MMミリオンセラーショートショート4番「公園のトイレ掃除」
こちらはアマゾンキンドルストアで発売中の「バレンタイン掃討作戦(MMミリオンセラーショートショート1番~10番)」からのショートショートです。
オチを有料設定にしています。(このスタイルで販売している、ぴこ山ぴこ蔵さんの「ちょっぴり厭な物語マガジン」のショートショートもおすすめですよ~)
なお、無料のサウンドノート「コミュ障の個人作家が自分の作品(バレンタイン掃討作戦)を語ってみました」で、本作についてトークで裏話もしていますので、ご興味がある方は合わせて御覧ください。
四番 公園のトイレ掃除
「市長、市民から、『公園のトイレが汚れて、臭くてたまらない』と苦情が入っています」
「わかってる。だが、財政が赤字で、トイレ掃除にまで金を出せんのだ。市民に、ボランティアでやってくれる人がいないか、募集してみよう」
「もうすでにやってみました。誰も応募してきません。トイレ掃除なんて、誰もやりたがりませんからね」
「ふむ」
市長は秘書の話を聞くと、沈思黙考した。
「よし、じゃあ、やり方を変えてみよう。市内で一番の金持ちを呼んでくれ」
秘書は、市長の言うとおりに、お金持ちと評判の実業家を呼び寄せました。
「どのようなご用件でしょうか? 公園のトイレのお話と聞きましたが」
「そうです。ご足労おかけしてすみませんが、ひとつ、私と一緒に公園のトイレの前で写真を撮ってもらえませんか?」
「はて、公園のトイレの前で写真、ですか?」
「ええ。お願いします」
市長はそのあと、秘書を呼んでまた言いつけた。
「私の姪が控室にいるから、君、写真を撮っておいてくれたまえ。ああ、姪に宝くじを持たせてな」
秘書が控室に行くと、市長の姪が宝くじの券を持って立っていた。
「本日は、お疲れ様です。お写真を撮らせてください」
「ええ、話は聞いておりますわ。おじさまに、宝くじを手に持って写真を撮ってほしいと頼まれましたの」
「なぜなのか、理由は聞いていますか?」
「さあ? 写真を撮らせてくれたら、留学費用を出すと約束してくれましたから。どうでもいいですわ」
それで、秘書は黙ってカメラでパチリと、姪を写した。
秘書が市長の部屋に戻ると、市長は電話中だった。
「……うん、うん。できるだけ早く、頼む。写真はすぐに送るから」
電話を切ると、市長は首をコキコキと鳴らして秘書に言った。
「少し一休みしよう。君、お茶を入れてくれないか」
一ヶ月後、市内のトイレはピカピカに磨き上げられ、苦情はゼロになった。その代わり、 「公園のトイレ掃除のボランティアをさせてください!」という電話が、鳴りっぱなしで、秘書はその対応に追われた。
「本当に、申し訳ありません。今、たくさんのボランティアの方が登録していて、順番待ちの状態です。公園のトイレ掃除が、大人気でして。……はい、ええ、そうですね。キャンセルが出たら、すぐにご連絡致します。ボランティアに応募いただき、誠にありがとうございます」
市民ボランティアが先を争うようにしてトイレ掃除に励み、税金を使わずに市内の公園のトイレはいつも清潔な状態になった。
秘書は、市長に状況を報告した。
「今では『掃除できるトイレがもっと欲しい』、という要望まで出てくる始末です。市民が大喜びで、トイレ掃除をしています。市長、どんな魔法を使ったんですか?」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?