VR空間のカフェスペースを旅する
リアルの話から入ってしまうこと、ご了承ください
バブルという狂乱の時間を彩ったディスコブーム。深くニッチなサウンドを求めたDJとオーディエンスというコミュニティが作ったClubブーム。そして会話こそ快楽だという人々と新しい居場所を求めていた方々が広げたカフェブーム。80~00年代に巻き起こったこれらのムーブメントは、夜を楽しむ人々の行動様式を大きく変えたものでした。
特にカフェブームは、一人でも時間と空間を楽しめるという趣味があることを浮き彫りにしたという意味で、興味深い事象です。
今でも思い出すのは00年代のころ。使い古された小さな小さな雑居ビルの中にあったカフェ。コンクリートの谷の底を流れる川を見ながら本をツマミに焼酎が楽しめる店で、カフェ=コーヒーという図式も取っ払っていた自由度の高さが魅力。板の間の小上がりには小さなちゃぶ台がおかれていたのですが、昼間からあぐらをかいていたお姉さんが湯呑に入ったロックを飲っていて、気兼ねなく過ごせる場はなんて素敵なんだと感じましたね。
一人の旅人を受け入れてくれていそうな空気感
VRChatで様々なワールドを見ていくうちに、僕はVRのなかでもカフェの雰囲気があるスペースの存在が好きなんだ、ということに気がつきます。
居酒屋ワールドは、気の合う友達と気兼ねない話をするための場所という印象があるから、ソロで入るのも、友達のいないインスタンスに入るのもちょっと抵抗がある。
でもカフェワールドは、椅子と、テーブルと、コーヒーカップの存在が心強い。カップのなかからゆらゆらと立ち昇る湯気を見ているだけで、なんだか仕事終わりの午前2時に一人旅をしている自分でも迎い入れてくれてるんだ、と思えるようになってきて。
オーナー(ワールドクリエイター)の思想が見える、コレクティブルな雰囲気のインテリアグッズのコレクションも気持ちを和ませてくれるもの。このアイテムはいままでどんな旅をしてきたんだろう。
ワールドの一部に作られたカフェスペースも、一人旅をしている身にとって心休まる空間です。そのワールドで見たこと体験したこと、腰を落ち着けて噛み砕いて飲み込んでインプットをする場所としてぴったりですから。
これも1つのVRセンス、なのでしょうか。コーヒーの香りを感じることもある。一口飲んで、深呼吸をして、内装のニュアンスに目を向けてこの着想の豊かさにエモーションを感じる。
気がつくと良質な小説を手にしたときのような、期待感が高まってきます。ここには今まで誰がいたんだろう。マスターの年齢は? お客さんの職業は? この空間はどんな思いで作られたのかな。
まだ開店前かな。今夜はどんなドラマが生まれるのかな。って。
ストーリーを感じさせてくれる。そんなカフェが大好きです
90年代後半、日本に進出したスターバックスは自宅(ファーストプレイス)でもない、オフィス(セカンドプレイス)でもない、第三のリラックススペースであることを意味するサードプレイスの概念を提唱しました。
僕にとってVRChat内のカフェワールドやカフェスペースは、まさにサードプレイス。取材をしたり仕事の打ち合わせをするときのワールドがファースト、友達みんなと集まってドタバタと大騒ぎをするときのワールドがセカンド。そして、一人でもストーリーを感じながらゆっくりと時間を楽しめるワールドがサード。
来年もまた、あちこちのVRChatカフェを巡りたい。そう思う2022年末です。
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