柴崎友香『あらゆることは今起こる』

柴崎友香『あらゆることは今起こる』。最近で一番楽しみにしていた本。ADHD診断を受けた柴﨑さんの日常(書内でも考察される言葉)や見えている世界、の様子がその苦労も含めて率直に記されていて、記憶と場所との繋がりなど、彼女の小説をより理解する導きにもなってくれそう。診断を受けることを「地図」を作ることに喩えているのは、なるほど、とも思いましたが、むしろそうした見え方が彼女が人文地理学に惹かれた一因かもしれませんね。

ADHDの観点から村田沙耶香『コンビニ人間』への言及もあって、こちらも興味を惹かれました(ちょうど最近の読書会でも取りあげられていたので)。柴﨑さんがマックのバイトは、すべてマニュアル通りに進められるから安心だった、と記されてるのも,なるほど、と。

今回の柴崎さんの本を始め、国内では横道誠『みんな水の中』など、ニューロダイバーシティの観点からも興味深い本がいろいろ出てますが、そうした記述での多様な感覚の描写は記憶研究の点からも注目です。

海外でもneurodiversity がmemory studiesにもたらす可能性を考察するものがありますね。

https://www.cambridge.org/core/journals/memory-mind-and-media/article/rewilding-memory/11E77DFF821258F3A89AFBF972D2A3C6

そこで取り上げられてるのが東田直樹さんの著作だったりするのも、何だか面白いです。洋の東西を超えて、こうした知見が豊かになってゆくといいなと思います。
そういえば、東田さんの本の英訳は作家デイヴィッド・ミッチェルによるものですが、二人の出会いについてのドキュメンタリーも、なかなかいいですね。


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