【RoyalScandal】Q&A

_______物語は主人公だけじゃ、成り立たない。

3人組ユニットRoyalScandalの初のソロアルバム『Q&A-Queen and Alice-』が今月18日、堂々発売された。

メンバーは歌唱を担当するluz、曲を手がける奏音69、そして独特な世界観を描くRAHWIA。
主に動画投稿を中心にオリジナリティ溢れる楽曲を届けていた彼らがメジャーデビューという形で表舞台に飛び出したのは、我々を過激で無邪気な世界へと攫う為だ。

一時の感情を描くのではなく、ひとつのストーリーとして描かれた楽曲は目を瞑る度に幻想的なシーンが目の前に現れる。映写機でフィルムを回すように丁寧に丁寧に語られる御伽噺は、キャラクターの台詞が沢山盛り込まれており、その一瞬の心情が手に取るように分かる。しかし、luz(Vo.)の柔らかな歌声は"彼ら"に一切介入しない。あくまでストーリーを繋ぐ案内人、その正体は物語の行く末を護る唯一無二の騎士だ。

Royal Scandalのストーリーには沢山のキャラクターが登場する。「Bar マスカレイド」を舞台にバーテンダーを務めるルイス、BARの歌姫チェルシー、彼女の幼馴染ロゼッタ、そして皇子のアルベール。その誰もが闇を抱えながらも強く生き抜く力を持っている。人の"仮面の裏"、つまり『ジキル博士とハイド氏』のような二面性を強く描くストーリーにはさまざまな感情が交差している。数ある楽曲の中では愛慕をテーマに翳した作品が大多数を占める。

『チェリーハント』はチェルシーからルイスへの"挑発的な愛"と、ルイスからチェルシーへの"見守る愛"。『REVOLVER』ではロゼッタからルイスへの"偽物の愛"。そして『ビタースイート』ではアルベール皇子の、歌姫を手に入れたいという"強欲な愛"。その後に芽生えたルイスとチェルシーの"真実の愛"。

RoyalScandalの楽曲は1曲づつ完結しているが実は全て繋がっており、キャラクター達の過去と今を描く。

『ファントムペイン』で明らかになった、ロゼッタの暗い過去。優しかった母親の"オンナ"、つまり冷酷な『クイーンオブハート』としての一面を見て家を追われてしまったチェルシー。そして父親に暴力を振るわれ軟禁された後、チェルシーの居るBarのキャストに保護され、桜の木の下で出会った『チェルシー』に再会。心にようやく『光』を取り戻したルイス。決して楽しくはない壮絶な過去を乗り越え、幼い頃から「Bar マスカレイド」に集った3人の絆はあまりにも深い。今後も続いていく、と言われている彼らの物語は益々深まっていくのだろう。

ストーリー性だけでなく、音楽面でもRoyalScandalはその才能に長けている。

管楽器をインストに使用することによりジャズバーのような洒落た雰囲気を醸し出している。間奏すらも曲に感情移入させる魔法にしてしまう構成は、切なげな恋愛ソングを生み出し続けている奏音69だからこそできる魅惑のテクニックだ。

世界観にリスナーを落とし込む、という意味を以てして作られた『ロイヤルフラッシュ』には既存曲のフレーズやメロディーが少しづつ組み込まれており1曲聴けばRoyalScandalの魔法に掛けられてしまう。
また『ハッピーアンバースデイ』前奏の、妖精:ティンカーベルの粉をキラキラとかけるように鳴り響くウィンドチャイムは一瞬にして夢の国へと貴方を誘う。曲終盤でも同じようにそれが響くのは「この素敵な夢から醒めないように」という彼なりのおまじないなのだろう。

『マジックリングナイト』ではアラブでの身分違いの恋を描いているが、『ビーストインザビューティー』の叶わぬ恋に溺れた主人公が武器を手に入れた瞬間に罪を犯してしまう、というストーリー展開と合致点がある。前者の「冷たい砂の上で1人」と後者の「冷たい雨の中で1人」という歌詞から、場所や時が違えど同じように割れてしまいそうな恋慕を抱いていて、誰でも仮面を被ればその想いは狂気になってしまう、という辛いメッセージが込められているように感じた。

RAHWIAによって描かれた個性豊かなキャラクター達は奏音69のメロディーで命を宿し、luzの声を借りて巧みに物語を繰り広げる。その『wondertale』には誰もが兎を追いかけるように夢中になるマジックが掛けられている。主人公だけでなく周りにも焦点を当て、誰もが物語の主人公となれるような作品達。そう、Royal Scandalはヒールすらも悪い印象で終わらせない優しい「仮面の裏」を持ち合わせている。華やいだ舞台には必ず陰があることを知ったヴォーカルは、自らの正体を仮面で覆い、陰としてヒールにスポットを浴びせ続ける。

『ワンスアポンアタイム』から始まるRoyal Scandalの物語に終わりはない。誰だって秘密のマスカレイドで花咲かす権利がある。
そう言って彼らが差し出した手は無条件に処女を奈落へと突き落とした。

"Welcome to the Wonderland"



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