める必要があり、日米の自動車大手が出資する新興2社が組みデータの精度と効率を高める。
INCJ(旧産業革新機構)や日産自動車、地図大手ゼンリンなども出資するダイナミックマップ基盤(DMP、東京・港)が、米GM系のアシャーを買収する。買収額は200億円弱とみられ、13日にも発表する。
自動運転の分野ではグーグルが先行しており、すでに米国の一部の州で自動運転車による配車サービスを実用化した。
消費者向けの地図サービスでは「グーグルマップ」を搭載したスマートフォン(スマホ)をカーナビ代わりに使う利用者が増加している。無料で精度も高く、パイオニアなどカーナビメーカーは業績が悪化した。
自動運転向けの高精細な地図データでも同様にグーグルが急伸する可能性がある。すでに欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)などが同社と提携している。
地図基盤をグーグルに押さえられれば、自動運転の技術・サービス開発に支障が出かねないとの危機感も今回の日米連合の結成を後押ししたとみられる。
DMP・アシャー連合は今後100億円以上を投じ日米の道路データを整備する。この地図基盤をトヨタやホンダ、GMが利用するほか、グーグルに依存するのを避けたい他の自動車大手にも利用を促す。
トヨタやGMなどは協調できる領域は共通化し、次世代の移動サービスや人工知能(AI)による解析技術など付加価値の高い分野に経営資源を集中投下する。
欧州では15年にBMWやダイムラーなどが地図データを扱うヒアを共同で買収。政府主導で自動運転の環境を整備する中国では、百度やアリババ集団などが地図データ基盤を構築、提供している。地図データを巡る国際的な主導権争いが熱を帯びる。

190213共同通信ヤフー
ジュネーブ共同】国連欧州経済委員会は12日、日本、欧州連合(EU)など約40カ国・地域が、車の衝突を回避する「自動ブレーキ」の新車搭載を義務付ける国際基準案で合意したと発表した。6月に採択し、来年初めにも発効の予定。ルールを統一し、国際的に事故防止に役立てる。

 基準案は、新車の乗用車や軽自動車、小型商用車が対象で、委員会によると、日本で年間400万台以上、EUでは1500万台以上に搭載される見通しだ。

 基準案が発効すれば、車の技術に関する国際協定に加盟する日本やEU、韓国、ロシアなどで適用されるが、米国や中国、インドは協定に加わっていないという。

190301日経
SUBARU(スバル)の品質を巡る不正や不具合などの問題に歯止めがかからない。28日には、同社として過去最大規模となる国内外で約226万台のリコール(回収・無償修理)届け出を明らかにした。多額の関連費用計上や、ブランド力の低下が経営の足を引っ張る悪循環から抜け出せない状況が続く。

 スバルでは2017年秋以降、完成車検査を巡る無資格検査や燃費・排ガスデータの改ざん発覚が相次ぎ、一連の不正による累計リコール数は53万台に上った。18年11月には部品の不具合で走行中にエンジンが停止するおそれがあるとして、国内外で計41万台のリコール実施を発表した。さらに今年1月には調達部品の不具合に伴い、国内唯一の完成車工場である群馬製作所(群馬県太田市)の操業を一時停止。生産への影響は3万台に上り、今期2度目となる業績予想の下方修正で、最終(当期)利益の見通しを1670億円から1400億円に引き下げた。

 品質管理向上のために生産速度を落としていることもあり、スバルは18年度の国内生産計画を昨年11月時点の計画から4万台少ない61万5800台に引き下げ、世界販売台数も3年ぶりに100万台を割り込む見通しとなった。2月27日に発表した1月の国内生産台数は、前年同月比50・9%減となり、大手自動車メーカーでスバルだけが前年同月を下回った。

 一連の問題では、対応のまずさも目につく。28日に届け出たリコールでは、13年から不具合情報が寄せられていたが、「原因究明に時間を要した」(同社)ことで届け出が遅れたという。ブランドイメージの回復のためにも、品質管理などで抜本的な対策が急がれる。【松本尚也】

190311ヤフー東洋経済
今年4月からトヨタ自動車の国内販売店改革がいよいよ動き出す。東京の直営販売会社である、「トヨタ店」「トヨペット店」「カローラ店」「ネッツ店」の4つの販社を一本化して新会社を設立するからだ。店の看板は海外のトヨタディーラーと同じ、シルバーのトヨタマークに一本化され、同月から4チャネルが扱うすべての車種の販売を始める。「全車種の取り扱い」は東京の直営店に限った話ではない。今後、全国のトヨタ系4ディーラーで専売車種が廃止され併売化へ舵を切っていく。

【図表で見る】トヨタ4系列の専売車種とは?
トヨタが大規模なディーラー改革を打ち出したのは昨年11月の販売店大会だった。2022~2025年をメドにチャネル(系列)ごとの専売車種を廃止し、約5000店ある国内の販売店全店で全車種を併売する体制へと見直す。4系列のブランドや看板は維持するが、実質一本化する思い切った措置だ。販売店の試乗車を活用したカーシェアリングやサブスクリプション(定額利用サービス)の導入も表明、東京で先行させた取り組みを今夏以降全国に拡大する。
3月11日発売の『週刊東洋経済』は、「自動車乱気流」を特集。日本経済を屋台骨として支える最大の製造業である自動車産業には、今いくつもの嵐が吹き荒れている。CASE(コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる自動車産業の構造自体を揺るがす変革が進展。保護主義も再び台頭している。日本の自動車産業は乱気流をくぐり抜けられるか。特集では危機感を強めるトヨタの動き、日産自動車とホンダの課題に迫っている。
■聖域だったチャネル改革に着手

 国内の新車販売は2018年に527万台。500万台の大台を2年連続で超えたが、1990年の777万台のピークから3割強減った。トヨタの販売は250万台から約4割減った。それでも国内シェア約3割(軽自動車を含む)を基盤に、高級車ブランド「レクサス店」を除いて、トヨタブランドの4チャネルを維持してきた。

 一般的に複数チャネルを持つと、専売車種を用意する必要が生まれ、開発負担は重くなる。日産自動車やホンダは2000年代にチャネルを一本化した。一方、豊富な車種は販売面では有利に働く。また、「ライバルは日産やホンダではなく、トヨタのほかの系列」(関東の販社社長)と、系列同士の切磋琢磨が国内販売の強さの源泉にもなっていた。
 トヨタの場合、基本的に各都道府県の有力地場資本が販社を経営している。この体制が「販売のトヨタ」を作り上げた反面、再編を進めにくい要因でもあった。トヨタ内でもチャネル改革の必要制はたびたび指摘されるも、いわゆる「聖域」には手をつけられずにいた。

 だが、高齢化によるドライバー人口の減少とカーシェアの拡大により、販売台数減は現実味を帯びる中、チャネル改革に踏み切った。全車種の併売化とともに、現在40弱ある車種は2025年ごろに約30車種まで減らす方針だ。
■全車種販売にメリットも競争激化は必至

 改革の先陣を切るのが冒頭で示した東京にある直営販社だ。今年4月に4社を統合し、全車種販売を始める。

 この展開に、「販売店数が維持されるかどうか。いずれ統廃合が起きるのではないか」(東京郊外のトヨペット店の社員)という懸念は当然出てくる。一方、「これまで扱えなかったアルファードなど人気車種を扱えるのはメリットになる」(カローラ店社員)との前向きな声も聞かれた。
 地場販社の経営者らの受け止めは比較的冷静だ。「車種の数はシェアに直結する。車種の削減には反対。むしろSUV(スポーツ用多目的車)など、売れ筋を充実させてほしい」という声もあるが、全車種の併売化は「環境変化を考えるとやむなし」との反応が大半。プリウスを筆頭にトヨタは併売車種を増やしており、販社側も系列の垣根が消える覚悟があったようだ。

 ただ、今後は各販社の品ぞろえが同じになるため、今まで以上に競争が熾烈になることは間違いない。「店や営業スタッフと顧客とのつながりが深くないと、顧客を他のトヨタの販売店に持って行かれる」(ネッツ系販社社長)。これこそ、まさにトヨタが狙っていることだ。
 「併売化で販社の体力、競争力、お客様からの支持がわかりやすくなる」(トヨタ幹部)。トヨタ自動車販売店協会の久恒兼孝会長(トヨタカローラ博多社長)も「今までは護送船団方式でトヨタから言われたことをやっていれば良かった。これからは販社自ら考えて挑戦していく必要がある」とトヨタの意図を理解する。

 トヨタ本体が抱く危機感に呼応して、新たな取り組みも始まっている。

 「27台には驚いた。これほど売れるとは思っていなかった」
 神奈川県を拠点とする有力販社、横浜トヨペットの福山正雄・店舗活動開発部長は声を弾ませた。同社は2018年末、小田原市の大型商業施設に新コンセプト店を開設。27台は開設後2カ月間でこの店が生み出した新車の販売台数だ。うち8割がトヨタ車以外からの買い替えだった。この店は新車販売よりも自動車保険やカー用品などの相談に重きを置き、車の購入に関心がある客を自社の近隣5店舗につなげる。

 店の展示車はプリウス1台のみ。ロードサイド店とは違った柔らかい雰囲気が特徴だ。女性のコンシェルジュ4人が接客し、週末にはさまざまなイベントを開く。子ども向けには菓子作り教室、親向けには車の日常点検講座といった具合で、客と気軽に話せる関係作りに力を入れる。「従来リーチできていなかった客層に出会えている。販売店にはまだまだできることが多い」(福山氏)。
■国内販売150万台にこだわる意味

 トヨタは日本のモノづくりの基盤を維持するのに必要な生産規模として「国内300万台」を掲げ、リーマンショックの翌年と東日本大震災の年を除いて、これを死守してきた。そのうち輸出は国内販売とほぼ同じ150万台。しかし、世界的に保護主義が再燃し、海外での現地生産を求めるプレッシャーが高まる中、一段の輸出拡大は難しい。市場は縮小しても、国内販売をむしろ増やしたいのが本音だ。
 そうした危機感や改革の必要性は販社の経営者に徐々に浸透しつつある。ただ、「理解しているのは半分くらい」とトヨタ幹部は打ち明ける。理解がなかなか進まないのも、販社の経営が比較的好調だからだ。

 新車販売への依存度を下げ、整備や保険、中古車販売などで安定的に収益を上げる体質への転換も進んでいる。既存ビジネスで十分に稼げているからこそ、差し迫った脅威を感じにくいとも言える。しかし、自動車を取り巻く環境が変化しているのに何もしないでいると、「ゆでガエル」になりかねない。
 昨年11月の販売店大会では、豊田章男社長から「今、変わらなければならない。そう思っていただけただけで結構です」との言葉まで飛び出した。長らく維持してきた護送船団方式にトヨタみずから終止符を打ち、各販社の経営者に奮起と変革を迫る。

 トヨタは今年1月、役員数を大幅に削減するフラット化人事も断行。「即断、即決、即実行」ができる体制作りが狙いだ。変化のスピードを上げなければ新しい競争の時代に生き残れないという強い焦燥感が経営陣にはある。ただ、危機感を煽り続けるにも限界がある。今後はこうした「ショック療法」の成否が問われてきそうだ。

190415日経
2018年夏に発覚したスズキの検査不正が一気に広がりを見せている。12日に新たにブレーキ検査などの不正が発覚。数値をかさ上げし不合格の結果を「合格」とし、1980年代から無資格者が検査するなどの不正があり、組織的な隠蔽も確認された。同社は徹底したコスト削減で知られるが、品質管理を軽視してきた経営体制が厳しく問われる。

「合格範囲内で数値を書いておけ」「書き直しをするとチェックシートが汚くなる」。スズキが12日に公表した出荷前に実施する完成検査の不正に関する外部調査報告書には、上司が検査員に指示した文言が並ぶ。
スズキが18年8、9月に発覚した不正を受け法律事務所に依頼した調査は、社内のデータを検証し、検査員ら約300人向けのアンケートと経営層を含む320人に聞き取りを実施した。
四輪車のすべての車両をチェックする全数検査ではブレーキやハンドル、速度計、ライトなどで約10項目の不正があった。決められた手順で検査せず本来不合格のものを合格にしたり、一部を省略したりしていた。
例えばブレーキの制動力では、複数の検査員が検査機器で不合格と判定された車両を合格としてチェックシートに記載し再検査していなかった。乗車人数を変え合格を得ていた事例もあった。
無資格者による完成検査も判明した。検査員として登用される前に単独で完成検査をしたと話す従業員がいた。教育期間中にもかかわらず、検査員の印鑑を借り検査をしたとの供述もあった。一部では81年ごろから始まっていた可能性がある。
自動車業界の無資格検査は17年、日産自動車やSUBARU(スバル)で発覚した。スズキは当時「無資格検査はない」と国土交通省に報告していた。その裏側で、検査補助者が単独で実施したことが発覚することを恐れ、書類の差し替えなどで隠蔽していた。こうした実態は課長クラスまで認識され、悪質だ。
スズキは軽自動車や小型乗用車が主力で、徹底した工数、部品などの削減で知られる。報告書は「少人」と呼ばれる人員削減で検査部門が軽視されていたと指摘した。
12日の記者会見で鈴木俊宏社長は「あくまで機能や品質などを確保したうえでのコストダウンと理解されるべきところが、誤った理解に結びついたのではないか」と話した。スズキは18年3月期まで8期連続で毎年200億円以上の原価低減をしてきたが、過度なコスト削減で現場が疲弊していたのは否めない。
スズキは16年に発覚した燃費不正後も体質を変えられなかった。スズキは不正を受けたリコール(回収・無償修理)関連費用で800億円の特別損失を計上する。ブランドイメージへの悪影響が広がり、経営に一段と打撃になる可能性がある。

190416日経
伊藤忠商事は15日、米ライドシェア(相乗り)サービスのビア・トランスポーテーションに出資したと発表した。日本のタクシー会社などに相乗りシステムを提供する予定で、伊藤忠が顧客紹介などで協力する。すでに日本法人を設けており、伊藤忠はビア社と同社の日本法人に計数十億円を出資したとみられる。

190507日経
国土交通省は自動運転車に搭載する安全システムの基準を作る。乗っている人の目の動きや体の状態を監視する装置の搭載を自動車メーカーに義務付ける方針だ。条件付きで自動運転が可能な「レベル3」と「レベル4」の実用化に向け、安全基準を明確にする。国内メーカーは装置の開発が進めやすくなる。利用者の自動運転車への信頼を高め、普及につなげる。

基準をつくる対象は政府が2020年の実用化をめざすレベル3と4の自動運転だ。市販されているレベル1と2は自動ブレーキなどの人の運転支援が中心だ。

レベル3は人が関与しない完全な自動運転ではなく、運転席にはドライバーが乗る。障害物などがあって安全な運行が難しい場合は、人に代わる必要がある。国交省は人への運転交代を確実にできるようにする安全システムについて基準を作る。利用者の技術への信頼を高める。
人の状態を監視するシステムの装備を義務付ける。人が居眠りしていたり、失神していたりすると、自動運転からの切り替えに対応できず、事故につながる。
国交省はドライバーの目の動きや体の状態を撮影するカメラの搭載をメーカーに求める。脈拍などを計測するセンサーや、ドライバーを監視して異常時に警告を発する装置の搭載も検討する。
人が運転できなくなった場合に備え、車を自動で道路の端に寄せて停止するようなシステムの搭載も想定している。自動運転から手動に切り替える際に、手動に移行する何秒前からアラートを鳴らすべきかといった条件を決める方針だ。
政府は3月に道路交通法の改正案を閣議決定し、利用者向けのルールを定めた。自動運転中はスマートフォンの操作や車載テレビを見ることができる。居眠りや飲酒運転はできない。
利用者向けルールを踏まえて、自動運転技術を開発するメーカー向けの基準づくりを急ぐ。新たな基準は道路運送車両法に基づき、メーカーに対応する義務を負わせる。20年までに国交省の有識者会議で詳細を詰める。
自動運転の装備を巡る安全基準は海外でも議論が進んでいる。一部の仕様しか固まっておらず、国際的な安全システムの基準づくりはこれからだ。国交省は海外の当局と連携し、ルール作りを主導する考えだ。
一方で、メーカーは基準が決まる前から安全システムの開発を進めている。どのような装置を開発して搭載すればよいのか戸惑っている面があった。国交省は基準をつくることで、国内メーカーの開発を後押しすることにした。

190527日経
フランクフルト=深尾幸生、パリ=白石透冴】欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が、仏ルノーに経営統合を提案することが26日、明らかになった。ルノーと連合を組む日産自動車と三菱自動車に対しては、統合が実現した後も従来の関係を維持する方針とみられる。4社の世界販売は合計で1500万台を超え、首位になる。米中欧など主な市場で強みを持つ企業が手を組むことで、自動運転や電動化など次世代技術でも主導権を握る狙いがある。(関連記事企業面に)

交渉関係者が26日、日本経済新聞に明らかにした。27日にもFCAがルノーに経営統合を正式提案する見通し。ルノーとの統合が実現するかどうかは不透明だ。FCAとルノーの担当者は、提携交渉について「コメントしない」と回答した。
FCAの2018年の世界販売台数は484万台だった。仮にルノーと経営統合すれば、販売台数は2社合計で872万台となり、4位の米ゼネラル・モーターズ(GM、838万台)を上回る。さらにルノーと連合を組む日産・三菱自の販売台数を加えると、年間販売台数は1500万台超となる。現在首位の独フォルクスワーゲン(VW、1083万台)を大きく上回ることになる。
FCAはルノー・日産連合が弱い高級車分野で「マセラティ」や「アルファロメオ」といったブランドを抱えるほか、「ジープ」ブランドなどが強い北米が収益源となっている。欧州への依存度が高いルノーとの補完関係が見込めそうだ。
自動運転分野では米アルファベット系のウェイモと提携している。統合を機に1500万台の連合が実現すれば、自動運転や電動化で巨大IT(情報技術)企業などとの連携を有利に進められるとの思惑がある。
FCAは前最高経営責任者(CEO)のセルジオ・マルキオーネ氏時代からGMとの統合を提案するなど、規模の拡大による効率化を志向していた。3月には仏グループPSAがFCAに対し、統合提案をしたことが報じられている。
18年7月に就任したマイケル・マンリーCEOも他社との提携に前向きだ。3日の決算電話会見では「次の2~3年は様々な機会があるだろう。FCAは積極的に動く」と話していた。FCAとルノーとの統合交渉により、世界の自動車業界で再編機運が一段と高まりそうだ。
一方、ルノーは4月に日産に対して経営統合を打診した。6月末に開かれる日産の定時株主総会後にも、統合など日産との資本関係の見直しに関する要求を強める見通しだ。FCAとルノーとの統合交渉は、ルノーと日産の協議にも影響を与える可能性が大きい。
日産側は、FCAとルノーとの交渉については「何も聞いていない」(幹部)としている。

190829日経
トヨタ自動車とスズキは28日、資本提携すると発表した。トヨタが960億円を出資しスズキ株の約5%を持つ。スズキもトヨタに0.2%程度を出資する。現在の業務提携から関係をさらに深める。自動運転や電動化など自動車の次世代技術(総合2面きょうのことば)は複数分野で同時に普及が進み、業界は100年に1度の変革期にある。得意分野を相互に生かして競争力を高める合従連衡が世界で続きそうだ。(関連記事企業2面に)

スズキの鈴木修会長は28日、日本経済新聞の取材で資本提携を通じ「大きな変革の波に向け団結する」と強調した。
トヨタはスズキが持つ自社株を取得する形で出資する。スズキの株主の中でトヨタの持ち株比率は3番目で、事業会社としては最多になる見通しだ。スズキは480億円相当のトヨタ株を取得する。両社とも当局が承認し次第実施する。
トヨタの世界販売台数は2018年で1059万台だった。独フォルクスワーゲン(1083万台)、日産自動車などの日仏連合に次ぐ3位だ。マツダやSUBARU(スバル)など連結対象ではない出資先を加えると約1300万台、スズキが入ると約1600万台に拡大する。
トヨタとスズキは16年に提携を検討すると発表。電動化で先行するトヨタがスズキにハイブリッド車(HV)システムを提供するほか、スズキが強みを持つインド市場では電気自動車(EV)で協力するなど、連携を徐々に深めてきた。
今後は自動運転分野などで連携を強める。長期的な関係構築が必要との考えから相互出資に踏み込んだ。スズキはトヨタから得る資金のうち200億円を自動運転関連に活用する計画だ。
業界環境の変化速度は年々早まっている。半導体の性能や通信技術が飛躍的に進化し、自動運転や、つながる車など「CASE」と呼ばれる次世代技術の実用化が視野に入ってきた。
トヨタが提携先を増やすのは研究開発などの膨大な投資を効率化するためだ。マツダやスバルにも出資し、EVや次世代の移動サービス「MaaS」の開発で連携を進めている。
過去の合従連衡は、生産や販売を効率化するために規模を競う面が強かった。独ダイムラー・ベンツ(現ダイムラー)と旧クライスラーの合併や、日産自動車と仏ルノーの日仏連合などだ。
トヨタなどによる近年の再編は性格が異なる。技術開発や、新技術の普及に向けたルール形成で主導権をとるのが目的だ。買収やグループ会社化ではなく、緩やかな連合づくりが加速している。
既存の自動車大手を脅かす新勢力が台頭しているのも特徴だ。完全自動運転の開発では米アルファベットの傘下企業が先行する。EV開発では世界最大の市場を抱える中国メーカーの成長が著しい。新車需要を大きく左右するライドシェアなど新サービスはITスタートアップが担い手だ。
自動車メーカーごとの差も出てきた。米ゼネラル・モーターズ(GM)は成長市場と見込まれるインドからの撤退を決めるなど、縮小均衡にもみえる戦略を採る。

190829日経
…「走る」「曲がる」「止まる」といった自動車の基本的な機能のほかに、車がより安全で円滑に運転されるようにする技術を指す。自動ブレーキなどの先進運転支援システム(ADAS)や、自動運転、つながる車、電動化など「CASE」と呼ばれる先端技術に代表される。

▽…自動運転技術はハンドルやブレーキ操作のいずれかを自動制御する「レベル1」から、高速道路など特定の場所では人間の操作が一切不要になる「レベル4」、場所にかかわらず完全に自動操縦になる「レベル5」まで5段階に分かれる。レベル1はADASが該当する。
▽…矢野経済研究所によると、ADASおよび自動運転システムが搭載された車は世界で2018年に2385万台にのぼる。30年には3.5倍の8390万台になると予想。「レベル4」以上の自動運転車は18%を占めおよそ5台に1台が自動運転になる見込み。高齢ドライバーのアクセル踏み間違い事故が増え、車の安全技術の高度化と自動運転化が求められている。

191003日経
自動車業界で自動運転など次世代技術に対応するため、中途採用(総合2面きょうのことば)を拡大する動きが広がってきた。トヨタ自動車は2019年度に総合職の採用に占める中途採用の割合を18年度の1割から3割に引き上げ、中長期的に5割とする。ホンダは19年度、採用全体の約4割に当たる約660人を中途採用に充てる。IT(情報技術)などの専門人材を中心に確保し、給与も実績に応じ評価する。日本の製造業の代表である自動車業界で中途採用が増え、日本型雇用は転機を迎えている。

日本で戦後長く大手企業を中心に続いた新卒一括採用や年功序列の雇用慣行は、労働力人口の減少や女性、高齢労働者の増加で維持が難しくなっている。海外企業との競争もあり、電機大手では外部人材の採用拡大や、個人の能力に応じた賃金制度の導入など雇用慣行を見直す動きが広がる。
トヨタは19年度、開発などを担当する「技術職」や調達・人事部門などを担う「事務職」を合わせた「総合職」の中途採用者割合を最終的に全体の3割とする。今後は半数を中途で採用する方針だ。人工知能(AI)や画像認識など専門人材を中心に採用強化するとみられる。
同社の直近5年度の総合職の採用者数は650~800人ほどで、このうち中途採用は全体の4~13%だ。今の規模の採用が続けば、中長期的には年300~400人の外部人材を総合職として採用することになる。
トヨタ本体の給与体系は生え抜きと中途採用で区別していないが、中途採用はどの職層で評価するかで給与水準が決まる。中途でも幹部職で採用となると、初年度から年収1000万円以上から始まり従来の年功序列を崩す可能性がある。成果主義を強め、柔軟に給与面で処遇する方針だ。
ホンダは11年度の中途採用は8人だったが、12年度以降は100~200人を採用してきた。17年度から拡大しており19年度は約660人に引き上げる。日産自動車は近年、新卒と同程度の中途人材を採用し、19年度は前年度から3割多い1050人の採用を計画する。SUBARU(スバル)は技術系総合職の中途採用で19年度は8割増の129人を予定する。
AIやビッグデータ解析などの人材獲得を巡っては、米グーグルなど海外IT大手が日本で採用を積極化する。NTTドコモなど日本勢も最大3000万円超の年収を提示し、中途人材の獲得に動く。トヨタなども待遇で対抗する必要がある。
自動車業界で中途採用が増える背景には、自動運転や電動化など「CASE」の対応に迫られていることがある。米アルファベット傘下のウェイモなどIT大手が自動運転の研究開発に力を入れ、競争は激しい。
自動車各社は給与を手厚くすると同時に、人が集まりやすい都心部に拠点を構え人材を確保する。トヨタの自動運転技術の開発子会社は7月、東京・日本橋に約1千人が入るオフィスを開いた。子会社のジェームス・カフナー最高経営責任者(CEO)は「新たに社員として採用した社員の半分以上は日本国外から来ている」と話す。
日本経済新聞社が4月にまとめた採用計画調査(最終集計)では、主要企業の19年度の中途採用計画数は6万6763人となった。中途が採用計画全体に占める割合は28.3%と18年度より7.5ポイント増えた。トヨタやホンダの総合職採用の中途割合はこれらの平均を上回る規模になる。

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191028日経

激変期を迎えた自動車産業では、生き残りを模索して企業間の様々な合従連衡が展開されている。本稿では、未来の主戦場の一つである自動運転開発をとりあげ、既に同様の革新を経験して世界最強になった工作機械産業の発展をもたらした論理を、開発戦略に生かすことを考えてみたい。

まず自動運転の仕組みを確認しておこう。自動運転では、外部の様々な状況をセンサーでとらえて歩行者や車の状況を認識し、それに基づいて車の適応行動を判断する。そして、車本体の駆動系にハンドルやブレーキ、アクセルなどへの制御指示を出すという一連の動作を高速で繰り返す。

従って、センシング、認識、判断という一連の動作を行う自動運転装置側と車本体との間で、正確で高速な信号のやり取りが必要になり、それを可能にするインターフェースが要求される。つまり車の自動運転システムとは、大きく分けて車本体と自動運転装置の2つのユニットから構成され、制御信号がそれらユニット間を高速に行き交いながら車の自動走行を実現するものである。
自動制御の水準に応じて、簡易支援のレベル1から完全自動運転のレベル5まで存在するが、システムの基本構造は変わらない。その意味で自動運転装置とは、車本体に付加されて、自動制御機能を提供することで価値を一層高める「補完財」なのである。
このような自動運転装置の主導権争いには2つのシナリオが存在する。一つは、言うまでもなくトヨタ自動車など完成車メーカーである。もう一つは、車を自分で作るわけではないが、自動運転装置を開発して多くの完成車メーカーに提供する専業メーカーである。
画像認識技術を応用して自動運転に参入しようとしている米グーグルは後者のタイプに相当する。これら2種類の企業は、目指す設計戦略について異なる合理性と動機付けを持つ。
完成車メーカーは、自社の車の価値を最大限に引き出すために、車種ごとに最適設計された自動運転装置を開発する動機を強く持つ。特に強い競争力を持つ完成車メーカーにとっては、自然な戦略だろう。
確かに高機能・高性能できめの細やかな機能を提供できるが、特注度合いが高まり他の車種への転用性には劣る。さらに、最適化するためには、自動運転装置と車本体のインターフェースを車種ごとに違ったものにする傾向が強まる。
他方、専業メーカーは特定車種に最適設計された特注品を作るよりも、できるだけ多くの車種に対して自社の自動運転装置を売りたいという動機を強く持つはずだ。従って、できるだけ標準化されて転用性が高い自動運転装置を開発しようとする。最適設計されているわけではないから、当初の性能や機能は一定水準にとどまり、車の価値の最大化という点では見劣りがするが、他の車種への転用性は高いものになる。さらに、自動運転装置と車本体のインターフェースをできるだけ共通化しようとする動機が働く。
日本はどちらのシナリオを選択すべきだろうか。実は、日本は1970年代、工作機械を自動制御するコンピューター数値制御装置(CNC)の開発で同様の経験をしてきた。車を自動制御する自動運転装置と、工作機械を自動制御するCNC装置は産業こそ違うが、機械本体に付加されてその価値を高める「補完財」であるという点では構造的に同じだ。
米国産業生産性調査委員会が89年に出したリポート「メイド・イン・アメリカ」は、CNC装置の日米間の開発形態の違いを次のように指摘した。日本では、ファナックなどの他業種から参入したCNC装置専業メーカーが主導し、標準的なCNC装置の開発を目指した。米国は、当時強かった工作機械メーカーがCNC装置の開発を主導したため、それぞれの機械に最適化した独自のCNC装置を開発した。つまり、米国は前者のシナリオを、日本は後者のシナリオを選択したのである。
その結果、何が起こったのか。日本の工作機械産業はCNC装置開発を契機として、80年代以降は世界の先頭に躍り出た。なかでも重要な点は、日本の標準的なCNC装置は、多くの工作機械メーカーからの要望が流れ込む技術集積装置となり、それが広く使われることで工作機械の技術水準が一層向上し、それが再びCNC装置の進化を促したという「共進化サイクル」が形成されたという点だ。補完財であるCNC装置と機械本体の間に、相互促進的に価値を高め合う仕組みが作られたのである。
一方、工作機械メーカーが主導した米国の場合、確かに最適設計による目先の価値の最大化は実現できたが、進化スピードで劣った。その結果、CNC装置の台頭を契機として、米国工作機械産業は低迷した。重要な点は、産業全体として進化を促す仕組みが組み込まれているかどうかであり、同じメカニズムは自動運転装置と車本体との間でも働くはずだ。
加えて自動運転の場合、人工知能(AI)の学習速度という観点からも後者のシナリオの合理性が高い。自動運転の鍵は、センサー経由で収集した大量のビッグデータを使って、いかに早く正確に外部状況を認識し判断するのかという点にあるからだ。そのためにAIの深層学習技術が使われるが、いかに多くの高品質なデータを収集できるのかが学習スピードに影響を与える。多くの完成車メーカーに使われることで多くの走行データを収集できる専業メーカー主導の開発が、長期的には高度な進化を遂げるはずだ。完成車メーカー主導の場合、収集できる走行データは自分の車に限定されてしまう。
現在、工作機械を自動制御するCNC装置のほとんどは、工作機械メーカーではなくてファナックや独シーメンスなど専業メーカーから供給されている。歴史は後者のシナリオが覇権を握ったことを教えている。とするならば、自動運転開発に際しても特定車種への最適化にこだわるよりも、転用性に優れた標準的な自動運転装置を分業開発し、共進化サイクルを作り出すことが肝要だ。
当初は性能が十分とは言えないかもしれない。しかし、世界中の完成車メーカーからの走行データを蓄積することで急速に進化を遂げ、完成車メーカー独自の自動運転装置を凌駕(りょうが)してしまう可能性が高いとみられる。それこそが、グーグルが目指している戦略に違いない。
日本の完成車メーカーはその強さゆえに、自分の車への目先の最適化に引きずられる「最適化の罠(わな)」に陥らないよう細心の注意が必要だ。一つの方策としては、中立的な組織を別に設立することだろう。形式的に、単に組織を分けさえすれば良いというものではない。その本質は、自分の車に最適化しようとする力を排除して、転用性を重視した製品開発への動機付けを埋め込んだ組織環境を作ることなのである。

191213日経

マニラ=遠藤淳】「製造業不毛の地」とも言われるフィリピンで自動車産業の裾野が芽吹き始めた。政府の育成策を受け、合計で市場の半分以上を占めるトヨタ自動車と三菱自動車で旗艦車種の部品の現地調達率が5割を超えた。近隣の生産大国タイの通貨高も追い風に、系列日系企業の進出に加え、地場勢が納入部品を増やす。ただ原材料を輸入に頼り生産コストがかさむことと国内市場の低迷が重荷となり、タイの背中は遠い。

フィリピン部品大手バレリーは三菱自にプレス部品を供給する(10月、カビテ州)
三菱製鋼は9日、マニラ南方のラグナ州で自動車のサスペンション用ばねを製造する工場の開所式を開いた。2020年半ばに本格稼働させ、近くに工場がある三菱自動車の小型車「ミラージュ」向けに納入する。これまで他の部品会社がタイ工場から供給していた。
フィリピンは人口増加率が高いが、就労の機会が少なく、多くの若者が海外へ出稼ぎに向かう。コールセンター誘致に成功したが、より雇用吸収力がある製造業の発展が急務だ。売られているのは輸入車が大半だ。トヨタや三菱自などによる現地組み立てでも輸入部品が多く使われ、裾野産業が育っていなかった。
16年のアキノ前政権時代、部品の現地調達を促す政策を導入した。三菱自はこの政策に乗りタイから輸入していたミラージュを17年2月に現地生産に切り替えた。
「外注した部材もあるので要求通りの品質に仕上げるのに苦労した」。地場部品大手バレリー・プロダクツ・マニュファクチュアリングのエドワード・ホセ社長は話す。三菱自やトヨタに部品数種を納めていたが、ミラージュのプレス部品20種を新たに受注した。作業員を従来の25%にあたる68人増やし育ててきた。

工場では、真新しいプレス機に作業員が鉄板を載せて部品を成形する。ミラージュは鉄板で車体を支える構造で、従来の車より成形や溶接で求められる精度は高い。三菱自動車フィリピンの押切武津洋社長は「この部品をつくれるということは車産業が前進した証しだ」と話す。
系列部品会社に進出を促し、地場メーカーへの発注も広げた。内製も増やして、当初30%だった現地調達率を振興策の条件の50%に上げた。
トヨタも振興策の対象となった小型車「ヴィオス」を18年7月から生産する。50%弱だった現地調達率を60%弱に上げた。内装部品を受注したのが地場樹脂部品大手マンリー・プラスチックだ。「トヨタと同じラインを導入し1年以上技術支援を受けた」(ビンセンテ・コー副社長)という。
コスト高・市場減速が重荷

裾野産業は広がるが、課題も多い。プラスチック素材や鋼材は輸入頼りで、マンリーでは3カ月分以上の在庫を抱え費用がかさむ。エンジンなど現地調達できない部品もまだ多く、産業が集積するタイやインドネシアよりコスト競争力が劣る。
トヨタ自動車フィリピンの鈴木知社長は「1台の生産コストはタイより1割ほど高い。完成車輸入にかかる10万円近い輸送費を入れて同じ程度になる計算だ」と明かす。
足元の新車販売も低迷する。1億人の人口を抱えるフィリピン市場は11年から右肩上がりに伸びて17年に過去最高の47万台と11年の3倍近くになった。各社とも今後も伸び続けると予想していたが、車の物品税が引き上げられた18年に40万台まで落ち込み19年も回復の兆しが見えない。
三菱自は工場作業員を600人増やし1000人にしたが、市場低迷で18年半ばに500人に減らした。優遇策を受けるには6年間で20万台を生産するのが条件だが、達成に必要な月1千台以上の販売ペースを下回る。
ドゥテルテ現政権は輸出企業向け優遇税制の大幅縮小を掲げており「製造業の誘致に関心があるのか疑問も感じる」(車業界幹部)と不満の声も出ている。

200122日経

環境規制の強化を受けて、世界各国で電動車の普及が進む見通しだ。購入費用や、電力インフラにかかる負荷を抑えられないか。大量導入時代を見据えた社会実験が始まった。電気自動車(EV)を使って電力需給を安定させる欧州の実験では1台で年16万円を稼ぐ事例も出ている。


デンマークの首都、コペンハーゲンのガス会社。夕方になると営業車として使う日産自動車のEV「エヴァリア」10台が次々に駐車場へと滑り込む。社員の帰宅後から翌朝までの約10時間、EVは地域の電源に姿を変える。
一晩中、充放電

車両には一晩中、ケーブルがつなぎっぱなしだ。デンマークは天候次第で発電量が変わる風力発電への依存度が4割超と高い。風力の発電量が減った場合などにEVから電力市場を通じて系統電力に放電し、需給を安定させる。従来は火力発電所などの発電量で調節していたため、EVを使う取り組みは仮想発電所(VPP)と呼ぶ。
日産は入札を代行する米ヌービー、充放電器を提供する伊エネルギー大手エネルと組み、数年前から実証実験に参加している。市場価格をみながらEVへの充電もして「午前7時までに充電率80%」にするため、EVの所有者であるガス会社の利用には影響しない。
日産でEVの電源活用を模索するEVオペレーション部の林隆介主担によると「(市場取引で)1台あたり年1300ユーロ(16万円弱)ほどの収入があった」。約500万円の車両価格に比べると微々たるものだが、充電料金がかからないメリットもある。EVオーナーは将来、こういった「副収入」を得られる可能性がある。
ただ、現時点では課題も多い。デンマークでの実験では多くの費用が免除されており「入札手数料や税金をきっちり取られれば収入の4割近くがなくなる」(林氏)。
市場価格の変動もあり、デンマーク工科大学などの試算では年間損益は500ユーロほどの黒字から1千ユーロの赤字までばらつきが出る。今後の実験では、充放電の繰り返しによるバッテリー寿命への影響や、充放電器の改良によるロスの削減効果などを見極める。
VPPはEVが電力インフラに与える影響を緩和する手段にもなる。
東京大学生産技術研究所は、政府の長期エネルギー需給見通しどおりなら日本のEV普及率は現在の1%未満から2030年に16%まで高まり、電力需要は1.2%増えると試算した。EVの充電タイミングなどを調整しないと発電所の起動などで年に最大1200億円の追加コストが発生するという。
再エネのムダ減

EVは1回の満充電に一般家庭で使う電力の2日分以上を消費する。充電する時間帯が集中した場合は、燃料コストが高い発電所を使わざるを得ないケースも出てくる。
VPPと電力市場の仕組みを組み合わせて一斉充電を避けられれば、電力インフラへの負荷を減らせる。再生可能エネルギーをフル活用しやすくなるメリットもある。大量のEVの電池を活用すれば、太陽光発電でつくった電力を使いきれず無駄にする「出力制限」を減らせる可能性がある。
化石燃料で走る車からEVをはじめとする電動車にシフトする意義は、産業的な側面にとどまらない。化石燃料の使用削減を通じた環境負荷の軽減こそが社会的な価値になる。今のまま対策せずに車が増えると「二酸化炭素(CO2)排出量は15年比で6割増の年95億トンまで増える」とPwCジャパンの藤村俊夫顧問は指摘する。
ただ、日本など火力発電への依存度が高い国の場合は、電動化による環境効果が限られる。発電段階でCO2が多く発生すると、走行自体に化石燃料を使うガソリン車などに対する優位性は大きく揺らぐからだ。何を最終的な目的に掲げて電動化に取り組むのか。社会的な合意形成が日本にはまだない。(山本夏樹)

世界で新車販売が減速する影響は日本勢の生産実績にも色濃く反映された。トヨタ自動車など国内の乗用車8社の2019年の世界生産は前年比4%減の2755万台だった。前年を下回るのは、東日本大震災の影響を受けた11年以来8年ぶり。米国と中国の貿易摩擦を背景にアジア圏の新車市場が冷え込み、国内でも消費増税の影響が響いた。
8社の海外生産は5.7%減の1834万台、国内生産は0.3%減の921万台だった。8社中で世界生産が前年を上回ったのはトヨタとダイハツ工業の2社だった。トヨタは1.9%増の905万台で、米国市場で「RAV4」など多目的スポーツ車(SUV)の販売が堅調に推移したほか、中国でも「アバロン」などが好調だった。
スズキは前年比で11.1%減った。インド市場の販売不振に加え、完成検査問題への対応で国内生産を絞ったことが響いた。生産体制の見直しを進める日産自動車は9.6%減の495万台、ホンダも3.5%減の517万台だった。
主要な地域では米国での生産台数が4%減の353万台となった。SUVなど人気の大型車市場は競争が激しく、日本勢が得意とするセダンの顧客離れも響いた。中国では生産台数が1.7%増の487万台だった。
消費増税前の上期は大型の新車投入が続き生産も伸びていたが、消費増税後に新車販売が落ち込み失速した。

200206日経

トヨタ自動車は、電気自動車(EV)の使用済み電池を家庭などで再利用しやすくする取り組みを始める。電池のサイズや出力を定めた規格を設け、パナソニックや中部電力などがこの規格を採用する見込みだ。複数社で家庭での再生可能エネルギーの普及を後押しし、開発を効率化して車載電池(総合2面きょうのことば)のコストを引き下げる効果も見込める。


蓄電池は自宅の太陽光などでつくった電力をためたり、送配電網と連携して電力需給を制御したりするのに使える。安い電気を夜間にため、非常時に放電もできる分散電源として活用できる。
これまで価格の高さが家庭での普及のネックになっていた。中古のEV電池を家庭で再利用すれば、新品の蓄電池よりも安く導入できるようになる。EVの普及と連動して電力を効率的に使う仕組みづくりにつながる。
トヨタは、まず2020年末に発売する1~2人乗り超小型EVに搭載する自社製の電池に規格を導入する。電池を入れた箱のサイズは縦90センチメートル、横60センチ、高さ13.5センチを予定する。電池容量は8キロワット時の見込みだ。家庭で使う場合、災害時の照明や携帯電話の充電などに利用を限ると、2~3日間は生活できるとみられる。
トヨタは出力や容量、耐久性能などの下限を定め、性能の優れた電池ができれば中身を入れ替えられるようにする。大きなサイズの電池での規格づくりも検討する。
トヨタは超小型EVを数年単位のリース形式で販売し電池を回収する。電池に充放電回数や走行距離を記録する装置をつけ、回収時に劣化状況を検査する。劣化が進んでいれば家庭向けや、送配電網向けの蓄電池として活用してもらう。パナソニックや、中部電など電力会社などへの販売を想定する。
車体が古くなっても電池が使える場合は、他の車両に搭載したり近距離移動につかうシェアリング向け車両に載せたりする。ハイブリッド車(HV)の電池の容量はトヨタの「プリウス」で約1キロワット時なのに対し、EV用の電池は数十~約100キロワット時と大きい。EV用は大型の蓄電池にも使うことが可能だ。
EV生産の効率化にもつながる。現状は電池と車体の接合規格が統一されておらず、組み合わせ時にコストや時間がかかる。規格があればEV車両と電池の開発を個別にした後に組み合わせられ、コスト減も見込める。主流のリチウムイオン電池の価格は1キロワット時当たり150ドル(約1万6千円)程度とされ、市販EVの車両価格の1~3割を占めるとみられる。
英調査会社IHSマークイットによると、EVの世界生産台数は2018年で約150万台と新車全体の1~2%にとどまる。環境規制の強まりを受け、25年には世界で約880万台になるとの見通しもある。現状のメーカー保証は8年程度とされるが、再利用の仕組みづくりが課題だ。
他社もEV電池の活用策に乗り出している。伊藤忠商事は中国で車載用電池の再利用などを手掛けるパンドパワーと資本提携を結んだ。中国EV大手の比亜迪(BYD)などの電池を確保してリユースに乗り出す。丸紅も同様に中国の新興企業に出資し再利用に動く。日産自動車はEV「リーフ」の使用済み電池を、セブンイレブンの店舗で蓄電池として使っている。

200212日経

コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が続くなか、国内の自動車生産にも影響が出てきた。中国からの部品供給が滞り、日産自動車は九州の完成車工場の稼働を一時停止する。日本では車部品の中国からの輸入が、輸入全体の3割超を占め存在感を示している。エンジン周辺の基幹部品などを輸入する企業もあり、部品各社は対応に追われている。(1面参照)

「日本で使う中国の部品は多い。在庫を細かく調べるには時間もかかる」。ある日産幹部はこう話す。九州工場では日本で売るミニバン「セレナ」や、北米への輸出が多い多目的スポーツ車(SUV)を生産する。同工場の稼働停止は物流網の混乱が要因とみられるが、調達自体が難しくなっている部品も出ている。
ある部品会社によるとハイブリッド車(HV)などに使う電装品の一部で調達が難しくなっており、「(日産は)日本国内で代替調達できないか検討しているようだ」という。調達を巡る混乱は長期化する可能性もでている。
国際貿易センターによると2019年の中国からの自動車部品の輸入額は30億ドル(約3300億円)と、重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した03年の約10倍となった。約22兆円とされる日本の車部品市場全体に占める比率は2%弱だが、日本は輸入部品のうち、37%(19年)を中国から輸入し、中国比率が米国などに比べ高い。多くはバネや繊維・樹脂製の部品、素材など、小さく輸送コストがかかりにくいもののようだ。

中国では一部地域で企業活動が再開されたが、ホンダは11日、中国・広東省広州市の乗用車工場について、17日以降の生産再開を目指す方針を明らかにした。一部従業員は10日に出勤を始めたものの、広州市から新型肺炎の感染防止の対応策を申請するよう求められ、生産準備に時間がかかるという。従来は「できるだけ早く生産を再開したい」としていた。
広州市などで運営する乗用車向けのエンジンやトランスミッションなどの部品工場も、17日以降の生産開始を目指す方針を示した。新型肺炎が最初に広がった武漢市にある工場の生産再開時期は引き続き「17日の週」で変えなかった。
部品のサプライチェーン(供給網)の正常化には時間がかかりそうで、代替生産などを視野に入れる企業も相次ぐ。
内装部品の寿屋フロンテ(東京・港)はシートなどの布素材を中国から仕入れる。3月上旬までの在庫は確保しているが「長期化に備えて生産設備のある日本で代替できるか設備の確認を始めた」(同社)。足回り部品のエフテックは武漢工場でつくるブレーキペダルをフィリピンで代替生産することを決めた。
「一時的に他の企業からの調達に切り替えてもらう必要があるかもしれない」と話すのは、ホンダとの取引が多いショーワだ。ドアなどの開閉を補助するガススプリングを中国で生産し、日本にも輸入するが他の地域に生産設備がない。トヨタ自動車系の中央発条はドアロックケーブルなどを日本に供給しており、「すぐに代替生産ができない品目もある」という。
自動車部品メーカーは2000年代から東南アジアなどに調達先を分散させる「チャイナプラス1」の動きを進めてきた。「車内の内張りシートは人件費の安いバングラデシュ経由からの調達を増やしており、中国への依存は低い」(シート大手のテイ・エステック)との声も聞かれる。
ただ近年は中国の技術力が上がり、エンジンなど「難易度の高さから日本での生産に依存していた領域で中国への生産移管が増えている」(伊藤忠総研の深尾三四郎主任研究員)。自動車の心臓部となる部品だけに、少量でも供給が滞れば国内生産に支障が出やすい。
いすゞ自動車が調達するエンジン周辺部品のターボチャージャー(過給器)は一部が武漢で生産されており、「武漢以外の地域で調達する予定だ」(南真介取締役)。他の部品も中国から調達しているものがあるため、在庫を確認し、生産移管などの必要性を慎重に見極めるという。供給網の混乱などが「長期化すれば(国内の生産に)影響が出る可能性もある」と南氏は話す。
中国政府は次世代車の国産化を推奨し、電動化に欠かせない部品の生産拠点は中国に集まりつつある。車載電池では寧徳時代新能源科技(CATL)など2社で世界で2割超のシェアを持ち、トヨタなど日本勢も協業を進める。中国の動向が日本の自動車生産に影響を与える構図は一段と強まりそうだ。

200214日経

日産自動車の業績悪化が深刻になっている。13日発表した2019年10~12月期連結決算は最終損益が260億円の赤字(前年同期は704億円の黒字)だった。同期間の赤字はリーマン・ショック時以来11年ぶり。販売奨励金に依存してきた米国など世界で販売が減り、稼ぎ頭の中国にも逆風が吹く。工場の生産能力に余剰感が強く、19年12月に就任した内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は生産体制の見直しが急務になっている。(関連記事を企業1面に)


「当社の置かれている(販売の)状況は厳しい」。内田社長は決算会見で業績悪化の理由をこう説明し、20年3月期の世界販売計画を前期比8%減の505万台と19万台引き下げた。
20年3月期通期の純利益の見通しも前期比80%減の650億円と下方修正した。未定だった期末配をゼロとし年間配当は10円と前期から47円の減配となる。日産株の4割強を保有する仏ルノーの配当収入も大幅に減る。
19年4~12月の世界販売台数は369万台と前年同期比8%減った。米国が9%減と厳しい。奨励金に頼った販売でブランド力が低下し、奨励金を減らすと販売が伸びない。「奨励金の削減や新製品投入に力を入れるが、改善にはまだ時間がかかる」(内田社長)


赤字の原因は生産体制にもある。工場の生産能力は年700万台超と年500万台規模の販売台数を上回る。工場の稼働率は19年3月期で69%と低い。英調査会社LMCオートモーティブによると、18年の稼働率は独フォルクスワーゲンが82%、BMWは86%、トヨタ自動車は84%、ホンダは87%と日産を上回る。
日産はコストが重く、19年4~12月期の売上原価率は86%と、トヨタ自動車の77%やホンダの79%より高い。売上高が減ると生産関連の費用を吸収できなくなる。
屋台骨の中国事業も減速している。依存度が高い分、連結業績への影響も大きくなりかねない。
日産の世界新車販売のうち中国は30%と米国の25%を上回る。ゴールドマン・サックス証券の湯沢康太氏の分析では、前期の純利益の中国依存度は45%とトヨタの11%やホンダの30%より高い。
新型肺炎による生産停止の影響は20年3月期の業績予想に織り込んでいない。ある幹部は「取引先を含めた全容の把握には時間がかかり、影響は読めない」と身構える。
日産はすでに22年度までに世界で1万2500人と生産能力の1割を削減する方針を打ち出している。内田社長は「今後、固定費など費用の削減を徹底的に進める。すでに10~12月期の状況をふまえて策定中だ。今まで以上のやり方をする」と話した。5月に新たな中計を公表する予定だ。

200220

2月13日に日産が発表した2019年10~12月期(第3・四半期)決算では、本業のもうけを示す営業利益が前年同期比78%減の227億円、最終損益が前年同期の704億円の黒字から260億円の赤字となった。第3・四半期で赤字に陥るのは、リーマンショック以来11年ぶりだ。

 営業減益となったのは、世界の全地域で販売が落ちたことが主要因。そこに特別損失が194億円(前年同期比98億円増)発生したことで最終赤字に転落した。

 本来、企業が反転再生のために、固定資産の減損処理などリストラ費用として引当金を積んで特別損失を計上することは、悪い選択ではない。

 日産の場合、問題はその中身だ。今回計上した特別損失の多くは、ルノー株の減損処理によるもの。ルノーは14日、2019年12月期決算を発表、日本円で168億円の最終赤字に転落した。ルノーが赤字となるのは10年ぶりのことだ。日産はルノーに15%出資しているが、ルノーの業績悪化に伴い保有株の減損処理をしたというわけだ。つまり、特別損失を計上したといっても、思い切って過去をリセットする、いわば「膿出し」のための対応ではないのだ。
生産能力の約3割が余っている
 筆者はこの点については大きな問題があると感じている。結論からいえば、早急に人員削減や工場閉鎖などの巨額のリストラ費用の特損を積み、巨額の最終赤字に落とすべきだ。筆者の推測では3000億円~5000億円程度の最終赤字に落とさなければ、反転はない。これは皮肉なことに、ゴーン氏が1999年の来日当初に行った「リバイバルプラン」で、リストラ費用を巨額の特損として計上し、翌年から日産の業績を反転させた発想と同じだ。

 日産の2019年度の年間を通じての販売見通しは505万台程度と、前年度比で8・4%落ち込む。それに対してグローバルでみると生産能力は700万台程度あると見られ、稼働率は7割程度だ。ざっと見て約3割の生産能力が余っている。2020年度も大幅に販売台数が増える見通しは今のところ立っていない。

 このため、昨年7月にグローバルで従業員全体の10%程度に相当する1万2500人の人員削減計画を発表しているが、今の稼働状況では、さらに削減をしなければ追いつかないだろう。また、日産は昨年、インドネシアやインドでの生産能力を削減する方針を発表しているが、追加で工場閉鎖など「荒療治」が必要な局面となっている。いま大掛かりな「外科手術」をしておかなければ将来に大きな禍根を残すことになる。だが、内田社長は決断できなかったようだ。
 自動車産業にとって最も怖いのは「過剰設備」である。自動車の工場は巨大な設備投資を行い、多くの人員を抱える。負のスパイラルに入れば、稼働していない従業員に給料を払い続けなければならず、その他もろもろの莫大な固定費ものしかかってくる。その結果、会社の収益構造はあっという間に蝕まれる。この負のスパイラルを断ち切るためにも、人員削減と工場閉鎖の「荒療治」は不可欠だ。目の前の痛みを避けようとすれば、船ごと全員が沈没しかねない。

 中国における新型コロナウィルスによる肺炎の影響で、依存度が高かった中国事業の先行きにも暗雲が立ち込める。今後は、長期間生産が止まる最悪のシナリオを想定した対策も求められる。
内田社長が改革に踏み出せないワケ
 第3・四半期の決算と同時に発表された2020年3月期決算の通期見通しは、昨年11月時点での見通しと比べて、売上高は3・6%減の10兆2000億円、営業利益が3・8%減の850億円、最終利益が40・9%増の650億円だ。

 この数字をみて、「何とか黒字を維持できた」と評価するのは大間違いだ。この数字の中には、上積みすべきリストラ費用も、新型コロナウィルスによる事業中断の影響も織り込まれていないからだ。

 実際、日産内部には、内田氏の判断に反対する勢力もある。彼らは「いま、リストラにかかる数千億円の特別損失を積んで、いったんは巨額の赤字に落として、そこから反転攻勢を目指すべき」と主張しているようだ。関係者によると、ナンバー2のアシュワニ・グプタCOOはこうした考えを持っているという。社内の一部には相当な危機感があることは事実だ。

 しかし、内田社長の覚悟がなかなか定まらない。この感覚の違いから、内田氏とグプタ氏の間には、早くもすきま風が吹き始めているという。
「時間をかけなければ何も決められない」
 決算発表の記者会見で内田社長は「覚悟をもって経営に臨んでいる」、「捨てなければいけないものもある」などと語り、リストラを推進する姿勢を示したが、一方で「じっくり時間をかけて議論して5月には一歩踏み込んだ固定費削減策を説明する」とも答えており、スピード感に欠けるきらいがある。

 日産のある幹部はこう不満を漏らす。

「追加で削減すべき人員数もリストラすべき工場や拠点もほぼ決まっています。いますぐ決断して特損を積み、2019年度中に負の遺産を処理してしまい、2021年度からの反転を目指すべき。ところが、内田社長に決断を求めても、『I am studying』とばかりに、何も決めないのです」

 内田社長は紳士的で勉強熱心と言われる。だが、その反面、「時間をかけなければ何も決められない」といった批判の声も社内からは強く出ており、その性格が今の局面では裏目に出ているように感じる。

 内田氏が一歩踏み込んだ改革に素早く取り組めないのは、性格面の問題だけではない。退職慰労金の問題も関与していると見られる。
 ある日産関係者が語る。

「内田を役員に引き上げたのは、前暫定CEOの山内康裕ですが、2月18日の臨時株主総会で取締役を退任するに当たり、山内の退職慰労金を2倍に引き上げる調整をしていました。山内もそれを求めたようです」

 もし、10~12月期決算で特損を積んで巨額赤字にすれば、株主に対して、旧経営陣に退職慰労金を倍増させることは説明がつかなくなる。そのため、この関係者に限らず、日産内部からも「山内さんを優遇するために、今回は処理を先延ばしにしたのではないか」といった見方も浮上している。こんな調子では昨年12月に発足した新体制の下、社内を一枚岩にして改革に進むことはできないだろう。

 大胆かつ素早い改革なしでは、日産・ルノー・三菱自動車の三社連合自体が負け組に転落し、業界再編の渦に呑み込まれてしまいかねない状況にある。
ゴーンに対する100億円の損害賠償
 一方で日産は、もう一つの「負の遺産」に関しては、断固整理する行動に打って出た。これは予想されていたことではあるが、2月12日、ゴーン被告の一連の不正行為に関して100億円の損害賠償を求める民事裁判を横浜地裁で起こしたのだ。

 日産は昨年9月、社内調査の結果、ゴーン被告による不正によって総額350億円の被害を受けたと発表している。今回の100億円の賠償請求は、その350億円の損害の一部で、レバノンやブラジルの豪邸を取得するにあたって、日産の資金を不正流用したことや、コーポレートジェット機を私的に使用したことなどに対する賠償だ。

 ゴーン被告は国外に不法出国したため、日本で刑事裁判が開かれる可能性はほとんどないが、民事裁判は手続き的に可能だ。海外にいても訴状を被告側に渡すことができ、被告が出廷しなくても裁判を開くことができるという。

 日産は民事訴訟で勝つことで、ゴーン被告が保有している海外のドル預金口座を凍結させ、ゴーン被告の勝手な動きを封じる狙いもあると見られる。
影の主役はキャロル夫人だった
 日産関係者によれば、海外の豪邸取得に関して、東京地検特捜部は当初、特別背任容疑で立件しようとしていたという。しかし、「サウジアラビアルート」「オマーンルート」といった中東を舞台にした不正な資金の流れを把握できたため、特捜部のターゲットはそちらに移ったようだ。

 この中東を舞台にした特別背任事件の影の主役は、実はゴーン被告の妻であるキャロル容疑者だった。キャロル容疑者は、ゴーン氏に代わって特別背任の事件関係者とやり取りしていたのに、特捜部に対して「知らない」と証言していた。このためゴーン氏逃亡のあと、偽証の疑いで国際手配されている。

「文藝春秋」3月号および「文藝春秋digital」に掲載した「 指名手配された『ゴーン妻』の正体 」では、ゴーン被告がキャロル容疑者と再婚してから、風貌も行動も変わって行ったようすや、「悪事」が加速していったことをくわしくレポートしている。

 ゴーン事件は、「事件の陰に女あり」という格言がぴったり当てはまるのだ。

200624日経

日本自動車工業会は23日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、主に自動車関連の中小企業を対象に資金調達を支援するプログラムを発足したと発表した。信用保証の仕組みを利用し、総額20億円規模で中小企業の資金繰りを支援する。必要な資金を円滑に得られるようにし、重要な要素技術や人材の流出を防ぐ。
対象となるのは自工会など自動車関連4団体の会員企業。1企業あたり原則1億円を上限とし、主に自動車メーカーからの支援を受けにくい独立系の中小企業などを想定する。資金繰りの状況や持っている技術などを考慮し、審査・決定する。
自工会が会員の自動車メーカーなどから集めた20億円を三井住友銀行に預け入れて担保とし信用保証を行い、企業が取引銀行から迅速に融資を受けられるようにする。こうした支援プログラムは自動車業界では初めてだという。
当初はファンドの形での支援を考えていたが、「迅速に資金が届くよう信用保証の形にした」(自工会)。今後は非会員の自動車関連企業への支援も検討する。
完成車メーカーでも販売減による足元の資金繰りを懸念し銀行への融資要請などが相次ぐなか、部品メーカーを業界全体で支援する。

200826日経

ホンダは2021年に終了する予定の英国生産について、一部を日本に移管する方針を固めた。英国を巡っては欧州連合(EU)脱退に伴い、日英両政府が自動車関税の撤廃に向けた詰めの協議に入っている。ホンダは為替リスクを減らすため現地生産比率を高めていたが、通商協定の合意を見据え国内工場の活用を進める。


英スウィンドン工場で手がけている同国と日本市場向けの乗用車「シビック」の生産を、21年から寄居工場(埼玉県寄居町)に移管する。ホンダは欧州の景気低迷や英国のEU離脱を背景に、すでに英工場を21年に閉鎖することを決めている。
日本からEUへの自動車輸出は現時点で関税が7.5%だが、英国がEUの離脱を決めており、このままでは10%の関税がかかる。日英政府は早期の貿易協定合意を目指しており、その場合、関税は26年に向け段階的にゼロになる見通しだ。
英工場では19年に英国市場向けが11%、日本向けは6%を占めた。7割近くにのぼる北米向けについては同地域での生産を検討するとしていたが、日本や英国向けの移管先は明らかにしていなかった。ホンダは国内外で工場の閉鎖などを決めており、残された拠点の稼働率を高める狙いから寄居工場の活用を決めた。
英国の自動車市場は年230万台と欧州ではドイツに次ぐ2番目の規模。歴史的に日本メーカーが早くから進出し、日本車のシェアは合計で2割弱を占める。ホンダの19年の英国販売は4万台で、欧州での販売実績の3分の1を占める。
ホンダ以外の車メーカーでも日本から英国への新たな輸出を決める動きがある。日産自動車は19年に、欧州向けの次期SUV「エクストレイル」の英工場での生産を撤回して、九州工場での生産に変更した。日英の新協定は国内移管を決めた各社の追い風となる。

200828日経





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新型コロナウイルス感染拡大で世界の自動車市場が縮小する中、自動車各社が電気自動車(EV)の投入を急いでいる。ホンダやトヨタ自動車など日本勢は2020~21年にかけEVを相次ぎ販売。先行する米テスラや中国勢を追撃する。補助金など各国のEV普及策(総合2面きょうのことば)も需要を下支えするEV市場で競争が激しくなってきた。

ホンダは27日、初の量産型のEV「ホンダe」を10月30日に国内で発売すると発表した。1回のフル充電での航続距離は約300キロメートルと日産が7月発表した新型EVアリア(最大610キロメートル)など他社のEVに比べて短めだ。希望小売価格は約450万円からと米テスラの「モデル3」の500万円前後(補助金などで変動)よりも低めとなる。
トヨタ自動車も高級車レクサスで初のEVを中国で4月に発売し、欧州や日本でも展開する。欧州勢も独フォルクスワーゲン(VW)がEVの戦略モデルを9月に欧州に投入。BMWも今年後半にSUVタイプのEVを中国市場で販売する。
各社のEV投入が相次ぐ背景には、市場拡大がある。英LMCオートモーティブによると、19年のEVの世界販売台数は167万台と4年で5倍に増えた。これまで中国が補助金をテコにEV需要をけん引し市場の過半を占めてきた。だが、ここにきて欧州でEV需要が広がっている。

英調査会社JATOダイナミクスによると、欧州27カ国の6月新車販売台数は前年同月比24%減った。一方でEVやハイブリッド車(HV)など電動車だけだと逆に同65%増加した。6月の新車販売に占める電動車の割合は16%で1年前(7%)から9ポイント伸びた。
欧州でEV普及を促すのがコロナで打撃を受けた経済を環境重視で回復させる「グリーンリカバリー」の取り組みだ。フランスではEV購入時の補助金を最大7000ユーロ(約90万円)に増額。ドイツでも同補助金を最大9000ユーロに増やした。アーサー・ディ・リトル・ジャパンの祖父江謙介パートナーは「(政策支援の)影響は大きい。EV普及が3~5年ほど前倒しになる」と話す。
世界最大のEV市場である中国でも20年末に終了予定だった新エネルギー車(NEV)への補助金制度の2年延長を決めた。EVを中心とする新エネルギー車(PHVやFCVも含む)の7月販売は前年同月比19.3%増の9万8千台と13カ月ぶりプラスとなった。
中国の新興EVメーカーの小鵬汽車が今月、米ニューヨーク証券取引所に上場。15億ドル調達して研究開発や販売促進に充てる。車載電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)など価格競争力を持ったサプライヤーも成長している。競争力を高める中国EV勢が中国以外の市場でも存在感を示す可能性がある。

201218


日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は17日、オンラインで取材に応じ、政府が30年代に新車のガソリン車販売をなくすことを検討していることについて「自動車業界のビジネスモデルが崩壊してしまう」と懸念を示した。日本は火力発電の割合が大きいため、自動車の電動化だけでは二酸化炭素(CO2)の排出削減につながらないとの認識を強調し、電気自動車(EV)への急激な移行に反対する意向を示した。
 原発比率が高く、火力発電が日本と比べて少ないフランスを例に挙げ、「国のエネルギー政策の大変革なしに達成は難しい」「このままでは日本で車をつくれなくなる」などと発言。EVが製造や発電段階でCO2を多く排出することに触れ、「(そのことを)理解した上で、政治家の方はガソリン車なしと言っているのか」と語気を強めた。ガソリン車の比率が高い軽自動車を「地方では完全なライフライン」とし、「ガソリン車をなくすことでカーボンニュートラルに近づくと思われがちだが、今までの実績が無駄にならないように日本の良さを維持することを応援してほしい」と述べ、拙速な「脱ガソリン車」には賛成できない考えを示した。
 一方、日本鉄鋼連盟の橋本英二会長(日本製鉄社長)は17日の定例記者会見で、50年「実質ゼロ」の目標の実現について、研究開発に「10年、20年はかかり、個別企業として続けるのは無理だ」と述べ、国の支援を求める考えを示した。
 政府の目標達成には、自動車業界や鉄鋼業界の協力が不可欠。「財界総理」と言われる経団連会長を輩出し、政府に対する発言力も強いトヨタや日鉄のトップから懸念が示されたことで首相の「ゼロエミッション」は曲折も予想される。【松岡大地】

201223日経

温暖化対策で世界で脱ガソリン車の動きが進む中、実現では欧州が先行している。米国のバイデン次期政権も環境重視の戦略で欧州を追いかける構えだ。欧米はどんな規制で目標達成をめざし、日本はどのような立ち位置にいるのか。

欧州では2種類の規制が、ガソリン車やディーゼル車のシェア低下につながっている。
一つは欧州連合(EU)が2021年に本格的に導入する二酸化炭素(CO2)排出規制だ。新車の乗用車が出す走行1キロメートルあたりのCO2を平均95グラム以下に抑えることを義務付ける。達成できなければ巨額の罰金が科されるため、メーカー各社は電動車の比率引き上げを急いでいる。
ドイツでは新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済対策で補助金が積み増されたこともあり、11月に電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の合計の販売シェアが20%を超えた。ガソリン車・ディーゼル車は計65%と前年同月より25ポイント低下した。
21年のEU規制はガソリン車の燃費に換算すると1リットルあたり24キロメートル。これをEUは30年に同40キロメートル相当にまで高める目標を設定する。さらに目標は強化される方向だ。
もう一つはガソリン車の販売禁止だ。EUとしては禁止時期を明示していないが、ノルウェーは25年までに全新車をEVなどCO2を排出しない「ゼロエミッション車(ZEV)」にする方針だ。オランダや英国などは30年の脱ガソリン車達成を目指す。40年とするフランスなどを含め欧州新車販売の約半分を占める国が目標を定めている。
米国でもバイデン政権の発足で環境規制の再強化が進む見通しだ。
トランプ政権は燃費規制を緩和し米国のEVとPHVの比率は19年で2%台にとどまる。だが、消極的な連邦政府を尻目に州政府がけん引役を担う。州内でメーカーに一定比率の電動車両販売を義務付ける「ZEV規制」はニューヨークなど10以上の州が取り入れる。
急先鋒(せんぽう)のカリフォルニア州では9月、ニューサム知事が州内でのガソリン車販売を35年までに禁止する方針を表明。バイデン氏は全米50万カ所に充電設備を設け、ガソリン車からEVの買い替えを促すプログラムを導入する計画。政権発足後、同州と連携し速やかに環境規制の強化策をまとめる考えだ。
日本は新車販売に占める電動車の割合を30年代半ばに100%にする目標を検討している。燃費規制を厳格にしたり、カリフォルニア州も導入する自動車メーカー向けの排出枠制度を設けたりして目標に近づける考えだ。東京都の小池百合子知事は30年までに都内で販売される新車すべてをEVやハイブリッド車(HV)などの電動車に切り替える目標を公表した。
欧州では規制をテコにEV・PHVのシェアが急伸し、ノルウェーでは既に両車が8割に達する。ピッチの速い欧米の動きは日本の戦略作りにも影響を及ぼす。自動車メーカーや消費者が円滑に受け入れ、電動車の普及が進むような規制や支援が求められている。

210209 日経

オーバー・ジ・エア(OTA)」はインターネット経由で自動車のソフトウエアを更新する技術。従来、自動車は販売店や整備工場で部品の交換や追加をしてきたが、通信機能を備えた「つながる車」の場合、OTAを活用すれば遠隔操作だけで車の性能を高められる。技術革新や規制への対応で変化が激しい自動運転分野と相性がいいとされる。
▽…OTAで先行するのが電気自動車(EV)大手の米テスラだ。現在は高速道路の自動走行などに機能を限定しているが、2019年春以降に出荷した全ての新車がソフトの更新により完全自動運転に対応可能という。オプションで販売する運転支援機能の料金を1万ドル(約105万円)に引き上げ、サブスクリプション(月額課金)方式も検討するなど、売り切りでなくソフトで継続して稼ぐ仕組みを作りつつある。
▽…開発の中心がソフトに移るなかでは課題もある。常にネットに接続していればサイバー攻撃のリスクがある。走行や安全にかかわるシステムがハッキングされれば命の危険に直結する。IT(情報技術)人材の確保も急務だ。トヨタ自動車は自動運転に向けたソフト開発子会社を18年に設け、報酬体系をトヨタ本体と分けるなどして採用を進めている。

210323日経

車載向け半導体大手ルネサスエレクトロニクスの工場火災が半導体不足のタイミングと重なり、自動車業界の供給網が揺らいでいる。ルネサスは約1カ月での再開を目指すが製造装置も需給に逼迫が生じており実現には課題が残る。足元で自動車メーカーが取引先を通じて確保する半導体在庫は最大3カ月分程度とみられる。復旧は時間との戦いだ。
ルネサスは自動車の走行を制御するマイコンで世界で2割のシェアを持つ。トヨタ自動車をはじめすべての日系自動車メーカーにとっては、自動車用マイコンの最大の調達先でもある。火災で生産を停止中の那珂工場(茨城県ひたちなか市)は自動車向け半導体の中でも先端品の量産を担う。ルネサス火災はこれまでの半導体不足以上に、日本メーカーに影響を及ぼす。
自動車各社は22日朝からルネサスと出荷可能な仕掛かり在庫の数量確認に追われた。トヨタ自動車関係者は「供給網がきれて減産とならないよう、まずはしっかり在庫を見極めている真っ最中だ」と話す。トヨタを含めた各社はすでに復旧支援のための人員を現地に派遣している。
専門商社などによると代理店の保有分と合わせた在庫は2~3カ月分のもよう。日産幹部は「どのくらいの規模かは不明だが、減産は必要になりそうだ」とみている。スズキの幹部は「ルネサスからの情報を踏まえ、減産するかどうかや実際にする場合の規模などを判断したい」とする。減産度合いは、ルネサスの復旧スピードに左右される。

「調達に数カ月」
ルネサスの柴田英利社長は21日の会見で「1カ月以内での生産再開を目指す」と話したが、業界からは不足が指摘される半導体製造装置がボトルネックになるとの声が出ている。英オムディアの南川明氏は「装置の調達には少なくとも数カ月はかかるだろう」と分析する。半導体製造装置は注文を受けてから製造する。納入には4カ月から半年程度かかり「すぐに供給できるものではない」(メッキ装置メーカー)からだ。
半導体製造装置はルネサスの火災が起こる前から需給が逼迫していた。新型コロナウイルスの影響でデータ通信機器の需要が世界的に高まったほか、自動車の生産回復も急速に進んだ。半導体メーカーは装置の注文を一気に増やしたがいまなお需要に追いつけていない。東京エレクトロンなど装置メーカーは2020年からフル生産が続く。国産化を急ぐ中国の半導体メーカーは日本の中古半導体製造装置の購入を増やし、中古価格は1年で2割上昇したという。
装置の特殊性もハードルになる。今回の火災では11台の装置が損傷した。そのうち4台については特別な半導体をつくる仕様で代替調達が難しいという。経済産業省も事態を重く見て、製造装置の円滑な調達が進むよう支援する。代替生産できるラインがないか、使えなくなった装置の置き換えが可能かどうかなどを探る。
ボールねじ特需
半導体製造装置の引き合いが強まるなかで、特需が生じている分野もある。モーターの回転を横方向の動きに変える「ボールねじ」では注文がメーカーに相次いでいる。半導体製造装置に欠かせない基礎部品のひとつだが、自動車工場などで使う工作機械でも使われている。
日本精工の内山俊弘社長は「21年の需要は直近で最も引き合いが強かった17年を上回る可能性がある」と話す。当時は自動車の増産がけん引役だったが今回は半導体向けの受注が大きく伸びるとの見立てだ。中堅の黒田精工も半導体製造装置部品に使うボールねじの生産を21年中に、17年比で7割増やす。工作機械向けの受注も堅調ななか、全方位での供給対応が必要になっている。
自動車や産業向けの半導体需要の増加で、基板素材であるウエハーの引き合いも強まる。世界シェア首位の信越化学工業では「例年冬にはウエハーの需要は落ち着くが、今回の冬は月を追うごとに需要が拡大していた」(轟正彦専務取締役)。急速な需要増で23年ごろにはウエハーの供給力が不足する可能性も指摘されており「新工場建設を早期に決める必要がでている」(轟氏)。

210510 顧客より
自動車ラインは、機械化が進んでおり、人の手を介したメンテナンス等は減ってきている

210513日経


半導体の発注スケジュールも見直す(米ケンタッキー州の工場)
トヨタ自動車の業績回復が続いている。12日に発表した2021年3月期決算は市場予想を上回った。半導体不足が世界で深刻になるなか、独自の取り組みで必要な量を確保できているのが大きい。今後は年単位での発注なども検討する。「カンバン方式」に象徴される効率優先の考え方を一部修正し、安定操業とのバランスを探る。(1面参照)

21年1~3月期の連結純利益は7771億円と前年同期の2.4倍になった。独フォルクスワーゲン(VW)や米ゼネラル・モーターズ(GM)も業績は改善したが、半導体不足で生産に制約がかかり、純利益は3200億~4300億円にとどまった。
調査会社マークラインズのデータなどから自動車メーカーの月間生産を分析すると、トヨタの回復が先行していることがわかる。新型コロナが流行する直前の20年1月の生産量を100とすると、今年3月はトヨタが118。VWの113、GMの103を上回った。
4~6月期も欧州大手ステランティスが半導体の調達遅れによって「生産への影響が最大になる」としている。米フォード・モーターや独ダイムラー、独BMWも同様の見通し。日本メーカーや韓国勢も主力車の減産などを強いられる可能性が高まっている。
トヨタも米国でピックアップトラックの生産ペースを落とし、高級ブランド「レクサス」のセダン「IS」は受注を止めた。一定の影響は出ているが「なんとか乗り切れそうだ」(幹部)。

背景には、東日本大震災の経験を生かした在庫の持ち方の改革がある。
トヨタは長く、「カンバン方式」で効率を高め、競争力をつけてきた。なくなりそうな部品を生産ラインの看板に書き出してメーカーに提示し、随時供給してもらうことで、完成車工場では部品在庫を持たないようにする仕組みだ。ただ、震災では部品不足で自動車生産が停止し、弱点も明らかになったため修正した。
重要な部品は非常時でも確保できるよう、取引先全体に在庫の量を増やすよう要請した。在庫はコスト増につながり効率も下がるが、車を継続して造ることを重視したものだ。どのサプライヤーのどの工場が稼働しているかを確認する仕組みも作った。
今後はさらなる深化を目指す。災害時だけでなく、普段から供給網全体で在庫量を管理する仕組みを検討する。直接つき合いがない2次、3次の取引先まで含め、輸送中の在庫も把握できるシステム構築を視界に入れる。「グループで誰がどこで何日分持つべきか、そんな議論ができている」(グループ商社の豊田通商幹部)。
トヨタは年に2回、3年先までの年間ベースの生産計画を部品メーカーに示し、3カ月単位の生産計画も毎月更新している。だが、実際に発注するのは、生産の前月に示す予定に基づく。トヨタ幹部は「数カ月単位の調達ではなく、2~3年先を考え年単位で調達枠を確保したほうがいい」と話す。
半導体の確保は中長期の課題になる可能性が高いからだ。電子制御の増加などで自動車に使う半導体の量は年々増えている。車1台に使う半導体のコストは19年までの6年で4割増えたと米ゴールドマン・サックスは分析している。「CASE」と呼ばれる次世代技術が普及すれば増加ペースは加速する。
次世代車が増えれば半導体に加え車載電池などの需要も急拡大する。部品や素材をいかに安定して調達するかは自動車メーカー各社の課題だ。自前でつくる動きもあり、米テスラは20年秋に次世代電池の内製化を発表した。乗用車1台につき部品は3万点とされる。誰がどこまで在庫を持つのか。グループを挙げて「カンバン方式」を深める取り組みが問われる。

210513日経

トヨタ自動車の昨年度の決算は、グループ全体の最終的な利益が2兆2400億円余りとなりました。新型コロナウイルスの影響で生産や販売は一時、大きな打撃を受けましたが、前の年度に続いて2兆円を上回り、回復が鮮明になっています。
トヨタ自動車が12日発表した昨年度のグループ全体の決算は、売り上げが前の年と比べて8%減少して27兆2145億円、最終的な利益は10%増え2兆2452億円で、前の年度に続いて2兆円を上回りました。

年度の当初は新型コロナウイルスの感染拡大で生産や販売が一時、打撃を受けましたが、当初の計画どおり新型車を投入し、アメリカや中国で車の需要が回復する中で販売を伸ばしました。

世界的な半導体不足でも取引先全体で部品を管理することで影響を抑えたということで、業績の回復が鮮明になっています。

また、今年度の見通しについては、需要の回復傾向が続くとしてグループ全体の世界販売は1055万台、最終利益は2兆3000億円になると見込んでいます。

オンラインで会見した近健太執行役員は「リーマンショックのあとからいい車づくりや原価の改善の取り組みを続け、東日本大震災以降も部品の在庫の持ち方などさまざまな努力をしてきた。それらの成果だと思っている」と述べました。
車の電動化の新たな目標
世界的に脱炭素の動きが加速する中、トヨタ自動車は2030年に向けた車の電動化の新たな目標を発表しました。

このうち、EV=電気自動車の普及が先行している中国では2035年に、ヨーロッパでは2030年に、すべての新車を電動車とし、中国ではEVとFCV=燃料電池車などの割合を合わせて50%に、ヨーロッパではEVとFCVの割合を合わせて40%にすることを目指すとしています。

また、2030年に日本では新車の95%を電動車にし、ハイブリッド車が普及していることを踏まえて、このうちEVとFCVは合わせて10%に、北米では新車の70%を電動車にし、このうちEVとFCVは合わせて15%にすることを目指すとしています。

トヨタ自動車の長田准執行役員は、オンラインの会見で「カーボンニュートラルに向けてトップランナーであり続ける、高い目標かもしれないがやっていきたい。電池の開発に積極的に投資し、トヨタとしても電動化に全力で取り組んでいく」と述べました。
210521NewsPicks
4月の輸出、38%増 自動車、半導体装置伸び | 共同通信
210526日経

ホンダは25日、新車乗り放題とするサブスクリプション(定額課金)サービスを始めたと発表した。月に2万5千円からで他車種への乗り換えや買い取りも可能だ。新車のサブスクはトヨタ自動車と日産自動車も既に始めており、日系自動車メーカー大手3社で出そろった。手軽さを背景に所有から利用への流れが自動車に広がる。
ホンダの新サービスの名称は「楽らくまるごとプラン」。期間は3、5、7年の3タイプから選べる。中途解約による違約金は発生せず、車種を変えたり購入したりといった要望にも応える。
全国のホンダ販売店が窓口となり、引っ越しした際にも転居先で同様のサービスを受けられる。
料金は車両代や保守費、税金込みで最も安い軽自動車なら月約2万5千円だ。自動車保険を含むと月3万~6万円ほどになる。車種は軽自動車「N-BOX」やミニバン「フリード」など17種類をそろえた。利用者数の目標については公表しなかった。
2020年1月に始めた中古車のサブスクでは、5月現在の利用者が累計約1800人と想定通りの推移という。
国内の大手自動車メーカーによるサブスクは19年のトヨタ参入から普及し始めた。トヨタのKINTO(キント)は20年の申込件数が1万件を超えた。人気の多目的スポーツ車(SUV)「ハリアー」や「ヤリスクロス」を加えるなど車種をそろえる。欧州での展開も始めた。
日産は20年3月に新車のサブスク「クリックモビ」を始めた。販売店に足を運ばなくても納車までネットで完結するのが特徴だ。
自動車のサブスクはリースよりも契約期間が短く車種を変更しやすいこともあり、初めて車を使う一般のドライバーにとっても使いやすい。日本能率協会総合研究所(東京・港)は25年度に国内の自動車サブスクの市場が19年度の25倍となる500億円になると予測し、その後もさらに広がるとみている。

210526 5.15の東洋経済
ホンダは、2040までに、全て電気か燃料電池車へ
トヨタは、フルラインナップ

210527日経

日本電産や、米アップル製品を受託生産する台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業がそれぞれ電気自動車の主要部分や車体を製造するコンソーシアム(企業連合)をつくる構想を打ち出した。
20~1500社の部品会社を束ね、いわゆる「水平分業型」というやり方で、「垂直統合型」の自動車メーカーに対抗するものだ。当然、車の所有者や走行中のデータを集める「デジタルプラットフォーマー(モノとインターネットをつなぐIoT基盤の運営者)」を意識した動きでもあり、見据えるのはガソリン車から電気自動車への転換で訪れるゲームチェンジの好機ということだろう。
プラットフォーマーをめざす動きは、IT(情報技術)で経営を抜本的に変えるデジタルトランスフォーメーション(DX)の典型例だ。調べてみれば、デジタル化の遅れた日本にもデジタルプラットフォーマーを自任する企業は多数現れた。電機産業では日立製作所や三菱電機、機械ではコマツ、ファナックが独自にプラットフォームを構え、しのぎを削る。農林水産省や経済産業省が名乗りを上げているのも、驚きだ。

だが、成功を収めていると言えそうなのは建設機械の稼働状態を全地球測位システム(GPS)で把握し、自社の業績への影響も日々計測できるというコマツなど、ほんの一握りだ。中にはライバル企業を横にらみしつつ始めたサービスも多く、2000年前後のITバブル期に多数できた「ドットコム企業」と似ている。
海外も同じだ。11年に始まったドイツの「インダストリー4.0(製造業とITの融合運動)」以降、工場や販売拠点にセンサーを置いて経営を効率化したり、集めたデータでオープンイノベーションをめざしたりするプラットフォームが多く現れた。
10年を経てどうなったかと言えば、期待されたほどの革新が起きたケースは少ない。世界中の工場を一つのプラットフォームと標準規格でつなぐことを目指した独シーメンスの「マインドスフィア」も、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の「プレディックス」も製造業を一変させるほどの存在にはなっていない。
製造業のDXを研究する東京大学未来ビジョン研究センターの小川紘一シニアリサーチャーは、その原因を「開かれたプラットフォームといいながら、主宰する企業が自社にデータを集中させることを優先しすぎた。利用料を払って参加した企業が技術革新を起こしてやろう、プラットフォームをより良いものにしようと考える仕組みになっていなかった」とみる。
比較の対象は米IT企業、GAFAだ。例えば、07年に発売されたアップルのスマートフォン「iPhone」は年間出荷台数が昨年、2億台を突破した。その指数関数的な伸びをたどる成長曲線は「iPhone向けのアプリ開発に貢献した企業や個人の増え方とほぼ同軌道を描く」(小川氏)という。アプリを増やすための外部との連携、いわゆるAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の数は現在240万を超えたようだが、開発を担うそれら数千万人の市井の有志こそ、iPhoneというプラットフォームを巨大化させた原動力だった、というわけだ。
小川氏は人の動きとプラットフォームの成長を微分方程式で示す共同研究をしている。似た視点からその成否を科学的に分析するのが、日立製作所が出資するハピネスプラネット(東京都国分寺市)の矢野和男最高経営責任者(CEO)だ。同氏は「生産性の高い働き方をもたらす最も大きな要素は、働き手が感じる幸福感(ハピネス)だ」とみる。
分析のやり方は、スマホに仕込んだアプリで働く人の動きをデータ化する。生産的な動きがない時を「0」(幸福を感じない時)、活発に動いている時を「1」(感じる時)で表し、0と1で成る「幸せの配列」を人工知能(AI)解析も使いながら定量的に割り出そうとするものだ。そこからは企業内組織のほか「プラットフォーム上で活動する他社や個人のハピネス度も把握することが可能」と数万人に及ぶ過去の研究から矢野氏は結論づける。ハピネスとはつまるところ「面倒な作業を前向きに取り組んでくれるような人を多数生み出す状態」だという。
米コラムニストのトーマス・フリードマン氏はAIや生命科学などの進歩が著しい現代を「加速の時代」と著書「遅刻してくれて、ありがとう」で表現したが、加速を生むのは組織や消費者のハピネスだろう。プラットフォーマーの成否を分けるのもやはり、「前向きな人による加速」なのだ。
もう一つ言えば、担い手が失敗を恐れないことも重要かもしれない。過去20年で売上高を5倍に増やしたダイキン工業は、中核と考える一部の領域以外はライバル企業にも技術を供与する「オープンアンドクローズ」という独特の手法で中国などに空調の巨大市場を形成した。その同社がDXの一つ、課金ビジネスでの成功を見据え、現在進めているのが「東大発ベンチャー」などとの連携だ。すでに20社近くと手を組むが、組まなかった企業も相当数ある。
井上礼之会長は「多くの失敗をできるだけ早く社員に経験させたい」と話すが、そうした共存共栄が可能なパートナー探索の取り組みも、「ハピネスマネジメント」と呼べるのではないか。

210601日経

【シンガポール=中野貴司、伴正春】新型コロナウイルスの感染者が、これまで比較的少なかった東南アジアで急増している。マレーシアは6月1日から全土でロックダウン(都市封鎖、総合2面きょうのことば)に踏み切り、トヨタ自動車やホンダなどが工場を停止する。各国で感染拡大が続けば、国際的なサプライチェーン(供給網)にも打撃が及びかねない。

マレーシアでは1日あたりの新規感染者数は直近2週間でほぼ倍増し29日には9020人と過去最多を更新。人口100万人あたりでみた新規感染者数では200人を超え、インドを上回る。ワクチン接種率がまだ低いなか、感染力の強い変異ウイルスが広がっている。
マレーシア政府は14日まで大部分の業種で事業を禁止する。自動車や製鉄業は通常の10%の出社しか認めない。
トヨタは1日から、原則として生産、販売とも停止する。2020年の現地での生産実績は約5万台だった。ホンダもロックダウンの間、現地2工場での生産を停止する。二輪車は30万台、四輪車は10万台の年産能力を持つ東南アジアの主要拠点の一つだ。
タイやベトナムでも5月に入って、1日の感染者数が最多となった。
タイでは台湾の新金宝グループが20日、集団感染が起こったとしてプリンターや通信機器を造る工場の操業を止めた。
ベトナムでは北部の工業地帯でインド型の感染拡大が続くなか、インド型と英国型の特性を持った新たな変異ウイルスが発見された。サプライチェーンを脅かすとして当局が警戒を強めている。
東南アジアには近年、中国などから生産移管が進み、部品など中間財を自国で生産して輸出する動きが広がっている。みずほリサーチ&テクノロジーズによると、東南アジア諸国連合(ASEAN)9カ国の輸出額(付加価値ベース)は19年までの10年で2.1倍に増えた。伸び率は世界の主要5地域で最高で、シェアは10.5%になった。
焦点は東南アジア最大の自動車生産国のタイだ。トヨタをはじめとする日本車各社が工場を構える。ベトナムには韓国サムスン電子のスマートフォンの主力工場がある。それぞれ中東や欧米など世界各国への輸出拠点となっているだけに、操業に支障が出れば、影響はASEAN域内にとどまらない。
210616NewsPicks
給電なしで、ずっと走れる。そんな暮らしがすぐそこに。 | Stories List | Stories Top | ニュース | DENSO - 株式会社デンソー / Crafting the Core /
210621NewsPicks
「トヨタが車を売らなくなる日」が目前に迫る意味 | 販売・購入

210623日経
韓国LG電子は、EV車に注力

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73152710S1A620C2FFJ000

210625日経
三菱自動車 二百万以下のEV

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73243020V20C21A6MM8000
210714NewsPicks
英国、ガソリン・ディーゼルトラックの新規販売禁止へ 40年から
210818NewsPicks
7月の輸出、37.0%増 自動車や半導体関連が好調 | 共同通信
210826NewsPicks
場所や時間で動力切り替えHV車 トヨタの新技術、実用化へ | 共同通信


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