トピックス カーボン0

トピックス カーボン0

⚫️2021.11.2日本経済新聞📰

【サマリー】
cop261日目
イギリス首相、石炭廃止や電気自動車への移行加速を呼びかけ

【思ったこと】
ここ10年が本当に大事
石炭廃止、、、千葉の石油コンビナートとかは、今後どうなるのだろう?🤔

【記事全文】

【グラスゴー(英北部)=竹内康雄、坂口幸裕】地球温暖化対策を話し合う第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の首脳級会合が1日、始まった。議長国・英国のジョンソン首相は石炭利用の廃止や電気自動車(EV)への移行の加速など具体的な行動をとるよう各国に呼びかけた。(関連記事政治・外交、ビジネス・テック面に)
COPの首脳級会合は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を採択した2015年の第21回会議(パリ開催)以来6年ぶり。2日間の日程で100以上の国・地域の首脳が演説する。岸田文雄首相も出席する。
パリ協定は産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1.5度以内に抑えることをめざす。国連の直近の分析では今世紀末には気温の上昇幅は2.7度になる。
ジョンソン氏は「世界は願望から行動に移らねばならない」と訴えた。25年までに気候変動分野の支援を10億ポンド(約1560億円)増額すると表明した。これまでは116億ポンドを約束していた。
バイデン米大統領は「私たちに残された時間は少ない。この10年が決定的に重要になる。未来の世代を決める10年だ」と強調した。24年までに途上国への金融支援を4倍に増やすと表明した。融資や情報提供によって途上国のインフラ整備や政策立案を手助けする。
ドイツのメルケル首相は「先進国は特別な責任を負っている。(途上国に)1000億ドル(約11兆円)を資金提供する約束を守ることが信頼につながる」と述べた。ドイツは25年までに拠出額を年60億ユーロ(約8000億円)に増額すると表明した。
国連のグテレス事務総長は「気候変動に強い経済への投資は、持続可能な成長や雇用の好循環を生み出す」と述べ、先進国と新興国に経済の脱炭素化と脱石炭を加速させる資金・技術面の仕組みを確立するよう促した。
10月末の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)はパリ協定の目標実現に努力する方針で一致した。COPで主要排出国の首脳から踏み込んだ発言が出るかが焦点だった。
中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は現地入りせず、書面で「再生可能エネルギーの発展に力を入れ、大型風力発電や太陽光発電基地の建設プロジェクトを計画する」などと表明するにとどめた。先進国に途上国への支援を求める姿勢も崩さなかった。

⚫️2021.11.1日本経済新聞📰

【ローマ=細川倫太郎】20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)は31日、首脳宣言を採択して閉幕した。気候変動分野では2021年末までに海外の石炭火力発電への公的な金融支援を停止することで合意した。世界の温暖化ガス排出量を「今世紀半ばごろまで」に実質ゼロにする目標でも一致。新型コロナウイルス対策では、途上国へのワクチン供給を促進することを確認した。
首脳宣言では再生エネルギーなどの開発を支援するとした一方、21年末までに「海外の新規の石炭火力発電所への国際的な公的融資に終止符を打つ」と明記した。温暖化ガスの排出削減対策が講じられていない発電所が対象になる。一方、G20各国内の石炭火力発電所の縮小や廃止では合意に至らなかった。



産業革命前と比べた世界の気温上昇を1.5度以内に抑えるための「努力を追求する」と指摘し、今後10年間で対策を加速する方針を確認した。温暖化ガスの排出量はG20で世界の約8割を占める。温暖化対策の具体策の議論は、同日始まった第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に議論を引き継ぐ。
サミットにオンライン参加した中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は31日、「先進国は途上国に資金援助する必要がある」と主張した。日米欧は2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げるが、中国は同目標について「2060年」と従来の主張を変えず、今世紀半ばごろを妥協案とした。
新型コロナ対策に関しては、21年末までにすべての国で人口の少なくとも40%、22年半ばまでには70%にワクチンを接種するという世界保健機関(WHO)の目標を支持した。高所得国で接種を完了した人の割合は65%に達する一方、低所得国は2%にも満たない。議長国を務めたイタリアのドラギ首相は世界のワクチン接種格差について「道徳的に受け入れがたいもので、世界経済の回復を損なう」と強調した。
ワクチン生産の拡大もめざす。首脳宣言では「ワクチン製造能力を地域レベルで拡大、多様化することで、世界で迅速かつ公平な流通を確保する」とした。G20は将来のパンデミック(世界的大流行)への備えと対応を強化するため、資金調達手段などを協議する作業部会の設置も決めた。年内にも初会合を開く見通しだ。

⚫️2021.10.26日本経済新聞🗞


【ブリュッセル=竹内康雄】国連気候変動枠組み条約事務局は25日、各国が提出した2030年の温暖化ガスの排出削減目標が、国際枠組みの「パリ協定」の目標に合致しているかを分析した報告書を公表した。現段階の削減目標では30年時点での温暖化ガス排出量が10年比16%増になると指摘。パリ協定の目標を実現するには不十分で、一段の対策が必要になると呼びかけた。
パリ協定は気温上昇を産業革命前から2度未満、できれば1.5度以内に抑えることをめざす。現行目標では気温上昇は今世紀末に2.7度になる可能性があるという。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2度未満にするには30年時点の排出量を10年比25%減、1.5度以内に抑えるには45%減にする必要があるとみる。現段階の目標では実現には遠い。
パリ協定を批准済みの192カ国・地域の目標を集計した。このうち、新しい目標を提出したり、更新したりした143カ国・地域の集計では30年の温暖化ガスの排出量は9%減になる。事務局によると、日本が掲げた30年度の13年度比46%削減など、米欧を含め主に先進国は大きく深掘りした目標を提出・更新した。一方、中印は古い目標のまま更新しなかった。
条約事務局のエスピノサ事務局長は声明で新規目標を出していない国に「新しい目標を出すよう求めたい」と呼びかけた。中国は30年までに二酸化炭素(CO2)の排出をピークアウトし、インドは国内総生産(GDP)当たりの排出量を05年比33~35%減らす意向を示している。
ただ、国際エネルギー機関(IEA)によると、中国は今のままの政策では30年時点の排出量は20年とほぼ変わらない。途上国の排出は全体の6割を占め、主要排出国である中印の努力なしにはパリ協定の目標は達成できない。
英グラスゴーでは31日に第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開幕する。先進国が中国やインドなど新興国に温暖化ガスの排出削減目標を引き上げるよう圧力を強めている。
COP26の議長を務めるシャルマ氏は声明で、各国はより野心的な行動を取る必要があると主張。各国の目標水準は「進展はあったが、十分ではない」とさらなる排出減が必要と訴えた。
欧州連合(EU)のミシェル大統領は15日、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と電話協議し「COP26に向けて、もっと野心的になってほしい」と要請。EU高官によるとミシェル氏は習氏に30年目標を深掘りし、60年までにCO2排出を実質ゼロにする目標の前倒しを求めた。
COP26では温暖化ガスの排出量の多い石炭火力の縮小が議題になる。中国はなお発電量の6割を、インドは7割を石炭に頼っている。日本も30年度に2割の電気を石炭火力でまかなう計画で、英国などから批判される可能性がある。

⚫️2021.10.25日本経済新聞📰




地球温暖化対策を議論する第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の31日開幕まで1週間を切った。議長国である英国は石炭火力発電の早期廃止を主要議題にする意向で、2030年度でも電源の約2割を石炭火力に頼る日本にとって厳しい会議になりそうだ。足元のエネルギー価格高騰が経済活動に影響を与えかねないとの懸念が浮上する中、新興国が慎重姿勢を強める可能性もある。
「日本が国内の石炭火力を廃止する方針を打ち出すことを望む」。英国のジョンソン首相は13日、岸田文雄首相との電話協議でこう求めた。この要請は英国側の発表には明記されたが日本側の公表資料に記載はない。
石炭火力は発電時の二酸化炭素(CO2)の排出量が多い。温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」は、地球の気温上昇を産業革命前から1.5度以内に抑える目標を掲げる。国連は目標達成には50年ごろのカーボンゼロ(実質的な炭素排出ゼロ)が必要で、「実現には石炭火力の早期廃止」(グテレス事務総長)が不可欠とみる。
西欧諸国やカナダなどすでに全廃を決めた国は多い。米国も35年までの電力部門の脱炭素を掲げる。ジョンソン氏は9月、「先進国は30年、途上国は40年までに石炭への依存を断つよう求める」と表明した。
日本はこのほど決めたエネルギー基本計画に、30年度の発電の2割弱を石炭火力で賄う方針を盛り込んだ。再生エネ導入が遅れ原子力発電の再稼働も進まず、ジョンソン氏が求める「30年までの全廃」を約束することは難しい。批判の矢面に立たされかねない。
COP26は11月12日まで予定し、1~2日には、バイデン米大統領ら各国首脳がリーダーズサミットを開く。バイデン氏は約10人の閣僚と共にCOP入りするという。
ここに来て新たな焦点の一つになっているのが、市場の変調をどうとらえるかだ。脱炭素のペースをはやめすぎると、経済成長の足かせになるとの意識が新興国に広がる可能性はある。他方、干ばつや海岸の浸食など気象変動の深刻化を見逃すことはできない。



世界では脱炭素投資が広がり、化石燃料への投資が急速に減る。冬場の需要に向けてガス需要が高まっており、価格は急騰。ニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物の期近物も10月20日、世界的な経済回復を背景に7年ぶりに1バレル84ドル台を記録した。石炭火力削減の結果として、中国は電力不足や停電にも陥った。
石炭火力の海外輸出に関し、今後支援しない方針を日本や中国などは表明済み。中長期に脱炭素を目指す方向では足並みがそろったとしても、国内に必要な電力を賄うために石炭火力を使う方針は溝がある。
成長で増える電力需要に対応するため、英国が主張する石炭火力の早期全廃や化石燃料の低減に反発する国もある。インドやロシアなどだ。すべての参加国が同意するような形での包括的な合意は難しいとみられる。
COPでは各国が温暖化ガスの削減をどう進めるかを盛り込んだ「NDC」と呼ばれる国別の削減目標と、その実行計画も焦点となる。日本は30年度に13年度比46%削減する目標を事務局に提出。世界最大の排出国である中国、第3位のインドといった新興国からいかに具体案を引き出せるかがカギになる。
今後強まりそうなのが、途上国の脱炭素を支援するため先進国へさらなる資金や技術支援を求める圧力だ。19年までに途上国支援は約800億ドル(約9兆円)に積み上がったが、COP26では1000億ドルまで増やせるかが焦点になっており、25年以降の支援策も議題になる。
日本にとっては別のテーマでも難路が待つ。
COPでは、温暖化ガス排出で一定の量を占める自動車分野の脱炭素化も議題になる見通しで、車のゼロエミッション化に積極的な西欧諸国や自治体、一部の自動車メーカーなどは、ガソリン車の廃止とその時期を明記した文書を会議にあわせてまとめるよう動く。
欧州連合(EU)はハイブリッド車を含めた形で、ガソリン車の35年までの禁止を打ち出した。米国の一部州も35年までの販売禁止を決めた。
日本は35年までの「電動車以外の販売禁止」という方針を明らかにしているが欧州と開きがあるのが実情だ。電動車の中に、ガソリンも使うハイブリッド車を含んでいるためだ。日本の自動車メーカーの電気自動車(EV)化の動きは鈍く、欧州などが主導する合意文書に国レベルで賛同できる見通しが立たない。


⚫️2021.10.14日本経済新聞🗞

【サマリー】
脱炭素に向けて、世界で年間450兆円の投資が必要と、国際エネルギー機関が公表
一方中国はコロナ禍での経済政策として石炭利用を増やすなど逆光

【思ったこと】
日本企業も懸命に取り組む姿勢にある
日本沈没とならないよう
これは人として意識すべき取り組み

【記事全文】

【ブリュッセル=竹内康雄】国際エネルギー機関(IEA)は13日公表した世界エネルギー見通しで、脱炭素に向けて年間4兆ドル(約450兆円)の投資が必要との見解を示した。現状の3倍以上にあたる水準だ。再生可能エネルギーや水素などへの投資を加速させる必要性を説くが、世界では石炭利用を増やすなど逆行する動きもある。(1面参照)
IEAは10月31日に英グラスゴーで開幕する第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)を控え、今回のエネルギー見通しを「COP26のガイドブック」と位置づけた。今回の報告書では、気候変動とエネルギー利用の関係性により焦点を当てている。
COP26ではパリ協定の達成に向けて、排出削減に加え、途上国への資金支援などで合意できるかが焦点だ。IEAも報告書で、途上国での再生エネ普及などに課題があると指摘。



世界全体で排出ゼロにするには支援の拡充が欠かせないとの見解を示した。2016~20年平均の3倍超に当たる年4兆ドルの投資を30年までに実現する必要があるとした。
IEAは各国が投資や技術開発で力を入れる内容として(1)再生エネの一段の拡大(2)エネルギー効率の改善(3)メタンの削減(4)鉄鋼、セメントなどでの技術革新――の4本の柱を示した。再生エネは現状の目標から2倍の導入量が必要と指摘した。
先進国を中心に脱炭素への投資が増える一方、中国など新興国を中心に石炭の利用を増やす動きもある。
新型コロナウイルス禍の経済対策として石炭火力発電所が建設されているほか、景気回復によるエネルギー需要増で石炭の輸入は増えている。IEAは21年の排出量の増加幅が金融危機の際に次いで過去2番目の大きさになるとみる。
IEAは5月には実質ゼロに向け、化石燃料への新規投資を即時に停止することなどを盛り込んだ工程表を公表した。今回の報告書ではエネルギーごとの詳細な分析を加えるなど、情報を拡充した。

⚫️2021.10.11日本経済新聞🗞


全国の人工林の過半が50歳を超え、高齢化が目立ってきた。国内の林業は安価な輸入木材に押されて産業競争力が低下し、伐採や再造林が進まない負の連鎖に陥っている。手入れされていない放置林は台風などの災害に弱く、二酸化炭素(CO2)の吸収源としても認められない。森林の荒廃に歯止めをかけなければ、地域の安全確保や脱炭素の壁となる恐れがある。
2019年の台風15号で大停電が発生した千葉県。電線や電柱をなぎ倒したのは、人の手が入らないままの放置林だった。間伐を怠っていると、日が当たりにくくなる。木々は細くなり、草の根づかない地盤はもろくなる。
人工林の多くは第2次世界大戦後、国土復興のために植えられた。近年は整備が行き届かず、一部は荒廃するに任せたままになっている。千葉県山武市の担当者は「毎年伐採しても追いつかないくらい対象箇所が多い」と漏らす。
とうてい新たな植林どころではない。林野庁の調べでは伐採後の造林が計画どおりに進んでいない「造林未済地」は17年度に約1万1400ヘクタールと3年前より3割増えた。50歳を超える森林は500万ヘクタールを超え、人工林全体の半分以上を占めるに至っている。
森林の老いがもたらす問題は防災に限らない。林野庁は日本の森林が吸収するCO2は2014年度の5200万トンが直近のピークで、19年度は約2割少ない4300万トンまで減ったと推計する。CO2を取り込む量は樹齢40年を過ぎて成長が落ち着くと頭打ちになると考えられている。

政府は4月、30年度に温暖化ガスを13年度比で46%削減する目標を表明した。森林によるCO2吸収量は目標の5%分にあたる年約3800万トンと想定する。今のペースで森林が老いていくと吸収源の役割を果たせなくなり、脱炭素の足かせになりかねない。
そもそも、手入れされて一定の日照などを確保できる森林でなければCO2吸収源として国際的に認められない。日本が主導してまとめた京都議定書の考え方だ。国内の人工林約1000万ヘクタールのうち、既に2割程度は吸収源に算入できないとの見方もある。
温暖化ガスの排出削減というと、再生可能エネルギーなどの話になることが多い。林業も本来、軽視できない。中国は現に大量の植林に動く。
林業の再生は一筋縄ではいかない。伐採や植林は数十年単位の事業。防災や脱炭素といった社会的有用性の前に、現実にはビジネスとしての厳しさが立ちはだかる。

日本不動産研究所(東京・港)によると、20年にスギの丸太の売り上げから経費を引いた金額(立木価格)は1立方メートル2900円。2万円を超えていたピークの1980年ごろの1割程度だ。世界的に川下の木材価格が高騰したウッドショックの下でも、川上の立木価格は低迷したまま。ある大手林業家は「とても採算が合わない。林業は衰退の一方だろう」と吐露する。
20年の建築木材の総需要量に占める国産の割合は半分弱にとどまる。木材の輸出国として知られるカナダや米国は平地が多い。山がちな日本は林道整備や搬出に手間がかかる不利を背負う。コスト競争力を高めるために林地を集約しようにも「(山地で)境界線が不明なことが妨げになっている」(東京工業大学の米田雅子特任教授)。相続を繰り返して所有者が分からなくなっているケースもある。
近畿大学の松本光朗教授は「木材利用を促進し、成果を川上の林業に還元する政策が求められる」と指摘する。機械化による生産性の向上、複雑な所有権の整理など取り組むべき課題は多い。防災など幅広い観点から官民の知恵や資金を集める必要がある。

⚫️2021.9.1日本経済新聞📰

「サマリー」
メガバンクが投融資先の排出量も実質0にする。もちろん自社も。

「思ったこと」
カーボン0
目指さないと地球が終わるとも思う
でも目先で対応する中小企業等、、、
苦しい
燃料を使う企業さん、、、転換できず一定数淘汰されちゃうんだろうな😔


「記事全文」

三井住友フィナンシャルグループ(FG)は31日、2050年までに投融資先も含めた温暖化ガスの排出量を実質ゼロにすると発表した。三菱UFJフィナンシャル・グループも5月に同様の方針を打ち出しており脱炭素化に向けた金融界の取り組みが加速している。
三井住友FGは30年までにグループ全体での排出量を実質ゼロにする目標を5月に掲げた。メガバンクが相次いで実質ゼロの対象を取引先まで広げることで産業界全体の脱炭素化に向けた取り組みを後押ししそうだ。
「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に沿ったリポートも同日、公表した。今回初めて融資を提供している電力会社の温暖化ガスの排出量も試算し開示した。人工知能(AI)や衛星データを駆使し、水害などで50年までに累計550億~650億円のコストが生じると世界で初めて試算した。

⚫️210810日経

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC=総合・経済面きょうのことば)は9日、産業革命前と比べた世界の気温上昇が2021~40年に1.5度に達するとの予測を公表した。18年の想定より10年ほど早くなる。人間活動の温暖化への影響は「疑う余地がない」と断定した。自然災害を増やす温暖化を抑えるには二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにする必要があると指摘した。(関連記事総合・経済面に)

温暖化対策の国際的枠組みのパリ協定は気温上昇2度未満を目標とし、1.5度以内を努力目標とする。達成に向け先進各国は4月の米国主催の首脳会議(サミット)で相次ぎ温暖化ガスの新たな削減目標を表明した。
今回の報告書は気温上昇を抑える難しさを改めて浮き彫りにした。10月末からの第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)での議論が次の焦点になる。
IPCCは5つのシナリオを示した。21~40年平均の気温上昇は、50~60年に実質排出ゼロが実現する最善の場合でも1.5度になる。化石燃料への依存が続く最悪の場合は1.6度に達する。
18年の報告書は1.5度になるのは30~52年とみていた。予測モデルを改良し、新たに北極圏のデータも活用したところ10年ほど早まった。上昇幅は最善の場合でも41~60年に1.6度になる。化石燃料への依存が続く最悪の場合は41~60年に2.4度、81~2100年に4.4度と見込む。
過去の気温上昇も想定以上に進んでいたとみられる。今回、11~20年平均で1.09度と分析した。18年の報告書は06~15年平均で0.87度だった。
1850~2019年の二酸化炭素排出量は累計2390ギガトン。気温上昇を1.5度以内に抑えられる20年以降の排出余地は400ギガトンとみる。今の排出量は年30~40ギガトンで増加傾向。10年ほどで1.5度に達する。
産業革命前は半世紀に1回だった極端な猛暑は1.5度の上昇で9倍、2度で14倍に増えると予測する。強烈な熱帯低気圧の発生率も上がり、干ばつも深刻になる。
平均海面水位は直近120年で0.2メートル上がった。今のペースは1971年までの年1.3ミリの約3倍と見積もる。気温上昇を1.5度以内に抑えても、2100年までに今より0.28~0.55メートル上がると予測する。
気候変動のリスクを正面から受け止め、対策を急ぐ必要がある。

210727日経

脱炭素の実現に向けて、二酸化炭素(CO2)に値段を付ける「カーボンプライシング」の導入機運が世界で高まってきた。CO2排出量に応じて企業や家庭に税金を課す「炭素税」や、CO2を多く出す企業が、減らした企業からお金を払って排出枠を買い取る「排出量取引」が代表例だ。欧米や中国、日本の最前線を追った。
だだっ広いディーリングルームにたくさんのモニターが並んでいる。トレーダーはモニターに映るグラフをにらみながら、別のパソコンでチャットを確認する。「ビッド(買値)50ユーロ」「オファー(売値)51ユーロ」。顧客からの注文を1クリックでさばいていく。静寂の中で淡々と排出枠が取引される。欧州連合(EU)の排出量取引市場では日々、こんなやりとりが繰り返されている。

排出量取引では、行政機関が業界などとつくった基準に基づいて、事業者に温暖化ガスを排出できる上限の「排出枠(キャップ)」が割り当てられる。省エネや再生可能エネルギーの利用などで実際の排出量が減り、排出枠を下回る場合は、市場を通して排出枠の余剰分を売却することができる。排出枠を上回る場合は排出枠の不足分を購入する必要がある。
割り当てられる排出枠の総量は毎年減らされる。EUは排出量取引を制度強化する方向で、ファンドなどの思惑買いもあり取引価格は上昇している。2017年前半まではCO2排出量1トンあたりで5ユーロ前後だった。18年から上昇しはじめ、20年に30ユーロを記録。EUが30年の温暖化ガス削減目標を引き上げたことで、21年には50ユーロを突破した。
排出枠の買い手は主に、CO2排出量が多い鉄鋼や化学メーカー、電力会社だ。欧州企業が9割以上を占める。一方で日系企業は1割にも満たない。ガラスや紙パルプ、工場内に自家発電用のボイラーを持つ一部の企業を除き、今は対象から外れている。
世界銀行によると、21年までに何らかのカーボンプライシングの導入を決めたのは64カ国・地域。00年の7カ国・地域から増え、世界の温暖化ガス排出量の21.5%をカバーする。
先行するのがEUだ。7月14日、フォンデアライエン欧州委員長は「排出削減と環境保護を実現しながら、雇用にも配慮した」と語り、気候変動対策などで10を超える提案からなる包括案を示した。柱の一つが05年に始まった排出量取引制度の拡大だった。

発電や鉄鋼、セメントといった大規模な施設が対象だったが、海運を新たに加える方針を示した。さらに、自動車とビルの暖房用燃料を対象にした新しい排出量取引制度を設ける計画も公表。需要と供給の原理を使い、効率的に温暖化ガスを減らせると考える。
排出量取引に力を注ぐ一方、EU全体では炭素税は導入しておらず、加盟国の判断に委ねている。国の主権に関わる税制をEUに移すのを英国などが反対したためだ。オランダでは1月からCO2排出量1トンあたり約30ユーロの炭素課税が始まった。30年には125ユーロになる。対象は排出量取引と重なるが、排出量取引の負担を差し引き課税する。
フランスは14年に炭素税を導入し、1トンあたり約45ユーロの税をガソリンや軽油などに課している。企業や消費者などを対象とする。発電や化学など排出量取引の対象企業は非課税とし、二重の負担を避けている。税収は競争力確保や雇用促進のための法人税控除、インフラ整備などに使う。
炭素税は一律に課税されるため、所得の低い層の負担感が重い。フランス政府は30年に100ユーロに引き上げる方針を掲げていたが、増税に反発した市民が「黄色いベスト」運動で抗議し、マクロン大統領は見直しを余儀なくされた。
排出量取引も炭素税も、環境への貢献度は高まるが企業の負担は短期的に増える。その対策として欧州委は7月半ば、環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける「国境炭素調整措置(CBAM)」の制度案を示した。いわゆる国境炭素税だ。

EU域外の事業者が環境規制が十分でない手法でつくった対象製品をEUに輸出する場合、EUの排出量取引制度に基づく炭素価格を支払う必要がある。製品の製造過程における排出量に応じた金額を算出し、事業者に負担させる。これでEU域内外の負担が等しくなるという考え方だ。
当初は鉄鋼、アルミニウム、セメント、電力、肥料の5製品を対象とする。23年からの3年間を暫定期間とし、事業者に報告義務などを課す。26年からの本格導入で支払いが発生する見通しだ。欧州委は30年時点でCBAMに関連する収入を年91億ユーロ(約1.2兆円)と見込む。
CBAMは第三国にEU並みの気候変動政策を要求するものだ。中国やロシアをはじめ、日米なども対象になる可能性がある。EUは緩やかに導入を進めることで他国との対立を避けたい考えだ。

210715日経

【ブリュッセル=竹内康雄、フランクフルト=深尾幸生】欧州連合(EU)の欧州委員会は14日、温暖化ガスの大幅削減に向けた包括案を公表した。ハイブリッド車を含むガソリン車など内燃機関車の新車販売について2035年に事実上禁止する方針を打ち出した。環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける国境炭素調整措置(CBAM)を23年にも暫定導入する計画だ。(関連記事総合2面に)

欧州委案が成立するには、原則として加盟国との調整や欧州議会の審議を経る必要がある。企業や域外国の反発も避けられそうにない。
欧州委の政策パッケージは、30年までに域内の温暖化ガスの排出量を1990年比55%減らす目標を実現するための対策だ。2030年目標は50年に排出実質ゼロにする目標の中間点となる。
欧州委はガソリンやディーゼルといった内燃機関車について、35年に事実上禁止する方針を初めて提案した。自動車のCO2排出規制を同年までに100%減らすよう定める。フォンデアライエン欧州委員長は14日の記者会見で「化石燃料に依存する経済は限界に達した」と述べ、速やかに脱炭素社会を実現すると表明した。
対応を迫られる自動車業界は反発を強める。ドイツ自動車工業会のヒルデガルト・ミュラー会長は7日、「35年にCO2をゼロとすることはハイブリッド車を含むエンジン車の事実上の禁止だ。技術革新の可能性を閉ざし、消費者の選ぶ自由を制限する。多くの雇用にも響く」と訴えた。トヨタ自動車幹部は「戦略練り直しは避けられない」と話す。
欧州委は燃料面からも運輸部門の排出減を促す。自動車とビルの暖房用の燃料を対象にした新しい排出量取引制度を設け、CO2排出にかかる炭素価格を上乗せする。
EUには産業や電力など大規模施設を対象にした排出量取引制度がある。だが炭素価格の上昇による燃料費の高騰が低所得層の家計を圧迫しかねないとの批判もあり、当面は別建ての制度とする。従来の排出量取引制度では海運を新たに対象とする。
欧州委が導入を目指すCBAMは国境炭素税とも呼ばれる。当初は鉄鋼、アルミニウム、セメント、電力、肥料の5製品を対象とする方針。23年からの3年間を移行期間として暫定的に始め、事業者に報告義務などを課す。26年から本格導入され、支払いが発生する見通しだ。欧州委は30年時点でCBAMに関連する収入を年91億ユーロ(約1.2兆円)と見込む。
制度案では、EU域外の事業者が環境規制が十分でない手法でつくった対象製品をEUに輸出する場合、EUの排出量取引制度に基づく炭素価格を支払う必要がある。製品の製造過程における排出量に応じた金額を算出し、事業者に負担させる。EU域内外の負担が等しくなるという考え方だ。

210630日経
大学も脱炭素
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73378920Z20C21A6TCN000

210507日経


試験高炉を使った水素製鉄法の研究開発が進む(千葉県君津市の東日本製鉄所君津地区)
スウェーデン北部イェリバレ。3月、1300億円かけて画期的な製鉄のプラントをここに建設することが決まった。同国鉄鋼大手SSAB、鉱山大手LKAB、電力大手バッテンファルの3社が共同で取り組む「HYBRIT(ハイブリット)」プロジェクトだ。
プラントでは、再生可能エネルギーの電気でつくった水素(元素記号H)で鉄を生産する。小型の高炉1基分に相当する年130万トンの鉄を2026年までにつくる。
これまでは高炉と呼ぶ設備で石炭由来のコークスを使い、セ氏2000度以上の高い熱で大量の鉄を生産してきた。コークスの炭素と酸素が結びつき二酸化炭素(CO2)が発生。粗鋼生産1トンあたり2トンも出る。
SSABなどはコークスの代わりに水素を使い、CO2排出ゼロの鉄をつくる。既に20年8月31日に同国北部のルレオで高さ50メートルの試験プラントを稼働させた。立ち会ったロベーン首相は「本日、20年後に我が国の鉄鋼業界が完全に脱炭素を達成するための基礎を築く」と宣言した。
地下30メートルの近場に100立方メートルの洞窟を掘り、水素を大量に貯蔵する準備も進めている。
調達費用高く
顧客であるトラック大手ボルボは自動車用鋼材を共同開発する。ハイブリット運営会社のアンドレアス・レグネル会長は「数年前はバカげていると言われることもあったが、今は多くの企業が水素が当然の解とみなすようになった」と話す。
日本勢の研究も進む。日本製鉄の東日本製鉄所君津地区(千葉県君津市)。大型高炉の近くで16年に試験炉が稼働し、水素を使ってCO2排出量を1割減らした。30年までの実用化を目指す。
水素製鉄などの実現には4兆~5兆円の設備投資がかかり水素の調達費用も高い。政府の水素の利用目標は50年に2000万トンだが、国内生産を全て水素製鉄にすると年700万トン必要になる。
現状で日欧の水素の活用法は異なる。SSABなどが専用設備を使う一方、日鉄は従来設備を使って投資コストを抑える。コークスも使いながら高炉内へ水素を吹き込むため、目指すCO2排出は3割減と限定的だ。
国内鉄鋼業が出すCO2は製造業の4割もある。JFEスチールの北野嘉久社長は「カーボンニュートラルを制した鉄鋼企業が成長する」と話す。
新供給網に狙い
「鉄は国家なり」。プロイセン(現ドイツ)の宰相、ビスマルクの1862年の演説に代表されるように鉄は国力を象徴してきた。産業の主役がデータに移ってからも世界の粗鋼生産量は増えてきた。良質な鉄は自動車や機械産業に欠かせず、鉄鋼はなお国の基幹産業の一つ。製鉄の脱炭素の成否は世界の産業勢力図を左右する。
脱炭素に向けた水素の活用は鉄以外にも広がる。欧州エアバスは、水素をガスタービンで燃やして飛ぶコンセプト機「ゼロe」の投入を35年に目指す。バイスプレジデントのグレン・ルウェリン氏は「蓄電池の搭載より、水素の方が重量あたり数千倍のエネルギーがある」と指摘する。
大きな動力と長距離の燃料が要る大型の飛行機は、電気自動車(EV)のように蓄電池で動かすのは難しい。水素用エンジンやタンクといった新たな供給網に参画しようと日本勢も躍起になる。
1910年代、のちに英国の首相となるチャーチルは英海軍の燃料を他国に先駆けて石炭から石油に切り替えると決断。軍艦の速度と航続距離を伸ばし、英国は第1次世界大戦で戦勝国の一つとなった。
チャーチルが「石油の世紀」の扉を開けて果実を手にしたように、どの国や企業が「水素の世紀」を開くのか。激しい技術開発競争の先に宝の山が眠っている。

210525日経

温暖化ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンゼロ」を経営目標に加える動きが日本の主要企業に広がっている。日経平均採用銘柄225社中少なくとも4割の85社が目標を定めた。投資家の圧力が強まるなか、環境配慮を徹底し、関連技術を磨いて競争力につなげる狙いがある。化石燃料に頼る電源構成(総合2面きょうのことば)の見直しなど、企業のニーズにこたえる態勢整備が不可欠だ。
国内で出る温暖化ガスの8割を企業・公共部門が占める。2050年のカーボンゼロという政府目標の達成には企業の取り組みが欠かせない。
日本経済新聞が225社を調べたところ、カーボンゼロ目標を掲げる企業数は20年末から4月末までに倍増した。菅義偉首相が脱炭素を宣言したのを受け、新たに目標を定めたり従来目標を引き上げたりした。

ソニーグループは50年のカーボンゼロに向け、30年に米国で、40年に全世界で電力を再生可能エネルギー由来に替える。欧州と中国では導入済み。温暖化ガスの8割を出す日本での排出削減が最も難しい。原材料や部品の調達先企業や製造委託先の排出削減を促す。
キリンホールディングスは30年に排出量を19年比5割減らし50年に実質ゼロにする。足がかりとして子会社キリンビールの名古屋など4工場の電力の一部を太陽光発電に転換する。専門事業者に工場専用の発電所を設置してもらう。
丸井グループは30年までに排出量を16年度比4割、50年に8割減らす。全店舗の電力を再生エネ由来に替える。テナントの外食店に生ごみのリサイクルを促し、焼却に伴う排出を減らす取り組みもしている。
ただ、取引先を含むサプライチェーン(供給網)全体で排出削減に動くソニーや丸井のような企業は、カーボンゼロ目標を持つ企業の中でも4社に1社。子会社や取引先に環境負荷の高い事業を移すといった抜け穴をなくすため、さらなる拡大が求められる。
先を行くのは欧米大手だ。30年のカーボンゼロを掲げる米アップルは、製造委託先110社以上で工場の電力をすべて再生エネに替える。削減目標の設定を促す国際組織「SBTイニシアチブ」の参加企業は21日時点で1445社。国別では米国の239社が首位で英国が続いた。日本は131社と、やや水をあけられての3位だった。
日本企業に共通の障害が、化石燃料への依存度が7割を超える国全体の電源構成だ。英国では4割以下だ。発電時に温暖化ガスを出さない電源が増えれば、脱炭素に動きやすくなる。低炭素技術の開発や普及を後押しする政策支援も必要だ。
欧米企業の積極策の背景には投資家や消費者からの圧力がある。日本の投資家も変わりつつある。変化に対応できないと、企業は資金調達などで不利になりかねない。株主総会で議案に反対される可能性もある。、

210527日経

2050年の温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標を明記した改正地球温暖化対策推進法(3面きょうのことば)が26日、成立した。脱炭素の実現には日米欧と中国の4地域だけでも21~50年に必要な投資が8500兆円に及ぶとの試算がある。巨大市場を取り込んで成長につなげるか、海外の技術や製品への依存に甘んじるか。世界経済の勢力図を左右する技術競争が正念場を迎える。(関連特集7面に)

改正法は22年4月の施行をめざす。50年までに温暖化ガスの排出量と森林などによる吸収量を均衡させる「実質ゼロ」を実現するとの政府目標を基本理念として条文に明記した。政権が代わっても将来にわたって政策を継続させることを約束し、企業の中長期にわたる投資を促す。
温暖化ガスの排出実質ゼロを巡っては、米欧が50年、中国も60年までの実現を表明し、官民連携で脱炭素に向けた新技術の開発を急ぐ。
日本にとっては水素の実用化や次世代の蓄電池といった先行する分野で優位を保ち、出遅れる炭素の地下貯留などで巻き返せるかが課題となる。
脱炭素へ欠かせない技術のひとつが電気自動車(EV)などに必要な蓄電池だ。車載向けのリチウムイオン電池は中国の寧徳時代新能源科技(CATL)と韓国のLG化学の2強体制で日本勢の存在感はすでに薄い。
日本勢にこの分野で巻き返しの可能性が残るのが、一度の充電で走れる距離が延びる全固体電池だ。トヨタ自動車やパナソニックなどが特許出願でリードする。トヨタは20年代前半に発売するモデルに搭載する方針だ。
再生可能エネルギー機器も脱炭素のカギを握る。00年代には太陽光パネルでシャープや三洋電機が世界を席巻したが、今では世界出荷の8割近くが中国製だ。価格面で競り負けた。
東芝やリコーなどが研究するフィルム型で軽量のペロブスカイト型太陽光パネルに復権の望みをつなぐ。
大量のエネルギーを使う製鉄などが脱炭素の実現へ期待するのが水素だ。鉄鋼大手3社は水素を使う製鉄法を共同研究する。日本製鉄の東日本製鉄所君津地区(千葉県君津市)に試験炉を設け、30年までの実用化を目指している。石炭由来のコークスの代わりに水素を使い、二酸化炭素(CO2)の分離回収と合わせてCO2排出を3割減らす。
日本経済新聞社が出資し、特許の出願動向などを分析するアスタミューゼ(東京・千代田)によると、水素関連の特許を自国以外で出願した件数は01年以降、日本が世界首位を維持する。
海外勢も開発スピードを上げる中、日本が官民連携でどう水素を産業として伸ばせるかが焦点となる。
石油など化石エネルギーへの依存度が高い日本にとって切り札になり得るのが排ガスなどのCO2を回収し地中に埋めるCCSだ。実用化では米国が先行する。
日本もJパワーや東芝が火力発電所などで生じるCO2を回収して貯留する技術開発を進める。
210610NewsPicks
温室ガス半減、石炭火力全廃を 79企業トップがG7に要求 | 共同通信
210610NewsPicks
【直言】僕らは「再エネ」を一大産業にする

210515日経

菅義偉首相は13日の主要7カ国首脳会議(G7サミット)の気候変動に関する討議で、温暖化ガス排出の削減対策が取られていない石炭火力発電を巡り「政府による新規の輸出支援を年内で終了する」と表明した。G7で足並みをそろえ、世界最大の排出国の中国に取り組みを促す。半導体サプライチェーン(供給網)での連携など、経済分野も中国への対抗が鮮明だった。(1面参照)

G7の共同宣言に排出削減対策のない石炭火力への国際的な投資を「すぐ止めなければならない」と明記した。気候変動はサミットの主要テーマの一つで、温暖化ガスの排出量が多い石炭火力の縮小が焦点だった。
5月のG7気候・環境相会合では「新規の国際支援の全面終了に向けて具体的な措置を2021年中にとる」と合意した。今回の宣言は終了時期に触れ、踏み込んだ。
例外となる石炭火力は二酸化炭素(CO2)を地中に埋めたり、再利用したりするCCUSと呼ぶ技術を使い、温暖化対策をとったものなどだ。導入事例は世界でも少なく普及に時間がかかる。
日本はG7で唯一、石炭火力の輸出を支援している。経済産業省の担当者は14日、発電効率の高い設備なら新規の支援を続けるのかと問われ明言を避けた。「今回の宣言を政策に反映していく」と述べるにとどめた。インドネシアやベトナムなど契約済みの計画は支援を続けるという。

国内の発電所も「排出削減対策をとらない石炭火力からの移行をさらに加速する」と宣言に盛り込まれた。宣言をまとめる交渉過程で段階的な廃止の年限を設けるべきだと主張する国もあった。
日本は原子力発電所の稼働が低調なことなどから電力量の3割を石炭火力に頼り、依存度はG7で最も高い。国内の石炭火力の縮小を求める外圧が続きそうだ。
首相は討議で「先進国だけでなく大きな排出国にさらなる取り組みを求めていくことは重要だ」と指摘した。G7は石炭火力の輸出を続ける中国に同様の対応を迫る。
先進国は20年までに官民で年間1000億ドル(約11兆円)を支援する目標があるが未達だった。首相は「21年からの5年間で官民で6.5兆円相当を支援する」と話した。G7は30年までに10年比で温暖化ガス排出量をほぼ半減させると掲げ、先進国が率先して取り組む姿勢を強調した。
電気自動車(EV)などの生産に不可欠な半導体やレアアースなどの重要鉱物の供給網でも連携する。「供給網の強靱(きょうじん)性に関わるリスクに対処するしくみを検討し、最善策を共有する」と記した。
供給網の急所を分析したり、供給途絶時に起きる問題を洗い出したりするリスク評価手法などで連携する。中国に頼らない重要部材の供給網づくりをめざす。
コロナ対応で財政支出が膨らみ、各国は税収の確保が課題となっている。国際課税では、法人税の引き下げ競争を回避するため、新たに設ける最低税率を「少なくとも15%」としたG7財務相会合の声明を承認した。
「より公正な課税システムを創出し、40年にわたる底辺への競争の転換に向けて重大な一歩を踏み出した」と評価した。
最低税率は米大手IT(情報技術)企業を念頭に置いたデジタル課税と合わせて年央の決定をめざす。新たな課税ルールの対象企業をどういう基準で選ぶかの水面下の交渉はなお難航が予想される。宣言は7月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議での合意に期待を表明した。

210617日経

国際エネルギー機関(IEA)が2050年までに世界の温暖化ガスの排出を実質ゼロにするための工程表を示した。再生可能エネルギーを普及させ、化石燃料の消費を減らすことなどが柱だ。石油は生産コストの高い地域から生産を止めていくため、中東依存度が高まるという現実が待ち受ける。
ほぼ再生エネに
これ以上の新規の化石燃料事業への投資は不要――。5月に公表した工程表は50年の実質ゼロを目指すならば、国や企業は化石燃料事業の新規投資の決定をただちに凍結する必要があるとの見解を打ち出した。
今後のエネルギーの需給構造は、電力はほぼ再生エネになり、運輸部門の多くは電気と水素に移行する。
だが50年の実質ゼロのシナリオには、複数のエネルギー安全保障上の問題が浮かび上がる。その一つが、石油の中東依存度がかつてないほど高まることだ。
温暖化ガスの排出を実質ゼロにするといっても、化石燃料の使用がゼロになるわけではない。IEAの見立てでは、現在日量9000万バレルある世界の石油供給は50年でも2400万バレル残る。航空機・船舶の燃料は電化や他の燃料への代替が難しい。プラスチックなどの石油化学産業なども、化石燃料をある程度使い続ける必要がある。
それゆえ50年時点の二酸化炭素(CO2)の排出量は、20年の2割強にあたる76億トンになる見通しだ。これをCO2を地下で貯留するなどの対応によって「実質(ネット)」でゼロにする。
将来も残る化石燃料の需要は、既に稼働・計画中の生産設備で対応することになる。石油は生産コストの低い地域に絞り込まれていく。中東諸国を中心とした石油輸出国機構(OPEC)のシェアは20年の34%から52%に上昇する見込みだ。
リスクは大きく2つある。
1つ目は紛争が長年続いてきた中東が50年になっても不安定なままであり続けることだ。OPECのシェアが高まっても、輸出国が豊かになるわけではない。石油自体の総需要が減るため、原油価格は20年の1バレル37ドルから、50年には24ドルに落ち込むという想定だからだ。
IEAのビロル事務局長は「(産油国の)経済を多様化できていなければ、社会的、経済的に重大な結果をもたらす」と指摘する。50年時点でも重要な役割を残す石油を、紛争リスクがあり、西側諸国と価値観が異なる地域が握り続けることになる。
価格の急変動も
もう1つのリスクは短期的な原油価格の急変動だ。欧州政策研究所のエゲンホーファー・シニアリサーチフェローは「OPEC以外の高コストの生産国が、需要減の前に投げ売りするリスクがある」と価格下落の可能性を指摘する。
一方で、エネルギー企業が投資をストップすれば、原油価格には一時的に上昇圧力がかかる可能性もある。
温暖化ガス排出の実質ゼロを目指すには、このほかにも課題や「副作用」を生み出す。電気自動車に使う希少金属加工の中国依存の上昇や、化石燃料業界の雇用の喪失などが挙げられる。IEAは世界の原子力による発電量が2倍になると見込んでいるが、原発建設では中国とロシアのシェアが上昇する可能性がある。
IEAは、もともとエネルギーの安定供給をめざす目的でつくられた組織だ。これまでは足元の化石燃料への投資が細っていることに懸念を示してきた。
たとえば20年の報告書では、石油投資の減少はコロナ禍からの景気回復時に「市場逼迫の明らかなリスクになる」と警告した。それだけに化石燃料事業の新規投資の即時停止との提言に対し、石油業界はとまどっている。
排出実質ゼロに向けて新規投資や技術開発などの課題を抱えるが、同時にエネルギー安全保障上のリスクも乗り越えなければならない。工程表は各国の決意が不可欠と訴えている。

210618日経

主要7カ国首脳会議(G7サミット)の合意を受け、日本政府は石炭火力発電の新規の輸出支援を年内にやめる。サミットでは温暖化ガス排出量が多い石炭火力の輸出支援だけでなく、国内利用の廃止も議論になった。欧米が再生可能エネルギーにカジを切る中、日本は対応が後手に回り、国内の電源としても、インフラ輸出の候補としても石炭火力の代替が見えない。(1面参照)

政府の気候変動に関する途上国支援で、発電効率の高い石炭火力の輸出は主力の一つだった。2019年の気候関連の資金支援は官民で総額1兆3730億円程度で、石炭火力は3610億円と26%を占める。国際協力銀行(JBIC)などが支援し、ベトナムへの高効率の火力発電システムの輸出を決めた。
サミットの合意を踏まえ高効率の石炭火力を含め原則、輸出支援をやめる。支援を続ける例外では二酸化炭素(CO2)を回収したり地中に埋めたりする設備の付いたものや、アンモニアを石炭と混ぜて燃やす仕組みなどに限る案が出ている。
輸出支援を終える政府方針に対し、海外で展開してきた国内エネルギー関連企業からは困惑の声も漏れる。石炭火力の国内最大手のJパワーは「高効率なら輸出していいのか、CO2の回収や貯蓄の機能が要るのか、全てダメなのか。政府の姿勢がはっきりせず、現時点でコメントできない」と話す。
総合商社は原則、新規の石炭火力を開発しない方針を掲げる。住友商事はバングラデシュのマタバリ石炭火力発電所の拡張案件に「(唯一の例外として)今後、参画の是非を検討する」と含みを残しており、今後、影響が出る可能性がある。

菅義偉首相はサミットの気候変動に関する討議で「21年から5年間で官民で6.5兆円相当を支援する」と述べ、従来と同水準の途上国支援をする方針を示した。石炭の代わりの「商材」が求められるが、目ぼしいものは見当たらない。
一時、力を入れた原子力発電は11年の東京電力福島第1原発事故以降、技術開発などが停滞し、積極的に輸出できる環境にない。再生エネも太陽光パネルは日本勢が2000年代半ばに世界シェア上位を占めたが、安い中国製品におされる。蓄電池も中国勢が伸びる。
風力発電の風車も欧州勢が強い。日本製の商材は多くなく、当面は石炭よりも排出量の少ない高効率なガス火力の設備や、地熱発電のノウハウなどに注力する。
支援だけでなく国内の電力供給にも影響は及ぶ。「排出削減対策が講じられていない石炭火力発電からの移行をさらに加速させる」。G7サミットの共同宣言にはこうした文言も盛り込まれた。
日本は電力供給に占める石炭火力の比率が19年度時点で31.9%とG7で最も高い。事務レベルでの宣言の調整過程では、国内の石炭火力の廃止に年限を設ける案も出たが、日本などが反発して見送られた。
日本政府も古くて低効率な石炭火力は30年までに更新・廃止すると決めた。ただ決定は21年4月と最近で発電効率43%以上の設備は30年以降も国内で使い続ける方針だ。
足元では原発の再稼働が進まず、電力自由化による競争環境も背景に、高コストの石油火力発電などの休廃止が相次ぎ、夏や冬の電力需給に余裕がなくなった。石炭火力は縮小を見込みながら、今後も貴重な供給力として当て込む状況だ。
世界の潮流に乗った電源構成への見直しに手を付けずにきたことで身動きがとりづらくなっている。政府は中長期エネルギー政策の方向性を示すエネルギー基本計画や30年度の電源構成の見直しを進めている。再生エネの導入拡大の具体策や脱炭素電源である原発の扱いを巡り調整が続く。対応が遅れた分、安定供給と脱炭素の両立の実現は難易度が上がっている。

210622日経

二酸化炭素(CO2)排出に価格を付けるカーボンプライシング(CP)を巡り、環境省が21日開いた有識者会議で排出1トンに約1万円の炭素税をかけても税収を省エネ投資に回せば経済成長を阻害しないとの試算が示された。強制的な措置で企業に排出削減を促す狙い。経済産業省は過度な負担は成長を阻みかねないと慎重な立場で、今後、政府内で調整を進める。
試算は日本政策投資銀行グループの価値総合研究所(東京・千代田)と国立環境研究所がそれぞれ示した。炭素税にあたる地球温暖化対策税を2022年から排出1トンあたり1000円、3000円、5000円、1万円ほど引き上げた場合の、30年時点の排出削減効果や実質国内総生産(GDP)などを見積もった。現在の税額は同289円。
税額が増えるほど削減につながるが、経済の押し下げ効果も大きい。試算では税収の使い道次第で経済への影響を緩和できた。

価値総合研究所の試算では、税額を1万円上乗せしても、税収の半分を企業の省エネ設備投資の補助に還元すれば、税額を据え置くよりも30年の実質GDPが大きくなった。国立環境研究所によると、単純に1万円増税すれば30年の実質GDPが0.9%縮むが、税収を企業や家庭の省エネ投資に使うと減少幅が0.1%に抑えられた。
環境省は炭素税のほか、企業に排出枠上限を設けて不足分を売買する排出量取引も含め、強制的に削減を求める制度をめざす。省エネが進めば中長期でエネルギー購入費用などが減るうえ、脱炭素技術の輸出などで経済成長につながるとみる。今回の試算もCPが「経済成長に資する」ことの論拠の一つとする。
実際、先行してCPに取り組む国・地域では排出量の減少と経済成長を両立する。05年に排出量取引を導入したEUは、1990年から2019年の間に排出量が2割減り、GDPは6割増えた。日本も10年から排出量取引を導入した東京都は09年から15年にかけてエネルギー消費量が10%以上減り、都内総生産は7%以上拡大した。
環境省とは別に、2月からCPの有識者会議を開く経産省は強制的な制度に慎重だ。確立した脱炭素技術がない鉄鋼業界などは、負担が増えるだけで排出削減につながらないと指摘する。企業の自主的な取り組みを後押しすることを重視し、削減量を企業間で取引できる自由参加の市場を活性化する制度を整える方針だ。 
中小企業も新技術を導入する体力が乏しい。日本商工会議所は強制的なCPに反対する。
導入する場合、対象の業種や企業規模、減免や還付措置なども論点になる。企業や家庭は石油石炭税や揮発油税もすでに負担している。再生可能エネルギーの導入を促す固定価格買い取り制度(FIT)による負担もある。既存制度との整理も必要になる。
欧米では排出量の多い国からの輸入品に課税する国境炭素調整措置の導入に向けた議論が進む。日本企業の排出削減の取り組みが国際的に正当に評価される制度をつくらないと、海外展開の足かせになりかねない。国際的な議論の動向を踏まえることが欠かせない。
 ▼炭素税と排出量取引 温暖化ガス排出に価格付けするカーボンプライシングの手法。省エネや代替エネルギーへの転換を促す。負担増で経済が減速する懸念がある。
 炭素税は石炭、石油など炭素を含む化石燃料の消費に課す税金。最終商品への価格転嫁が進みやすく企業から家庭まで幅広く排出削減努力を促す効果が期待できるが、低所得者の負担が重くなりやすい課題がある。
 排出量取引は政府が企業などに排出上限を設定し対策を促す。排出枠が余った分は企業間で取引できる。確実に削減が見込めるが、排出枠の価格高騰で企業の負担が重くなるリスクがある。

210623日経
山梨県カーボンゼロ推奨

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73142120S1A620C2L83000

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