ルース・オゼキ『あるときの物語』

原著2013年、翻訳は2014年、そして私にも縁があってこの2024年にルース・オゼキ『あるときの物語』に目を通す。
 (時には過酷な)「いま・ここ」ではない時間と場所、そしてそこにいる(あるいはもういないかもしれない)人を思い浮かべて、その「あなた」に向けて言葉を紡ぐ「想像力」の重要性が、独特な形で表現されていた。「夢」を媒介して「時間を遡る」ことで、過去と現在が変容してゆく様子が、作中で展開される禅の時間観念と関連づけられながら、イメージ豊かに描かれている。厄災のドキュメンタリーあるいはリアルを描くことではなく、フィクションを創作することの意義をあらためて考えさせてくれる作品でもあった。
 そして個人的にはカラスが何だか印象的だった。カラスが印象的な「時間」にまつわる物語、他にも柴崎友香『百年と一日』や漫画『推しの子』があったな。


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