MMミリオンセラーショートショート7番「パパはキラキラ戒名」
こちらはアマゾンキンドルストアで発売中の「バレンタイン掃討作戦(MMミリオンセラーショートショート1番~10番)」からのショートショートです。
オチを有料設定にしています。(このスタイルで販売している、ぴこ山ぴこ蔵さんの「ちょっぴり厭な物語マガジン」のショートショートもおすすめですよ~)
なお、無料のサウンドノート「コミュ障の個人作家が自分の作品(バレンタイン掃討作戦)を語ってみました」で、本作についてトークで裏話もしていますので、ご興味がある方は合わせて御覧ください。
七番 パパはキラキラ戒名
二人の娘が、亡くなった父親の戒名の相談をするために、寺を訪れた。僧侶は丁重に二人を迎えると、客間に通して話を聞いた。
「あのう、パパの戒名をあたしたちで作ったんで、それでお願いしたいんですけど?」
「自作戒名ですか……在家の方が自分でお戒名をつけることは、当院では基本的にお断りしています。お戒名は、仏の弟子になることですから、儀式を行える僧侶がつけなければ、意味がないのです」
すると、娘たちが食い下がった。
「でも、パパにどうしても、あたしたちが考えた戒名をつけてあげたいんです。パパも亡くなる前に、戒名つけていいよって言ってました」
「名前はあたしたちで考えますけど、お金はちゃんと払いますから、いいでしょ? 百万円くらいあれば、パパはいいところに行けるんですよね?」
僧侶は困ったように、娘たちの顔を見つめた。
「お金の問題ではありません。お戒名は、授けられるものであって、自分でつけるものではないのです。それに、自作戒名では、どこの寺でも葬儀をしてくれないですよ」
「お金じゃないって言いますけどぉ、戒名ってお金次第で偉くなれるんだから、お金ないといいところに行けないんですよね?」
「いや、そういうわけでは……」
「そしたらぁー、あたしたちが考えた戒名を、お坊さんが考えたことにしてもらえば、いいんじゃないんですかぁ?」
「それも、ちょっと……。では、なぜいけないのか、たとえ話でわかりやすくお話しましょう。人がお亡くなりになるということは、人生を卒業されるということ。在家の方が学校を卒業されるときには、卒業証書が授与されますよね? お戒名も、いわば、人生の卒業証書です。卒業証書は学校から渡されることにありがたみがあるように、お戒名もまた、お寺から授かるものなのですよ」
僧侶がこのように諭したが、二人の娘は顔を見合わせた。
「えー、なんか意味、ワカンナイ。人生の卒業証書だって言うなら、あたしたち娘からもらったほうが、パパも絶対嬉しいよね?」
「あたしも、そう思うー。あたしたちが一生懸命につけた名前のほうが、パパがきっと喜んでくれるし、やっぱりこれで戒名つけてください」
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