【MIA】2023年トレードデッドラインの動向を考える
※数値は全て日本時間7/8時点
今季のマーリンズは51勝39敗。前評判以上に善戦しており、短縮シーズンの2020年以来3年ぶりとなるプレーオフ進出が見えてきました。
そんな中、今季のマーリンズがトレードデッドライン(以下TDL)にてどのような動きをするのか、考えてみました。
TDLにおけるマーリンズの立ち位置
冒頭で述べたように、プレーオフ圏内にいるマーリンズ。特に6月は19勝8敗と好調。11もの貯金を稼ぐことができました。
これはチームの成長も、もちろんあるのですが、6月は勝率5割以下のチームとの対戦が多かったことも要因のひとつです。もちろん取りこぼしが少なかった点は賞賛すべき点なのですが、オールスターブレイク後の後半戦、特に8月以降はコンテンダーとの闘いが続き、今以上に苦戦することは必須です。
強豪チームと渡り合い、チームとしてプレーオフへ進出するために補強は必須となる為、買い手としてTDLに臨むこととなるでしょう。
チームの未来も考えた動きが重要に
一方でチームとしては徐々に勝負期へ移行しており、まだ今期に全リソースを投入するフェーズではありません。
事実、(チームの状態に関わらず予定していたことではありますが)今季圧倒的なパフォーマンスを見せていた新人のEury Perezはイニング制限を掛けるためにマイナー降格となりました。
マイナーのプロスペクトをどこまで放出するか、フロントは難しい判断が求められます。
補強ポイント
では、TDLに向けてマーリンズの補強ポイントを考えます。
まずは投手陣の成績。
先発、リリーフで防御率に大きな違いはありませんが、FIPで差が出ています。また、他球団と比較してみると、やはりリリーフが劣っていることがわかります。
また、セーブ・ホールド機会での失敗数を意味するBlown Save数は22と、リーグ21位。8回を任されているTanner Scottは四球は出しながらもある程度安心できる一方、クローザーのA.J. Pukが直近8試合で3度もセーブを失敗する等、不安定さが目立ちます。
現状7回を任せられることが多いDylan Floroも防御率4.28、FIP2.81と運に見放されていると思われるものの、見ていて不安な投球が多く、21年、22年のような安心感を感じることができません。
その他、5月に調子を崩していたHuascar BrazobanやSteven Okertも下位の中盤に要所を締める投球を見せてくれていますが、上位を目指すのであれば実績があり、安心感のある投手を補強することが重要になるのではないかと思います。
続いて野手陣。
ポジション別OPSは以下の通りです。
Luis Arraezが守るセカンドは全球団中1位な他、Jorge Solerが主に努めるDHとJesus Sanchezが務めるライトもMLB平均以上の数値となっています。
しかしその他のポジションは軒並み平均以下。
特にJean Seguraの不振が響いているサードと、昨年は打撃成績の良かったNick Fortesが良くないキャッチャーは深刻です。
ちなみにSeguraのDRSは-6と守備でも精彩を欠く状態。一方捕手としてのキャッチング指標は下表のとおり。Jacob Stallingsも悪くないですが、Fortesは特に優秀な数値を記録しています。
以上の点より、今季の補強ポイントとして考えるのは
①支配力のあるリリーフ
②打撃力のある捕手
③サードのグレードアップ
の順になると思います。
次いで、来年FAとなるJoey Wendleの穴を埋められることから、
④複数年保有できるショート
となるでしょうか。
ファーストも、もちろん平均以下なので補強できれば良いのですが、市場に出回る選手が多くないことを考えると、Garrett Cooper、Yuri Gurrielのプラトーン併用で乗り切ることになると思います。
主な放出候補
この辺りの予想は正直あまり自信がないのですが、状況によってはチーム内の上位のプロスペクトの放出もあるかと思いますが、特に注目なのはXavier Edwardsの動向です。
今季、初めてメジャーに昇格し22試合に出場。現在はAAAに所属していますが、53試合に出場して打率.354、出塁率.426、長打率.450、OPS.876と好成績を残しています。主にセカンドとセンターを守っていますが、各ポジションには現状、Arraez(25年オフFA)、Jazz Chisholm Jr.(27年オフFA)がいます。ショートを守ることもできますが、AAAではJacob Amayaが主に守っていることもあり、来年以降は彼がWendleの穴を埋めると想定しているのかもしれません。AAAでしっかり成績を残していることからも他球団から注目されていてもおかしくありません。
また、マーリンズのストロングポイントである先発投手陣の現時点でのローテーションはSandy Alcantara、Jesus Luzardo、Eury Perez、Braxton Garrett、Bryan Hoeingとなっています。
ここからPerezが離脱し、代わりにIL入りしていたEdward Cabrera、Johnny Cuetoが(炎上しているけど)オールスター明けに復帰するとされており、恐らくHoeingが(またはCuetoがどうしようもなければ彼を)中継ぎに回すことになり、若干飽和状態になりそうです。(Cuetoにローテを任せられるなら)
一方、今季の市場は現時点でまだ売り手に回るのか、買い手に回るのか不明確な球団が多くあります。その為、場合によっては買い手対買い手のトレードでお互いの戦力を補強するケースもあり得るかもしれません。
そのような場合には、思い切ってCabreraを放出して打撃陣のアップグレードを狙うこともあるかもしれません。
これは今季を見据えただけでなく、来季のローテーションではCuetoがFAになるだけで、長期離脱中のTrevor Rogersや手術明けのMax Meyerの復帰が見込まれること、更にチーム内プロスペクトランキング上位のDax Fulton、Jake Ederもローテに食い込む可能性があり、引き続き先発が余剰気味になることも見込まれます。
その為、先発3~4番手として即戦力かつ長く保有できるCabreraを求める買い手球団は多いのではないでしょうか。
また、Fulton、Ederはまだメジャーレベルに達していないため、思い通りになるかはもちろんわかりませんし、現段階でトレードの駒にする可能性もあるとは思います。
マーリンズの獲得候補選手(独断と偏見)
では、マーリンズが
①支配力のあるリリーフ
②打撃力のある捕手
③サードのグレードアップ
④複数年保有できるショート
の条件に合う選手として、挙げられるのは誰でしょうか。
考えるにあたって、今季の動向に影響を与えそうなことをShermanオーナーが発言しています。
オーナーとしても今季は是非ともプレーオフに出場してほしい。その為のリソースの出資は厭わない、とのこと。
恐らく高額な選手を獲得しても良いということで、つまり複数年保有できる(高額な契約を引き継がないといけない)選手の獲得にもGoサインを出す、ということかと思っています。
以上を踏まえ、候補選手をピックアップしてみました。他球団の事情はあまり詳しくわかっていないので、ツッコミがあれば是非ともご連絡ください笑
リリーフ
基本的には現時点で好調な選手をまずは短期間で、という感じでしょうが、実績のある選手で複数年保有可能な選手がいれば対価次第ですが積極的に補強したいところです。
Daniel Bard(COL)
24年オフFA。WBCの乱調を見たときはイップス再発かと思いましたが見事に復活。29試合に登板し防御率1.76と安定感を見せています。FIPが5点台とかなり離れているのが不安ですが、1.5年保有できるのは大きいです。
Brent Suter(COL)
23年オフFA。現在はIL入りしていますが、7月中には復帰できる見込み。コンテンダーではないチームからの半年のレンタルとなるのでそこまで対価も必要ないかと思います。打たせて取るスタイルの投手なのでマーリンズにきて足を引っ張らないか心配です(ロッキーズのDRSは+11、マーリンズは+7)
Scott Barlow(KC)
24年オフFA。今季は防御率4点台ですが、statcastの指標は四球以外は軒並み優秀。またクローザーの経験も充分なため、A.J.Pukの代役も期待できます。
Kendall Graveman(CWS)
24年オフFA。1.5年所有できるので対価は大きいですが、21年以降安定した成績を残しており、4シーム系の球を中心に圧倒できる投手なので、ここぞというときに頼りになる選手で、獲得できた場合はかなりブルペンが安定することになるでしょう。
藤浪晋太郎(OAK)
23年オフFA。防御率自体は悲惨な数字になっていますが、ここ最近は制球面が改善され、常時100マイル越えの速球は大きな武器となっています。重要な場面を任せるのは怖いかもしれませんが、ブルペンのいいカンフル剤にはなりそうです。実際に獲得する可能性は低いと思いますが、日本人選手ということも含めてピックアップしました。
捕手
最悪Stallings、Fortesで回すことになりますがやはりアップデートしたいところ。マイナーにもトップレベルのキャッチャーのプロスペクトがいるわけではないので、可能なら数年保有できると良いですね。
Yan Gomes(CHC)
23年オフFA(24年はクラブブオプション)。
OPS.716。守備も指標上は平均以上を記録しています。カブスがTDLで売り手に回るか買い手に回るかわかりませんが、ある程度の見返りは必要となるものの、アクティブロースターにTucker Barnhart、Miguel Amayaがいるあたり実現性はあるのかなと思います。
Elias Diaz(COL)
24年オフFA。低迷から抜け出せていないロッキーズで今季はOPS.770を記録し、オールスターにも選ばれています。但し、好調だった4,5月と比べて6月は調子が落ち気味なところが気になります。実際、statcastの打撃指標では軒並み平均~平均以下で寄り戻しが来ているとも思われます。
守備の方はフレーミング以外の数値はプラスとなっており、大きな問題はなさそうです。
Salvador Perez(KC)
25年オフFA(26年は相互オプション)。
OPS.722、15HRは本塁打王をとった21年に比べると物足りないですが、Stallings(OPS.563)、Forets(OPS.562)よりは全然マシです。ただ守備指標は軒並み低く、後半戦にブーストを駆けるという点では弱いかもしれません。
25年まで保有可能で、かつ経験豊か。来年のハウンズバックも期待したいところですが今季33歳であることから成績は下降線をたどると思われるので、ある意味博打のトレードとなりそうです。
Travis d’Arnaud(ATL)
23年オフFA。
Sean Marphyの加入により第二捕手兼DHながらOPS.832。盤石なロースターをわざわざ崩してまで放出するとなると、半年のレンタルながら見返りは大きそうですし、実現可能性は低いと思います。
サード
Seguraの契約が24年まで残っていることを考えると、半年のみのレンタルトレードで対価をできるだけ少なくし、24年はSeguraのハウンズバックに期待する、というのが理想かと思われます。
Jeimer Candelario(WSN)
23年オフFA。OPS.814とキャリアイヤーとなりそうな好成績を残しています。半年のレンタル移籍ということもあり対価がそこまでひつようなさそうなことから他球団からの人気もありそうですが、マーリンズにとってはドンピシャな補強になるでしょう。
Ramon Urias(BAL)
27年オフFA。OPS.707と突出しているわけではないですが今季のSeguraよりは全然マシ。トッププロスペクトのGunnar Hendersonをはじめ、セカンド、サード、ショートはAdam Frazier、Jorge Mateo、最近ではJordan Westburgを起用していました。オリオールズはMLB18位の防御率を記録しており、マーリンズが先発を含めたパッケージを提案することで獲得できるかもしれません。
ショート
WendleがFAとなる来季、できれば下部組織からの定着を期待したいですが、来季もコンテンダーとして加わっていくのであれば現時点で複数年保有できる選手を獲得したいところです。今季に関してはWendleをサードに回すことで課題解決を図りたいところです。
Paul Dejong(STL)
23年オフFA(24-25年はクラブオプション)。今季はOPS.732と19年並みの水準に。低打率ながら本塁打を打てる点は魅力。24年1250万ドル、25年1500万ドルのオプションは正直高額すぎる感じもしますが、来年のショートにめどが立たない場合のオプションとして保有の選択肢があることは悪くないと思います。
Tim Anderson(CWS)
23年オフFA(24年はクラブオプション)。かつての首位打者も今季はOPS.529、本塁打はまさかの0と大不振。今季の成績だけを見たら獲得する理由はあまりなく、よほどの条件でない限り成立はしないと思います。また獲得したとしてもクラブオプションの行使はほぼないでしょう。
最後に
獲得候補選手に関しては、既に述べているように買い手か売り手か、まだわからない球団が多くあります。仮に売り手市場となった場合、選手の獲得は競争率が高くなることも予測されます。
個人的にはロッキーズのBardやDiaz、ロイヤルズのBarlow、ナショナルズのCandelarioあたりを獲得できたら面白いとは思いますが、どれほどの対価が見込まれるか、他球団との競争に勝てるかという点が予想しづらく感じました。
久しぶりにプレーオフへの出場が見えているマーリンズ。来季以降も見据えた難しいかじ取りが必要となる中でのKim Ng GMの手腕に期待です。
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