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「終わりの町で鬼と踊れ」9話-1

闇は嗤い哭く

 まるで高いところから落ちるような感覚にビクリとして、あたしは目を覚ました。

 あたりは暗い。
 天井がある。背中の下が柔らかい。どこかの家の中だ。
 考えてから、ここが病院の一室だと思い出した。

 暑くなんかないのに、汗をぐっしょりかいていた。
 荒く息を繰り返す。

 部屋の中は決して狭くはないが、息が詰まる。
 闇が迫ってくるようでずっしりとしたカーテンも重苦しい。

 あたしは大きくひとつ深呼吸をしてから、ベッドから起き上がった。ポンチョのフードを深くかぶり、枕元に置いていた眼鏡をかける。
 パドルを持って部屋の外に出た。廊下は静かで、誰もいない。やっぱり見張りすらもいない。

 またひとつ深呼吸をする。
 夜の少し冴えた空気が肺に入ってきて、昂ぶっていた気持ちが少しだけ引いていく気がする。

 ロビーに出ると、話し声が聞こえてきた。
 だけど人影はなく、ボソボソとくぐもって何を言っているか分からない。
 息を潜めて、耳をすませる。多分、地下へ続く階段の先からだ。

 身をかがめて降りていくと、下にはカフェがあって、ガラス張りのドアの向こうには、「福大前 地下鉄」の表示が見える。
 ここから地下鉄につながっているのか。

「だから、どうしてあんたの言うことを聞かないといけないの? 何かと交換してくれるわけ?」
 杏樹の声が奥から聞こえた。
 このまま進むと気付かれるかも知れない。あたしは階段の途中に身をかがめて、足を止めた。

「あいつは俺の獲物だって言っただろ」
 イラだち気味の声が応えた。
 ケヤキ通りで会ったあの吸血鬼の少年の声だった。
 杏樹は、博登ひろとと呼んでいたか。

「ここはわたしの管轄よ。もうわたしが招き入れたんだから、わたしのものよ」
 大げさなため息が落ちる。
「どうしてそこまで構う」
「さあね。あんたが怒るのがおもしろいのかも」

「いい加減にしておいた方が身のためだぞ」
 杏樹の笑い声があがった。
「どうするって言うのよ。同士討ちでもするつもり? あたしたち、ただでさえ人間に比べて数が少ない上に、あのヤクザ達にだいぶやられちゃったのに、もっと減らしてどうするの」
 黙れ、と少年が声を抑えて言った。
 あどけない声がどす黒い熱をもって、闇に低く響く。

「好きにしろ。忠告はした」
「あはは、忠告ね。ありがと」
 杏樹の楽しげな笑い声が近づいてくる。

 あたしは身をかがめたまま、音をたてないように階段をあがった。
 隠れていると、地下から小さな人影が上がってくる。
 少女はロビーに姿を見せると、そのまま階段を上がっていく。ピタピタと裸足の音がロビーに響いた。

 あたしは何気なく、隠れながらその後を追った。

 隣の建物とつながった連絡通路の途中に、少女は立ち尽くしていた。
 カーテンを開け放して、雲の切れ間から見える星空を眺めている。
 曇天は時折切れ間を見せて、月の光が鋭く差し込むが、その時だけやたらと明るかった。

 今は大きなふちの帽子もかぶっていない。フリルでいっぱいの洋服も着ていない。
 ティーシャツに身軽なスウェットだけをまとった杏樹は、折れそうな細く長い手足をした、ただのか弱い少女だった。どこか心細そうな。
 少女はふとあたしを見ると、軽く笑った。

「夜討ち? 夜這い?」
 明るい声が月明かりの廊下に響く。
 あたしのパドルを指さして、明るいテンションで言う。

「あんたそれいつも持ち歩いてるの? 邪魔くさいわねえ。あんまりうろうろされると、みんなが恐がって困るんだけど」
「だったら見張りをたてておけ。ここの人間はあんたに怯えてないようだったけど、人間を飼うような吸血鬼は、やっぱり恐がられているのか」
「いちいちそんなことに人手を割けないのよ。よく知らないひとを警戒するのは当たり前でしょ」

 ――人間を飼っている。
 杏樹はケヤキ通りでそう言っていたし、あたしたちを連れてきたときも否定しなかった。
 だけどやっぱり彼らは、飼育する者とされる者には見えない。共存しているように思える。

 人間の大人達は、杏樹のことは警戒していなかったが、あたしのことは遠巻きにしていた。当然か。

「あんたどれくらい飲んでないの?」
 杏樹は少しの頓着もなく言った。
「なんで飲んでないと思うんだ」
「そんなの顔色を見れば分かるでしょ」

 鏡を見ていないから応えられない。
 でも自分がひどい顔色をしているのは想像がついた。少し息も苦しい気がする。
 あたしを襲ったあのときの吸血鬼みたいになっているに違いない。

「一日200mlあれば数日耐えられるわよ。その間にニワトリの血なんかももらえばもっともつわ。我慢もほどほどにしておかないと、体がもたないわよ」
「分かってる」
「自虐も自罰も結構だけど、死ぬ気がないのならほどほどになさい。飢餓感が人間の比じゃないの分かってるでしょ。そのうち正気を保てなくなって、誰彼構わず襲うようになる。その時犠牲になるのは、一番身近にいる人間よ。あんただけの問題じゃない」

 ――知ってる。
 自分ではどうしようもない飢餓感。
 このまま飢えて死にたいと思うのに、勝手に体が生きようとする。紘平に襲いかかりそうになって、それが恐くて恐くてたまらなかった。

 吸血鬼に噛まれると死ぬ。
 だけど、ごくわずかの人間が、感染して同じようになってしまう。
 あたしは紘平を吸血鬼にしてしまうかもしれない。もし紘平も吸血鬼になったら――この不安も心細さも、このどうしようもない孤独からも逃れられる。

 どこかそう思う自分がいて、それが恐くて、あたしは逃げてきた。考えるたびに嫌悪感で苦しい。
 よそへ行けば、よその知らない人間なら、食料としてみられるのではないかと思った。

 杏樹の言葉は、どこか頼りない少女の見た目に反して、厳しい。そしてとても大人びている。
 あたしは自分よりも背丈の小さな少女を見て問うた。

「あんたはいつから吸血鬼なんだ」
「十三の時よ」
 杏樹はしれっと言った。
 あたしは微妙な表情になる。それを見て、杏樹は肩をすくめる。

「はいはい、聞いたのはそれじゃないよね。十年ばかし前からよ」
 窓に手を当てて、雲の切れ間を見ながら、少女は言った。

「あの頃、本州で大きい地震があったとかで、人間も吸血鬼もこっちに流れて来たのよ」
「――ああ、確か、そんなことがあったような。あたしのいたところに近い海沿いは大きい町があったから、うちの方にも少し流れてきた」
「その時にやってきた余所者の吸血鬼に、がぶりとやられたわけ」

 夜の色に染まった顔で笑う。その表情は、少女の体とアンバランスだ。
「そう、わたしこんなナリだけど、本当は二十三なの。パンデミックだとかで混乱が起き始めた頃、まだほんとに小さい子供だった。そうこうしてるうちに、台風で水害があって、親はわたしをつれてここに逃げ込んで、そのままここにいたの。本当なら安全なはずだったわ。大人達も油断してたのかもね。たくさん襲われて死んだわ。親たちも」
 杏樹はあたしを振り返って、意地悪く笑った。

「だからわたし、よそ者は大嫌いなの。吸血鬼も大嫌い。特に、よそからやってきた吸血鬼なんて、最低最悪、心底消えてほしい」
 あの、博登とか言う奴につっかかるのはそのせいか。でもどうして――
 思ったところで、杏樹は肩をすくめて言った。

「あんたも同じでしょ。わたしと同じで、吸血鬼が大嫌い」
 そうだ。あたしは、吸血鬼が憎い。もともと吸血鬼が嫌いだった。そうでない人なんてほとんどいないだろう。好きでこうなった訳じゃない。

 吸血鬼が嫌い。だけど自分も同じになってしまった。
 だから自分も嫌いだった。

「あの、――史仁ふみひと、とかいうのは」
 弓を持って馬を繰っていた少年。
 彼は人間だろう。人と吸血鬼が共存していると言っても、史仁は人間なのに、まるで吸血鬼側の者のように人間を見張っている。
 気がつけばいつも、杏樹を守るように寄り添っていた。
 ――人間からも、吸血鬼からも。何者からも。

「史仁はここで生まれた。あの子は泣き虫で、わたしの後ろをついて回るような子だった。身近な人達が死んで、わたしが噛まれた時、あの子本当にぐしゃぐしゃに大泣きして大変だった。あの子はそれから変わったの」
「あんたたち、姉弟なのか」
 杏樹はあたしを振り返る。おかしそうにくすくすと笑いながら言った。

「姉弟、ね。恋人には見えない?」
 ――人間と吸血鬼が?
 思わず顔をしかめたあたしに、杏樹は声を上げて笑った。また軽やかな声が、人のいない病院に響く。

 そして、ぱたりと笑うのをやめた。

「正直ねえ。言いたいことはわかるわよ。嘘よ、別に恋人でも何でもないわ。わたしたち、年は違うけど幼なじみなの」
 少女の顔を縁取る藍色の影が、彼女が笑っているのを教えてくれる。だけど、悲哀の色だ。

「吸血鬼は老けないし、怪我もすぐ治っちゃうけど、本当のとこの寿命はまだ全然分かってない。どう考えても体が無理してる状態だもの、明日ころっと死ぬかも知れない。それにあの子はどんどん大人になる。わたしはずっとこのままよ。どうしろっていうのよ。間違えて感染なんかさせたら、後悔してもしきれない」

 ただ一緒にいるだけでも、乖離していく。

 このウイルスに感染した者は老いていかない。傷がすぐに治る。尋常でない身体能力を持つ。
 まるで脳のリミッターがはずれてしまったかのように。それは体に無理を強いているはずだ。

 突然ことんと死んでしまうかもしれない。
 実際、今までそうやって死んだ者がいたとしても、それがあたしたちの寿命――病なのだから寿命とは言わないのだろうが、それが余命の限界なのだったとしても、本当にそうなのか分からない。
 それを研究するような組織はどこにもない。

「……なんで、人間の血なんだ」

 あたしは思わずつぶやいだ。
 せめて意思をはかれないような、言葉を交わせない他の生き物なら。
 こんなに奪い合うようなことにはならなかった。
 居場所を失うこともなかった。

「自分の体で生成できないものを外から補ってるんじゃないかって、ここにいた先生が言ってたわ」

 急激な回復力のせいか。
 それともウイルスに感染して、何かが破壊されいているのか。
 分からないけれども。

「あんたはいつからなの。ひよっこちゃん」
「2、30日ぐらい前。新月と満月を一回ずつ見た」
「そう」
 杏樹は明るく声をあげた。

「無理して我慢しないことね。どうにもならないんだから」

 十年分のあきらめと葛藤を、軽やかに笑った。

 あたしが吸血鬼に噛まれて気を失い、目が覚めたとき、あたりは真っ暗だった。
 いつの間にか夜になっていたようだった。近くでうつむいている誰かがいる。

「紘平……」
 かすれて声がうまく出なかった。
 けれど紘平は弾けるように顔を上げた。あたしを覗き込む。
 あの男の吸血鬼のように、紘平の顔があたしの視界をふさいだけど、少しも恐くはなかった。

「二日も眠ってたんだ。死んじまったのかどうなったのか、分からなくてさ。良かった」
 紘平は心底ホッとした声を出した。

 その間紘平は、ずっと待っていてくれたのだろうか。もう、目を覚ましたって人間じゃないあたしを。
 どういう気持ちだったろう。
 他の吸血鬼が現れないか、人間の強盗が襲ってこないか気を張りながら、一人でただじっとこらえて待って。

 真夏の熱帯夜は、太陽が出ていなくたって汗がにじむ。紘平は気怠そうに大きく息をつく。
 水分を取っていないんじゃないだろうか。脱水が心配になる。

 だけど、おかしい。
 あたしは少しも汗をかいていない。少しも暑くない。
 町を歩いていた時はあんなに暑かったのに。紘平も汗をかいているのに。何も感じない。

 寒く感じるなんておかしい。
 自分の手を持ち上げる。何も変わったようには見えない。
 だけど、何かが確実に違う。

「どうしよう」
 思わず声がでた。
 どうしようもない。そんなことは分かってる。でも動揺がどこかからあふれてくる。

 吸血鬼なんて、みんないなくなればいいと思っていた。
 人間だったのに、人間を襲って食らう――血を欲しがるなんて、どう考えたっておかしい。あんなおかしな奴ら、いなくなるべきだと。

 そうしたらあたしたちは、この町にだって自由に来て、海に行って泳いで、好きなだけ外を歩いていられる。
 なのに。

 ――死んでた方が良かった。多分。
 どうしよう。

「大丈夫だ」
 紘平はあたしの手をとって、ビクリと肩を震わせる。
「指が冷たいな。多分、貧血だ」
 するりと言ってから、そのまま顔をこわばらせた。
 何気なく口にしたその言葉の、本当の意味を。

 地響きのような音が外から聞こえて、あたしは現実に引き戻された。
 顔を上げる。心なしか地面が揺れている気がする。地震か――思ったが、違う。徐々に近づいてくる。

 杏樹が険しい顔でガラス窓の外を見た。
 雲はまた空を覆い、曇天の夜空の下に明かりはなく真っ暗だ。

 暗闇では人間は動きにくいが、吸血鬼は夜目がきく。逃亡を見張るにも、外への備えにも都合がいいのだろう。
 病院の門から、黒煙で闇を更に淀ませながら、蒸気トラクターが入ってくるのが見えた。

「ヤクザども。ほんっとしつこいのね。帰ってくるのを見られたかしら。ふたてに別れて慎重に動くべきだったわ。あれだけやられて、まだ仕掛けてくるなんて思わなかった」
 杏樹がイラだちまぎれに吐き捨てる。その直後だった。

 ばしゅう、と大きな音が外で弾けた。ひと呼吸おいて、爆音が轟く。建物が揺れた。
 足を取られて、あたしも杏樹もよろめいた。

 また何か、大型の武器か。
 最初の音はトラクターとは別の場所からだった。爆発音は隣の建物か、レストランか。ここからは少し離れていた。
 トラクターは囮か。
 ほんとうにしつこい奴らだ。

「吸血鬼に夜襲なんて、いい度胸じゃない」
 杏樹は地響きをあげてロータリーを入ってくるトラクターを見ながら、窓ガラスに当てた手に力を込める。
 ビシ、と窓に亀裂が走った。
 また――ばしゅう、と音が響く。
 さっきより近い。

「伏せろ!」
 あたしは床を蹴って飛び出した。
 杏樹の腕をひっ掴み、窓から引き剥がす。勢いのまま、連絡通路の床に飛び込むようにして伏せた。

 後ろで轟音が弾ける。
 爆風が吹き付けて、ポンチョのフードが脱げた。夜でなければ、日に焼かれていたところだ。
 風が強く吹き付けてくる。ガラガラと瓦礫が崩れる音がする。
 振り返ると、さっきまで立っていた場所の窓と天井に穴が空いていた。連絡通路の床は残っているが、いつ崩れるか分からない。

 杏樹は床に転がったまま、ギリギリと歯を噛みしめる。つり上げた口が笑みの形になる。

「やってくれるじゃない。ここ破壊されたら不便でしょうがないんだけど!」
 華奢な少女は立ち上がって、吹き抜けになった通路から外を見た。

 病棟から連絡通路に駆けてくる足音がする。
 あたしは素早く起き上がって、転がったパドルを握った。

「杏樹、ここにいたのか!」
 史仁だ。
 昼間と同じように、シャツの上に防弾チョッキのようなものを着て、籠手などの防具をつけ、手に弓を持っている。
 杏樹は振り返って、風に髪を遊ばせながら笑った。

「やーねえ。心配しすぎ。この中なら安全よ。あたしはもう前とは違うんだし」
 史仁は、ぐっと言葉を飲んだ。
 杏樹はここに避難してきてから吸血鬼に襲われたと言っていた。史仁にとって杏樹の言葉は、受け入れがたいものだろう。
 何かを言いたげな顔をしたまま、史仁は破壊された窓の壁へ踏み出す。

「杏樹、そこから離れて」
「うん」
 蒸気トラクターの爆音が外をうろうろしている。あの音が空気と感覚を乱す。

 史仁は空いた穴の近くに身を寄せて、手にしていた弓を引き絞る。息を詰めて、待つ。
 その直後、ほんの一瞬、闇の中に光が弾けた。下のガーデンのあたり。
 ばしゅう、と発射の音が響く前に、史仁は瓦礫に足をかけて身を乗り出す。素早く矢を放った。

 弾は別の壁に着弾し、また轟音が響いて、建物が揺れる。別の階だ。
 そして史仁の矢は、光が弾けたあたりに、真っ直ぐに飛んでいった。どさり、と重いものが倒れる音がする。
 吸血鬼のあたしの目には、ロケットランチャーを構えた男の額を、矢が射抜いたのが見えた。さっき光ったのは、発射のときのバックブラストか。

 それから、屋上の辺りから光が弧を描いて放たれた。火矢が流れ星のように幾筋も飛んでいく。
 火矢は、あちらこちらに光を灯した。松明があらかじめ用意されていたのかもしれない。煙の臭いが風にながれてくる。

「好き放題してくれて。絶対に許さないわよ」
 杏樹は奥へ駆けていく。追いかけようとすると、くるりと振り返って、厳しい顔で行った。

「あんたは来なくていい。足手まといよ。よそ者に足並み乱されたら困るのよ。居住エリアに行って、誰も部屋から出てこないように伝えて。万が一にそなえてみんなを守ってくれたらいい」
 一階に降りた方が逃げやすいのではないか。
 それとも皆で集まってどこかに隠れたほうがいいのでは。思ったが、地震ならともかく、下に行けば略奪者がいる。

 部屋に閉じこもり、ドアを開けずにたてこもっていれば時間を稼げる。
 他の人が襲われている間に逃げることも出来るということか。

 あたしは杏樹たちと離れて、動かないエスカレーターのところから駆けあがる。皆が住んでいるのはこの建物の上の方だ。

 訓練されているのか、慣れているのか。これだけの爆発や破壊に、悲鳴や騒ぐ声は何も聞こえてこない。
 誰も部屋を飛び出して逃げ惑ったりしている様子はなかった。
 ただ、亨悟は別だった。

「おい、いつの間にかいなくなってるから、びっくりしただろ!」
 エスカレーターを駆けてくるのに行き会った。
「部屋に戻れ、杏樹達が対応してる」
「でもあれ、あいつらだろ」
 炭鉱ヤクザども。言うまでもない。
「俺を追って来たんじゃないのか。俺のせいで――」
 また爆音が弾けた。
 すこし上の階。入院施設のあるところ、皆の居住スペースだ。

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