【TEX】Mission Complete. 21年レンジャーズは「よく頑張りました」
こんにちは。不定期更新のテキサス・レンジャーズnoteです。
レンジャーズは日本時間8/2の試合時点で38勝67敗、これは大方の予想通りで特に話題にすることもないでしょう。トレードで投打の主力を放出し、さらに加速します。
今回の投稿では、春先に投稿した【TEX】今年はプロスペクトの確保が目標(前編)と(後編) という目標が達成できたか、トレードデッドラインをまず振り返ります。もしよろしければ、あらためて記事を読んでいただけますと幸いです。今回の記事はトレードデッドラインの動きを紹介します。
結論から言うと、85点です。
1.ジョーイ・ギャロのトレード(現地7/29)
# 内容
■ レンジャーズ
・ジョーイ・ギャロ
・ジョエリー・ロドリゲス
・金銭(ギャロとロドリゲスの今季残り年俸)
⇔
■ ヤンキース
・ジョシュ・H・スミス(A+) 公式プロスペクトランクNYY14位→TEX7位
・エゼキエル・デュラン (A+)公式プロスペクトランクNYY15位→TEX8位
・トレバー・ホーバー(A+) 公式プロスペクトランクNYY23位→TEX18位
・グレン・オットー(AAA) 公式プロスペクトランクNYY28位→TEX25位
# 背景
レンジャーズの大砲として、またメジャーを代表する三振・四球・本塁打の打者として活躍していたギャロが、深刻な左打者不足に悩むヤンキースにトレードで移籍しました。ヤンキース側は今年打線が不調で、しかも主力は慢性的に故障がち。特に外野のスタントン、ジャッジ、ヒックスは特に故障が多いため、有鈎骨骨折で離脱した19年を除いて健康、守備走塁でプラスを稼げ、22年オフまで保有できる左の強打者は需要にマッチする存在でした。
ジョエリー・ロドリゲスは左のリリーフ不足解消のため、金銭はヤンキースの贅沢税対策で、特に後者はヤンキースにとっては大きなファクターだったでしょう。金銭を支払ったことにより、マイナーの階層が低いためリスクはあるものの、今季の評価上昇中の選手ばかりでそろえたプロスペクトを4人獲得できました。
一方のレンジャーズは契約延長交渉もしていたようですが、彼の代理人は球界最強のネゴシエイター、スコット・ボラスであり、交渉に難航したこともあって、放出に踏み切ったようです。
# 獲得選手考察
さて、今回レンジャーズが獲得したマイナーの選手のうち、野手3人はある程度キャラクターが似ています。
・サイズが大きくない(180cm前後)
・フライボールヒッター(一般的には長打と三振が増える)
・の割に三振は打席の20%前後
・今季のOPS.900超と好調
ホーバーは足がそこまで早くなく、外野に落ち着きそうではありますが、他の2人は脚力にも期待ができる選手です。昇格したてのホーバーをはじめ全員がA+(メジャーまではあと2A、3Aというステップがあります)ということもあり、全員がメジャーレベルに到達できるかはわかりませんが、少なくともこれからマイナー組織を分厚くしていきたいレンジャーズにとっては、質と量を兼ね備えたいいトレードだったのではないかと思います。
オットーは2Aで65.1イニング103三振(14四球)と三振の山を築いて3Aに昇格したところでレンジャーズへのトレードとなりました。すでに3Aでも数試合投げていて、25歳という年齢を考えても今年の9月にはメジャーデビューし、来年はローテーションの一角を争うことになるでしょう。
2.ギブソンのトレード(現地7/30)
# 内容
■ レンジャーズ
・カイル・ギブソン
・イアン・ケネディ
・ハンス・クラウス (AA) 公式プロスペクトランクTEX9位→PHI4位
・金銭(4M)
⇔
■ フィリーズ
・スペンサー・ハワード(MLB) 公式プロスペクトランクPHI1位(卒業)
・ケビン・ガウディ (A)公式プロスペクトランク外
・ジョシュ・ジェスナー(Rk) 公式プロスペクトランク外
# 背景
マイク・マイナー、ランス・リンとレンジャーズは毎年のように価値の定かではないベテラン投手に3年契約を提示し、成功してきました。その第3弾がギブソンです。
19年オフに3年2800万ドルで契約したギブソンの1年目の成績は惨憺たるもので、ローリスク・ミドルリターンは3度も続かないと思ったものです。しかし、今年はカッターを覚えてコマンド(狙ったスポットに投げる能力です)がアバウトなまま、ある程度カウントを作れるようになり、一時は防御率トップに躍り出るなど安定した成績を残すようになりました。
彼のストロングポイントはピッチングというより故障しないところでしょう。2013年にデビューして故障者リスト入りは3度のみで、直近2回は最短の10日で戻ってきています。近年はオープナー戦術も常套手段となり、ロスター枠の拡大もあって先発が長いイニングを投げることは少なくなりました。そんな中で110球程度投げつつ、試合を壊さず、ローテも崩さない、22年は700万ドルでキープできるリーズナブルさもあり、奪三振率が並ではありながらギブソンは今季のトレードデッドライン補強の目玉の一つといわれていました。一緒にトレードされたベテランのケネディは新天地でもクローザーを任されるといわれており、今季も来季も戦うことにしたフィリーズ投手陣の強化につながることでしょう。
ちなみに、トレード情報が錯綜する中で、最後に名前が出てきたのがプロスペクトのハンス・クラウスです。ジョニー・クエトのようなスローモーションからのピッチングが魅力の速球派右腕がなぜおまけに?と思いましたが、契約当初から言われているメジャーでは先発として残れないという見立てに従ったものと思われます。
さてフィリーズのNo.1プロスペクトで全体でもトップ30に入る評価だったスペンサー・ハワードが今回のレンジャーズの最大のターゲットだったのは疑いようもありません。なぜ、フィリーズはハワードを放出したのでしょうか?実際にどうかはわかりませんが、私は先発時の速球の平均球速が鍵だと考えています。
1回 94.9マイル
2回 94.3マイル
3回 93.4マイル
4回 93.1マイル
5回 92.3マイル
右肩下がりですね!
フィリーズがハワードをリリーフとみなしたかどうかはわかりませんが、少なくとも今現在はスタミナに問題があり、彼にローテーションを任せると割とすぐガス欠になるので比較的早くリリーフを準備しなければならず、そのリリーフは層が薄い。ワイルドカード争いしたいフィリーズとしては、彼をメジャーで使うよりは価値が下がりすぎないうちにトレードして対価を得た…というのが実情ではないでしょうか。
# 獲得選手考察
もちろんレンジャーズは彼が先発として花開くと信じて獲得したはずで、クラウスとハワードに関してはお互いの眼力や育成力を試されるトレードになりそうです。
ハワードはスタミナ面ももちろんですが、技術的にもうまくカウントをつくるために、ゾーンに投げ込める球種を増やす必要があります。
引用元: Baseball Savant(2021/8/2時点)
マイナー時代はスライダーや大きなカーブが売りの投手だったはずですが、今年は特にカーブのコマンドが怪しく、ゾーンの中に収まっているのはカッターを含めて速球ばかり。この程度のアベレージで70%近くがフォーシームというのはピッチセレクションに若干の疑問を持たざるをえません。現代のMLBは2ボール0ストライクからでも変化球でカウントを稼げるような投手でない限り通用しづらい時代です。その技術と自信をこれから残りのシーズンで与えられるであろう先発のマウンドでつけていってほしいものです。
残りのガウディは故障が多い選手、ジェスナーは貴重なオーストラリア出身でまだ細身の伸びしろのある選手くらいしか情報を持ち合わせておらず、詳細は割愛させてください。
レンジャーズは現在メジャーは勝率で全米ワーストを争う程度の戦力しかなく、ではマイナーはどうかというとそこまで充実した組織でもありません。荒削りな筋肉の塊かすぐ故障する投手ばかりなので…。今回のトレードで着実に層を厚くできたといえるでしょう。
近日中に21年ドラフト最高の契約金で全体2位指名右腕、往年の名投手アル・ライターの息子のジャック・ライターを獲得したドラフトに関して振り返りますので、お楽しみに。
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